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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第四章 発覚①

昏い夜を抜けて117

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 高坂家の別荘に戻った途端、寝室へと足を向ける類に、招待も受けていない美也子が小走りに追いかけてくる。
 一応レディファーストを叩きこまれた身の上。
 車からエントランスホールまではエスコートしてきたが、玄関に到着すればそれももう必要ないだろう。
 類の中では恋人でもない女を、わざわざ部屋まで送り届けて送られオオカミに喰いつかれるのも厄介だ。
 だが、美也子はそうは思ってはいないのは明らかで、気怠い類に追いつき、すぐに縋りついてきた。
 「類さん」
 本人は甘く蕩かすような…と意識したつもりの誘惑的な視線で、肉感的な胸元や腰を押しつけ、誘いをかけてくる。
 どうしようか…。
 特に女に飢えているわけではない。
 元々淡白なところへ加えて、女はつくしで十分に間に合っていた。
 だが、女の眼差しが、意図的な動きで彼の腕を撫でる指先が、自分の立場を尊重しろと主張していた。
 …とんだ雌ザルだけど。
 飛んで火にいる夏の虫。
 承諾してここに来た以上、相手をしないのもそれこそ面倒か。
 実際、この女と結婚することになるかどうかは今のところ微妙だったが、それでも前進している以上、美也子のプライドを傷つけ妙なわだかまりを作るよりも、適当に相手をしてやる方が楽なのは決まりきっていた。
 冷めた目で女の潤んだ目を見下し、素早く自分の部屋に連れ込むより女の部屋で望まれていることをこなした方が早く寝れそうだと判断する。
 いつまでも自分の部屋に居座られて、やたらと香水とフェロモンで臭い女と同衾するなんて真っ平御免だった。
 特に事後の臭いなんて最低で、これまでもやることはやっても抱いた女と一緒に眠ったことなどほとんどない。
 静と…つくしだけだ。
 互いの体温も、匂いも、感触も気持ち悪いと思わずくっついていられたのは。
 それがどんな理由かなど、深く考える気さえもなれなくって、ただ目の前の雌ザルを適当にやり過ごすことだけを考える。
 「…あんたの部屋でいい?」
 面倒臭そうな類の呟きに、それでも高まる期待が美也子の胸を高鳴らせる。 
 類の美しい顔を見ているだけで、スレた美也子さえもトキメキを憶えた。
 その繊細な指先が、唇が、肉体が与えてくれる快楽は、何度味わっても他の男では経験できない。
 それが、類のもともとの手技によるものなのか、あるいは美也子でさえ想像もつかない経験の果てに身に着けたものであるのか判断つきかねる。
 もちろん、その中には類のステータスによって満たされた美也子自身の虚栄心が満たされた所以であることも否めない。
 けれど、いずれであろうと、もう他の女には彼を渡したくない。
 この男性の、まるで子供の頃夢見た童話の王子様そのもののような容貌と、触れることもためらわれるほどの冷たさが美也子の執着心を煽った。
 女にも男にも容易に手に入れることができない彼が、美也子が望めば簡単に手の中に落ちてくるのだ。
 なんと自尊心をくすぐられることだろうか。
 なんて…素敵。
 逸る心を抑え、美也子は類の腕を引っ張るように自室と案内し、招きいれる。
 「今夜は…素敵な夜になりそうですね」



 すっかり町はクリスマスカラーに塗り替えられ、そこもかしこも微笑み合うカップルでひしめき合っている気がさえする。
 別段、毎年必ず一緒に過ごす相手がいるわけでもないし、そもそもこんなクリスマスなど特別に意識したこともなかったつくしには、だからどうだという感慨もなかった。 
 去年は…山崎と付き合いだしたばかりだった。
 一応は恋人らしきデートもして、それなりに楽しかったと思う。
 それでも、恋している相手とデートをしているというよりも、尊敬している先輩社員と飲み会をしているという感覚の方が強かった。
 それが少しづつ彼に馴染んでくると、それはそれで平凡な幸せだと思えるようにもなった。
 恋してはいなかったが、ある意味それなりの愛情を山崎に対しても抱いていたと思う。
 別れる間際には結婚など考えられなくなっていたが、それにしても、『結婚』を意識した時も確かにあったのだ。
 クリスマスやバレンタインなどの恋人同士の祭典など、一切興味も関心もない自分に何かとイベントを企画してくれていた。
 大切にされていたと思う。
 肉体関係一つとっても、大事に大事にされていた。
 それなのに…裏切る結果になって。
 自分はいつもどうしてこうなのかと、時折無性に悲しくなった。
 ふと通りかかったアンティークショップに飾られた陶磁器製の『幸せの王子様』が、見慣れた誰かに似て見えて、ドキッと立ち止まる。
 曖昧で捉えどころのない冷たい微笑が、彼の内面そのままの虚空のようにも思えて、その場から立ち去り難い。
 …昔はニコリとも笑わなかったのに。
 今はその時に比べればよく笑う方だと思う。
 それでも、なぜかごくまれに見た笑顔とはまるで違って、笑わなかった時の顔よりなお寂しく思えるのは何故なのだろうか。
 怖くて、厭わしくて、美しい彼の横顔が。
 一人ぼっちでつまらないと拗ねている子供のように感じるのはきっと間違っている。
 それでも触れる指先が伝える肌の温もりに、時折優しさを感じるのは、自分のどんな愚かさゆえなのだろうか。
 憎めれば楽になれるんだろうか。
 あるいは心など粉々に砕いて、本当に何も感じない人形になれればどんなに幸せなのだろうかと思う。
 ふとすれ違う似た匂いの人物に。
 あるいは、こうしてそこかしこにある面影に、寂しさを感じるなんて。
 小さな猫や、犬などの獣にさえも、ともにいればいつしか慣れて愛着や情を生じる。
 お人好しで愚かな自分を自覚しているつくしは、けっして類の不在に人恋しくなどなりたくはなかった。
 「…もう、香帆がドタキャンなんかするから」
 彼女の元々勤める会社の同期の顔を思い浮かべる。
 ともに恋人のいない同士。
 この嫌でも人恋しくなるシーズンを一緒に過ごそうと約束しあったのに、タイムリーなインフルエンザの発する高熱でキャンセルされてしまったのだ。
 …まあ、仕方ない。
 さすがに病に苦しんでいる友を悪しざまに言うのも気が咎めて、病気が快癒したら見舞いの品でももって労いに行こうと思い直す。
 知らず知らず、陽の落ち始めた街路をトボトボと歩き出し、冷えた空気にはああっと大きく白い息を吐き出した。

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櫻井るる様

今回、類君と美也子さんのことで、悲鳴が上がるかと思った117話。
いやあ、意外に皆さん冷静でしたね。
と、いうか、意外にもというべきか、当然というべきか、このお話コメントを下さる方って、なぜか『司好き』な方が大半^^;
やっぱり、類好きには痛いお話なんでしょうかねぇ。
それもあってか、類君の貞操の危機にはけっこう冷静というか、諦めムードなコメント多しw
まあ、いまの類君じゃあねぇ。
つくしちゃんへの愛以前に、一部壊れちゃってる状態ですし。

そうそう、類君実は淡白なの?
でも、『嫉妬』ではつくしちゃんを貪りまくってたでしょ。
みたいな。
でもまあ、その淡白の度合いもほら、相手変わればだし、基本つくしちゃんを捕えるためのH的なところもあったし?というところで。あるいは、気が付かないうちに、すでにつくしちゃんにホの字だったということもあるのかも?
あとはまあ、離れていこうとするつくしに、無意識で怒ってたりとか、作者である私も彼の思考回路は謎すぎて読み切れないところであります。
美也子さん、けっこうMなんですよ、きっとw
冷たい男に無視されればされるだけ燃えちゃって(最初萌えで変換して消したんですが、これもあり?)、M道まっしぐら!困ったことに、女は男じゃなくって、女を憎む傾向にある。
典型的な『女』である美也子さんの憎しみは、類よりつくしちゃんに行くでしょうしねぇ。彼女の活躍にもこうご期待!
しかし、そろそろ静さんにも登場してもらわないといけないというのに、やっぱり長引いている『発覚』。
うーん、このまま『発覚』で続けるべきか、違うサブタイトルつけるべきかプチ迷っています^^;
ま、筋的にはどちらでも同じなんですけどね。

そういえば、ぴあぴあさんは、香帆ちゃん(つくしの元同僚)が山崎さん狙いじゃないかと疑ってらっしゃいましたものね。
インフルエンザ、果たして本当か否か!?
…どんどん登場人物が増えてゆくTOT
類君の変化はこれから加速的になってくると思います。
少し引いて戻ったように見えても、一度自覚してしまえば、人間戻れないものですし。
ただ、類君の異常の根源の登場がまだですしね。
一度は開花しかけた彼も、一度は後退し、また再び殻に戻ってしまうこともあるかもしれません。
たぶん、今年中、12月の大量更新を得て、来年にはかなり状況は変化していると思われ。
順調にいけば、来年には6章(全9章…今確認したらいつの間にか1章分増えてたぞ>< 今『発覚』は4章目)に突入かな。皆さんお待ちかねの司君登場は8章なので、まだまだ先は長いです。

『キスの温度』。
単なる甘々というか、エロイ話にするはずが、やっぱりそれなりに波乱有。
けっこう大きなことを乗り越えて(司死にかけ)絆は深まったはずですが、やっぱり人間喉元過ぎれば。
最終巻の島での二人は、やっぱり長距離恋愛への覚悟と盛り上がりからつくしちゃんも思い切ったところがあると思ってるんですよね。
そうなると、奥手な彼女はそれこそ、5年とまではいわないまでもそう簡単には司君とそういうカンケイになるのは難しいのではないかと。
また我慢強い司君も、傍にいたら遠恋のようには物わかりよくは出来ないと思われ。
…さらに性(青)少年だしw

あきら×つくしのつくしちゃん、甘えっ子でしたか^^
なんていうか、司に対するつくしちゃんと、類に対するつくしちゃんがあれだけ違うので、つくしちゃんて実はそんなに勝気な子でもないのかなと。ああいう環境というか両親と場違いな学校に入ってしまったために、芯が強いから突っ張らざるえないくってああなっただけで、守ってくれる人がいればきっと可愛くて多少は意地っ張りでも素直な子なんじゃないかなという感じで、あきらには甘えたイメージ。案外違和感ないかな、なんて。
まさに「司くんのヰタ・セクスアリス」ですね!彼も極端な人ですよね^^;女嫌い?から一転目覚めたら一点GOGO。原作の彼はその猪突猛進を発揮する機会がなかった(いきなり遠恋)ので、本来の彼?のパワー全開を書いていきたいと思います!

みやとも様

『昏い夜~』はねぇ…どうしてもしんどい展開になってしまいます。
真っ暗の闇の底に座ってる類君なので、つくしちゃんでもそう簡単には引き上げられない油断すると一緒に底までまっさかさま。
そして、現在の類には全く貞操観念なんてものがない^^;
というか、美也子さん婚約者だし。
むしろ、つくしちゃんが…うう。
それがまた彼女の苦しみの根源になるんですよね。
モラリストだし。
でも、確実に類にも変化は訪れています。
ああいう男なので、表には出にくいですが、つくしちゃんと共に過ごして変化がないはずがない。
まだまだ辛い展開の続く『昏い夜~』ですか、よろしくお付き合いくださいm_ _m

続き部分ですが、ごく個人的?なお話になってしまうので、また伺ってお話しますね^^
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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