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「中・短編」
秘密の司君…22話完

何度でも…I love you 09

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 「…マズイ」
 ベッドに設置された簡易テーブルの上の、ハンバーグを口にして一言。 
 椿か誰かが病院側に頼んだらしく、普通だったらありえないだろうが、つくしの夕食も一緒に用意されていて、食卓?を囲んでの司の言葉。
 つくしにしてみれば、病院食とは思えぬほど美味しいものだったし、食べた感じどうやら肉ではなく、栄養バランスを考えた鰯か何か、青魚系のハンバーグのようだったが、食べやすく生臭さも排除されているので、子供でも食べられるものだ。
 …もっとも、現在頭の中身が幼児だからといって、司の味覚までもが幼児化しているのかは疑問だったが。
 一口食べて、膨れた顔でもう次に手を伸ばそうとしない司に、ため息一つで、つくしが注意する。
 「そんなこと言わないで、食べなさい。美味しいじゃないの。これも、これも、これだって、栄養士さんが栄養バランスを考えて作って下さったものなんだから。贅沢言うなっ」
 「…だって、ピーマンが入ってる」
 よくよく見ると、確かに、子供の天敵・ピーマンがみじん切りとはいえ隠し切れぬ大きさで鎮座していらっしゃる。
 …子供じゃないんだから、と思い、いやいや子供だったと何度も頭の中で訂正するのを繰り返す。
 「もう…しょうがないわね。今日だけは特別だからね」
フォークとナイフ(ここは高級フレンチレストランかっ!?)で目立つところだけピーマンを取り除いてやり、一口大に切った肉片を口元に差し出してやる。
 キョトンとした顔で、それを見下ろしていた司が、わずかに頬を染めて上目使いでつくしの方を恐る恐る伺いながら、口を開けた。
 「もうちょっと、大きい口開けなさいよっ。ホント、あんたって基本的には上品なんだよね」
 普段口汚いし、態度俺様のくせに、そういうとこムカつく~、と小さく呟く。
 それでも司が口の中身を飲み干すと、次を差し出す。
 司も差し出された物に関しては文句も言わず、もぐもぐと口を動かし、飲みこんだ。
 お互い無言で、食べ物を口にし、咀嚼するだけだったが、不思議にそれまでのような身の置き所のないような気まずさはない。
 やはり、一緒にトイレ(付き添っただけだが)へ行ったり、食事をしたことで多少は緊張もほぐれてきたのかもしれない。
 たいていの子供は、ここらへんで警戒心も緩め、相手への関心を口にしだす。
 「…なあ」
 「……」
 「なあって」
 「…あたしの名前は、なあっていうんじゃありません」
 子供相手に大人げないとは思いつつ、中々警戒心を解かない司がなんだか面白くなくってそっけなく返す。
 …怒鳴られたり、罵られたりするよりずっといい。
 それなのに、あくまでも他人を見る目で見る司が腹立たしく、哀しすぎる。
 二度もなんて、そんなのひどすぎるよ。
 その想いの中には、先ほどの…いままでは絶対に自分以外の女を近づけなかった司にへの憤りも含まれているのだと自覚していた。
 …海ちゃんにでさえ、最初は冷たくしてたのに。
 「じゃあ…なんて呼べばいいんだよ」
 ハッと我に返る。
 「あ…えっと、そうね、牧野でいいわ」
 「牧野?それがお前の名前?」
 「そうよ」
 切ない顔をするつくしに何を思ったのか、司がジッと彼女の顔を見て、ボソリと自分の名前を名乗る。
 「…俺は道明寺司」
 「知ってるわよ、ちゃんと”道明寺”って呼んであげたでしょ?」
 「それ、俺の名前じゃないよ。姉ちゃんも、お父さんも、お母さんもみんな道明寺だもん」
 そりゃ、そうだ。
 司が何を言いたいのかわからなくて、首を傾げる。
 「なんで、俺のこと、道明寺って呼ぶの?メイドは俺のこと、坊ちゃんって呼ぶし、家族や友達は司って呼ぶよ?お前、親戚ってやつなんだろ?」

 親戚…そういえば、そんな風になっていたか。
 「お前だって、道明寺牧野って言うんだろ?」
 「あ~、いや、牧野は牧野なんだけど、それは名前じゃなくって苗字かな」
 「苗字?」
 「えっと、あたしの苗字は”道明寺”でなくって、その…あんたが”道明寺”って言うのと同じで、家族の名前…かな?」
 「え~、なんだよ。なんで嘘ついたんだよ」
 怒ったように唇を尖らせる司に、困ってつくしが宥めすかす。
 「別に嘘を言ったわけじゃないわよ。牧野には違いないんだし」
 「じゃあ、なんて名前?」
 別に隠すことじゃない。
 「つくし。牧野つくし」
 「…変な名前」
 自分でも自覚あるだけに、ピクピクと眉毛が吊り上がる。
 「ほっといて、あたしは気に入ってるんだから、余計なお世話」
 「なんだか貧乏臭くってお前にピッタリだな。ま…いいや。つくし、俺もうお腹いっぱいだし眠いから寝る」
 突然の名前の呼び捨てに、ビクリとつくしの肩が上がる。
 相手は4才児だと思いつつ、司の顔、司の声で囁くように呼ばれた自分の名前がこそばゆく、頬が赤く上気するのを自覚する。
 「…な、名前、よ、呼び捨てなんかにしないでよっ」
 「なんでだよ?じゃあ、つくしちゃん?」
 …怖気が走る。
 名前を呼び捨てにされた時とは別の意味で、驚愕し…諦めた。
 こいつの頭が幼稚園児のうちは、諦めるしかない。
 たかが名前、目くじらを立てるほどではないではないか。
 妙に素直な司に調子を狂わせられながら、脱力して、ベッドへ突っ伏したい誘惑に抗う。
 
 「なあ、つくしちゃん?」
 「…つくしでいい。ちゃんはやめて」
 「じゃあ、つくし、俺、寝る」
 そういう司の顔はわずか赤く上気していて、そういえばさっき看護師が熱があると言っていた。
 元々司の体温はつくしよりずっと高くて、触れると熱いくらいだったが、潤みがちな目も熱のせいもあったのかもしれない。
 「具合、悪い?ごめん、気が付いてあげられなくって」
 ゴソゴソと布団に潜り込もうとする司を介助し、横たわらせる。
 大したことはなさそうだったが、そういえば先ほど、隙を見てはベタベタと司に触ろうとする看護師の態度が気に入らず、つい彼の体を拭いて着替えさせると言ったことを思いだす。
 行った時には勢いだったが、実際にじっとりとパジャマが湿っている気がした。
 「横になったままでいいから、まだ寝ないで。ちょっと看護師さんに言って、体を拭くタオル借りてくるね」
 頷く司はつくしの言うことを理解しているのかしていないのか、寝るなというのに目を閉じてしまっている。
 …ま、いいか。起きてくれないようだったら、看護師さんに手伝ってもらって着替えさせよう。




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