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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第四章 発覚①

昏い夜を抜けて101

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 「こんなところでお会いできるなんて、すごい偶然!」
 やや興奮気味に両手を重ね合わせてあきらを見る女は、あきらの連れであるつくしや桜子をチラリとも見ない。
 うっとりと自分を見つめる表情は、あきらもさんざん見慣れていて、こういう場で大げさに感嘆交じりに声をかけてくる輩は珍しくはなかった。
 それにしてもその目にある誇らしげな驕慢さが鼻について、内心眉を顰める。
 「…確か?」
 記憶を探り、小さく引っかかった女の素性を思い浮かべ、口にしようとしたところで、思わぬ名乗りを上げられ驚きに唖然とした。
 「花沢類さんの婚約者の高坂美也子です」
 「…類の?」
 あきらの両脇でつくしと桜子がそれぞれに驚き、小さく声を上げる。
 「花沢…類の」
 「…まだ、本決まりではないはずですよ」
 桜子の呟きを聞きとがめた美也子が、キツい目つきでそれを咎めた。
 「ほとんど決まったことです。あなた…どちらの方?」
 「こんにちは、高坂さん。高坂興産の45周年記念パーティで確かお目にかかりましたわ。…その折のパートナーは、確か花沢さんではないようでしたけど?」
 ニッコリ笑って毒を吐く桜子の顔をジッと見ていた美也子が、その顔に思い当たったようで、あっと、声をあげる。
 「…三条さん」
 狭い社交界のこと、互いの氏素性にはすぐに思い当たる。
 ついでのようにつくしにも視線を流したが、美也子は首を傾げ、それでも思い当たった何かを思い出せないようで、眉根を寄せてしばし視線をとどめていた。
 「あなたは…?」
 だが、つくしはわずかに顔色を青ざめさせ、美也子の顔を真っ直ぐに見ていられなくて、あえて視線を外した。
 とてもじゃないけれど、自分の立場でいけしゃあしゃあと美也子の正面から対峙できるものではない。
 …この人の婚約者とあたしは。
 疚しい、恥ずかしい、居た堪れない。
 まだ若く、そう長く生きて生きたわけではない人生の中で、つくしは他人に誇れずとも自分に恥じることなく生きてきた。
 それが、婚約者もいて、将来結婚することも決まっている男と、契約という名の打算で肉体関係を結んでしまった。
 たとえ現在はまだ不倫と言う関係ではなくっても、目の前にその婚約者であるという女を目にしてどうして罪悪感を感じずにいられるだろうか。
 この人に、合わせる顔がない。
 そんなつくしを不審に思いつつも、あきらが如才ない微笑みで、女を適当にあしらう。
 「申し訳ない。最近は俺も、類も多忙で、親友だというのにお互いの近況を教え合う暇がないんだ。…見合いをする、ということは聞いていたけど、それが高坂さんだったんだね」
 「ええ。類さんにも大変気に入っていただいて、まだ正式には結納のやり取りはしていないんですけれど、それも近々行われることになっているんですよ」
 「へえ。君みたいな美人と!類が羨ましいな」
 あきらの実のない明らかなおべんちゃらにも、満更演技でもなさそうに嬉しそうな笑みで答える。
 「そんな…。私こそ、学生時代からF4の皆さんには憧れを抱いていたんです。それが、類さんと今度こういうことになって…それだけでも天にも昇る気持ちですのに、これからは美作さんや西門さん、…道明寺さんとも親しくお付き合いいただけるなんて」
 謙遜しつつも、ちゃっかりあきらたちとのこれからの交際を自分の中で確固たるものにしてしまっている。
 それに苦笑しつつ、
 「…まあ、それはおいといて、今日は類も一緒?」
 ないだろうと思いながら、美也子の周囲を目で探った。
 「ああ…いえ、今週は類さんお忙しいらしくって。九条家ご当主の喜寿の祝賀会でご一緒していだけることになってますよ」
 チラリと桜子を見て、再びあきらへと微笑みかける。
 桜子の方は薄い笑みを浮かべ、やや無作法に小さく鼻を鳴らした。
 それが気に入らなかったのか、あきらから視線を反らさないままに、美也子が目に険を浮かべ、顔を紅潮させる。
 ヒクつく笑顔の裏の感情が知れて、内心あきらは苦笑いだった。
 …おいおい、桜子、こんなところでケンカ売るなよ。
 桜子の気持ちはよくわかるが、こういうタイプのお嬢様はよくいるものだ。
 むしろあきらにしてみれば可愛い方で、多少鼻につくが毛嫌いするほどではなかった。
 「改めて、また類さんとご挨拶に伺わせていただきますが、美作さんもお連れの方がいらっしゃるようなので、今日のところは失礼させていただきますわ」
 「ええ。今度はぜひ、二人で仲の良いところでも見せてください」
 あきらがおもねると、女は満足げに満面の笑みを浮かべて踵を返す。
 それを見るともなく見送り、桜子が憎々しげに嘲った。
 「…何が婚約者なものですか。まだ本決まりじゃないじゃないですか」
 「でも、類の親父が斡旋したんだろ?よほど、嫌なところでもなければ断らねぇよ」
 あきらも類と同じ立場なので、だいたいの経緯はわかる。
 嫌なところ…も=本人の性格や資質、相性などではなく、家としての過失等を指し示していた。
 「それにしたって、花沢物産は現在、特に失調しているわけではないんですもの。花沢さんご本人が嫌だとおっしゃれば無理強いはなさらないでしょ?高坂興産程度の条件でしたら、他にもいくらでも似た縁談が舞い込みますもの」
 旧華族として名家中の名家に名を連ねる桜子は、各家の縁談事情にとても詳しい。
 一族間の情報交換が盛んであることもあるし、彼女たち旧公家の家柄は、名門として見合いなどの仲介を頼まれることがままあるからだった。
 「似たような縁談があるからこそ、類は断らないだろうな。…あいつにとっちゃ、自分の結婚もどうでもいいもんだろうし…」
 あきらが苦く溜息を落とす。
 どんなにあきらや総二郎が心配しても、類は自分の人生さえも投げやりに生きていることを辞めなかった。
 そういう二人にしてみても、かつては似たようなものだった。
 類のように昏い闇を抱えるでもなく、司のように荒れるでもなかったが、ただ毎日を享楽的に過ごすことで自分たちの重い軛を忘れ去ろうと躍起になっていた。
 目の前の女に出逢うまで。
 生きることに一生懸命で、どんな逆境にも真っ向から立ち向かっていた陽の光そのままのように眩しい女。
 眩しくて眩しくて、その光の前に、怠惰に生き続けることを恥じていつしか変わっていった少年の日の自分。
 「…牧野?」
 いつの間にか、俯いて酒のグラスを虚ろに眺めているつくしに気づく。
 「どうした、牧野。酔ったのか?」
 「先輩?」
 あきらに二度声をかけられ、桜子に呼びかけられて、つくしはようやく目を瞬かせた。
 「どうしたんです、先輩。そういえば、顔色が真っ青。…悪酔いされたんじゃ?」
 「…そうだね、ちょっと酔っぱらっちゃったかな。今日はもうそろそろ、あたしは失礼させてもらおうかな」



 「…牧野つくし」
 あきらと別れ、生意気な桜子の様子にわずかに腹を立てながら、先ほどから喉に魚の小骨が引っ掛かったような気持ちの悪さを感じていた美也子は、ハッと記憶の底に沈んでいた名前を思い起こした。
 「そうだ、牧野つくしだわ。あの道明寺さんにまとわりついていた」
 実際には司の方がつくしを追い掛け回していたのだが、他校生だった美也子に実際のところなどわかろうはずもない。
 ただ、学生時代、司のファンだった美也子はつくしの顔を憶えていて。
 遠巻きに見るしかない憧れの男性が常に連れ歩いていた女の顔は、思い出してみれば妙に鮮明に蘇った。
 「確か、噂によると道明寺さんに捨てられたって聞いたのに。今も美作さんたちと交流があるなんて」
 まさか、類さんとも…?
 なぜだか、妙な胸騒ぎがする。
 迎えの車に乗り込みながら、美也子は今先ほど後にしたバーを、夜の向こうに遠く見透かした。 

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