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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第四章 発覚①

昏い夜を抜けて114

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 「結婚?」
 ぼんやりと類は復唱する。
 その言葉の中には、不思議なほど何の感情も含まれていなくて、彼を知る高階にしてみればさもありなんという感じだったが、それでも少しだけ意外だった。
 類ならば…、
 『するんじゃない?』
 くらいに、他人ごとのように即答すると思っていたからだ。
 それでも、頬杖ついて高階を見上げていた視線を一瞬伏せ、クールな微笑みを浮かべる。
 「さあね、このままだとそうなるかな」
 「牧野さんは?」
 「牧野?」
 今度こそ、類の顔は怪訝に歪んでいて。
 そして冷たい無関心から、どこか不機嫌さを滲ませたのは気のせいではないだろう。  だから、突っ込んで聞いてみたくなった。
 高階にしても、類の心の奥底に踏み込みたいなどと言う酔狂さは微塵もなかったけれど、それでもあの平凡そうな女のどこに類の執着を惹きつけるものがあるのか、多少の興味があったから。
 …彼女のどこが、他の女たちと違うと言うんだ。
 女なんて、誰も彼もしょせんはエゴイストにすぎない。
 類を浅はかな同情で引きずり回し、懐かせ捨て去った静も。
 そして類を生んだ伯母からして、そんな女たちの象徴のようなものだった。
 …いや、女がエゴイストなのではない。
 人間という生き物がそもそもそうしたものなのだ。
 膝を抱え自分を守るかわりに他人に棘を向ける目の前の子供を見下し、高階が薄らと微笑む。
 その顔は、血縁による類似以上にあまりにも類に似ていて、それでいて、そんな自分を自覚する高階の自嘲も含まれていた。
 「…何言ってんだか。どうして、そこに牧野が出てくるわけ?結婚とか、そういう話が出てくるような家の娘じゃないよ」
 「じゃあ、なんで、面倒臭がりのお前がわざわざ彼女にかまう?だいたいこの縁談に付き合ってるんだって、逆らうより従う方が楽だからだろう?」
 縁談どころか、花沢物産そのものにも執着などないに違いない。
 類の行動原理はこれだけ。
 面倒だから。
 特に嫌でなければ、流れに逆らいもせず、ただ流されるだけの方が楽だから…そんな理由でしかないのだろう。
 それなのに…。
 「それを、わざわざ彼女を育てようなんて、どういう風の吹き回しだ。お前にしては、ずいぶんな入れ込みようだろ?」
 「…それこそ、意味わかんないよ。仕事のことと女のことは別でしょ?牧野が使えそうだから、使ってみる。ダメなら、それまで。ただそれだけのことに、なに勘ぐってるわけ?」
 …何が仕事だ。
 そうも思いつつ、いまや完全に不機嫌になってしまった類の横顔に、追及を諦める。
 確かに流されるままに生きている男だが、同時に他人を踏み込ませない頑なさも持っている。
 いくらある程度気を許している高階だとて不興を買えば、どんな突拍子もないしっぺ返しで、彼を窮地に陥れるか知れない。
 猫は怠惰で刹那的だからこそ、気紛れで残酷だった。
 「…俺には関係ないけどな」
 後は類ももう彼に用がないだろう。
 高階の去り際、ふと、類が言葉をかける。
 「裏切らない人間っているのかな」
 振り返った高階の目に映った類は、まるで友達と喧嘩した子供の用に膨れて、そっぽを向いていた。
 普段はクールでとっつき難い美貌のこの男には、なぜかそんな表情や態度が良く似合う。
 「…いるわけないだろう。自分自身でさえ、自分を裏切ることはままあるのに」
 透明な眼差しが、高階を見上げ、次の瞬間にはクツクツ笑いをあげた、
 …つまらなそうに。



 「……はい、牧野です」
 『………』
 プツッ。ツー、ツー、ツー。
 無言のまま切れた携帯電話のビジートーンに、思わずため息が零れる。
 今月に入って何回目だろう。
 今週は2日に1回の割合でかかってくるようになった。
 昨日もかかってきたから、もしかしなくても頻度があがってる?
 今は進との二人暮らしで、固定電話は置いていなかったから、弟に無駄な心配をさせないですむことだけがせめてもの救いだった。
 頭の痛いことは別にもある。
 先月、毎月の仕送りの他にお金を用立ててから、今月もまた2日も千恵子からお金の無心があった。
 さすがに千恵子も疚しいのか、あからさまには頼んでこなかったが、そこは親子、何の目的で電話してきたのかなんてバレバレで。
 かといって、問い詰めてみても、やれ弔辞があった、やれ電化製品が急に壊れたなど要領のえない答えが返ってくるばかり。
 隠されるとよけいに不安になる。
 これまでも、何度か両親には痛い目にあわされている。
 母には母の矜持があるのか、たいていにっちもさっちもいかなくなってから本当のことを話し、かえってつくしさえもが身動きが取れない状況へと追いやられた。
 昔司にお金を借りてTOJに出場することになったことしかり。
 家計が成り立たなくなって、家族で漁村に引っ越したことしかり。
 その後も、いろいろ困った状況を引き起こしてくれた。
 …ここのところ、パパも真面目に働いてくれてると思っていたのに。
 このままでは昔の二の舞を踏みかねない。
 どうやら一度、両親が引きこもっている田舎に顔を出すべきなのかもしれなかった。
 ちょうど、そろそろお正月休みだし、進と一緒に帰ろうかな。
 チラリと類の顔が思い浮かぶ。
 彼との契約があるにはあるが、よもや親に会いに田舎に帰るのさえ、制限されるということもあるまい。
 第一、今週だとて類の都合でキャンセルされていた…。
 ガタン。
 玄関のポストの立てた音にビクリと背中を揺らす。
 すぐに取りに出られないのは、怯懦だからか…それとも慎重さからだろうか。
 確認すべきか迷って、結局立ちあがる。
 狙ったように進がバイトに出ていて、自分が休みの土日ばかりに配達されるのは偶然なのか。
 それを考えるのが怖い。
 恐る恐る玄関のドアを開け、外を覗くと、当たり前だがすでに配達人の姿はなく。
 ポストの中身を漁ると数通のダイレクトメール。
 「はあぁぁ」
 またも溜息が零れる。
 先週、配達された封筒。
 そのA4サイズの封筒に入っていた写真が、先日からぐるぐると彼女の頭を悩ましていた。
 そこには…。

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ゆませ様

これから少しづつ、美也子嬢のターンかな^^

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