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「Fly me to the havenシリーズ…36話完」
高校生編①

キスの温度09

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 花沢類に言われるまでもなく、気が付いていた。
 遠巻きの人垣の中心。
 いつものように王様然と君臨する道明寺のクルクル頭が見える。
 人垣の中でも抜きんでて背が高いから、面倒臭そうな美貌がチラッとあたしを見て再び反らしたのがよく見えた。
 …また、あたしを無視した。
 ギュッと胸の奥が痛む。
 なんだか情けない気持ちになってきて、目の前の花沢類の背中に隠れるようにして一歩後ろへと下がった。
 「わっ、道明寺さん、受け取ったぞ」
 え?
 ざわっと、人垣が揺れて、人と道明寺の背中で見えなかった女の子の姿が現れる。
 …あれって、確か浅井たちとも仲が良かった木村さん。
 珍しくあたしに直接意地悪をしてくるような人じゃなかったけど、あきらかに一線を引いてるお嬢様の一人。
 いつもはツンとしている横顔が、興奮で紅潮して、同性のあたしの目から見てもすごく可愛かった。
 「…いいよ。気が向いたらだけど」
 「本当ですか!嬉しい、嬉しい。いつでもいいんです。これ、私の携番です」
 いそいそと可愛い名刺を差し出しているのが、不思議に良く見える。
 「やだ、いままで誰からも物を受け取ったりしなかったのに」
 「…携番まで受け取ってもらえるなんて!」
 「牧野と付き合うようになって、最近、道明寺さんあたりが柔らかくなったもんね」
 「って、いうかさ。梨央、可愛いし、単純に牧野と付き合うの飽きたんじゃね?」
 「あのボンビー牧野じゃあな。どう見たって、長続きしないだろ?」
 あたしが後ろにいるのに気が付いていない連中がクスクス笑っているのが、どこが遠くで聞こえる。
 もっとも、これだけ多勢だと、あたしが後ろにいたって逆にわざと言うのかもしれなかった。
 …ましてや、あたしが何言われたって道明寺が何もしてこないとなれば遠慮することなんてないんだもんね。
 それでも、ふと背後に視線を向け、あたしとあたしの前にいる花沢類に気が付いた男が、ギョッとのけ反って道を開ける。
 「…おい」
 「うわっ」
 小声でつつきあって、居心地悪そうに立ち去ってゆく連中を見て、本当に気が付いてなかったんだとなんだか可笑しくなってしまった。
 「牧野?」
 「…花沢類、あたし、やっぱりお茶するのやめていい?あんまりのど乾いてないし」
 バレバレだけど、意地を張らないではいられない。
 「帰る?」
 「…うん」
 「じゃあ、バイト先まで送るよ」
 静かな声に、ささくれだった気持ちが慰められるようで、グッと傍に立つ花沢類の上着の裾を握って頷いた。
 …ありがとう、花沢類。
 今は、一人になりたくない。
 一人になったら…よけいなことを考えて、自分を立て直せない気がする。
 今はたとえやせ我慢だとしても、見栄を張ってでも真っ直ぐに立っていたい。
 今見た光景がなんなのか、もう少し冷静になれるまで。
 あたしと類はざわめくラウンジを後にした。
 …道明寺が鋭い視線であたしたちを見送っていたのにも、気が付かずに。




 「本当、夢みたい。あの…もしよかったら、明日もお菓子、作ってきてもいいですか?」
 ほんのりと赤く染まった間延びした顔が、涎垂らした雌狼に見えて、虫唾が走って睨みつけた。
 「ひっ」
 怖気た女が後退り、女に付き添っていた連中も一緒に縮こまっている。
 「…おい、司、よせよ。顔、すげぇ、怖いぞ」
 横であきらが呆れたように首を振り、女たちに微笑んで愛想を振りまく。
 よくやるぜ。
 ナンパしてぇんなら、自分だけでやれ。
 「うるせぇ、やってられっか」
 牧野と類が消えていった廊下を、歯噛みしながら見送ったことを俺はすでに後悔していた。
 バカくせぇ。
 なにやってんだよ、俺も。
 牧野がラウンジに入ってきたことは、もちろん気が付いていた。
 そもそも、総二郎が牧野の行先を探って俺に引き返させたんだから。
 そこへ、ここのところイラつくことも少なくって、暴れたり赤札を貼らなくなった俺の様子に調子づいた女が近づいてきた。
 いつもだったら、見向きもせずに無視してやるのに、横にいたあきらが囁いた。
 『チャンスだぞ。いつも、いつもお前ばっかが追い掛け回してるから、牧野に危機感ねぇんだよ。他の女に盗られるかもっていう危機感を与えてやれ』
 そん時は冗談じゃねぇ、なんで俺が興味もねぇ女相手にそんな猿芝居しなきゃなんねぇんだって思ったのに。
 俺が無視してるつーのに、少しも堪えてないふうな牧野が類と楽しそうに歩いてるのに頭に血が上った。
 なんだよ。
 俺だけかよ。
 自分が無視してるくせに、逢いたくて、顔見たくて、お前の声聞きたいってじれてるのは、俺だけなのか?
 お前にとって俺が数日無視するくらいなんでもないことなのかよ、そう思ったら遣る瀬無いやら、腹立たしいやら。
 かああっとあいつを傷つけてやりたい衝動が沸き上がって、気が付いたら差し出された袋を受け取っていた。
 興味もねぇのに、袋の中の、どうせ家のシェフにでも作らせたんだろう素人には作れねぇようなデコり方のケーキを眺め、口角を引き上げた。
 俺にしてみれば、ムカついて引き攣った笑みでしかなかったと思うのに、女はそれでも頬を染め、付き添いの女たちと一緒にきゃあきゃあ、きゃあきゃあ。
 うぜぇ。
 それでも、チラ見した牧野の顔が青ざめて見えて、わずかに溜飲が下がる。
 なんだよ、やっぱ、平気ってわけじゃねぇんだろ?
 …俺はお前じゃなくても、寄ってくる女に不自由しねぇんだよ。その俺がお前だけに惚れてるって言ってんだ。もう少し、俺を気にしろ、尊重しろ。
 そんなことを心の中で唱えて、目の前の女の図に乗ったセリフに適当に応えてやっていた。
 『あの、今度クラブで遊ぶ時ご一緒させていただけませんか?』
 『…いいよ。気が向いたらだけど』
 気が向くことなんて永遠にねぇけどな。
 横目で牧野の様子を伺ってるのに気が付かねぇ女が、横で歓声を上げ連絡先を寄越して来る。
 『やめて!』
 あるいは、
 『あたしじゃない子の携番なんて受け取らないでよッ』
 冷静に考えれば、こんな衆人環視の中でそんなことを牧野が言うはずもないのに、俺の脳ミソは牧野恋しさと嫉妬でどうかしていたに違いない。
 後悔役(先)に立たず。
 もう一度見た牧野の顔は、唇を噛みしめて泣きそうに歪んでいた。
 おいっ、そんな顔するくせに、それでも俺に何も言わねぇのかよ!

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