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「中・短編」
拍手小話*①

その時、君が見たものは…

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拍手表紙

 その話をつくしが初めて聞いたのは、高校1年生の頃だった。
 どこの学校でもよくある話で、通学路の途中に必ずと言っていいほどある薄暗い夜道に、長いコートを着た男が立つ。
 『すいません、道を聞きたいんですが…』
 たいていがこの一言に振り向くと、夜目にも浮かび上がる見たくもない物体を拝見するハメになって、少女たちの純粋無垢な心と目を汚してしまうという怖ろしい話。
 幸い、英徳学園高等部の生徒たちの大半は、運転手付きの車での送り迎えが一般的で、そういった不届きな輩が狙うような女子高生たちは
そうそう周辺をウロついていない。
 だから、時折聞こえるごく僅かな一般庶民出身の生徒たちから漏れ聞く、『変態目撃情報』はそれほど信憑性がなかった。
 今日は学園祭を控え、本来なら生徒一丸となって放課後の時間をその準備にあたるところなのだが、敵は超金持ちのお坊ちゃま、お嬢ちゃまたち。
 金に物言わせてそれら面倒は省けばいいと、諸事雑事はつくし達ボンビー庶民に押し付けさっさと帰ってしまい、結局、生真面目なつくしばかりがそのシワ寄せを引き受けるハメになり、バイトでもないのにこんな時間に一人寂しく帰るハメになったのだ。
 しかし、人間、そういう時は嫌なカンというものがよく当たる。
 できれば発見したくなかったのだが、前方にまだそんなに寒くない季節だというのに、なが~いコートに身を包んだ顔ばかりが白く浮かび上がる怪しい影。
 ど、どうしよう。ここを通らないと相当遠回りになるし…。
 昨日もバイトで帰るのが遅かったのだ。
 今日くらいは早く帰って、ゆっくりしたい。
 早く寝て夜半に起きられれば、今夜こそは司からの連絡を起きて待っていられるかもしれないではないか。
 そんな逡巡が、警戒心に負けた。
 平気、平気。そんなにそうそう変態さんになんて出くわさないって。いざ、出くわしたって、そんなんパパや進のだって見慣れてるし。
 そうそう!道明寺のだってちょっとは見たことあるしね。
 ちょっと、そこでは一人で赤面してしまったが、まあ、それで勇気はでた。
 幸い人影は動く気配なし。
 通りしな、チラリと人物に視線を向け伺い見てみると、どうやらごく普通の青年のようで、住所を書いたメモらしきものを見ながらあちらこちらを
見回している。
 な~んだ、道を探してるんじゃない。声をかけて教えてあげた方がいいかな。
 迷いつつ、それでもか弱き乙女がそれなりに立派な体躯のある若い男に、暗い夜道で声をかけることに躊躇い、声をかけそびれた。
 何事もなくすれ違い、それでも妙な安堵感に包まれた瞬間、
 「あ、すいません。道を伺いたいのですが…」
 「あ、はい」
 条件反射で振り向いたつくしが見たものは…。
 「うっ!」
 一瞬の思考停止後。
 「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!○×△~ぁ~ぎゃあ▽(涙目)」
 闇夜に浮かぶ生っちろい素肌の胸に、そこから続く素っ裸なチョメチョメ。
 見た。マトモに見てしまった!
 こんなん絶対パパや進のを見るのとはわけ違う!
 つうか、好きな男の裸は(そこまでしかと見たことはなかったが)ドキドキして美しかったが、もう、こういうモンはそういう次元を超え、恐怖以外の何物でもないっ!
 その上、こういう連中というのはコートの中身を強制的に見せて、それで満足する大人しい変態さんではなかったのか?
 つくしの驚愕にニヤリと笑って愉悦をもらすと、男はあろうことかそのまま、固まったまま目を反らすことができないつくしに手を伸ばしてきた。
 そして、虚を突かれて動けなかったつくしの片手をガシッと掴み、
 「触ってよ、お嬢さん」
 「○×▽~、×△○~っ!!!」
 無意識にイヤイヤをしながら、必死で蹴り上げようとするも、存外抵抗されるのに慣れていると見えてヒットしない。
 もちろん、つくし自身の動揺もその原因に含まれていて、殴りかかろうとしたつくしの手を逆手にとって掴んだまま、己の股間に導こうとする。
 いやだ!いやだ!!絶対、いやだぁ~~!!
 半ばパニックになり、涙がどわああああっと溢れ出てきた瞬間。
 「てめぇ!俺の女になにしてやがるっ」
 ドカっ!
 「ぎゃっ!!」
 ドサッ。
 3秒で再び、その場に静寂がもたらされた。
 「…おい、大丈夫か、牧野?」
 どわあああぁぁぁぁ。
 もう安堵なんだか、嬉しさなんだか訳のわからない涙が止まらず、つくしは我ながららしくもなく泣きじゃくるしかない。
 「ど、道明寺ぃ。うええええぇ~ん」
 そこにいたのは、ちょうど半年前NYへと旅立っていったそこにいるはずのない人物。
 「お、おい、平気かよ」
 司の方も滅法気が強いはずのつくしの泣きじゃくりように動揺し、あたふたとつくしの肩を抱こうとして手を放したり、立ち尽くす彼女を前にどうしたらいいのかと手をこまねいていた。
 しかし一頻り手を握ったり開いたりを繰り返し、大きくため息を一つつくと、覚悟を決めたように震えるつくしの肩に腕を回した。
 そして、驚かさないように優しく、つくしの髪に口づけを一つ落とし、落ち着かせるようゆっくりとその背中を何度も撫で下ろす。
 やがて、つくしの方も司の優しい温もりに落ち着きを取り戻してきて、スンと鼻をすすると、おずおずと顔を上げ、そっと小さく微笑んだ。
 「やっと、笑ったな」
 「うん。でも、あんた、なんでこんなところに?」
 「話は後にしようぜ。こんなところで、立ち話することもねぇだろ?」
 言われて気が付いてみれば、足元には司に蹴りつけられ、ノビたコートに真っ裸の変態男。
 「…この人、大丈夫かな?」
 「あ?平気だろ?この季節にこんな格好で転がってりゃ、風邪の一つもひくかも知んねぇが、自業自得だ。つうか、お前の目を腐らせやがって、万死に値するっ!」
 言ってるうちに再び腹が立ってきたのか、意識を失った体を蹴り上げようとするのを必死でつくしは止めた。
 「ど、道明寺!とりあえず、おうちに帰ろう!!もう、すっかり暗くなっちゃったし、せっかくだから色々と話したいもん」
 「おう」
 信じられないほど優しくつくしに微笑みかける久しぶりの司の顔は、この上なく美しく、見つめられたつくしはポウッ頬を染めた。
 コイツ、こんなにかっこ良かったっけ?
 差し出された大きな手に、自分の手をのせて、ギュッと握られた手がとても嬉しい。
 「道明寺…」
 「うん?」
 「おかえり」
 振り返える嬉しそうな笑顔が、無邪気な少年のようで、この上なくつくしの胸を高鳴らせ、幸福にトキメかせた。

 しかし、このお話には後日談がある。
 この日は、司の日本出張で3日ほど滞在し、つくしとのあま~い時間もそれなりに過ごせるはずだったのだが…。
 「うっぎゃあああああああぁぁぁぁぁ!いやああああああああぁぁぁぁ!!」
 「うっせぇ!一々、人の裸見て、大声で騒ぐなっ!」
 「だ、だって、あんた、そんな裸なんかでっ!」
 「馬鹿野郎!裸っつうたって、ガウン着てるだろうがっ!ちょっと埃っぽかったからシャワー浴びてきただけだろっ!!」
 部屋に呼びこまれて、日本での仕事からそのまま直帰していた司が着替えがてらシャワーを浴び、ガウン一枚で姿を現した途端の絶叫。
 前々からそんな姿はつくしにとってもお馴染みだったはずなのだが、ガウンがコート姿にダブってしょうがない。
 「そ、そ、そのガウンの下って、あんた、ちゃんと下着つけてるんでしょうねぇ?」
 「はああ?お前何言ってんの?シャワー浴びて、なんで下着きてんだよ?」
 「ひいいいいぃぃぃぃ!」
 見たくはないが、ついついつくしはガウンで見えないはずの司の、その、あれだ。
 ある一点に目がいってしまい、そうと気が付いては目をそらし、一歩司が動けば、そのたびに大げさな悲鳴を上げる。
 どうやら、この事件はつくしにいらぬトラウマを植え付けてしまったようだった。 
 おかげで、南の島のコテージでのリベンジ!を画策していた司の野望は潰えて終わったとか、終わらなかったとか?



(~Fin~)




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~ Comment ~

祝二千打( ´ ▽ ` )ノ

こ茶子さま

素敵な小話読ませて頂きました( ´ ▽ ` )ノ
月の出ている夜に相応しい
噎せ返るような愛を感じる描写でした。
私なら司からの愛のビームなんて浴びたら
溺死しますけど(>_<)

今後もいちゃラブな小話を量産して頂くべく
毎日拍手押しますっ(>_<)

ゆっち様^^

お祝いありがとうございます♪拍手小話、案外喜んでもらえたのか、すっごい数の拍手にドキドキ^^;
嬉しいやら、思わぬほど拍手小話もUPする頻度が上がりそうで、嬉しい悲鳴?
これからも頑張っちゃうので、よろしく楽しんでやってくださいね!^^!

はちまる様^^

初めまして^^
お返事が遅れてしまい、すいません。
いつも応援ありがとうございますm_ _m
身に余るお言葉に、うれしい気持ちと面はゆい気持ちと。
とても素敵なコメントにじ~んと、喜びひとしお、これからも頑張ってゆく
力となりました。
どうぞ、これからもよろしくです♪
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