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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第五章 迷走①

昏い夜を抜けて157

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 『その忙しい俺様をスッポかしたのはお前だろうよ。アポ入れたのは、さらにその一か月前だぞ。この俺様が連絡いれまくったつーのに、返事一つ寄越さねぇで、いい度胸だな、類』
 威圧されても、迷惑千万だった。
 頼んでもいないのに、勝手に電話して来て凄まれても、飽きれるだけだ。
 他の人間だったら恐れ慄くであろう司の威圧だったが、幼馴染みである類や他の友人たちにはその脅威はまったく威力はなかった。
 それでも総二郎とあきらだったら諦め半分、たいがいは司の無理にも付き合える。
 だが、基本マイペースな類の態度はケンもホロロで愛想の欠片もなかった。
 「返事してないんだからアポだってないでしょ。俺も暇じゃないし、愚痴だけで用がないなら切るよ」
 『てめぇっ…シンガポール・エネルギー・サミット(SES)の件で頼みがあるって言っただろがっ。インドの件は引き受けてやるから、いい加減ネグんじゃねぇよっ』
 「お前…相変らず恩着せがましいね。頼みたいのはお前で俺じゃないのに。インドの件って…まあ、いいよ。頼みとやらきくまでお前、うるさいだろうから、聞いてやるよ。メリットないわけじゃないみたいだしね。けど、俺、この間フランスから帰ったばかりだから、しばらくヨーロッパには行きたくないよ」
 生き馬の目を抜く企業人らしからぬブッたるんだ物言いに、電話の向こうの司の気配が憤りつつ、飽きれていた。
 『…お前な。俺だってそう何度もヨーロッパばっか行ってられっか』
 「NYにも行かない」
 『……。はあ、お前、ホント、いくつになっても変わんねぇな。それで花沢物産、やっていけんのかよ』
 「古狸のジジイみたいなこと言って、お前の方はずいぶん変わったよね」
 『ぬかせ』
 類の軽口に、空気が緩む。
 だが、次の言葉はもう引き締められ、そして…類もまた、適当に流すことができなかった。
 『近々、日本出張がある』
 「……へぇ、珍しいね。何年も日本に返って来なかったお前が。もしかして、日本に転勤の話があるとかだったりして」
 『ああ、まあな。その下準備ってところか』
 探りを入れたつもりがあっさり肯定されてしまい、さしもの類も言葉を詰まらせた。
 「………」
 『来期から日本支社長に就任する。7年ぶりの日本だな』





 「…類?」
 食事の支度をする間、着替えに行かせた類の様子は一変していた。
 見た目、そう変わってはいなかったが、同棲してそれなりに長い時間を一緒に過ごすようになったからなのか、表情に乏しい彼の希薄な感情にも、なんとなくつくしは気が付くことができるようになっていた。
 「何かあったの?」
 聞いても無駄かもしれない。
 シャワーは浴びてはいたものの、それだけにしては長い時間、寝室に籠っていた間に何かトラブルでも会社から持ち込まれたのだろうか?
 そうであれば、なおさらのことつくしになど話すはずもなく、だがあっさり頷いて、類は溜息を一つ吐いた。
 「まあね。ちょっと、厄介な仕事引き受けちゃったからさ」
 「えっと、この後、また会社に戻るのかな?」
 あまり進んでいないような食事の減り具合を見ながら、類の濡れた髪を確認する。
 もし、これからすぐにまた出勤ならば、その世話をしてやらねばならないだろう。
 類はつくしと暮らすようになって、ますます何もしなくなった。
 もちろん、過剰に彼女に対して負担をかけるようなマネはしなかったが、以前はペットのようだと自分を卑下していたつくしよりもむしろ類の方が高貴なペットのようだった。
 「ん…いや、平気。別に急ぎってほどじゃないし、できることはここでやるよ」
 「そ?」
 「うん。悪いけど、今日は一人で寝てくれる?」
 「へ?」
 宣言されたことに、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
 いつもだったらそれを笑う類も、何事かを考え込んでいるかのように無反応だった。
 一人で寝ることに否やはないどころか、つくし的に本来は大歓迎なはずだ。
 だが、なぜか釈然としない思いに、眉根を寄せてしまう。。
 このマンションに来て以来、少なくても寝る時には一人寝をさせられたことはなかったのに。
 どんなに彼女が嫌がろうと、必ず類はつくしを抱き込んで眠り、セックスをしてもしなくても、別の部屋で寝ることを許さなかった。
 思わず、黙々とつくしの作った夕食を食べている類をジッと見てしまう。
 さすがにその視線には気が付いたようで、なに?と首を傾げられた。
 「あ、ごめん、なんでもない。か、髪、食べたらすぐ乾かしちゃう?」
 何を動揺しているのか。
 自分でも不可解な思いに、つくしは焦っていた。
 「いや、いいよ。適当に自分で乾かす。牧野も仕事、けっこう忙しいんでしょ?」
 「…うん」
 「一応、SPつけてるけど、遅くなるようならタクシー呼びな?」
 「いや…タクシーなんて、みんな電車で帰ってるよ。ここ、駅から近いし」
 いったい幾らかかるか知れない。
 タクシー代の一つや二つ、ヘでもない超セレブの類とはわけが違うのだ。
 かといって、それを言い募れば、花沢家の車を使えと言われてしまうだろう。
 案の定、
 「だったら、うちの車を使わせるよ。どうせ、それはイヤなんだろ?」
 「…そんなんしたら、バレるでしょ。いったいどんな理由で、あんたん家いたいな高級車にあたしが乗って会社から帰るのよ」
 しかも運転手付きってやつだ。
 「だったら、会社を出るのが8時過ぎたらタクシー使うこと。特に金曜日はね。駅前でトラブルに巻き込まれることだってある」
 「……」
 意外に心配性な類の言葉に抗えず、とりあえず無言でやり過ごす。
 類もそれ以上言い募るつもりはなかったらしく、食事を終えるとさっさと席を立ってしまった。
 とりあえず、類の嫌いなものは避けるようにしていた。
 時間があれば、それなりに嫌いなものも工夫して食べさせる努力はするのだが。
 「…ああ」
 「え?」
 思い出したように、書斎へと向かいかけていた類が振り返る。
 残さずに綺麗に食べられた皿を片づけだしていたつくしは、呼びかけられて目を瞬かせた。
 「もしかして、一人で寝るの、寂しい?」
 「……そんなわけないでしょ。のびのび寝れて嬉しいわよ」
 「そ?別にベッド狭いわけじゃないし、二人で寝たって寝ずらいってことないんじゃない?」
 冗談じゃない。
 「広くても!ベッタリ、あんたに張りつかれて寝てたら、落ちる疲れも落ちないってことよっ!あんた、必ずあたしを抱き枕みたいにして寝るでしょ!重いし、熱いし、寝苦しいっ!!」
 さすがにそこまでキッパリ言いきられれると傷ついたのか、ちょっとだけ寂しそうな顔でしょげられて、つくしは大いに罪悪感を感じてしまった。
 美形というのは得なものだ。
 少し表情をシュンとさせただけで、相手の罪悪感をガシガシとついてくる。
 「…冷たいな、もう他人じゃないのに」
 「は?他人でしょっ」
 「だって、人に見せられないようなところも見せ合ったし、恥ずかしい姿も…」
 「わーーー、わああああ、わあああああ」
 恥知らずなことを言われる確信に、耳を抑えてわざと大声を出す。
 真っ赤になった顔は羞恥半分、怒り半分だった。
 「煩い、牧野」
 「あんたが悪いんでしょっ!」
 「まあ、冗談はともかく。怖いようなら、ベッドにベベ入れてもいいよ」
 「…ダメに決まってんでしょ」
 入れてあげなくても、時々朝になると入り込んでいることがある。
 どんなに可愛がっても犬は犬、しつけは必要だと思っていた。
 が…。
 「そのために飼ったようなもんだし。トイレのしつけはできてるんだから平気でしょ。俺がいる時は外って、ちゃんと認識してるみたいだから問題ないよ」
 実際…ベベがベッドに入り込んでくるのは類が朝まで一緒にいない時だけだ。
 寝るときは必ず同じベッドに入るというのに、なぜかふと目が覚めると類は隣にいないときがあったから。
 そういう時、類はいったい何をしているのかと、つくしは尋ねたことはない。
 そんなことを聞く権利はないと思っていたし、気にしていると思われたくなかった。
 「…しばらく、一緒に寝れないかもしれない。あるいは、邸に戻るかもしれないから」




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遅かりし道明寺

毎回楽しく読ませて頂いています。
「南の島の休日~あたしの男に手を出すな!」が面白かったです。
類・つくしは、どんな物語なんだろうかと好奇心で読み進めましたら
アチャ~!アララ~!いいのかそれで~!と気付いたら一気読み。
こちらの道明寺って哀れですネ。何も知らない知らされない。
これ、あとで全部知ったらブチキレそうな司の性格。
類につくしちゃんのお初を奪われ、そのうち心も身体も~。
つくしちゃん、司に知られたくないだろうな。
司は、司でショック師しそう。

類と結ばれば花沢財閥の若奥様になるわけで。
華やかな表舞台へもでることになるだろうし。
なんとか司とのシコリを解決できるといいですね。
これって2人をハッピーエンドにするとなると
周りの人間関係が非常に複雑になりますね。
生涯決別もありそうな。
司がすべての事情知りつくしちゃんを守ろうして、
「類を愛してしまったの!だから放っておいて!」と、
またフラれたら次こそ生きる意欲なくなったりして。
つくしちゃん、まさにストックホルム症候群ですね。
こ茶子様、寒い季節で風邪に注意して
更新頑張って下さいです。
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