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隣にはあなただけ(献上作品)…13話完

隣にはあなただけ08

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 窓ガラスに映る自分は、いつもながらまったくの別人のように思える。
 専属のエステシャンに全身を管理され、スタイリストに美しく髪とメイクを整えてもらう。
 高級なドレスに身を包み、いかにも財閥の奥様然とした自分は、知らない人から見れば幸せにどっぷりと浸かったシンデレラガールなのだろう。
 …実際、不幸なわけではなかった。
 ただ、幸せか、と問われると即答できなかっただけで。
 隣に座った司は、手に持った書類に視線を固定させ、チラリともこちらを振り返らない。
 特徴的なクルクルの巻き毛、いかなる芸術品もかくやと思わせる彫刻のような完璧な美貌。
 一般人が触れるのも戸惑うような高級紳士服に身を包み、その衣服に劣らぬ優雅なたたずまいで、上流階級の人々の中でも特に敬われ、崇拝を集める男が、自分の夫になるなどと、どんな夢の中でも願ったことはなかった。
 …あ、やっぱり幸せなのかも。
 言い切るのでなく、かも…と断定口調ではないのは迷いゆえではなく、朝の喧嘩の名残。
 幾分か冷静になってみれば、沸騰した頭では見えなかったさまざまなことがつくしにも見えてきて、いままで自分がらしくもなく囲っていた屈託がいかに他愛無いものであるのか気が付いたのだ。
 愛されている。
 愛している男に愛されている…この上もなく。
 これ以上に幸福なことなどあるだろうか。
 しかも、夫婦として今もこれからも、ずっと一緒にいる契約を互いに結んだのだ。
 それは書類上のことなどではなく、自らの心が望んで契りあった永遠の鎖。
 でも、バカみたいに馬車馬に働いて、体壊されるのはやっぱり勘弁なのよね。
 窓越しに、いくぶんかふてくされているようにも見える男の端正な横顔を睨みつける。
 いくら怒鳴られても、暴れまわられても、つくしにも譲れないものがある。
 まあ、司があそこまで激怒したのは、つくしが口答えしたからなどではなく、おそらく日頃から異様に敵対心を抱いている類を引き合いにだすようなことを言ったからだろう。
 ようはたわいもない焼きもちと…日頃のストレスでイラついていたのだと思う。
 だからって、一々当たり散らされたり、物を壊されちゃ堪らない。
 朝のことは反省していた。 
 ただ心配しているということを伝えたかったのに、つくしの心も余裕がないばかりに些細なことですれ違い喧嘩になってしまった。
 それでも腹が立つことは立つ、我慢することなど論外で、とりあえずはこの七面倒くさいパーティなどという役目を卒なくこなし、その間に少しは頭を冷やしましょうか。
 司だってさすがにもともと多くはないとはいえ、少ない忍耐だって戻ってくるだろう。 互いに冷静になれれば、つくしも素直になってみせる。
 「…おい、着いたぞ」
 つい自分の中に沈み込んでいたつくしがボウッとしていた間に、目的地に着いたらしく、憮然とした声が手を差し出し、車の外へと誘い出す。
 ムクれてはいても、無視するほどガキではないらしい。
 そう思いつつ、つくしも普段とは異なり、何食わぬそぶりで、ツンと澄ます。
 「…ええ」
 導かれて、司の腕に手を乗せエスコートされながら、腹に一物も二物も抱えた海千山千の人たちの後を泳ぎ渡る。
 にこやかに微笑み、挨拶を返すつくしも、少しはこの上流社会という新世界に馴染みつつあるのかもしれなかった。



 一通り夫婦で必要な挨拶はして回り、やや疲労に足がムクんだ頃、つくしは解放された。
 実際は、つくしもまだまだ同伴することが望ましいのだろうが、怒ってはいてもつくしの疲労を見て取った司が、つくしに休憩をとるように促したのだ。
 いわく。
 『お前は、そこらで飯でも食ってろ。…お前がいてもあんま意味ない連中に先に挨拶してくっから。冴えねぇ顔を今のうちに少しはマシにしておけ』
 物言いは乱暴だったけれど、いつもどおりつくしへの優しさに満ちた思いやりに、ホロリと疲労に強張っていた心と体に温もりが宿る。
 いつも、司はつくしを見ていた。
 つくしだけを見て、見すぎて、それゆえに、偏狭なほどの嫉妬心を見せるほどに。
 時にはそれを困ったものだと苦々しく思う時もあるけれど、恋人から熱愛される他の世の女たち同様、司の嫉妬自体はつくしをそれほど苦しめてはいなかった。
 嫉妬はわかりやすい愛の裏返しでもあるのだから。
 いまのうちにとレストルームで化粧直しをすまし、会場に戻ると人混みにまぎれ、さすがに司の姿をすぐに探し出すのは難しい。
 それでも、人の中心地を探せば、そこにはたいてい王者然と君臨する夫を見つけられるのだから、いずれはたどり着くだろう。
 ただ、その中へ、女王然と並ぶ度胸がまだ足りない。
 さすがにこんな場所で、司のいうとおりバクバク物を食べる気にはなれないけれど、喉の渇きでも癒そうとソフトドリンクを目で探す。
 と、見慣れた男の煌びやかな後姿が目に入り、ちょうど挨拶をする人の群れが切れた頃を見計らって、声をかける。
 「…類」
 小さな声だったはずなのに、ひと声かけただけで類がニッコリ微笑みながら、つくしを振り返る。
 「来てたんだ」
 「うん、道明寺の同伴。見なかった?」
 「ん~、俺遅れてきたから。まだ見てないかな。どうしたの?はぐれた?」
 「ううん、ちょっと疲れたから一休み。道明寺だけで挨拶しても大丈夫だっていうから。でも、またすぐに戻らなきゃ」
 「そ、牧野も若奥様してるんだね」
 クスリと笑われて、つくしもむず痒く照れ笑いをする。
 「俺も少し休憩しようかな」
 「今来たばかりなんでしょ?」
 「…さっきまでバリバリ仕事してたんだよ。休みなし。あとで俺も司を探してあげるから、少しだけ付き合って?」
 類に頼まれるとつくしも弱い。
 「じゃあ、ホンの少しだけ。そのかわり、類も道明寺を探すの手伝ってよ?」
 もちろん冗談だったが、類が快諾する。
 「もちろん!まあ、探さなくても、司の方が探し出して来ると思うけど」

 人混みを避けるように、会場の端に置いてある椅子に並んで二人座り込む。
 ちょうど、カーテンで死角になっているので、あまり目立つこともないだろう。
 まあ、公の場なので堂々としていればかえって邪推のしようもない。
 「で?悩み事解決した?」
 「へ?」
 唐突な類の言葉に、つくしが素っ頓狂な声をだし、類の笑いを誘う。
 「くくく、相変わらず面白い反応」
 「あんたが突然、思わぬこと言うからでしょ?」
 「そう?昨日会ったときは、ずいぶん鬱屈したような暗い顔してたけど、一晩で様変わり。晴れ晴れしてるじゃん」
 「そ、そうかな」
 とっさに両手で自分の顔を触って確認するつくしの子供みたいな仕草が可愛い。
 いくつになってもこの女は、類の笑いを誘いだしてくれる。
 笑わせて、楽しませて、ホッと和ませてくれるのだ。
 「…道明寺ね」
 「うん」
 「新婚旅行に連れて行ってくれるんだって」
 頬を染めて悪戯っぽく告白するつくしをキョトンと見送る。
 「…なに?堂々と惚気?」
 「そ!それ聞いて、実は喧嘩したんだけどね」
 「は?」
 
 相変わらずつくし思考回路は類には理解しがたい。
 逆につくしも類のことを同じく称するだろうけれど、互いに魂の一部を自認していながら、けっこう意思疎通は動物的だ。
 「なんかそれで安心しちゃったの。…なんだか道明寺が日本に帰ってきて、気が付いたら求婚されていて、あれよあれよという間に結婚が決まって。結婚したと思ったら、全然道明寺と一緒にいることなんてできなくって」
 「牧野、寂しかったの?」
 「…うん」
 認めてしまえば簡単だった。
 何を意地を張っていたのかと思う。
 自分のために司が頑張っているのだからだとか、司を支えるべきなのだからとか、彼の体を心配していたのは本当だけれど、その中に、夫に顧みられない寂しさ、一人不慣れな環境にほっぽっておかれる不満が一杯だったのだ。
 素直に言えば良かったのに。
 たぶん、司もそれを望んでいたのに。
 互いに互いを理解できず、自分の中の虚像にがんじがらめになって。
 「道明寺、あたしを新婚旅行に連れてゆくために、ただでさえ忙しくて大変なのを頑張ってたんだって」
 「…ふぅん」
 「でもさ、新婚旅行なんて別に行かなくてもいいよ」
 「いいの?」
 「うん」
 確かにハワイに新婚旅行に行くのは夢だった。
 でも、ハワイが夢だったのではなく、新婚旅行に行く相手…愛する人と巡り合って、その人と過ごす至高の時を夢見ていたのだ。
 つくしにとってハワイは至高の場所ではない。
 司がいるところ、司と共に過ごせる場所が至高の場所なのだ。
 「喧嘩しちゃったのは、あたしもうまくそれを伝えられなくって、ついつい気配りのない言い方しちゃったんだけどね。でも、道明寺も同じだってわかったから」
 自分のことを話すことが苦手な司。
 でも、つくしも同じ。
 そうした二人がコミュニケーション不足から喧嘩を繰り返すのは自明の理だったけれど、愛しているのなら諦めてはいけないのだ。
 もうそれにつくしは気が付いている。
 言葉足らずのつくしの独白を聞きながら、類が小首を傾げつつも相づちを返す。
 「…ごめん、何言いたいんだかきっとわからないよね」
 「うん」
 「ひっど~」
 正直な類につくしがムクれて頬を膨らめる。
 でも、それに小さく笑って、つくしの額をツンとついて、
 「でも、俺がわからなくても司がわかればいいんでしょ?」
 ようはそういうことだった。





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