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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第四章 発覚②

昏い夜を抜けて152

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 久しぶりに見た進は顔色がいい気がした。
 姉弟の状況はいまもまったく変わってはいないのだが、それでも弟の病み疲れた顔が回復したのはつくしには行幸だった。
 「…もう、無理しないでよ」
 「ん、ごめん、迷惑かけて」
 殊勝に謝る弟の顔に、幼い頃の姿が重なって、涙ぐみそうになったつくしは進の背中をバンッと叩いてカツを入れる。
 「痛ってぇっ」
 「何言ってんのよ、これくらいで、大げさ!」
 「……俺、病み上がりなんですけど」
 「あ、そうだったね、ごめんごめん」
 恨めし気に見下ろされて、慌ててその大きな背中を撫でる。
 すっかり大きくなっちゃったんだな。
 …あたしが守られちゃうほどに。
 いつまでも小さな子供だ、子供だと思っていた弟は、いつの間にか大きくなり、つくしを庇うほど大きな男になっていた。
 「進、父さんたちのこと…」
 「うん、聞いちゃったんだね」
 狭いちゃぶ台に座り、お茶をすすりながら二人は黙り込んでしまった。
 なぜ、進の就職が中々決まらないのかと思っていた。
 特待生として4年間優秀な成績を収めてきた進の何がいけないのかと…。
 そして、バイトにばかり明け暮れ、少しもそのことに焦る風のない弟の姿に。
 なぜ自分は気が付くことができなかったのかと、今更ながらに悔しい思いがこみ上げる。
 「…進、あんた」
 「姉ちゃん」
 二人の言葉がかぶさりあう。
 「う、うん、なに?」
 つくしが譲って、進が小さく微笑み、その顔がまた大人びていた。
 「俺、ちゃんと就職するよ」
 「え?あ、あたりまえでしょ。な、何言ってんのよ」
 真っ直ぐつくしを見る進の顔は、不思議に晴れ晴れとしていた。
 なにが、進の気持ちを変えたのかわからなくて内心首をひねりながらも、深く安堵する。
 …おそらく、進は就職を迷っていたのだ。
 普通に就職して安い初任給で家族を支えられるだろうか。
 そんな気持ちが、当たり前の判断力を奪ってしまっていたに違いない。
 目先のことだとわかっていながら、進は安易な道を選んでしまいかけていた。
 「か、カノジョもいるんでしょ?将来を考えている」
 とっさに口にした言葉だったが、自身でも意外なことに自分の言葉に動揺していた。
 まさかね。
 が…。
 「うん、そうだね。カノジョにも心配かけちゃうところだった…って、もうかけちゃったか」
 あはははと、明るく笑う弟の笑顔が眩しい。
 それでもわずかに照れているのか、頬を染めている。
 「……進、いま付き合ってるカノジョと結婚考えてるんだ?」
 「……うん。前まではなんとなく、だったんだけどね。今回こんなことがあって、実は泣かれちゃってさ、そのカノジョに」
 「うん」
 電話での会話だけだったが、よさげな彼女だった。
 しっかり者といった感じは、ぼんやりしたところのある弟にはピッタリなのかもしれない。
 「いつもは強気で、なんで俺、こういう女が好きなんだろ。姉ちゃんで気の強い女はお腹いっぱいって、殴らないでよっ!」
 「…あんたが殴りたくなるようなこと言うからでしょ?」
 「ぶつぶつ、こういうとこ、由宇と一緒なんだよな」
 ぼやく進に拳骨を見せる。
 身を引きつつ、進がドウドウと手を前に出すと、二人で噴出してしまった。
 こうやって過ごしてきた。
 3才も年下で気の弱かった弟は、たいがいつくしに逆らうことがなかった。
 そして大きくなり進の方が力が強くなっても、しっかりものの姉と、温厚で穏やかな弟との関係は変わらなかったのだ。
 「でも、今回のことで由宇がものすごく心配してくれてさ。それが意外だったけど、すっごく可愛くて守ってあげたいなって思ったんだ」
 「…そう」
 「結婚とかもさ。もっと、俺がしっかり稼げるようになって、ちゃんとした男になってからとか思って、あんまり先のことまで真剣に考えたことなかったんだけど…」
 「うん」
 20才そこそこの男であれば、それも仕方がないことだろう。
 「その気持ちはまあ、今もあんまり変わらないんだけど…。でもできたら彼女を俺が一生守っていきたいなって、ね」
 「…うん」
 いつの間にか大人になって、一人の男になっていた進の成長に嬉しいような、少し寂しさを感じて、それを誤魔化すようにお茶を啜る。
 「だから、…姉ちゃんも、俺に遠慮するなよ」
 「……え?」
 「ずっと、姉ちゃんのこと、俺が守るんだって思って来たけど、きっと、俺じゃあ無理なんだよな」
 弟の意外な言葉に、目を瞬かせ、進を見つめ返す。
 その目は本当に優しくて、思いやりに満ちていて、つくしはなんだか泣きたくなってしまった。
 やだ…あたしがお姉ちゃんなのに。
 「…俺たちさ、親があんなだから」
 「……」
 「ずっと、俺たち二人でなんとかしなきゃって、そんな感じでずっと頑張って来たよな」
 「…そう、かな」
 言われてみれば、そうだったのかもしれない。
 幼い頃の進は本当に頼りなくって、男のくせになんでこんなひ弱なのかと歯がゆく思うことも多かった。
 それがいつの間にか、大きな男になってつくしも頼るようになっていた。
 大学に通う進を支えるための二人暮らしだと思いながら、それでも精神的にいつも支えられていた。
 経済的にだって、進がつくしに頼ることはほとんどなくって、もしかしたらもうその関係はとっくに逆転していたのかもしれない。
 「姉ちゃんを守りたかった」
 「…進」
 「道明寺さんとのことで傷ついた姉ちゃんが立ち直ればいいってずっと思ってたけど、その反面、俺が守ってやるからもう姉ちゃんは結婚とか、恋愛とかそんなことでもう傷ついたりしなくてもいいとか、思ってた」
 「……」
 「でもさ、俺なんて半人前のくせにそんなこと思うなんて、本当におこがましいよな」
 そんなことはない。
 弟のそんな気持ちが嬉しくって。
 愛しくて、切なくて、つくしは言葉を詰まらせた。
 「姉ちゃん、もう俺のことや家族のことは気にするなよ。俺にどこまでやれるかわからないし、また姉ちゃんにも迷惑をかけちゃうことはあるかもしれない」
 「進?」
 「……俺、ここを出るよ」
 「は?」
 「前々から大学の先輩が誘ってくれてる会社があってさ」
 「え?あ、…うん」
 いきなりの展開に、つくしの頭がついてゆかれない。
 「花沢物産とか、そこまでの大企業とは違うんだけどさ。堅実な躍進で、今、事業拡大を図っててね。…海外赴任とか、そっちがメインになるから迷ってたんだけどね」
 「す、進」
 「父さんたちの借金のことは、俺がなんとかする。だから、姉ちゃんも、これからは自分のことだけ考えてよ」




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