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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第三章 嫉妬①

昏い夜を抜けて073

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 ざわりと周囲の空気が一瞬ざわめく。
 自分のことで精一杯だったつくしに周囲を伺う余裕はなかったが、いつの間にか遠巻きに人垣が出来つつある。
 もとより、つくしと類との仲は、口さがない者たちの中で公然と噂されていたのだ。
 その当人たちが、ひと目も憚らずに痴情の縺れを展開しようとしている?
 一人、二人と、帰宅途中の社員たちが足を止め、ひそひそと噂話に花を咲かせ始めていた。
 そんな外野や、凍りついたように固まるつくしと山崎をよそに、類の表情はほとんど変わらない。
 柔らかな愛想の良さで、まるで今日の天気の話をしているかのように、朗らかだ。
 「…え?」
 今耳にした言葉が理解できなかったのだろう。
 ポカンとした顔で、山崎が問い返した。
 「牧野とは高校が一緒だったんですよ」
 「え?あ…そうなんですか?」
 「ええ。私の他にも私の友人たち…茶道家元の西門や美作商事の美作とはごく親しい間柄でしてね。ね?牧野」
 何を言おうとしているのか、類はイタズラに煌く眼差しで、顔を強ばらせるつくしへと微笑みかけてくる。
 その美しい笑みに何度となく魅惑され、騙されてきたつくしには、悪魔の笑みにも思えた。
 知らず知らずのうちに後退るつくしの心境は、舞い落ちる落ち葉のように揺れ慄き、やがては地に朽ちるしかないとわかっているのに、どうにもできないもどかしさで苛まれ。
 「その…初耳です。花沢専務とそんなに親しくお付き合いいただいていたことも、えー、他のご友人たちのことも」
 戸惑いつつも愛想笑いを浮かべてる山崎の横顔が、伝い落ちる汗に滲んでつくしの目に映る。
 「そうなんですか?では、いずれ紹介してもらうといいですよ。山崎さんは、営業ということですから、何が縁になって仕事に繋がるかわかりませんしね」
 「ええ!そうですよね」
 何が縁になって仕事に繋がるかわからない…まさに山崎がつくしに言った言葉だった。
 我が意を得たり、と言ったような山崎の悦に入った満面の笑顔が、だが、次に出た類の言葉で瞬時に固まる。
 「道明寺…ご存知ですか?道明寺司。彼とは彼女、特に親しかったんですよ。なんせ、元カノですからね」
 花沢類っ!?
 ハッと顔をあげるつくしの顔を類は見ていた。
 相対する山崎ではなく、その顔越しにつくしへと真っ直ぐと。
 その時、なぜかつくしは直感した。
 花沢類は、あたしを憎んでいる…!?
 それも司のことが原因で。
 まるで分厚いベールで包まれていたような類の心が、その昏い目を通して、つくしの心へと真っ直ぐに突き立つ。
 「も、元カノ、で、すか?」
 青くなったと思ったら赤くなり、再び青く。
 百面相のように次々表情を変える山崎が、驚愕に口をぽっかり開けたまま、つくしへと視線を向ける。
 …もちろん、山崎に英徳学園でのことを話したことがなかった。
 英徳学園出身であることは、自ら語らずとも、都内でも名門校であることから知らぬうちにも伝わっていたようだが、ごく庶民、それも底辺の家の出身のつくしがよもや類たちハイソサエティな人達と知り合いでさえあるとも思っていなかったことだろう。
 それが、類に親しげに名前を呼ばれ、あまつさえ…あの道明寺司、道明寺財閥のサラブレッドと交際していたことがあるとは。
 まさに山崎にとって青天の霹靂であったに違いない。
 「ええ。道明寺はかなり彼女が好きだったみたいですからね。…あ、もしかして、オフレコだった?」
 今気がついたというように、わざとらしく困った顔で口ごもる類の顔は欺瞞に満ちて、もちろん、類の言葉に動揺する山崎とつくしの様子を愉しんでいるのは明らかだった。
 「…いえ、いずれ話そうとは思っていたことですから」
 それは10年後のことなのか、あるいは60年後のことなのか、自分でもハッキリとは決めていなかったことだったけれど。
 とりあえずは、永遠に封印したままでいようとまでは思っていなかった、と思う。
 ただ、少なくても、こんな衆人環視の中で、こんな思わぬタイミングで、他人に暴露されるとは思っていなかっただけで。
 ギュッと、つくしは類への怒りと憤りで唇を噛み締めた。
 なんでよ、なんであたしを憎むの?
 あたしが何をしたって言うのよっ。
 大声で問いかけたい。
 でも、今は、目の前で悪意を放射する類よりも、驚愕につくしを疑惑の目で見つめる山崎をなんとかするのが最優先なことで。
 「…失礼しましょう。専務、失礼します」
 強い意思を込めて、身勝手な男たちへと告げる。
 今度は山崎や類がなんと言おうとも、たとえ山崎がついてこなくても構わない。
 ただ、今はこの場所にいるのは、もう真っ平御免だった。



 「…ちゃん、つくしちゃん!」
 奮然と歩いていたつくしだったが、力尽くで手首をとられるにあたって、やっと我に返る。
 だが、青ざめた顔に不貞腐れたように不機嫌な顔の山崎は、冷静になろうと努力するつくしに冷水をかけるごとくキツイ言葉を浴びせかけた。
 「清純なフリして俺を騙してたってわけ?」
 「なっ」
 「知らなかったよ。花沢類?西門総二郎?美作あきら…?。それに道明寺司だって?それってあの悪名高いF4じゃないか」
 嫌な笑いを貼り付ける山崎の顔は、失望と嫉妬で醜く歪み、とてもいつもの温厚な恋人の面影がない。
 「道明寺司の元カノ!…噂で聞いてるよ、そうとう女遊びの激しい男だそうじゃないか。そんな男と遊びだとは言え、付き合ってたなんて」
 「遊びなんかじゃないわっ」
 咄嗟に出た言葉は、無意識だった。
 あ、と口を抑えたつくしの態度に、かえって怒りが煽られたのか、ギリリと握り締められたつくしの手首が悲鳴をあげる。
 「君は本気だったってわけ?それで無残に捨てられて、俺みたいな平凡な男に仕方なく鞍替え?…それとも、俺の方が遊びだったのか?」
 「やめて!そんなこと言わないで。あたしはそんなつもりで」
 「じゃあ、どんなつもりだって言うんだい?君が清純で奥ゆかしい子だからと、ずっと遠慮していた俺をバカみたいだと嘲笑っていたのかっ」
 責め立てる山崎の声が、憤慨にだんだん大きくなってゆき、ただでさえただならぬ様子に衆目を集めていたというのに、人集が出来始める。
 ダメだ。
 自分はともかく、こんなところで問題を起こして会社に知れたら、せっかく未来が開けている山崎の将来を潰しかねない。
 痴情のもつれ…まさにそんなことで、騒ぎになって、万が一逆上した山崎がつくしを殴りでもしたら大問題だった。
 いままで山崎がつくしに暴力を振るったことなどない。
 だが、山崎の目に浮かぶ凶暴で危険な光が、手首を戒める力の強さと痛みが、山崎の冷静さをいつ奪ってもおかしくないと、つくしに危機を知らせる。
 「…と、にかく、ここじゃあ、話なんてできない。話は後で、とりあえず移動しましょう」
 ともすれば震えそうな舌を叱咤し、手を掴ませたまま、通りかかったタクシーを留める。
 今夜も長い夜になりそうだった。

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~ Comment ~

NoTitle

男の嫉妬は怖いですね。特に裏切られたと思った時の嫉妬は反動で二倍三倍になって返ってきそう。勝手に嫉妬して勝手に恨んで 類も山崎も困った男たちだ。つくしちゃん いつもいつも他人のことばかりにかまっていないで 反撃開始してね!

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