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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走①

昏い夜を抜けて162

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 SPに報告によれば、つくしの弟の進が山崎の家族を連れ会社を訪ねてきたとのことだった。
 会社には会社でのつくしの護衛兼監視役が密かにもぐりこんでいる、
 こちらは女性で普段は社員を装い、つくしの同僚として働いているが滅多に表にでることはなかった。
 こうして定期報告の際に常任のつくしのSPを通じて報告してくるだけ。
 もっとも元々がつくし専属ではなく、何人か潜り込ませた類の子飼いだった。
 類でさえ何人もの腹心を自社や他社に潜り込ませているのだから、類の父やもしかしたら母も想像するに容易く。
 家族と言えど油断がならないのが、彼ら経営者一族の習いだった。
 それゆえに、心理的につくしをスパイすることにも罪悪感はない。
 知られれば拒絶反応を示すことも承知の上だったから、確信犯だった。





 居間に戻ると、総二郎とあきらが世間話を続けていた。
 だが、つくしと桜子はまだ女同士の四方山話がまだ終わっていないのか、いまだ姿を現さずに男ばかりのままだった。
 黙って総二郎の横に腰を下ろした類に、あきらが酒を手渡す。
 それをグイっと飲み欲し、空のグラスを返した。
 「…なんか、あったのか?」
 「いや、バカな女のあまりのお人好し加減に呆れてるだけ」
 「…なんだよ、それってもしかして牧野のことか?」
 さすがに誰のことを言っているのか察せられて、あきらと総二郎が顔を見合わせた。
 「そ。牧野、ストーキングしてレイプしようとした元婚約者を告訴しないそうだよ」
 「は?マジか?」
 「…告訴しないって」
 「それどころか、自分にも非があったからって被害届さえも取り下げたよ」
 「おいおいおい」
 つくしを良く知る総二郎も、さすがに呆れて唖然としている。
 あきらの方も驚いてはいたが、それもありえることだと思っていた。
 「…牧野、何もないのか?その…PTSD(心的外傷後ストレス障害)とか、そういう被害にあった後遺症的なやつ」
 「もちろん、あるよ。そりゃそうでしょ?部屋に侵入されてレイプされそうになるわ、平手とはいえ、男の力で派手に殴られたしね」
 「…そうだな。直後に俺も見たけど、顔が腫れてかなりひどかった」
 つくしが親友で今現在求愛している女性だということを除いても、女の顔を殴る男に苦々しさを覚える。
 かつては、司も平気で女も殴るような男だったが、そんな彼もつくしと出会って変わっていった。
 「お前、牧野のこと、どうするつもりなんだ」
 「…あきら」
 前振りもなく核心をスルリと口にしたあきらに、総二郎が目を見張る。
 これまで、あきらは彼らF4の中でも、互いの調和を重んじて調整役を自他ともに認めていた。
 その彼が、一歩間違えば20年来の友情さえも危うくする事柄を躊躇なく口にする。
 そこにつくしへの真剣な想いを感じて、総二郎自身も、類の動向を気につつ脇役に徹することに決めた。
 どの道、互いに見て見ぬをふりをしたままでいるわけにはいかないのだ。
 …司のやつ、よもやこっちでこういう事態になってるなんて夢にも思ってねぇだろうな。
 もしかしたら、類くらいはつくしとそういうことになっていたとしても、それほど大きな驚きはないかもしれない。
 何せ、類はつくしの初恋の男なのだから。
 だが、よもやあきらまでもが…。
 「お前は牧野の担当は自分だと言って、その言葉通りここへ牧野を連れてきた。それって、牧野もお前を自分の男だと認めてるってことなのか?」
 「…お前はどう思うわけ?」
 質問を質問で返す。
 それが類の常套手段だ。
 だが、長年の付き合いのあきらが、そんなことで惑わされるはずもなく…また、類もあきらを誤魔化しきれるとは思っていなかった。
 「牧野は、俺にお前との付き合いを言っていなかった。あいつの性格からして、俺があいつに告白している以上、他に男がいればそれを正直に言うはずだ。実際、山崎との付き合いは知らされていたし、結婚するつもりだということも聞いていた。だが…お前との付き合いは一切何も口にしていなかった」
 つくしらしいというべきか、まさに彼女ならそうだろう。
 自分に何の責任がない求愛者に対しても誠実であろうとして、けっして相手に不義理な真似をしはしないし、それを信じるあきらもまた、そういったつくしという女のことをよくわかっている。
 それは類がフランスに渡り、つくしとは交流を持たなかった間に培われていた絆ゆえだったのだろうし、それだけ真剣につくしに対して想いを寄せている、ということでもあるのだろう。
 無性に…無性に、そんなあきらとつくしの関係が腹立たしいことがある。
 司とはまた別のところで信頼関係を結び合い、友として並び立ち、つくしの友愛を得ている友が時々ひどく妬ましい。
 いまが…そんな時だった。
 この優しい友に、なにか決定的なことを知らせて傷つけ、つくしへの関心を失わせてやりたい。
 「どう繕ったって、お前が何を考えていたって、真実は一つだよ。あいつと俺はいま一緒に暮らしているし、牧野は俺の女だ。それを牧野は否定しないだろうし、お前が聞けば今度はちゃんと答えるんじゃない?」
 類の薄笑いが、実は余裕などではなくあきらへの妬心と敵愾心であることなんて、あきらにだってわかってる。
 だが、そんな類が珍しくて、つくしへの執着に驚いて、あきらはとっさに二の句が告げられなかった。
 「…牧野と付き合ってるってマジかよ、類」
 かわりに声を上げたのは総二郎だった。
 観客に徹しようと思ってはいても、あきらと類の攻防があまりに珍しくて、意外すぎて、つい口を挟まずにはいられない。
 あの類が、感情を揺らしてあきらへの敵愾心を見せている。
 それだけでも驚きなのに、あきらのつくしへの気持ちが半信半疑であったというのに、あまりにその想いが真剣すぎて、傍観していられなくなったのだ。
 「部外者は黙ってて」
 「…そりゃねぇだろうよ。いくらもう何年も前の話だって言ったって、司の元カノだぜ。あきらばかりかお前までって…そりゃ、もう司は気にしてないかもしれねぇけど」
 「司は未練あるよ」
 あきらがハッと類へと視線を送る。
 それを無表情で見返し、類が淡々と言葉を続ける。
 「司はまだきっと牧野に未練がある。だから、他に女を寄せ付けないし、7年も日本に寄り付きもしなかったんじゃない?あきら、そうでしょ?」
 「…ああ、そうだ。司は今も牧野を忘れてない。逢いたいわけじゃないって言ってたけど、アイツの中で今も牧野の存在は大きくて…唯一絶対の女なんだろうな」




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