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「中・短編-」
雨よりも優しく…8話完

雨よりも優しく03

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 「もうっ!」
 すっかりのぼせてベッドに横たえられたつくしが、額に置かれたタオルを抑えて、ギッと総二郎を睨みつける。
 横で何くれとなく介抱していた総二郎も、さすがにつくしの本気の怒りを感じ取り、ポリポリと頭を掻いて素直に頭を下げる。
 「悪かったって」
 「やだって言ったのに。あんなところで盛って!なんなのよっ」
 「なんなのよ、って言われても、お前が可愛すぎたってことで」
 臆面もなく吐かれる台詞に、収まってきた火照りが再び上りそうで、ソッポを向き照れを隠す。
 そんなつくしに優しい眼差しを注ぎ、総二郎が手に持っていたスポーツドリンクのペットボトルを彼女の頬に押し当てた。
 「ひゃっ」
 「…飲めよ。逆上せには水分補給が一番だ」
 「ん」
 促され、体を起こそうとするつくしを、総二郎が支えて抱き起す。
 そしてそのまま介助され、ドリンクを半分も飲み干す頃には、つくしもだいぶ回復してきていた。
 「ねえ。なんで、急にここに泊まることにしたの?来週の連休、一緒に温泉にでも行こうかって泊まりの予定あるし、西門さん、明日けっこう早い時間から京都に行くって言ってなかったっけ?」
 だから、今日はディナーを一緒して、アパートまで送ってもらう予定だった。
 急な予定変更は珍しくはなかったが、昨日も総二郎と一夜を共にしたばかりだ。
 連泊するのにわざわざホテルを変えることなんて今まではなかったし、だいたいが総二郎が気に入りリザーブしている常宿がある。
 と、いうことは、やはり今日は泊まる予定だったわけではなく、急な予定変更だったのだ。
 「…あ~、実は、わりぃ」
 「え?」
 「来週の予定な、すまねぇけど、キャンセルさせてくれね?」
 本当に申し訳なさそうな上目使いの総二郎に、驚いたつくしが勢いよく体を起こして、再び眩暈に襲われる。
 「こら、急に体を動かすな」
 抱き留めた総二郎が、顎の下につくしの頭を入れこみ、ポンポンと窘めるように彼女の背を軽く叩く。
 「…誰のせいだと思ってんの?」
 「すいません、それは俺のHに感じすぎて、激しく乱れまくったつくしちゃんの、ぶっ」
 顎下を手のひらで突き上げられて、押しのけられる。
 「…おい、舌噛んだぞ、いま」
 涙目の抗議も完全無視。
 「そんなことより、来週キャンセルって」
 「ああ、そうなんだ。埋め合わせは必ずするからさ」
 口を抑えつつ、片手で拝みこんでくる。
 「…仕事?」
 「ん…、まあ、そんなもん」
 口を濁す総二郎に、つくしもそれ以上突っ込んで聞きにくい。
 仕事じゃなければなんなの?
 そう言えればいいのかもしれない。
 だが、つくしは今一歩のところで、いつも総二郎に踏み込めない。
 それは、心のどこかで総二郎を信じきれていないのかもしれなかったし、もし疑惑が確信に変わったとして、彼を思いきれる自分を想像できなかったからかもしれなかった。
 …浮気されたことがあるわけでもないのに。
 「つくしちゃん?」
 「いいよ、西門さんからのキャンセルなんて珍しいし」
 「ホント、悪い。だから、今日はめい一杯埋め合わせするからさ。足腰立たない覚悟しておけよ」
 「て!なんで、そうなるのよっ。あたしは明日も朝から講義だって言ってるでしょっ!?」
 気を引き締めなければ、明日はベッドから出れない事態になってしまうかもしれなかった。





 「先輩っ!?」
 暖かな日差しの照るよく晴れた日には、真冬でもキャンパスの芝生でお弁当を広げてランチする。
 去年まではそこに総二郎や、類、あきらも加わることもあったけれど、彼らが卒業した今はもっぱらつくし一人。
 たまに桜子や和也も来ることもある。
 でも、さすがに真冬の屋外は寒いと滅多に近寄ってこない。
 それなのに、血相変えた桜子が、雑誌片手に歩み寄ってきた。
 いつもは地べたに座るなんて真っ平御免だと芝生の上にさえも腰を下ろさないのに、ベッタリと座り込んで雑誌を広げてる。
 「これっ、これ見てください」
 「もぐもぐ…ごっくん。どうしたのよ?ずいぶん慌てふためいて」
 「先輩!落ちついてる場合じゃありませんっ。いえ…やっぱり、落ち着いてくださいね」
 「どっちなのよ、もう」
 桜子のわけのわからない物言いに呆れながら、指し示された雑誌に目を通す。
 「…また、その手の雑誌?」
 「ええ、この手の雑誌です。ほら、ここ」
 気が進まないものの、桜子の語気の荒さに仕方なく、目を通す。
 …まただ。
 何度、こういう嫌な感情を波立たせられたことだろう。
 毅然としていたのに、それができずに、つくしは額に手の甲をあてる。
 「先輩…大丈夫ですか?」
 「…わかってて、見せたんでしょ?」
 思わぬほど暗く憔悴して詰るようなつくしの声に、桜子が息を呑む。
 ここのところ、つくしは総二郎とまともに会話をしていなかった。
 自分から忙しい総二郎に逢いたいと言える彼女でないことがわかっていて、今までは彼の方がつくしの迷惑顔をものともせずに逢いに来ていたのだ。
 時にはお節介な友人として。
 そのうち、しつこい求愛者となり。
 そして今は、彼女が恋するただ一人の男としてつくしの目の前に立った。
 それが、ここのところ巷の噂を肯定するかのように、総二郎と連絡が取れない。
 たまに通話が通じると、別に総二郎は迷惑そうではなかったが、とても忙しそうで。
 すぐに電話の向こうで呼び出しなどが入り、邪魔されることも珍しくない。
 以前は、どんなに忙しくてもつくしを優先してくれた。
 そうそう滅多に電話してくるような彼女ではないと知っていたからなおさらに。
 それでもそのたびに、申し訳なさそうに謝る総二郎をなんでもないことであるかのように気遣って、内心で冷たい何かを呑みこんだような不安と痛みを一人、飲みこみ我慢した。
 なんで、そんなに忙しいの?
 なんで、あたしと会うのを何度もキャンセルしたの?
 言いたくても言えない言葉。
 連休の温泉旅行のキャンセルから一か月が過ぎていた。
 その間も、何度も総二郎からの、キャンセルが続いている。
 心配そうに自分を見る桜子に、つくしは小さく微笑んだ。
 「ごめん、八つ当たりした。でも、これいつものデマなんでしょ?」
 軽く流したつもりだった。
 それでも震える声は隠しようもなく。
 つくしの祈るような言葉に、桜子が辛そうに顔を歪める。
 「わかりません…本当は、ハッキリしたことがわかるまで先輩には黙っていようと思ったんですが、西門流はガードが堅くって。でも、祖母が親戚筋から仕入れてきた話だと、結納の話まででいるそうなんです。西門さんに限って、先輩を裏切って…とは考えたくないのですが…」
 司の時にはなるべくつくしの目に触れぬよう、気に悩まぬよう気を使ってきた桜子が、わざわざこんな雑誌を引っ張り出して来る自体、彼女も総二郎を信じきれないのだろう。
 それは総二郎の過去であったり、いまだ古い時代を代表するような総二郎の実家の家格の高さであるのかもしれない。
 同じく保守的な世界で生きる桜子には、彼のしがらみがわかるだけに、つくしという異分子をいかに西門家が容易に受け入れないかを熟知している。
 …壊れてしまうなら、深みにハマる前がいい。
 ずっと総二郎とつくしとの関係を心配してきた桜子のつくしへの思いやり。
 基本、桜子はつくしが幸せになりさえすればそれでいいのだ。
 それさえ守られるのなら、つくしの相手が総二郎でも別にかまわない。
 けれど、不安げなつくしの顔が、桜子にいくつもの思案をさせる。
 「…先輩、こんなものを持ってきた私が言う義理ではありませんが、信じきれないのなら、西門さんは辞めた方がいいです。先輩もわかっていて、踏み込んだ女修羅の道だというのは私にも理解しています。けれど、いつまでも先輩のそんな顔見ていたくないんです」
 「桜子」
 「この写真の中の女性と本当に縁談が進んでいるのかまでは、私にも定かではありません。でも、何かしら西門家で動きがあるのは確かです。たとえ辛い現実でも、立ち向かうべきではありませんか?逃避はいかにも楽なようでも後になれば後になるだけ傷が深い。先輩はそれをよくわかってらっしゃる方だと、桜子はわかってます」
 桜子の信頼が頼もしく…時には辛い。
 写真の中に映りこむお似合いの二人。
 総二郎の腰に手を回し、微笑む女性が、あの日…画廊で出逢った画廊のオーナーであることがつくしの暗い疑惑を後押しした。

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