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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第四章 発覚①

昏い夜を抜けて116

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 退屈なパーティ、退屈な人間たち。
 人種や顔ぶれ、名前はかわっても、結局のところ、誰も彼もが類にとって大した違いなどありはしない。
 判で押した既製品のように、身にまとうオーダーメイド服ほどの個性ももたない男女を眺め、類は薄く唇の端に微笑を浮かべた。
 「…どうしました?お疲れですか?」
 英国紳士であるさる企業の要人が、シャンパン片手に歩み寄ってくる。
 珍しく途切れた阿る人の列の合間、視線を向けると男がニッコリと微笑み返し、広間の中央で女王然と威勢をふるう類のパートナーへと視線を向ける。
 「あなたの婚約者殿は、とても楽しんでいらっしゃるようですよ」
 「…そのようですね」
 まるで勘違いした孔雀の雌のように、煌な男たちに婀娜を振りまき、実家や類の権威を振りかざしている。
 滑稽だった。
 …それでも、特に珍しいタイプの女というわけではない。
 たいていの令嬢と呼ばれる女たちはそんな感じだったし、最初から類も美也子になんの期待をいだいているわけではなかった。
 それでも、欠伸が出て仕方ないのには閉口する。
 この茶番に付き合う前から、こうなることは予想済みだったが、こうして茫洋と首振り人形の役割を果たしながら、指折り時間が過ぎ去ってゆくのを願っている。
 いつものことだけど。
 こうして何年も退屈をどうにかこうにか誤魔化して、他人に気取られようとどうだろうととりあえずの役割を果たしてきた。
 それが一番面倒が少なく、労力を使わずに済むのがわかっていたから。
 それなのに、指摘されてしまえば、よけいに疲労が増し、さっさとこの場から退散してしまいたくてしょうがない。
 …眠りたいな、と思う。
 こんな日は、たった一人で手足を伸ばしてベッドでゆっくり眠るか、つくしの痩せぎすの…それでもふんわりと柔らかく華奢な胸の中で眠るのも悪くない。
 「良かったら、私とこの後一緒に飲みなおしませんか?」
 男ながらに艶を含んだ眼差しに、相手の意図と性癖を悟る。
 煙に巻くように謎めいた笑みで返し、ゆっくり首を振り、その誘いを遠回しに遮断する。
 いつの間にか、類と男のやり取りに気が付いた美也子が、憤然と歩み寄り、おおげさに類へと身をする寄せて、牽制する様さえなぜか笑いを誘われた。
 「…類さん?」
 怪訝に顔を見上げてくる美也子にも、とらえがたい笑みでうやむやに誤魔化す。
 「気を付けてくださいね。わかってらしゃると思いますけど、あの方、その道で有名な方ですから。…ホント、失礼しちゃいますわね。私と言う列記とした婚約者が一緒だというのに、もうっ」
 その憤りが果たして、どこからくるのか。
 婚約者を尻目にアバンチュールを仕掛けてくる相手への嫉妬なのか、それともその婚約者に言い寄ってきたのが男だったのが原因なのか少しだけ考える。
 美也子は、当初互いに束縛しあわぬ関係を示唆していたというのに、いまではすっかり類への独占欲を露わにしてた。
 …面倒くさい女。
 類の好悪の基準。
 彼を束縛し、所有しようとする人間、しがらみすべてが面倒臭かった。
 …あんたは、ちやほやしてくれるあんたにお似合いの人間たちで満足していればいいよ。
 婚約者らしからぬ冷淡な思考で、美也子の存在の脳裏から締め出す。
 そろそろ、引上げ時であるようだった。
 すでに顔を繋げるという意味では、類の目的は果たされた。
 いくつかの有益な縁故を繋げ、後はそれぞれにそれを利用する機会を見つければそれでいい。
 「俺、そろそろ引き上げるよ」
 「え?…そうですわね、パーティももう終盤ですものね。帰りましょう」
 にっこり上気した淫蕩な表情に、美也子が類に何を期待しているのかあからさまに透かして見える。
 ああ、そういえば、赤い顔、赤い唇は、発情の証だった、と。
 少し前につくしに自分が教えてやったことを、類はふいに思い出す。
 面倒臭い。
 再び思う。
 一度思い出したら、目の前の雌ザルの相手をするのがいかにも億劫だった。
 「いいよ、あんたは一緒に帰らなくても」
 驚く美也子に、そっと顎をしゃくる。
 「さっき、あんたにまとわりついてた男。…誘われてたみたいだけど、遠慮しないで一緒したら?」
 まんざらでもなさそうに身を摺り寄せていた相手が、以前何度か美也子と付き合いのあった男だと類にもわかっていた。
 互いの身辺調査書は、美也子のことも調べ上げられていて、多少の火遊び程度では類も人のことは言えないので、互いに暗黙の了解だった。
 それでも一応、ギクリと体を震わせ、青ざめた顔の女にも多少の恥というものがあるものらしい。
 残念ながら、類の方にはそういう感情は無用の長物で、表に出さえしなければ彼女がどういう身上を持っていようが彼には何の関係もない。
 …それが自分が将来結婚することを約束している婚約者なのだとしても。
 どんな言い訳が飛び出すのかも興味がなかった類に、美也子が口にした言葉は少しも響きはしなかった。
 「も、もちろん、断りましたわ!…その、婚約者がいる身で、わたし、そんなふしだらな女じゃありませんっ!」
 ほとんど初対面の状態で見合い相手とはいえ誘ってきた上に、いきなり、互いに束縛しあうのはやめとうと言い出した女にしてはあまりに独創性がなさすぎる。
 「…いいよ、束縛しあわない約束でしょ?俺、気にしないし」
 自分が望んだくせに、ムッと目に険を含む女に、すでに類は見向きもしていなかった。
 「待ってくださいっ!その…あの時は、親の決めた婚約者と言うものに、多少反発を感じていたものですからっ。いえ、その…もちろん、いまではそんなこと少しも思っていません」
 人目も憚らずしなだれかかる様子に、年配の貴婦人が眉を顰めて通り過ぎる。
 別段類も人目を気にする方ではなかったけれど、お嬢様然と気負っている割には、大してそこは浅いなと、感慨もなく思う。
 けれど、ジッと自分を見つめる類の視線に、頬を紅潮させた美也子は、さらに身を押し付けてきた。
 「私…類さんのことが、その、ただの政略結婚の相手としてではなく、お慕いしています」
 無理に押しのけても、美也子のプライドを傷つけるだけにすぎず、いつもの怠惰が類の態度を軟化させる。
 内心、小さく溜息をつき。
 予想しうる程度の不快感なので、適当に紛らわして話を終わらせる。
 「そ、どちらでもいいけど。とりあえず、俺、帰って寝たいから、あんたも戻る?」
 「ええ。もちろん、ご一緒しますわ」
 ニタッと笑った唇の赤さが、まるで女の欲望を露わにした女陰そのものであるかのように類には思えた。
 
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~ Comment ~

昏い夜を抜けて

おはようございます。(^_^)
お返事ありがとうございました。すっごく早くてビックリデス。
私の勘違いですね。お騒がせしました。
せっかちなもので、つい焦ってしまいすみません(・_・;。 まだ全部読んでいないので今日は三連休最終日 少しのんびりできると思います。さぁ!朝ごはんの支度デス。
こ茶子さんものんびりできるといいですね

それではまた 😄😄😄

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ニコちゃん様

こんばんは^^
いやはや…お褒めにいただいた途端、お返事が二日後とか^^;
大丈夫ですよ。
私もよく勘違いしてしまい、あっちゃ~と思ったりしますが、案外みんなそんなもの。
お互い気にしない~、気にしない^^
でも、それだけ私のお話を読みたいと思ってくださったんだな、と逆に嬉しく思いました^^
三連休最終日はのんびりされたでしょうか。
また今週もはじまってしまいましたが、お互いに頑張って日々を楽しく過ごしましょう♪
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