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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第四章 発覚①

昏い夜を抜けて104

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 再び週末が巡ってきた。
 先週に引き続き、今週も忙しいのか、特に類からの連絡もなく、つくしの苦悩はやや肩透かし気味となり、まずは平穏無事な毎日と言っても良かった。
 ただ…なんとなく、あきらに言われたわけではなかったが、ここのところ夜遅くの残業は避けていた。
 気のせいなのかもしれなかった。
 しかし、ここのところ何度か帰宅途中、視線を感じることがあって、それで特になにか異変があるわけではなかったが、それでも心落ち着かない時があった。
 …進に迎えに来てもらおうか。
 そう思わないでもなかったけれど、それでなくても多忙でいつも疲労を残しがちの弟を煩わせたくない。
 気のせい、気のせい。
 それにやはり、類のことが心のどこかで引っかかっていて、それがストレスになっている気もする。
 嬲られるなら何も考える暇も与えずにいさせてくれればまだよかったが、こうして猶予のような、中途半端な時期が一番辛い。
 自分の立場をどう位置付ければいいのか、つくしは戸惑い悩んでいた。
 …まあ、単に思い通りにならなくって変にムキになってただけで、もうあたしのこと飽きてくれたのかも。
 思い通りにならなくてムキになるなんて、類のキャラクターではない気もするけれど、そんな楽観的な気持ちもないではない。
 定時を過ぎて少し。
 吐く息の白さにいっそう寒さを感じながら、会社を後に、すっかり日の落ちた夜空を透かし見る。
 「…曇ってる。明日、また雪が降ったりするのかな」
 雨よりはマシだったが、ここのところ曇りばかりでスカッとするような晴天を見ていない。
 溜息一つついて、歩き出そうとしたつくしの背後、今通り過ぎたばかりの車が、スッと音もなく停車し、小さくクラクションを鳴らした。
 プッ。
 何とはなしに振り向いて、いかにも高級車なその佇まいに体が強ばる。
 踵を返すことも、かといって歩み寄ることもできずに、棒立ちになっているつくしに痺れを切らしたのか、車の後部座席のドアが開く。
 現れた長い足の主は、つくしの予想にたがわぬ人物で。
 「…久しぶり。今日は珍しく早いね?」
 「ええ…、金曜日ですからたまには定時で帰らせていただきました」
 「うん、メリハリはつけた方がいいよ。この後、誰かと予定がある?」
 「あ、いえ、特には…」
 うっかり否定して、ニッコリ微笑む類の次の言葉に、飲み会があるとでも言えば良かったと後悔する。
 「そ、良かった。じゃあ、乗ってよ」
 開け放ったドアの前を空け、片手で中へとつくしを差し招く。
 今更、いいわけを言い募ったところで、類が許してくれるはずもなく、かえって機嫌を損ねればどんな仕打ちを受けるかわからない。
 手を握り締め、小さく溜息を一つ。
 歩み寄ってくるつくしに手を貸し、車の中へとエスコートしてくれる。
 仕草一つ一つが乙女心をくすぐる王子様そのもので、類の本性を知らなければ惑わされてしまいそうに美しい。
 「2週間、羽を伸ばせた?」
 「…羽って言われても…」
 揶揄るように聞かれても、なんとも答えようがない。
 「じゃ、俺に逢えなくって寂しかった?」
 わざわざ顔の間近で覗き込んでくる男の美貌に、のけ反り顔を顰める。 
 よほど嫌そうな顔をしていたのか、逆に愉快そうにクスクス笑われてしまった。
 「ふふ、すっごい顔。俺のこと、そんなに嫌い?」
 面と向かって聞いてくる人間に、なんと答えてよいのかわからない。
 実際、不思議なことに、酷いことをされている自覚があるのに、類が嫌いかと言うと、正直つくしにはわからなかった。
 類のことが怖いし、疎ましいし、卑劣で酷い男だとは思う。
 なのに、なぜか嫌いきれず、憎み切れない。
 そんな自分の心のありようがつくし自身も不思議だったのだから、他人に説明しようもなかったし、ましてや類に伝えたいとも思わなかった。
 だから、曖昧に答えるしかない。
 つくしの心の中と同様に。
 「…別に」
 「別に?」
 「あんたのことは考えないようにしてた」
 正直に言う。
 その答えが意外だったのか、目を瞬かせた類が小首を傾げ、クククと声をあげてを笑う。
 そしてそのまま、隣に座ったつくしの体に体重をかけ、無遠慮によりかかったまま目を閉じた。
 「…花沢類?」
 「疲れた…。先週と今週はけっこう強行軍で、10日間で6か国回ったからさ」
 ボソリと返事が返ってきたことも意外だったが、そのスケジュールのハードさに驚く。
 どうりで社内で見かけないと思ったら、海外にいたのかと、彼女の肩に頭を載せた類の疲れた顔を見下ろす。
 「…あふぅ。ちょっと寝るから、社に戻ったら起こして」
 「え?…あの、あたし、今日はもう上がらせてもらったから、会社には戻りたくないんだけど?」
 仕事うんぬんより、こうして類の車に乗っているところなど会社の人間に見られたくない。
 どういう認識をもたれているかはともかく、ようやく類の関心を失ったと会社内の妙な白眼視から解放されたというのに、またもこの体たらくでは元の木阿弥だ。
 だが、つくしの思惑など微塵も気にしてくれる男ではない。
 さっさと要求を突きつけると、もう寝息を立てて眠ってしまっている。
 …うそぉ、もう寝ちゃったの?
 キツネに摘ままれた気分だが、高校時代コンクリートの非常階段でも平気で寝るような無神経な男だったから、どこでも即落ちするくらいの特技があってもおかしくはないのかもしれなかった。
 緩やかに停車した車にはほとんど振動などなかったけれど、それでも、不安定な姿勢に無理があったのか、ズルズルと倒れ掛かってくる。
 下手な体勢で寄りかかられているよりは…と、つくしも仕方なしに諦め、寝やすいように類の体の向きを整え、膝の上に彼の形の良い頭を乗せた。
 細見と言えガタイのイイ男の姿勢を変えるのは、小柄なつくしには本来至難の業だったが、半分起きているのか、あるいは狸寝入りなのか、類自身が協力してくれてなんとか成し遂げた。
 …無邪気な顔しちゃって。
 視線のやりどころに困って窓の外を見ながら、チラリと視線を膝の上へと落とす。
 サラサラの薄茶色の髪も、甘いマスクも…そうして目を閉じて眠っていると、昔のままだった。
 先日も突然の膝枕に、驚き固まってしまった。
 こういうカンケイになって初めて知ったことだが、類は案外スキンシップが好きなことに気が付く。
 毛を逆なでた野生の獣のように他者を拒絶し、気を許さない相手には目さえも合わせない男だった。
 だが、再会した彼は冷たい目に拒絶を宿したまま、表面的には大人になっていた。
 それでも、本質に変化はないのはこうして傍にいれば容易に知れる。
 そうと思えば、こうしてつくしの肌に懐く類はつくしに馴染んだと言えるのかもしれない。
 彼は何を自分に求めているのだろう。
 愛ではなく、恋でもなく、友情ですらないというのなら。
 そして、自分はこうした彼に引きずられ、どこへ連れて行かれようとしているのか。
 考えても答えの出ぬ疑問に、つくしは目を伏せ、車のドアへと寄りかかる。
 こうして二人、肩を寄せ合い肌を触れ合わせているのに、こんなにも寒い。
 それは肉体の感じる感覚ではなく、心の…魂のあげる悲鳴なのだと、つくしもいまだ理解してはいなかった。

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yone様

こんにちは。ずいぶんご無沙汰しておりました。その間もたくさんのメッセージ   とても嬉しく読ませていただきました。ありがとうございますm_ _m
たくさんのコメントいただきながら、結局お返事できず。
お褒めいただいたところからの、コメント再開…うーむ、気恥ずかしい^^;

鞠様

こんにちは。初めまして。これまでたくさんのコメントありがとうございました。私の中では鞠さんのお名前はもう身近なくらいで、これだけたくさん応援していただきながら、実は、「初めまして」。本当に不義理してたんだなあと、申し訳なさひとしお。
桜子ちゃんは私の中ではつくしちゃんの絶対的な味方。もう妹っていうより姉的な存在ですね。正輝さんもいろいろ黒くなってるし、つくしちゃんも息つく暇もありません^^;お持ち帰り~?そりゃあねぇ。ぐふふ。
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