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「中・短編」
つくしちゃんのスチュワーデス物語…13話完

キャビンアテンダント24時11

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 「あうっ」
つくしの腕をひねりあげて後ろ手に、男の反対側の腕がつくしの首を羽交い絞める。
 「「ま、牧野さんっ!」」
 首を圧迫されたことや腕を捻られた痛みよりも、密着したことによる強烈な臭気に、つくしは気が遠くなった。
 うげぇ~、臭い~。
 「お客様、おやめくださいっ」
 「うるさい!近寄るなっ」
 「「きゃああああああぁぁぁ~」」
 横合いから近づこうとした峰岸の行動に刺激された男が、ひねりあげていたつくしの腕を離し、羽交い絞めたままポケットからフォールディングナイフ(折りたたみ式のナイフ)を取り出して、峰岸たちを威嚇する。
 さすがに乗客たちも気が付き、ざわめきは大きくなっていた。
 苦しさに、つくしは両手で男の腕を引きはがそうとするが、乱暴によけいに締められるばかりだ。
 さすがに、臭気ではなく、絞殺されそうな恐怖と酸素不足に、頭がガンガンと頭痛を訴える。
 走らせた視線の先、目を爛々と獰猛に光らせ、座ったままつくしと男を見据える司の顔が見えた。
 …道明寺っ。
 司とつくしの間には数メートルの距離がある。
 猪突猛進な司が、怒気を放ちながらも成り行きを見守る冷静さに、つくしの頭もわずかに冷えた。
 それにつれ、無闇な恐怖心も和らいでゆく。
 こんな緊急事態で、司だとてスーパーマンなどではないことはわかっているのに、それでも彼女にとって、司がそこにいる、ただそれだけで大きな勇気となった。
 実際、司がただ手をこまねいてつくしのピンチを見ているはずがない。
 「こっちに誰も来るなあぁっ。この女がどうなってもいいのかっ!?」
 「お客様、申し訳ございません。…当社の社員がなにか失礼をしてしまったようで」
 騒ぎを聞きつけてきた本日担当の唯一の男性CA(客室乗務員・パーサー)である東城が、男を刺激しないように柔らかな口調でおもねった。
 だが、女性ばかりと侮っていたCAたちの中で、男性が現れたことが男のカンに触ったらしく、つくしを羽交い絞めたまま、周囲へとナイフを振りかざし、振り回しだす。
 「「「きゃああああああっ!!!」」」
 かたずをのんで騒ぎを見守る客たちの悲鳴がそのたびにあがり、振り回されるつくしのこめかみを冷や汗が流れた。
 「俺は、お、俺は、ファーストクラスに行きたいんだ!」
 「ファ、ファーストですか?」
 「俺はファーストの金持ちに用があるっ。と、通らせないと、こ、この女を殺す!」
 もう一度悲鳴があがるが、今度は男がナイフを持った手でガンッと壁を叩き威嚇したことで一気に静まり返る。
 「うるさいっ!騒ぐな」
 血走った目が、ギョロギョロと落ち着きがなく、男の精神状態がマトモでないことが伺われる。
 刺激したら危険だ。
 安易に他の乗客を危険にさらすことはできない。
 かといって、つくしを完全に確保した状態の男を下手に刺激しては、つくしを危険にさらすことになるのは明らかだった。
 機内の保安員を兼ねているCAたちが互いに目くばせをしあい、とりあえず、男の要求を呑み、乗客たちを宥め、道をあける。
 男は周囲に油断なく目を配り、CAたちを遠ざけた。
 「…牧野さん」
 「大丈夫です。心配なしないでっ、うっ」
 小声で声掛けをしてくる同僚たちに答えた途端、首の拘束をさらに強められ、つくしは呻いた。
 ジロリと睨みつける男の瞳孔の小さな目が、正気じゃない。
 …アル中?でもアルコールの臭いはしない。じゃあ、まさか、薬中?!
 つくしは怯えて、震える心を懸命に叱咤した。
 こんな時のマニュアルは頭に叩き込まれている。
 できるだけ冷静に。
 そう思いつつも、口の中が乾いて、足が震えて仕方がない。
 男は当然のことながら、ひどく神経質になっていて、少しでも乗客が身動きをすると、歯をむき出し、ナイフを振り回して威嚇した。
 つくしを引きずりながら、周囲を頻繁に見回して歩く男の歩みはどうしてもゆっくりで。
 全身に緊張を漲らせ、鋭い眼光を自分たちへと注ぐ司の座席へと徐々に近づいた。
 …道明寺。
 危険な獣のような司の目が、不安げなつくしの目をとらえて、一瞬だけ励ますように和む。
 大丈夫だ。
 そう言われているようで、怯えて凍えていた心がまた励まされ、つくしはじんわり涙ぐんだ。
 何事もなく、司の座席を二人が通り過ぎる。
 が…。
 「…おい」
 低く、地を這うような声が男とつくしを呼び止めた。
 神経質になっていた男はその声を無視できずに、つくしごと振り返る。 
 「こ、この女をっ」
 男がバカの一つ覚えのようにつくしを盾に司を脅迫しようと、向きなおった瞬間。
 「てめぇっ!そこのブスッ。お前の足が俺様の足に当たったってーんだよっ!?」
 ガバッと一気に立ちあがり、なぜか…つくしを睨み下ろした。
 「…っ!?」
 「????」
 ポカンと男とつくしが司を見上げ、そして互いの顔を見合わせ、再び司へと視線を戻す。
 な、何を言い出す、この男っ!?
 「俺様の靴を汚しておいて、黙って通り過ぎる気かてめぇっ」
 「な、何を言って」
 上擦った声で、問い返そうとした男を無視し、司はつくしだけを睨み据えた。
 「てめぇじゃねぇよっ。そこのアホ面さらしたチンクシャだよ。ブスは堂々と顔晒してスチュワーデスなんてやってんじゃねぇよ」
 「は、はあ?」
 状況も忘れて、つくしはギッと司の顔を睨み据える。
 いかにもバカにしたような顔で眉根を上げる司は、なまじ顔がいいだけによけいに憎々しく、厭味ったらしい。
 「…靴、汚れただろ?」
 つくしと男が、思わず司の靴を見下ろす。
 見た感じ、ピカピカに磨かれた高級靴にはわずかな傷跡さえも見つからない。
 「…なに、あんた因縁つけて」
 「てめぇ!バックれるつもりかっ!?ブスはブスらしくし、しおらしく謝罪すりゃあいいんだよっ!」」




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