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隣にはあなただけ(献上作品)…13話完

隣にはあなただけ07

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 目が覚めると、久しぶりに大好きな男の寝顔があって、つくしは嬉しい驚きに目を瞬かせた。
 バカなことだが、これは夢かと頬をつねる。
 「…やだ、あたしったら。自分の夫が横に寝てるのに夢だと思うなんて」
 クスリと笑ったつもりなのに、わずかに湿った鼻声だった。
 やつれてコケた頬、疲労に落ち窪んだ目の下のクマ、以前より強く香るようになった煙草の匂い。
 逢えて嬉しいはずなのに、心配やら司の不健康な様子に胸が潰れるような哀しみを感じて、つくしは滲んできた涙をそっと拭った。
 逢いたかった。
 だが、それ以上に心配だった。
 こんなに無理をして大丈夫なのだろうか。
 なぜこんなにも司が無理をしているかわかっていて、言えなかった心配の言葉を、今日こそは言おう。
 …もう無理しないで。あんたが無理をして倒れたりしたら、苦しくて苦しくて、あたしとっても辛いの。
 あんたに逢えなくてとても寂しい。
 つくしが恐る恐る、司の目の下のクマに触れようと指先を伸ばすと、
 「…ん」 
 触れる寸前、長い睫がわずかに震えて、薄く瞼が開いた。
 まだ、茫洋として視線が定まっていない。
 「…道明寺?」
 「い…ま、何時?」
 「え、と、6時ちょっと前かな。ごめん、起こしちゃったね。まだ早いでしょ?もう少し寝てなよ?」
 ここのところあまりに帰りが遅く、朝も早いので、つい昨日西田に電話してしまっていた。
 司は電話をくれないだろうし、さりとてつくしが司に電話したとて出てくれないのはいつものことで、だからといってそれを咎めることもできない。
 思い余っての行動だったが、西田もここのところの司の無茶な仕事ぶりを心配していたらしく、昨夜は必ず帰す、朝はゆっくり目でよいと聞き、0時までは待っていたのだが、いつものパターンでやはり無理だったかと、諦めてつくしがベッドに入った直後に司も帰宅したらしい。
 つくしの返事を聞きつつ、顰めた顔を片手で抑えたまま、上半身を起こす。
 「顔色悪いよ?時間になったら起こしてあげるから」
 「…いい。今晩パーティでろくに仕事する暇もねぇし。出社前に目を通しておきたい書類あっから」
 息を吐き、頭を軽く振って、ベッドから降りようとする。
 「ちょっと、待ちなさいよっ!」
 とっさに、その手をとらえて、引き留めた。
 「…うっせぇ。朝っぱらから大声だすな。頭に響くだろ?」
 「ご、ごめん。でも、昨日も深夜だったんでしょ?毎日毎日、夜は遅い、朝も早い、休日返上していったい何日目なのよ?いくら若くったって、無茶ばっかりしてたら倒れちゃうじゃない!」
 溜まりに溜まった鬱憤が、まだ無茶をしようとする司に向かって噴出する。
 「…しゃーねぇだろ。俺だって好きで仕事してるわけじゃねぇけど。仕事が待ってくれねぇんだから」
 「仕事、仕事って。だったら、いったいいつになったら楽になるわけ!?あんたが楽になる時なんて、定年退職した後でしょ?…まあ、あんたに定年なんてものがあるのか知らないけど、それってウン十年も先じゃない!」
 「…まあ、あとは死ねば永遠に暇になるんじゃね?」
 寝起きの頭で飛ばしたブラックなジョークはジョークにならず、真剣に心配するつくしの怒髪天をつく。
 「ふ、ふざけないでっ」
 「わっ、ぶっ」
 腹立ち紛れに思いっきり枕で顔を殴られ、司はのけ反りつつ、衝撃に頭をグラグラと揺らす。
 それでも腹立ちが収まらなくて、怯む司へとつくしが枕での暴行を繰り返す。
 「や、やめろ!やめろって」
 「バカにして!何が死ねばよ!…無茶すればそれで仕事は片付くと思ってるわけ?!なんなのよ、あんたのその非人間的な仕事内容は!仕事のことはあたしもよくわからないからと思って黙ってたけど、いくらなんでもそんな滅茶苦茶なスケジュールあるか!」
 「…あるかって言われてもな」
 「あんただけじゃないはずよっ。花沢類だって、美作さんだって、あんたと同じ大企業のジュニアで激務をこなしてるはずなのに!なんで、あんただけそんな無理しなきゃならないの!?彼らだって忙しいって言ってたけど、あんたほど無理な生活送ってるなんて言ってなかったわよっ」
 「……」
 「類が、言ってた。〝人間なんてできることは限られてるのに、仕事の方は会社がつぶれない限りいくらでも次から次に湧いてくる。自分である程度セーブしなけりゃ、自分で自分の首絞めるだけだ"って!」
 「類?」
 心配が高じて、自分の中の憤りに囚われたつくしは気が付かない。
 司の顔がいつの間にか蒼褪め、だんだんと無表情になって、冷たい空気をまといだしているのを。
 自分が出してはならない禁句…名前を出してしまったことに気が付いていなかった。
 「そうよ!あんた、おかしいんじゃないの?いくら頑張ったって、体を壊したり、倒れちゃったら元も子もないんだよ?結局、しわ寄せはあんたの部下や取引先の人にだって来るんだから!西田さんだって心配してた。いくらスケジュールを緩めるって言ったって、あんたが聞かないって!なんなのよ。類じゃないけど、あんたNYで、お義母さんから″仕事人間コンピューター″でも植えつけられたんじゃなのっ!?類なんて…」

 ガンッ!
 ビクッ。
 突然、サイドテーブルを拳で殴りつけた打撃音に、つくしの肩が竦む。
 「…な、なによ。いきなり」
 「類」
 「え?」
 低く唸るような威嚇を含んだ声音に、つくしもやっと司の怒りを感じ取り、口を強張らせる。
 「類、類、類。ルイルイ、うるせぇんだよ!」
 「…うるせぇって」
 「黙れ!てめぇは誰の女房だ?類のか?俺の女なんじゃねぇのかよ!?」
 「……」
 「黙って聞いてりゃ、胸糞わりぃ!類が何言ったんだか知らねぇが、朝っぱらから他の男の名前連呼すんじゃねぇっ!それとも何か?…類に俺が劣って、類を見習え、そうとでも俺に言いたいのかよっ」
 司の本気の怒り声に、つくしの顔色も蒼褪める。
 普段どんなに司が怒鳴り声をあげても、それは本気ではなかった。
 その根底にはじゃれあいの延長的な柔らかなものが残っていて、最後には司が折れてくれる。
 だが、司の本気の怒りは、さしものつくしも恐ろしい。
 「そ、そんなこと、誰も言っていないじゃない。ただ…」
 類が。
 さすがに、司の爛々と底光りする眼光に類の名前を出すことができなくて、口ごもった口内に類の名前は消えてゆく。
 つくしのビビった顔に、さすがの司もやりすぎたと思ったのか、眉根を寄せながらも息を吐き出し、つくしから顔を背けて冷静さをかき集める。
 司も本気ではなかった。
 類の名前がつくしの口から連呼されることには、我慢がならなったが、もともと司の身を心配してのことだとわかっていたので、努力して気を取り直す。
 クソッ。
 久しぶりに逢えた最愛の妻を怯えさせたいわけではなかった。
 「…心配すんな。ちゃんと、体のことは考えてる」
 「でも…」
 司の怒りが収束しつつあるのは感じ取りつつ、それでもいくぶんかビクビクと意義を唱える。
 「休みも…もうすぐとれるからよ」
 「ホント?」
 少し明るく上向きになったつくしの声音に、司のささくれだった心もわずかに浮上する。
 「ああ、ちょっとまとまった休みを取る。…ちょっと遅れちまったが、新婚旅行の仕切り直しと行こうぜ。お前ハワイに行きたがってた…」
 だが、次の瞬間、収まったはずの司の怒りが再熱する言葉がつくしの口から飛び出してしまった。
 「ハワイなんて行かなくていいよ!まとまった休みが取れるなら、少しでも疲れがとれるように休養しよう。お邸ででもゆっくりとして…ううん、そんなに纏まってなんかいなくても、もう少し無理ない程度にちょこちょこと…」
 つくしとしては、司への心配がそのまま出た言葉だった。
 だが、それは司の気持ちを傷つけるものだと理解できず。
 司はつくしをただ喜ばせたかった。
 普段つくしの傍にいてやれない負い目だけでなく、高校生の頃、つくしの夢が、ハワイには新婚旅行で行くことだと聞いた日から密かにかなえてやりたいと思っていた想い。
 つくしも司への愛情から、司もまたつくしへの愛情ゆえに。
 ともに互いを思う愛情から生まれた言葉だったのに。
 「…行きたくない?」
 ガッシャーン!
 「なっ!なにすんのよ、あんた!?気でも違ったの!?」
 気が違ったはずなんてない。
 あまりに司の司らしい行動。
 NYへ行き、仕事を憶え、つくしと結婚することで抑えられていた悪癖。
 司の手に触れ、投げつけられた花瓶は、壁に当たって無残に砕け散った。
 「人がせっかく、お前のために、お前のためだけに!」
 ドガッ。ガラガラ、ガチャンッ。
 蹴り上げられたキャビネットの上の置物が崩れ落ち、その上の何個かが床に当たって砕け散る。
 「やめなさいっ!」
 「黙れ!」
 「黙らないわよ!あんたはいつも勝手に突っ走って!誰が新婚旅行のやり直しなんてして欲しいって言ったのよ!行きたきゃ、あんた一人で行きなさい。あたしはごめんよ。ここのところ、物に当たり散らさないと思ったらっ…きゃっ」
 
 ガガガガーンッ!ガンッ。ガチャガチャガチャッン!!
 グシャッ。
 多少小ぶりの家具が力任せに倒され、もはや床の上は足の踏み場もないほど。
 さすがにつくしに暴力をふるったり、物を投げつけるようなことはなかったが、つくしは体の奥底からくる震えを抑えることができなかった…怒りで。
 「…俺が行くといったら行くんだよ」
 「行かないわよ。あたしはあんたの命令なんて聞かない。どうしても連れてゆきたきゃ、お得意の暴力であたしの足腰が立たないようにしてからにしなさいよっ」
 できないことがわかっていて吐かれた言葉ではなかった。
 もはや怒りが頂点に達して、つくしの中ではどうとでもなれ、といった自暴自棄な気持ちが占めている。
 ぶつかり合う視線と視線。
 少しでも気を抜けば、喰らいついてくる危険な肉食獣のような雰囲気の司の視線を受け止めるのは途方もない胆力がいった。
 それでも絶対に負けたくない。
 意外にも、先に視線を反らせたのは司の方だった。
 「…チッ。勝手にしろ」
 どこか遠くで、騒ぎを聞きつけた使用人たちの駆けつける声が聞こえてくる。
 「あんた、花沢類がフランスに転勤になったこと、あたしに言わなかったでしょ?」
 あえて火に油を注ぐように類の名前を、口に出す。
 それに凍えるような一瞥をつくしへとあて、腹立ち紛れにガンッとドアを蹴り開け、司は二人の寝室を出て行った。





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ゆみん様

こんばんは。
そうなんです。
周りから見れば、一息ついて互いをよく見て見ろ、と言えることも、当人たちは思いあっているからこそ互いが見えなくなっている。しかも、互いにらしくない我慢をしているからこそストレス値もUP。…切れた時が^^;

みさつき様

始めまして^^
コメントありがとうございます。
そうですねぇ。
この二人は喧嘩してこそ…と言う感じですが、司も大人になっていますからね。
すれ違いの末のストレスがかかりすぎたからこそ…ぶつかり合うようになってしまったんですよね。
ジレジレしている二人ですが、上手く乗り越えてさらに絆を深めてくれるかな。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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