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「ヾ(o´∀`o)ノ贈り物ヽ(*>∇<)ノ」
隣にはあなただけ(献上作品)…13話完

隣にはあなただけ06

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 「…え?転勤」
 「そ、再来月から2、3年くらいかな」
 「…そう、再来月。そんなに早く」
 自然声が暗くなってしまうのは仕方がない。
 結婚前とは違う…そうは言いつつ、つくしと友人たちの付き合いは親密だった。
 たとえ会う機会は限られていようとも、その気ならばいつでも会える、そう思えることがつくしの心の支えになっていた。
 不思議に…夫である司に対しては思いきって諦めることができないのに、友である類に対しては心が繋がっていればそれでいいと思える。
 だが、この時期、司の不在がひどく堪えてるいま、類までもが離れてゆくようで、身勝手だと思いつつもショックが大きい。
 …やだ、あたしったら。いくら友達だって、ずっとこのままってわけにはいかないのに。
 そもそも、つくし自身がその先陣を切ったばかりだ。
 結婚という人生の大変革を迎え、友人たちとの付き合いが疎遠になりつつある事由の第一人者なのだから。
 「で、でも!フランスに転勤なのよね!来年には司もフランスに転勤になるから、そうしたらまた会えるねっ」
 リヨンとランス、東京と東北間ほどの距離がある。
 司にはそうそう会うこともないだろうと、あっさり告げた類も、つくしには柔らかく微笑み「そうだね」と、否定しない。
 会話の切れ目に、ウェイトレスの運んできた紅茶に口をつけ、窓から差し込む陽射しを受ける類は、ひどく美しい。
 …この綺麗な人とのこんな時間もしばらくお預けかあ。
 ため息を禁じ得ない。
 「…司、まだ忙しいの?」
 「え?あ…うん。東京でやらなきゃならない仕事もたくさんあるのに、来年のフランス行きも控えていてかなり追いつめられているみたい」
 「バカバカしい。人間なんてできることは限られてるのに、仕事の方は会社がつぶれない限りいくらでも次から次に湧いてくるんだ。自分である程度セーブしなけりゃ、自分で自分の首絞めるだけだろ?」
 「…うん。でも、あれで案外真面目だから」
 そう、司は変わった。
 かつて奔放に過ごした学生時代の彼こそが幻であったかのように、常に前に前進し、成果をだし、突き進んでいる。
 そのためには努力も惜しまず、常々、司が無茶をしすぎているのではないかとつくしが胸がつぶれるほどに心配するほどだ。
 その生まれながらの、『道明寺』という大財閥のリーダーたる宿命を刻み込まれた司の中のプログラムが、正常に刻み始めたとでもいうような働きよう。
 だが、司がそこまでして無茶をするのが、自分のせいでもあることをつくしは自覚していた。
 もちろん、無軌道に過ごした少年時代のツケがまわってきたこともあるのだろう。
 だが、司がコケればつくしが悪く言われる。
 なんの力も財産も、縁故もない庶民の女を娶った司への嘲りが、つくしを傷つける刃になるのではないかと、常に司は強迫観念に囚われている。
 司が結果を出せば、誰も文句は言えまい。
 反面、司が失敗すれば、その咎はつくしへと向かうのだ。
 それが無理な激務を自らに架す原因となり、結果、当の司とつくしの生活を圧迫し、互いを孤独へと追い立てている。
 つくしもぼんやりとそんな悪循環を感じ取ってはいたが、さりとて自分のために我武者羅に身を削るようにして、邁進する司にかける言葉が見つからない。
 「それに、道明寺家自体がもともとそういう体質っていうか」
 「ああ…そうだね、あのうちはね。父親は長年の無茶な過労が原因で、まだ若いのに床についちゃったし、母親は母親で年中あっちこち飛び回って子供はグレて?」
 最後のフレーズに思い当たることがありすぎて、つい吹き出してしまったが、あまりの不謹慎ないわれようにつくしが軽く睨む。
 「俺からすれば、そういうのにさんざん反発してた司が同じ道を辿るなんて、ちゃんちゃらおかしいっていうか、NYでの洗脳生活が長すぎて『鉄の女』製のコンピューターでもあっちで仕込まれてきたんじゃないかと、疑わしくなるよ」
 「…類ったら」
 つくしにしても類の言いたいことはわかる。
 さすがに、彼女の立場で、それに同意することはできなかったけれど。
 「類は自然体だね」
 「まあね。こういう立場に生まれた以上、最低限の義務は果たすつもりだけど、自分の人生まで犠牲にして粉骨砕身するつもりなんてこれっぽっちもないよ」
 「類らしいね」 
 その言葉の中には、明らかな羨みがある。
 司はもちろんだけれど、つくしにもそこまで言い切る強さはない。
 いや、自分のことだけだったらどうとでも逆らう気概はあったけれど、道明寺家に嫁ぐと決意した時点で自分の中の我を通すことはある程度諦めている。
 「あんたもなんだからしくないし。…司と結婚したこと、後悔してる?」
 「…後悔してないよ」
 一瞬の間が躊躇だとは自分でも思いたくない。
 愛してるから結婚した。
 誰にも渡したくない。
 ずっと一緒にいたいから、今いる場所を後悔なんてしたくない。
 「司も何をしてんだか。自分がテンパるのは自由だけど、攫うようにあんたと強引に結婚して、そんな顔させてるんじゃ、俺、納得できないよ」 
 「…そんな顔?」
 「こんな顔」
 そう言って、綺麗な眉を、まるで子供のように自分で引き下げる類の幼気な行動に、つくしがプッと吹き出す。
 「牧野は笑ってる方がいいよ」
 「…うん」
 「あんたもらしくない我慢してないで、一発ガツンとたまにはやってやりな?あんたに叱られないと、司は目が覚めないんだからさ」
 「…ガツンと、か。いいのかな」
 「いいんだよ、そんなあんたにアイツは惚れたんだから」
 うん…と、囁くほどに小さな声で頷いて、今度こそつくしは類が愛するヒマワリの笑顔で微笑んだ。
 
 
 
 結局、帰宅はいつもどおり、0時を軽く回っていた。
 今日こそは、つくしの起きている時間に帰ると思い決め、寸暇も惜しんで携帯電話に伸びる手の誘惑にも逆らった結果が…つくしの声さえ聞くことができずこの体たらく。
 一言…遅くなるけれど必ず帰るので待っててくれ、と頼めばいいのかもしれない。
 だが、何度もその約束を反故にしてしまった負い目から、司はつくしに気安くそうした約束をすることができなくなってしまっていた。
 また、約束を破ることになってしまうかもしれない。
 いつ、愛想をつかされるか。
 いつ、もうこんなすれ違いばかりの生活は嫌だと告げられるか。
 最近では、そんなことを思い悩むことも増えてきた。
 バカバカしい。
 つくしが何を言ったわけでもないのに…言う機会もないだろうが…、勝手に思い悩むなんて、自分らしくない。
 そうは思いつつ、限界を超えた過労が、精神的疲労が、司の精神と肉体を蝕み、どんよりと重い頭痛に苛まれる。
 投げ捨てるようにスーツの上着をソファへと放り投げ、ついついてしまうようになったため息をつきつつ、襟首へと指を入れネクタイを緩める。
 今日は屋外視察もあったから心なしか埃っぽいので、まずシャワーを浴びなければ、と思いつつも、積み重なった疲労ですでにベッドが恋しい。
 ふらふらっとキングサイズのベッドへと近づき、ベッドのへりに腰を下ろす。
 ベッドの中には愛しい女の安らかな寝顔。
 少し窶れて、疲れている気がする。
 規則正しい寝息を聞いているだけで、疲労に悲鳴を上げていた司の手足に血が通いだす。
 躊躇しながら指先で頬に触れ、あえかな寝息を零すさくらんぼ色の唇へと這わせた。
 「…牧野」
 この唇に触れたのはいったいいつのことか。
 こんなに広いベッドなのに、いつもつくしは片側によって小さく丸まりがちに眠る。
 まるでそこにはいない司を探すように、片手は広いもう片側に伸ばされ、抱きしめるような形に。
 艶やかな夜の帳のような豊かな黒髪を撫で、頬を包み、また唇へ。
 「あ…ぅん」
 司の指先がくすぐったかったのか、つくしがわずかに身じろぎ眉根を寄せる。
 「…お前の他愛無い話が聞きてぇよ」
 その声は、司自身が驚くほどに弱々しかった。
 「お前の笑った顔を見て、ふざけあったり、ただ一緒にいてぇ」
 ふいに、昼間見た、つくしの類へと向けた笑顔を思い出す。
 あんな笑顔、司が見たのはいつのことだっただろうか。
 1週間前?
 1か月?
 もしかしたら…結婚式以前のことだったかもしれなかった。
 『牧野、可哀想』
 ふいに、先日類から言われた言葉が耳に蘇り、ギリリと歯を噛みしめる。
 誰に言われなくても司自身が思う。
 そして…。
 …俺も可哀想だぜ。
 けっして口には出せず、だが、正直な言葉。
 けれど、あと半月頑張れば。
 1週間の休みが取れる。
 そのために、身を粉にして休日も返上し、つくしの待つ邸へ帰ることも我慢しての数か月。
 司は、家の都合で台無しになった新婚旅行…ひいては新婚生活をやり直すつもりだった。
 そして、今を逃せば…フランスへ赴任してしまえば、また当分そんな時間をとることはできない。
 「たった一週間ぽっちでこれまでの不義理をチャラにしろとはいえねぇけど。思いっきり甘かして、幸せにしてやっから、もうちょっと待ってろよな」





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いちご様

そうなんですよ、司の無茶はつくしを想うが故。今の状態が良くないとわかっているけど、身動きがとれなくなって、自分の考えに固執しちゃってるんですよね。何もかも、新婚旅行にいきさえすれば的に縋ってる。疲労もあってまともな思考能力が衰えちゃってるのもあるんでしょうね。人間追いつめられると、物事を客観的に見れなくなる。仕事ではそんなことはないんでしょうけど、つくしちゃんのことだけはね。ガツンとした出来事でもないと、もう抜け出せない、そういう感じなってきちゃってます。

鞠様 

こんばんは。すれ違いが決定的な亀裂になる前に。互いが互いを想っているが故のすれ違い。類もそんな二人が見えて歯がゆく思ってるのだと思います。

still…様

こんばんは。そうなんです、二人は今恋を成就させて幸せの絶頂にいるはずなのに。結婚が終着点ではない。そんなお話なんですよね。でも、愛しあって凄まじい困難を乗り越えてきた二人なので、互いのすれ違いもきっと取り戻せますよ^^
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