FC2ブログ

「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑②

昏い夜を抜けて049

 ←新しい朝が始まる03~夢で逢えたら番外編 →新しい朝が始まる04~夢で逢えたら番外編
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 薄暗いバーのカウンターへと類が歩みを進めると、声をかける間もなく先に来ていたあきらが気が付き、片手をあげて合図してくる。
 予定時間の変更を伝えてきたわりに、相手より先に来ているあきらの几帳面な性格は相変わらずだ。
 類も社会人になり、時間に追われる生活が当たり前に身についていたからそうそう遅れることもなかったけれど、どちらかといえば、昔から約束にもルーズだった。
 「よう、デートは良かったのか?」
 「…?」
 今日の予定は特にあきらに伝えてない。
 わざわざ女と会ったことを報告するタチでもないし、態度に出るほど単純でもないというのに、あっさり見透かされていたことに、類は小首を傾げて目を瞬かせた。
 一癖も二癖もある男のくせに、こういう妙に子供じみたところは相変わらず変わらない。
 あきらは苦笑しつつ、すぐ隣の席へと腰を下ろすように勧めた。 
 手際よく、酒のメニューを差出し、何くれとなく世話を焼く。
 さすがに昔からマメな男だ。
 類も酒を注文し、ひと段落つくと、再びあきらは、類へと問いかけた。
 「デートだったんだろ?」
 類があきらへとのプラベートを意図せずとはいえ垣間見せたのは、学生時代以来珍しい。
 それだけに、少しからかってみたかった。
 「なんで、そう思うの?」
 問いに問を返され、まだ観念しやがらねぇのか、とあきらは唇の口角を上げて、自分のジャケットの襟をスッと撫でる。
 「…口紅」
 言われて類も思い当たる。
 そういえば、つくしを抱き寄せた時に、彼女の口紅が類のジャケットの襟についてしまったのだったか。
 軽く拭ったくらいでは、この友人には簡単に見抜けてしまったらしい。
 「ああ」
 「俺との約束がなけりゃ、ホントはお持ち帰りする予定だったんじゃね?」
 いかにも女道楽を繰り返してきた男の言い草に、なんだかおかしみを感じて、類は唇の端を緩めた。
 別に隠すようなことでもない。
 
 「どうしようかな、とは思ったんだけどね。まだ、そんな段階じゃないみたい」
 「へえ?珍しいなお前。本気なのか?」
 「本気?」
 あきらの言う意味がわからないというように、首を傾げる。
 ニヤニヤ笑って見返していたあきらだったが、類のそのキョトンとした目に、逆に拍子抜けしてしまった。
 いつもだったら類に女の話をフっても乗るどころか鼻で笑われ、面倒くさげにいなされてしまう。
 それなのに、今日の類はどこか表情が柔らかいように思えたのに、やはり気のせいだったか。
 それか、女が原因の雰囲気の変化なのではなく、またあきらにはよく理解できない理由での上機嫌なのかもしれなかった。
 …そう、あきらには類の機嫌がいつもより良いように感じられたのだ。
 なので、その路線で責めるのはどうも筋違いのように思い始めているというのに、続けてしまう。
 「だって、大事にしたいんだろ?」
 類が、思わず、といったようにプッと噴出す。
 「日頃、好きな女とは結婚できないっていって、人妻との遊びにハマってるお前が面白いこというね」
 「…今は遊んでねぇって。じゃあ、お前は遊びだっていうのかよ?見合いでもない相手にデートだなんてお前らしくない時間費やして」
 そこで注文した酒が運ばれてきて、一時話を中断する。
 どうせ男二人っきりだと、カウンターに陣取ったが、先ほどからチラリチラリと綺羅に着飾った女たちの視線を感じて、あきらはVIPルームをとるべきだったかと、しばし悩んだ。
 ライムの香りがさわやかなジントニックを口に含み、類は意外に乾いていた喉を潤す。
 今日はガッツリ飲むつもりではなかったから、バーテンダーに任せて作らせたのだが、ここ…なのか、今日のバーテンダーなのか、どうやらボンベイ・サファイヤベースのレシピらしかった。
 もともと、マラリア予防の目的で飲まれたというトニックウォーターにキニーネを混ぜた医薬品扱いの酒だったが、今やジンを加えたこの美しい酒にその面影はない。
 ボンベイ・サファイヤはハーブやスパイスを通して蒸留されたため、薫り高く、なんとはなしにゆったりと呑みたい今日の気分にピッタリだった。
 …この店、けっこう好きかも。
 特に店にこだわりのない類が、珍しく満足感をもって酒に揺蕩う。
 「別に。…今までと違うタイプの女だったから」
 眠る前の猫のように目を細め、類が酒のグラスを弄んで黙り込んでいたので、すっかりこの話をクローズしていたのだと思っていたあきらは、一瞬何の話だったのかわからなかった。
 「…は?」
 「面白いかなあと思ったんだけど、ムカついちゃった」
 「おい…」
 言葉のわりにはやはり類の表情は楽しそうだ。
 だが、類の場合、どこまで正直に話しているのか、感情を表しているのか疑わしい部分がある。
 それは幼馴染みの彼らにして、窺い知れない腹の底で、実際、類が自分の心情を素直にさらけ出したことなど、一度とてなかったからだ。
 …もしかしたら、静にでさえ見せていなかったのかもしれない。
 そもそも、彼らF4は互いにしか気を許さなかったくせに、実際には、互いの深淵に深入りしようとはしなかった。
 唯一例外だったのが、司とつくしが交際をしていた時期。
 長い彼らの付き合いの中で、あれほど近しいと感じるほど、互いに干渉しあったことがあるだろうか?
 それはもちろん司ゆえにのことではなくって、つくしゆえに起こった奇跡なのだと、あきらだけではなく総二郎や、司もわかっていた。
 だからこそ、司はつくしを忘れられないのだし、あきらも忘れられない。
 司とは同じ意味合いだと認めたくはなかったが、あきらはできることなら再びつくしとの縁を繋げたかった。
 それはともかく。
 「ちょっと泣きを見せてやりたくって」
 冗談めかしているが、何気に本気な類の目に、頭痛を憶える。
 「……なんだよ、そりゃ」
 「優等生面していい子ちゃんな女って、なんだか鼻につかない?俺、アフターケアしないくせに、お節介したり、他人にいい顔する女ってなんだか虫唾が走る」
 鼻の頭にしわを寄せて、子供っぽく唇を尖らせる男の年齢に疑問を憶える。
 だが、その内面は子供どころか、かなりひねくれていて、さらに侮れば侮った方が火傷を負うような男であることはあきらも十分承知だ。
 「…類。本気じゃないんだったら、それはそれでかまわねぇ。でも、らしくないことするのやめとけ」
 「どうして?」
 チラッとあきらへと視線を走らせた類の目は、あきらの言葉を嘲笑っていたけれど、なぜかあきらは自分の直感を笑えなかった。
 「他の女はどうだか知らねぇよ。でも、今の女にはいつもの非道はやめておいたがいい。絶対…いや、たぶん後悔する。お前が苦しむぞ?」

◇交流・意見交換 『こ茶子の部屋』へ
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ

↓ランキングの協力もよろしくです♪
ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2


関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【新しい朝が始まる03~夢で逢えたら番外編】へ
  • 【新しい朝が始まる04~夢で逢えたら番外編】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

はじめまして

花男熱が再燃して、大好きな類とつくしの小説を求めて彷徨い、初めてこちらの作品を読ませて頂きました。
鬼畜類が、読んでいてもう胸が苦しいです。類とつくしのハッピーエンドが理想なのですが、こちらのルイルイには、せめてつくしと結ばれる事はなかったとしても、歪みまくった心がつくしによって浄化されることを切に願います。
続きを楽しみにしております!
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【新しい朝が始まる03~夢で逢えたら番外編】へ
  • 【新しい朝が始まる04~夢で逢えたら番外編】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク