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「中・短編」
秘密の司君…22話完

何度でも…I love you 07

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 椿たちが去ると、司はベッドに横たわり、壁を向いたまま振り返ろうとはしなくなった。
 「ねえ、もうそろそろ夕食の時間だけど、お腹空いたんじゃない?寝たらダメだよ?」
 「……」
 できる限り穏やかに語りかけるが、司から帰って来るのは完全な無視。
 いったんは『親戚のお姉さん』で納得したように見えた司だったが、やはり実際にはそんな簡単なことではなかったらしく、一同がそれぞれの雑務を担当するために病室を去ると、とたんにつくしを拒絶しだした。
 たぶん、その中には、いくら幼児に頭の中身が後退してしまったとはいえ、自分の手足の違和感、その他、何かがおかしいという認識くらいは持ち始めていることもあるのかもしれない。
 「…ほら、道明寺?」
 本当に寝てしまっては、と、軽く肩をゆすると、パシッと手を払われてしまう。
 大して痛くはなかったが、その態度そのものがつくしの胸をえぐる。
 が…、どんな態度でいようとつくしが病室を去る気はないことは理解してくれたらしく、ふてくされたような子供っぽい口調で司が口を開きだした。
 「なんで、タマが来ないの?」
 「え?あ、タマさん、ね」
 タマは、実質道明寺家の使用人を統括し、パーティを円滑に進める指揮をとる立場にある。
 ましてや、ホストの司や、楓がおらず、主賓不在の気の抜けたパーティを、なんとか切り盛りし、椿やF3の協力のもと、楓の到着まで持たせなければならない。
 「えっとね、お邸の方でパーティがあって、それで今日はちょっと顔を出せないの。明日の朝一番に来てくださるそうだから」
 「ふ~ん…」
 チラッとつくしを振り返った司が、つくしと目が合うと慌てて興味なさそうに再び壁へと視線を戻す。
 「…姉ちゃんは?」
 たぶん、これが一番聞きたかったことなのだろう。
 目覚めた時からずっと、椿を呼んで欲しいと、司は要求していた。
 元々、彼が重度のシスコンであることは、つくしにも周知の事実で、彼女を愛するようになってその比重は変わったようだったが、それにしても、年齢を得ても司の椿への思慕はあまり変わらなかった。
 それだけ仲の良い姉弟であったし、姉弟の寂しい家庭環境が二人の絆をよけいに強固なものにしていたのだろう。
 今更、それにつくしが嫉妬するわけもないが、それにしても、椿のことはどう彼に説明したらいいのだろう。
 さっき、あんたがおばさんと呼んでいたのが、その当の椿だと?
 そもそも、今のこの状態を彼はどこまで理解し、つくしはどう説明すればいいというのか…。
 「姉ちゃん呼んでって言ってるだろ?なんで、ダメなんだよ。また家庭教師来てるから?…それともこの間みたいに、姉ちゃんもパーティに出てるの?」
 そこで、ハッとつくしは思い出す。
 そういえば、この頃…司が幼稚舎に入ったころから椿の英才教育は本格化して、あまり傍にいることができなくなって、絶えず司は姉を恋しがり、タマを困らせたことがあったのだと。
 また、司の口ぶりから、道明寺家主催のパーティにも幼い椿が顔を出すことがあって、それもまた司の寂しさを助長していたのかもしれない。
 「…そうなの。今日のパーティに、椿さん…椿ちゃんも、ちょっとだけ出ていて。遅くなっちゃいそうだから、…その、たぶん、明日には来て、くれるかなあ」
 明日…問題を先送りすることの無意味を考えるが、今はとりあえず、そう答えるしかない。
 明日には明日の風が吹き、とりあえず今日をしのげばなんとかなるかもしれないではないか。
 …そう思いたい。
 ムッと頬を膨らめた顔が、妙に幼くって…普段は鋭い眼光も心なしか潤んで頼りなげだった。
 「とりあえず、ご飯食べよ?元気出さないと、お姉さんも心配するよ?」
 「なんで?お腹空いてない。…俺、なんで病院にいるの?山岡が俺になんかしたの?」
 「…山岡、さん?」
 聞きなれない名前につくしが首を傾げる。
 トントン。
 問い返す前に、病室のドアが開いて、看護師が顔を覗かせた。
 つくしと司が同時に振り返り、ちょうど司と目が合ってしまった若い看護師の頬がほの紅く染まる。
 
 「道明寺さん、検温ですけど、大丈夫ですか?」
 「ああ、はい、お願いします」
 上目使いで看護師を見上げたまま、返事もしない司の代わりにつくしが頭を下げ、場所を譲る。
 すり抜けざま、看護師がつくしをチラ見し、それが妙にカンに触る。
 けれど、それ自体は特につくしにとっては珍しい出来事ではなくって、だが、次にとった司の態度の方が驚いた。
 「道明寺さん、体を起こせますか?」
 「…うん」
 看護婦が司の逞しい体に手を回し、彼を抱きかかえるように引き起こす。
 手首をとって、脈を図り、器具を巻き付け血圧を測る。
 一連の作業は、もちろん、看護婦として当たり前のこと。
 けれど、かつての司はつくし以外の女に触られることを拒絶して、たとえ医療行為でも必要以上の接触を厭っていた。
 …道明寺。
 腋から抜き取った体温計を眺め、看護師が眉根を寄せる。
 「道明寺さん、少しお熱が出ていますね」
 「え?」
 驚くつくしにはいちべつも与えず、若い看護師は、司の額や首筋に手を当て、なぜかベッドの上へと腰を下ろす。
 「汗も少しかいているようですから、着替えた方がいいですね。お体もお拭きしましょうか?」
 媚びる声がねっとりと艶を含み、背後にいるつくしなど歯牙にもかけていないことがあらわなあからさまな態度。
 それでも、それらがどこまでも医療行為の範疇である以上、つくしには咎めることはできなかった。
 が…。
 「あの、着替えの方はあたしがさせますから…その拭くのも。そろそろ夕食の時間だと思いますので、食事をとらせてもよいでしょうか?」
 憮然と振り返った看護師の顔には不満が現れていたが、さすがに正面切って尋ねられては立場上無視はできなかったらしい。
 「…ええ、お持ちします。私ともう一人の看護師が、道明寺さんの担当となります。あとで、改めて医師とともにご挨拶に参りますが、こちらの病院は完全看護ですので、お付き添いの方は帰られてもけっこうですよ?」
 「いえ、彼の家族から付き添うように依頼を受けていますし、病院長の方にもそのようにお話は通っていると思いますのでお気遣いなく」
 ニッコリ微笑むつくしに淀みはない。
 司の傍にいる以上、多くの女たちの嫉妬や羨望、侮蔑は常につくしに付きまとう。
 それでも、そんな男だとわかっていても愛しているのだから、尻尾を巻いて逃げるわけにはいかない。
 憮然と病室を退出する看護師の後姿を眺めながら、
 …道明寺の婚約者だと言った方が良かったのかな。
 そうは思うのに、実際はとても言えるような性格じゃないのがつくしだった。




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この、何度でも~のお話しは、本当に10話くらいで終わりますか?
最近のこ茶子さんのお話しは、つくしちゃんが可哀想すぎて(泣)
幸せなつかつくのお話しが早く読みたいです。
あと、タイトルが「何度もでも」になっていますよ。

NoTitle

類君大好きおばさんです。ここでの類君壊れ方がはんぱないですね。つくしちゃんが可哀そうで、切ないです                                                       
もう類君どでもいいや。司とでもくっつけてくださいよ(司君ファンの方呼び捨てごめんちゃいませ)                                                                           
でも、でも、類君幸せになって欲しいで~す














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