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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第四章 発覚②

昏い夜を抜けて142

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 「類…、本当に無理だよ、あたし」
 どう類の気持ちを翻させるか、考えてもつくしにその方法がわかるはずがない。
 と、なれば、直球勝負しかやりようはなく、いつもとは逆につくしの方がシャワーから出たばかりの類の周りをついて回ることとなってしまった。
 「だって、犬、嫌いじゃないんでしょ?」
 「だから!そうじゃなくって。その…犬の世話をするとなったら、えっと、たまにとかそういうわけにはいかないでしょ?もし、犬をどうしても飼いたいなら、お邸の方で飼ってもらえばいいんじゃないの?」
 それしかないだろう。 
 だが…。
 「牧野へのプレゼントって言ったじゃん。なに?それとも邸の方で暮らしたい?」
 とんでもないことを、あっさりと言われて仰天する。
 「な!そ、そんなことできるわけないでしょっ」
 驚くつくしに比べて、類の方はまったく冷静で、それどころか、お得意のどうして、なぜ?が始まった。
 「なんで、できないの?」

 「…それってまさか、会社を辞めてメイドになれってことなの?」
 「はははは!なんでさ。まあ、それ、面白いと思うけどね。じゃあ、そうする?どうしてもっていうなら、それでもいいけど、牧野、あんたメイドしたいの?」
 冗談じゃない…。
 もちろん、仕事としてみればメイドとして働くことに抵抗感も否やもない。
 職業に貴賎はないと思っているし、体を使って働くことはつくしも嫌いじゃなかった。
 けれど、場所が花沢家だなんて、真っ平御免。
 第一、どの面下げて、自分が半ば囲っている女を実家に連れてゆくつもりだ。
 そこには親もいるだろうし、婚約者も来るのだろう。
 目じりをキツくしだしたつくしの顔に、類が肩を竦める。
 「冗談。彰…高階に怒られるよ。いま担当してる仕事、あんたじゃないと任せられないって高階も言ってたしね。せっかく優秀な社員を、あえて配属替えしなくてもいいでしょ」
 「…え?」
 思わぬ人物の、思わぬ評価につくしが驚きで目を瞬かせる。
 それに柔らかく笑って顔を覗き込んで、油断したすきにチュッと頬にキスを落とした。
 「隙あり」
 フッと笑って遠ざかってゆく類をつい呆然と見送り、我に返った頃にはもう怒る機会を逸してしまっている。
 「…どの道、あんたが嫌なのは犬の世話じゃなくって俺とここで暮らすってことなんでしょ?」
 「……」
 ズバリと言い当てられてしまって、つくしは唇を噛みしめた。
 もちろん、類はつくしの気持ちなどとうの昔にわかっているに決まってる。
 それをあえてのらりくらりとはぐらかすのは、それもまた彼の『遊び』なのだと思うと悔しかった。
 「…別に遊んでるつもりはないんだけど」
 困ったような言葉に、ギョッとする。
 曖昧に微笑む類の顔に、つくしは自分がまたいつの間にか思っていたことを口に出していたことに気が付いた。
 だが、類はとくにそこには言及せずに、言葉を続ける。
 「前にも、俺はお前に言ったよね?ここで暮らせば、って」
 「だからっ!」
 「…その時にも言ったけど、ここは棟全体が俺の持ち物件で、住んでる人間も厳選している。そもそも、あんたの知り合いが住むような界隈じゃない。あんたが気にするなら、別々に出勤するんで構わないし、そうなればあんたがどこから出勤してるかなんて、会社の連中にわかるはずがない。保障するよ」
 「………」
 「で、何が問題なのさ?」
 問題だらけだ。
 第一、以前とはまた違う条件が架されてしまっている。
 「あんたもここに住むつもりなの?」
 「うん、そ。それこそ、問題ないんじゃない?部屋数はいくらでもあるし、こうやってけっこう短くない間一緒に過ごしてきて互いに、それほど気づまりだと感じなかったと思うけど?」
 「………そんなのあんたの独断でしょ。あたしは違う」
 「そうかな?別に焦点はそこじゃないから別にいいけど。あんた、ここに住まないで、いったいこの先どうするつもり?」
 類の言いたいことを掴みかねて不審な顔をしているつくしに、類が小さく笑いかけ、さっさとソファへと腰かける。
 ついてきたつくしの手を引っ張って、無理矢理彼女も横に座らせようという彼の意図に、反射的に抗い、結局男の力で引き寄せられてしまう。
 「花沢類っ」
 「また戻ってるよ、呼び名」
 物柔らげなくせに、自分の要求をガンと受け入れない類の強硬な態度に腹が立って、つくしは彼の要求に従わない。
 「…花沢類」
 たとえどんなに些細なことだとしても、納得できないことにはできるだけ抗う。
 それがあくまでも類の許容の範囲なのだとしても、つくしの譲れない一線だった。
 心まで奴隷になどなりたくはないから。
 そんな頑固なつくしにしかたがないなあ、という感じで今は強くこだわらず、類も諦めて言い直させなかった。
 そして、横に座らせたつくしの顔を真正面から覗き込み、大きな掌でそっと頬に触れる。
 そんな場合じゃないと思うのに、触れられればそこから胸が高鳴って、彼のビー玉なのような美しい目に魅入られた。
 だが、類の目に宿っていたのは欲情の兆しではなく、揶揄するようなもので。
 「あんたはこんな目にあわされた場所で、また普通に暮らしていけるつもり?」
 こんな目…のところで掻くように、つくしのガーゼを指先で擦る。
 その仕草に、自分の頬の傷とその傷を受けるにいたった原因が頭に浮かび、とっさに体が強張ってしまった。
 いまは…この非現実的な現実を前に、少し前に起こった衝撃的な事件の記憶が麻痺してしまっていた。
 だが、ひとたび現実に立ち戻れば、類の言うように『あんなこと』があった場所での生活が待っているのだ。
 …山崎は警察によって拘束されている。
 そうであれば、もはやつくしが家に戻ることを恐れる理由など何もないはずなのに、家に一人帰ることがなぜかひどく怖い。
 いつまた眠りの底の暗闇から悪夢が忍び寄って、目覚めたその先に、大きな男の影が、力強い襲撃者の腕が伸びてくるかと、つくしは幻の中の恐怖に小さく体が震え出すのを止められずにした。
 「たぶん、アパートでもそうだけど。あんた、暗い夜道を一人で帰ったりするのを忌避するようになると思う。恐怖の元凶がとりあえず取り除かれたからと言って、人間の心はそう単純じゃない。俺んとこに来な。俺を利用すればいいんだよ。怖いものには怖いもの、嫌な記憶には嫌な奴で、相殺してしまえばいい」
 「……意味わかんないけど」




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