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隣にはあなただけ(献上作品)…13話完

隣にはあなただけ04

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 「…あ?なんだって?」
 眉根を寄せて、目に険を帯びた司の顔は、普段の鉄面皮とはまた違った凄みを帯びる。
 その眼前に晒された部下は、小さく縮こまり、荒れ狂う猛威に震え、怯えた。
 「俺の部下に無能はいらねぇっ。クビになりたくなきゃ、1時間以内にもう一度再検討して、計画を練り直せ。次、こんな甘っちょろい計画書を提出しやがったら、わかってんだろうな?」
 「は、はいっ!」
 最敬礼して部屋を退出する部下を見送ることなく、次の案件の書類を片手に、電話へと手を伸ばす。
 即座に出た電話に、相手も確かめず、
 「こりゃあなんだっ!てめぇ、脳みそもってんのかよっ!今すぐ、まともな書類もって、こっち来いっ!…あ?いますぐっつーたら、今すぐなんだよっ!」
 ガッチャン!
 「…クソッ」
 電話を切りざま、腹立ち紛れに手に持った書類の束を、放り投げる。
 そのまま、窓辺へと歩み寄ると、顔を顰めて一つ、頭をガラスへと叩き付けた。
 その横で、動じず、秘書の西田が投げ捨てられた書類を一枚一枚丁寧に拾い上げ、あまつさえ、トンと机で揃えて司のパソコンの横へと戻す。
 「今、何時だ?」
 息を大きく吐き出し、胸もとのポケットから取り出した煙草を口にくわえる頃には、司の頭も冷静に冷えている。
 「…23時少し前になります」
 聞いておきながら、自分でも腕時計の時間を確認して嘆息する。
 …もう寝てんだろうな。
 そうは思いつつ…諦めきれずに、ポケットから携帯電話を取り出し、メールの受信を確認した。
 予想通りに、つくしからの就寝の挨拶が入っていて、わずかに落胆する。
 司の仕事を邪魔することを遠慮しているつくしからは、滅多なことでは司へと電話が入ることはまずない。
 その代わりに、眠る前にはお休みのメッセージが司へと必ず送られてくる。
 なので、基本司からつくしへと電話を入れることがほとんどなのだが、そうはいっても、気が付けば夜半を過ぎてしまっていることがほとんどで、つくしが寝てしまっているのをあえて起こしてまで電話をする勇気は司にはなかった。
 …寝ているのを起こしたら怒るだろう、そんなことを心配しているのではなかった。
 司のNY時代、何度となく時差を無視して真夜中、早朝を問わず、空いた時間に電話をしてつくしを叩き起こしたものだ。
 だが、なぜだか時差のない今、それと同じことを司はできない。
 ほとんど無理矢理に近い形でつくしに結婚を承諾させながら、この体たらくから抜け出せない自分の負い目なのかもしれなかったし、うんざりして自分に対して愛想をつかせているつくしを知りたくないだけなのかもしれなかった。
 結果…電話越しの声でさえ、ここ3日、つくしと会話を交わしてない。
 それでも、つくしからの、
 『お仕事お疲れ様。今日も帰れないの?あまり無理しないでね。申し訳ないけど、先に休ませてもらいます。おやすみなさい』
 というメッセージに幾分か心を慰められる。
 未練を断ち切るように携帯の電源を落とし、再びポケットへとしまい込む。
 「西田、お前、帰っていいぞ。昨日も、午前過ぎてただろ?」
 「専務は?」
 「…俺は、まだやり残した仕事があるからな。再提出を命じたやつらも待たねぇとなんねぇし」
 普段は司以上に鉄面皮の西田も小さく溜息をつく。
 ただし、彼のため息は自分のためにではなく、司ゆえにであったけれど。
 「でしたら、私も残ります。上司に先んじて帰るようでは、秘書として失格ですから」
 「よせよ。お前に倒れられたら、俺の方が困る」
 「だったら、専務こそお帰りなられては?村瀬部長と倉敷部長には、私の方から明日朝一に関係書類を提出するように予定変更を伝えて置きますから」
 西田の答えにちょっと考え、司も諦めたように同意する。
 「…ああ、じゃあ、あいつらにはお前から伝えてくれ。さすがにこの時間帯まで無理させて明日に響かせたらかえって能率悪いからな」
 責任者だけならまだしも、その下の人間たちにも当然しわ寄せは行っている。
 だが、指示を出した司はそのまま帰り支度をするどころか、執務机へと戻り、スリープ状態になっていたパソコンを立ち上げなおす。
 「専務」
 「少しだけだ。…お前は帰ってくれ。俺の都合でスケジュール空けたいの、知ってるだろ?」
 言い出したら聞かない困った上司に、さしもの西田も匙を投げる。
 「わかりました。では、0時まではお付き合いします。…そのかわり、今日はお帰りください。昨日も社に宿泊されたでしょう?無理をして能率が下がるのは専務も同じですよ」
 ズケズケと遠慮なく司に換言できるのも西田くらいなものだ。
 「わかった…悪いな」 
 謝る司にあからさまな意外さを隠しもしない西田を苦笑で見やって、司は目の前の仕事へと意識を集中させた。



 優しい口づけの感触を額に感じた気がして、つくしは目を覚ました。
 しかし、さわやかな朝の光に満ち溢れた美しく広い部屋に、彼女以外の気配はなく、つくしは小さく嘆息した。
 思いついて、自分の脇のわずかに寝乱れた痕跡の残るシーツに手を置くと、すでに期待した温もりは失われてひんやりと冷たい。
 どうやら昨晩3日振りの帰宅を果たしたようだったが、結局つくしにまったく顔を見せることなく、すでに司は出勤してしまったらしかった。
 …起こしてくれれば良かったのに。
 遣る瀬無い思いは、ため息をついても一向に解消されてはくれない。
 時折、NYと東京に別れて遠距離恋愛を耐えていた頃よりひどい虚無感に襲われることがある。
 それでも同じ東京の空の下…。
 逢いに行こうと思えば逢えるのだから…と、つくしは自分を慰めることでなんとか気持ちを立て直していた。
 司が悪いわけじゃない。
 もちろん、つくしが悪いわけでもなかったけれど。
 部屋の片隅の置時計を見ると、そろそろ時間は7時半を回ろうとしている。
 つくしにしては遅い時間の起床だったが、ここのところもしかして司が帰ってくるのでは…と夜更かししがちだった。
 そして、眠りも浅い。
 ベッドに上半身だけを起こし、立てた膝を抱え、その上に額を埋めもう一度嘆息する。
 逢いたいな…と思う。
 司に逢いたい。
 そして…疲れたとも思う。
 自分たちは夫婦になっても、やっぱり離れ離れのままで。
 いつまでこんな生活を送ればいいのだろう。
 時々、やりきれない思いに胸を塞がれる時もある。
 それでも、そういう男と最初からわかっていて愛したのは自分だ。
 愛しているのなら耐えるしかない。
 選んだのなら、立ち向かうしかないのだ。
 「よしっ!」
 パンッと気合ひとつ、自分の両頬を両手で軽く叩いて、ベッドから降りる。
 今日は午前中は語学の授業とピアノのレッスンがあったけれど、午後からの数時間は久々の自由時間。
 今日は休日で、仕事が休みの優紀と待ち合わせて買い物に行くことになっている。
 どうせなら、愚痴の一つも聞いてもらって、思いっきり楽しんで、気分転換しよう。
 つくしが明るく楽しそうにしていたら、きっと司も心配せずに元気に仕事を頑張ってくれるだろう。





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