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雨よりも優しく…8話完

雨よりも優しく01

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雨よりも優しく

 CPは総二郎×つくし。
 つくし大学4年生、総二郎は大学卒業後、次期家元とし家業を修業中。
 原作最終話司がNYに旅立ち、紆余曲折に末に、二人別れて別々に道を進んでいる設定。
 司との関係は穏便な別れで、互いに友人関係は保った状態。
 総二郎とつくしは恋人同士です。
**********

 「綺麗…なんだか吸い込まれちゃいそう」
 どこまでも広がっている真っ青な空に、雪に包まれた小さなコテージ。
 厳しい寒さにさえ耐え青々とした低木の木々には鮮やかな花々が咲き乱れている。
 雪の白と空の青、緑と極彩色の花々が作り出すコントラスト。
 現実的にはあり得ない光景。
 絵の中だからこそ、現実と非現実が混じりあい、調和しあっている。
 壁に掛けられた絵に真剣に魅入るつくしの横顔を眺め、総二郎がからかう。
 「へえ?お前でも、絵に興味あったりするのか」
 「何よ、どうせ、花より団子だとか、あたしのこと思ってるんでしょ?」
 拗ねて唇と尖らせるつくしの唇を指先で摘まんで、殴られそこなう。
 バカにしているわけではないのに、つくしの関心が自分にないと怒らせてでも自分の方に向けたい子供みたいな心理。
 …司のこと言えねぇな。
 自嘲する。
 「思ってねぇよ、こっち向かせたかっただけ」
 それでも素直にそれを言って、口説き文句にできるのが百戦錬磨の色男。
 わずかに頬を紅潮させて、キョトキョトと視線を彷徨わせるつくしの頬に音を立てて唇を落とす。
 今度こそ、我に返ったつくしの蹴りが、総二郎の脛にヒットして、さしもの色男も悲鳴を上げた。
 「痛ってぇっ!」



 その絵は、総二郎の親族の一人が経営する画廊の個展に展示されたものだった。
 即売会も兼ねていたが、つくしの魅入っていた絵画だけは、プライスが伏せられている。
 「…あそこにかかってる絵、購入したいんだけど」
 トイレに立ったつくしの目を盗み、総二郎は傍にいた店員に手招きをした。
 「ああ、申し訳ございません。そちらの絵は、今回は販売はいたしておりませんで…」
 総二郎は戻ってくるつくしを気にしつつ、申し訳なさそうに断りをいれる店員に多少の威圧を込め言い値の二倍で購入することを申し出る。
 だが、恐縮しながらも、その店員はガンとして総二郎の要求を受け入れなかった。
 「あんたじゃ埒があきそうもねぇな。…オーナー」
 「…無茶言わないでよ、」
 言った傍から、艶やかな黒髪の美しい女が、店の奥から姿を見せた。
 どことなく総二郎と似ているのは、血縁関係のなせる業か。
 「その絵は、どうしてもとお願いして展示してるけど、画家自身が手放すのを堅く拒んでる作品なの。特に思い入れが強い作品で、本来なら門外不出なのよ」
 …つくしが言うように魂を吸い込まれそうな気さえもする。
 何にでも感嘆や感情を露わにするつくしだったが、それでもこの絵のように、彼女が物欲しそうにしているのを総二郎は見たことがなかった。
 買ってやりたい…。
 高価な服飾類を欲しがってくれないからこそ、強く願う思い。
 ましてや、もうすぐつくしの誕生日だ。
 むしろつくしよりも、総二郎の方がその絵に執着してしまったのかもしれなかった。
 「朱美…望みの額を言え。画家に交渉してくれ。いくらでも払う。…必要ならこの画廊に今展示してある絵すべてを買い取ってもいい」
 いつになく強硬な総二郎の様子に、女と店員が顔を見合わせる。
 「…仕方ないわね、あなたと私の好だし。総二郎、あなたが私のお願いを聞いてくれるなら、画家には直接私が交渉してみる。それで手に入るかどうかはわからないけど、努力してみるわ。とりあえず、うちに対する手数料は規定通りでいいけど、画家には言い値で支払ってちょうだい。それでもいいかしら?」
 「ああ、それでいい、頼む。で、お前の頼みって?
 女や画家にとってもしょせん金額の多寡が問題なのではない。
 それでも、総二郎が彼女の願いを聞いてくれるなら、無理をしてもいい。
 「あのね、実は…」
 女の艶やかな唇が総二郎の耳元へ寄せられ、密やかに囁いた。



 つくしがトイレから戻ってみると、昔よく見た光景に、思わず足が止った。
 美しい男には美しい女が似合っていて、芸術的な絵画に劣らぬ美術品のような美男美女が肩を寄せ合い囁き合っている。
 …やだな。きっとなんでもないことのはずなのに、こんな風に嫉妬めいた感情を抱くなんて。
 それはもちろん、嫉妬以外の何物でもなかったけれど、できればつくしはそんなどす黒い感情と向き合いたくはなかった。
 総二郎を愛して、総二郎がそういう男だとわかっているのに好きになってしまったのは自分だ。
 絶対にこういう女タラシな男に心を奪われるなんてことはあり得ないと思っていた少女の日。
 もちろん、今の総二郎は女はつくしだけだと言ってくれる。
 行動そのものも、学生時代の彼とは百八十度人が変わったように、他の女と遊びまわるようなことはなくなった。
 信じていないわけではない…。
 それでも、こうやって嫌な感情を波立たせるのは自分に自信がなさすぎるからなのか。
 美しい男女の戯れ、はしゃぎ合う光景が、まるで手の届かない絵の向こうの世界のようで、つくしは近づくのを躊躇った。
 そう…まるで、さきほど見惚れた雪原に立つコテージのようだ。
 触れたくて、その場に立ちたくて焦がれずにはいれないのに、現実ではないそこにつくしは立ち入ることができない。
 「牧野?」
 立ち尽くすつくしに気が付いた総二郎が怪訝に呼びかける。
 夢から覚めたように、つくしは目を瞬かせ、曖昧で気弱な笑みを無理やりに唇の端に浮かべて総二郎へと歩み寄った。
 つくしを見返す女の目が、そんな彼女の漣のように荒れ揺れ動く心を見透かしているようで。
 つくしは我知らず、眩い二人から視線を反らせた。



 「どうした?疲れたか?」
 抱かれた肩ごしに頭を撫でられ、フッとつくしは思考を浮上させた。
 「あ、ごめん、ちょっと考え事」
 「なんだよ?悩み事?」
 「…ううん、今度の後期の共通教育の学科試験、篠沢教授がメインで監修するって聞いたからさ」
 「ああ。あの人のはちょっと一筋縄じゃいかないよな」
 元々が同じ大学出身。
 先輩の総二郎にはツーとカー。
 だが、それだけに、つくしがとっさに口にした誤魔化しが上手くいって、彼女の屈託は総二郎にはバレずに済んだ。
 いつもはわりにつくしに合わせてラフな店を連れて行ってくれる総二郎だったが、今日は珍しく一流ホテルのレストランでのディナー。
 つくし的には肩が張って仕方なかったが、一歩中に入ってしまえば、個室へと案内されて周囲の視線は分断されていた。
 美しい夜景に、美味しい料理、この上なく美しい男に肩を抱かれて、レストランを後にする。
 ふと、エレベーターの階数表示を見上げて、下ではなく、上へと上昇していることに気が付く。
 「え?」
 てっきりこのまま帰るのかと思っていたつくしは、隣の男を見上げて息を呑んだ。
 長い睫毛がいつの間にか間近に迫っていて、身を引いたつくしの頤へと柔らかい感触を落とす。
 チュッと音を立てた唇は、今度はかき上げた髪の奥、うなじへと吸い付く。
 「ちょっと!」
 「…いいだろ?」
 「よくないわよっ。エレベーターなんかでやめなさいよっ。人が入ってきたらどうすんの!?」
 言った傍からチンと音を立ててエレベーターが停止し、ドアが両側へと開く。
 だが、総二郎や司と付き合うようになって見慣れたエグゼクティブ・スウィートのフロアはシンと静まり返って誰の姿もなかった。
 「平気だろ?誰もいねぇよ。ほら、降りろ」
 手を引かれて、部屋へと入れば、そこはもう非日常の空間。
 その最たるものが、自分の手を握る総二郎であることが、いまだにつくしにしてみても不思議で…。
 「なんだよ?スウィートなんて今更珍しくもないだろ?」
 「…そんなこともないよ。初めて泊まるところだし」
 キョロキョロと見回しているつくしに苦笑し、つくしから手を離して、総二郎が今に設置されたカウンターからグラスを取り出し、ワインの封を開けた。
 「あ、あたし、そんなに飲めない。明日、朝から授業入ってるの」
 「わかってっよ。そうでなくても、お前にしこたま飲ませるようなこと、この俺がするか」
 「何よ。まるであたしが酒癖でも悪いみたいに」
 失礼な物言いに、唇を尖らせ、促されるままに総二郎の隣へと腰を下ろす。
 手渡されたワインを一口口に味わい。
 「うわぁ、美味しい~」
 両手で琥珀色の液体を掲げ持ち、満面の笑みを浮かべる。
 そのさまを愛しそうに微笑み、総二郎が再びつくしの肩を抱きよせ、首筋に吸い付いた。

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