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雨よりも優しく…8話完

雨よりも優しく05

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 総二郎と約束をした次の日…やはり、天気は雨だった。
 それもドシャブリというやつで、時折小雨になるのがせめてもの救いと、総二郎と待ち合わせたホテルへと足早に急ぐ。
 「…やっぱりタクシーにすれば良かったかも」
 総二郎は家の車でつくしのアパートまで迎えに来ると言い張っていたのだが、つくしは彼に会うのが怖かった。
 総二郎に逢いたいと思うのに、彼に会うことが怖い。
 ホテルのレストランで食事をして、夜はそのままデートしようというのだから、よもや別れ話ということはないだろうが…。
 万が一、そうであったなら、少しでも話を先送りにしたい。
 会った途端、つくしの知らない総二郎がそこにいて、いずれ申し出ようとしている別れを読み取ってしまったら…ととてもじゃないけれど落ち着かなかった。
 せめて、彼に会うその瞬間まで夢を見ていたい。
 そこは雨風の吹きすさぶ裏ぶられたアパートの前なんかじゃなくって、煌びやかで美しい…外の風雨など気が付くこともないだろうホテルの中の方がまだしもマシかもしれなかった。
 なるべく車道に近づかないようにして泥はねから身を守り、電車とバスを乗り継ぎ、やっとホテルへと辿りつく。
 愛想よく挨拶をするドアマンに挨拶を返し、つくしは総二郎の姿を求めて、エントランスホールを見回した。
 ラウンジ…どこだろう。
 ふと目がとまった柱の影。
 背の高い男と豊かな肢体が目を引くセクシーな女のラブシーン。
 やだ…こんな一流ホテルで、大胆すぎないっ?
 驚き、ギョッそこから目を引き剥がす。
 が…。
 「…っ!?」
 女を見下し俯く男の横顔が、女が伸び上がって脇にズレたことで露わになる。
 「に、しかどさん」



 朝から降っていた雨が本降りになり、つくしを迎えに行かなかったことを総二郎は後悔していた。
 …クソッ。
 茶会や家の雑事に加えて、ここのところの野暮用のための遠距離移動で、さしもの総二郎も疲労でダウンし、バテ気味。
 待ち合わせ時間までのわずかな時間を睡眠時間にあてようと、抑えてあったスウィートルームのベッドに横になった途端に爆睡してしまった。
 夜はたっぷりと、久しぶりのつくしを堪能しよういう下心が仇になったのだろう。
 腕時計を見ると、約束の時間まで後15分ほど。
 雨に気が付いて電話を入れたが、予想通り、何度かけても留守電の応答メッセージが返るばかり。
 ま、そろそろ来るだろ。
 あいつのことだ、もったいないとか言ってタクシーにも乗っていないに決まってる。
 多少時間はまだあることだし、濡れ鼠のつくしの着替えでも見繕うかと外のブティックへと足を向けかけた。
 ラウンジから出て、エントランスホールを何歩もいかないうちに…。
 「総二郎!」
 「…朱美、勘弁しろよ」
 抱き付いてきた女の肩に手を置き、うんざりベリッと引き剥がす。
 「しっ。そのまま抱きしめてっ!お父様の見張りに張り付かれてるのよっ」
 「は?お前、上手く親父さん、誤魔化したんじゃないのかよ」
 抱きしめろと言う言葉に、引き剥がすのは諦めたが、ダラリと両手を投げ出し無抵抗に朱美の好きにさせる。
 そして、不自然ではない程度に、周囲を見回し、それらしき男を発見し顔を顰めた。
 「…マジかよ」
 「想定内よ。あなたがここのホテルを待ち合わせに使うって聞いて、実は私も彼とここで落ち合うことになってるの」
 「はあ?」
 ここまで迷惑をかけられると、つくしへのプレゼントの為とはいえバカな頼みを受け入れたものだと頭痛を覚える。
 おかげでおかしな噂まで立って…それはまあ、総二郎にしてみれば珍しくもない類のゴシップだし、それを目当てで頼まれたのだから、ある程度は仕方ないにしても、雑誌にすっぱ抜かれたのにはほとほとまいった。
 …まあ、親父とお袋を丸め込むまでの煙幕がわりにはなったけどな。
 それを考えれば、お互い様か。
 「で?どうすればいいわけ?」
 「このまま、いかにも二人で部屋に消えるように見せかけて、エレベーターに乗ってくれればそれで後はもういいわ」
 横目で追尾している見張りをチラッと確認し、
 「上の階で彼と待ち合わせしてるから、そのまま、裏から二人で出るし」
 ますます朱美は総二郎の胸へと顔を押し付ける。
 「手に手を取り合って駆け落ちって、お前、大丈夫かよ」
 朱美は総二郎の親戚筋だけあって、生まれた時から贅沢にどっぷり浸かって育った深窓のお嬢様だ。
 貧乏暮らしに耐えられるはずがない。
 「そこんとこは平気。彼、ベンチャー企業の実業家なの。タイではけっこう名の知れた人よ。それに、たとえ、しくじたって、私が養ってあげる。私、こう見えても、けっこう商才あるのよ?」
 それは画廊の経営ぶりで総二郎もよく熟知していた。
 仕事などせずに花嫁修業だけしても良かったのに、親の渋い顔を尻目に商売を成功させた。
 最初は何の気紛れかと親も黙って資金を出していたらしいのだが、そのうち親の援助も必要ないくらいに経済的にも自立してる。
 すぐには無理かもしれなかったが、そのノウハウやツテがあれば、いずれ再び起業できるだろう。
 「しゃあねぇな。毒食らわば皿までだ」
 「…ごめんなさいね、総二郎。私の方はあなたの望みを叶えてあげられなかったのに」
 「いいさ。どうしても画家が手放したくねぇって言うものを、ゴリ押ししちゃあ、牧野がかえって嫌がる」 
 総二郎に身を寄せたまま上向き、彼のヤニさがった顔に朱美はプッと吹き出す。
 「やだ、あの女にだらしない総二郎が、すっかりメロメロなのね。女に惚れこませることはあっても、そんな風に鼻の下伸ばしたあなたって初めて。…とても可愛らしい素敵な人だったものね。ご馳走様」
 「どういたしまして。…ま、絵は手に入らなかったが、かえって良かったかもな。お前の口利きもあって、あっちは手に入ったし。あいつの誕生日には、俺の愛情にアイツの方が感涙に咽てメロメロになること間違いなしだな」
 少年のように得意げに笑う顔が、総二郎の美貌に見慣れた朱美でさえも感嘆させ、見惚れさせる。
 「ふふ、そうだといいわね。そのためにも、今日は頑張らないと」
 「おう。さて、俺も予定があるからな。さっさとお前の王子様にお前を引き渡して、面倒を終わらせるか」
 礼の意味をこめて、総二郎の頬へと感謝のキスを送ろうと、彼の腕に手をかけ朱美が伸び上がった。
 「に、しかどさん」
 悲鳴のような悲痛な声に、総二郎が顔を上げる。
 本当に囁くような小さな小さな声だったのに、その声は不思議に総二郎の耳に真っ直ぐに届いた。
 「ま、きの…」

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