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この腕も、この手も、この指先さえも…前編

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この腕も、この手も、この指先さえも…前編
 CPは類×つくしです。
 前後編なので、設定その他は文中からお読み取りくださいm_ _m
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 「…俺は行きます。彼女とのこと、認めてくれなくても構わない。俺が家を捨てればいい」
 「本気なのか。温室の中で育ったお前が、彼女と泥にまみれて生きていけると思ってるのか?」
 「俺が井の中の蛙だったのは知っていますよ。昔、彼女に背中を押されて静を追った時にいかに自分が裸の王様だったか、思い知らされましたから」
 「…そうだったな」
 向かい合う二人の顔は、明確な親子関係を指し示すようによく似ていて、ただ類の美貌は柔らかい春の日差しのようなのに、向かい合う父親の顔はどこか冷淡で人形のようだ。
 どこまでも自然体な息子に対し、父親は強い威圧で類の気持ちを翻させようとしていた。
 二人の間に流れていた緊迫感を縫うように、部屋のドアが叩かれる。 
 人払いしていたはずだったが、花沢物産社長には私事を優先する時間的余裕などあるはずもなかった。
 「…入れ」 
 花沢の一言で、親子に一礼をし、花沢の第一秘書が小声で耳打ちをする。
 一瞬だけ、チラリと秘書を見返した花沢に、秘書が頷き返す。
 「わかった。その件は、私から処理を指示しよう。…つけた人員に関しては、しばらく私の指示を受けるまでは待機するように伝えてくれたまえ」
 「かしこまりました」
 父と秘書との緊迫したやり取りに、類が眼光鋭く二人を見据える。
 そんな息子の疑惑に満ちた視線に気が付いていないわけではなかろうに父が、類へと改めて向き直り、薄い笑みを浮かべる。

 「…類、私と賭けをしようか」
 「賭け…ですか?」
 「そうだ。彼女が何を置いてもお前を選ぶか、それとも他の人間を選ぶか、私と勝負しよう」
 どうかすると、この花沢物産と言う強大な企業を支えてきた巨人にひれ伏してしまいそうな自分を内心叱咤しながらも、類は強い視線を返し、突っぱねる。
 「お父さん、俺はあなたと賭けも勝負もする気はありません。俺の望みは、俺をあなたが忘れてくれることだ。花沢類を、見放してください」
 「それはできない。お前は何をしようが、どこにいようが私の息子。花沢類でしかないのだから。お前がこの賭けに乗らないというのなら、どんなことをしてもお前の恋人の家族を私が破滅させよう。それでお前の恋人は、お前を愛し続けることができるかな?」
 「……っ!」
 父の自信に満ちた言葉がどれだけ真実は、わかりすぎるほどにわかっている。
 無闇に権力を振りかざすような男ではなかったが、それでも、無意味な口先だけの脅しを口にするような男でもない。 
 「…彼女が誰よりもお前を選んでお前と一緒に行けば、私はお前を諦めよう。好きに生きればいい。彼女の家族にも手を出さないと約束するよ」
 ギュッと両手で、スラックスの柔らかい布地を握り締める。
 「…俺が負ければ?」

 「彼女がお前でなくて、他の誰かを選んだ場合、お前は永遠に私のものだ。この花沢物産のためだけに生き、この花沢物産のためだけに死ぬのだ。…彼女との待ち合わせは、17時だったね?」
 何もかも見透かされている父親に、誤魔化せるはずなどない。
 「ええ」
 「では、18時までは待とう。彼女がお前と待ち合わせた場所に、時間までに現れなければ、お前はすべてを失うことになる。…彼女の弟さん、牧野進君が交通事故で病院に緊急搬送されたそうだ」
 「進がっ!?」



 「…つくし!!」
 頭を抱えて突っ伏している父の横、涙でぐちゃぐちゃな母が、立ち上がってつくしを出迎えた。
 そしてそのままつくしの体に縋り付き、「あうぅぁ、…す、進が、進が…」と、喘ぎ嗚咽とともに譫言のように弟の名前を繰り返している。
 なんで、こんなことに…。
 つくしは、先ほどの警察からの電話を思い起こして、眩暈を憶える。
 ここのところ、ガソリンスタンドで深夜勤務のアルバイトをしていた弟。
 早朝6時に勤務を終え、帰宅する予定だった。
 それが、つくしが一人暮らしをするアパートに警察から電話が入ったのが7時過ぎ…。
 早朝のことで、睡眠不足のトラック運転手がトラックの操作をあやまり、誘導する進を撥ね飛ばした。
 本来なら即死でもおかしくないところを、まだスタンド内への進入路でのことで、トラックもスピードを緩めていた為、一命を取り留めた。
 だが、重症には違いない。
 当初、人手が少なく、パニック状態の現場ではスムーズに連絡はいきわたらなかった。
 まずは自宅に電話が入ったようだが、夜勤で熟睡していた父や、早朝勤務のパートに出ていた母には連絡が付かず、緊急連絡先に指定されていた一人暮らしのつくしの元へと第一報が入った。
 進が危篤状態…。
 泣き崩れる母を支えながら、つくしの中ではグルグルと同じ光景ばかりが脳裏に蘇る。
 …先週、類と進、つくしの3人で、しばしの別れを惜しむ晩餐を一緒にとった。
 どうしても元司の婚約者だったつくしを受け入れない花沢家の意向は、類に別の女性をあてがうことで一致し、彼女を排除しようとして、ついに類がつくしを連れ海外逃亡を図る…つまり駆け落ちへと話はまとまっていた。
 つくしの26才の誕生日に、二人は新しい人生を共に歩みだすつもりだった。
 それでも、まだつくしには迷いがあった。 
 だが、司の時とは状況が異なり花沢物産は類がいなくても健在で、それでもなお、類を束縛し続けるのが明らかだった。
 類の資質は考慮されることがない。
 そして、類自身の心が、揺れるつくしを叱咤し、強く強く引き留めた。
 『絶対に、逃げることは許さない。罪なら全部俺が背負うから、あんたは俺だけは裏切っちゃダメだ』
 その目に、かつて他人のことばかりに気を取られ、最愛の男を手放したつくしは覚悟を決めた。 
 …類だけは裏切らない。
 今日の午後17時に類と成田空港で落ち合う約束をしていた。
 それなのに、弟がこんなことになるなんて。
 これが報いなのだろうか。
 自分のことだけを考えて、多くの人を不幸にしようとする二人への宿命?
 進を心配する心の裏側で、シンとした冷たい諦めが胸の内を覆い始めるのをつくしは感じる。 
 類…ごめん、ごめんね。
 溢れる涙が弟のためだけでなく、自分と…そして類への憐憫と諦観の涙であることが、つくしは疚しく辛かった。

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