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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑②

昏い夜を抜けて046

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 つくしは、目の前に広がった光景に絶句した。
 造形的に作られた人口庭の開けた先…。
 そこには先ほど後にした最上階のガラス窓の向こうに広がっていた夜景とは、全く別の美しい光景があった。
 岸辺に乱立する高層ビル群の放射する明かりを映す、すうっと優美に伸びた川。
 その流れを横断する力強く巨大な橋。
 橋自体が青く煌びやかにライトアップされ、波間の揺らめきに反射する光とあいあまって、よりいっそう幻想的な景色を作り出す。
 「レストランから見る夜景もよかったけど、こっちも雰囲気違って綺麗でしょ?」
 類の言葉に、つくしは言葉もなく頷く。
 超一流ホテルの一角という場所柄か、おそらくそれなりには人もいるのだろうけれど、展望台や観光スポットのような雑然さはない。
 むしろ静かなくらいで、広大な敷地に木々で仕切られた空間は、まるで類とつくしの貸切のような錯覚を彼女に憶えさせた。
 本当の恋人同士なら、さぞやロマンチックな気分が盛り上がっただろう。
 そうでない二人でさえ、そこはかとない雰囲気に浸ってしまいかねない怖れを感じるのだから。
 「まあ、デートコースとしてはベタかもしれないけど、ね?」
 大げさなほどに感激しているつくしの顔を類が覗き込んで、悪戯っぽく微笑む。
 育った環境や過去の経験のハードさが、つくしをいつまでも夢見がちな乙女にはさせてくれなかったけれど、もともと童話の王子様に憧れるようなところもあったくらいだ。
 その童話の王子様そのままのような美青年の類に肩を抱かれ、美しく幻想的な夜景を二人っきりで眺めるロマンチックさに酔わないはずがない。
 いつも心のどこかで、ガラじゃないつーのっ、と自分を戒める天邪鬼な自分も、食前酒に飲んだワインのせいかなりを潜めている。
 つくしを見つめていた類の目が、ふいに真面目になり、顔が傾けられる。
 伏せた瞼にびっしりと生えた睫毛がすごく長い、そんな妙に冷静な感想を抱きながら、つくしは近づいてくる美しい美貌をぼうっ眺めた。
 その視線に気が付いた類が、目と鼻の先でバチッと眼を開ける。
 目を見開いていたつくしの目と視線があって、さすがに驚いたようだ。
 「…目、瞑ってくれない?」
 「えっ?」
 この期に及んで、つくしは自分の状況を把握できていなかった。
 目?目を瞑るって…え?
 酔いが原因ではなく真っ赤になって、目を白黒させつつ脂汗をかいて対処に困っているつくしのテンパった表情に、類の笑いのツボが刺激されかける。
 やばい…。
 俺、我慢できないかも…。
 ここで笑い転げては、せっかくの甘い雰囲気も台無しだろう。
 「目、瞑って?」
 今度は甘く、誘惑するようにつくしへと強請る。
 類のフェロモンダダ洩れの蠱惑的な眼差しに、つくしはゴクリと唾を呑みこむ。
 ドキドキと高鳴る心臓の音がうるさい。
 すでにつくしの頭は脳停止状態で。
 ゆっくりと近づいてくる美しい唇に、つくしはぎゅううううっと力いっぱい歯を食いしばり、目を瞑った。
 チュッ。
 淡い感触は唇…ではなく、その横の端に触れ、あっさりと離れてゆく。
 一瞬すぎて、あまりに非現実的な触れ合い。
 つくしは目を瞬き、思わずその感触が去ってゆくのを呆然と見送った。
 しかし、虚を突かれて食いしばっていた唇をポカリと開けた瞬間…。
 チュウ。
 柔らかい感触がつくしの唇を吸い、少しだけ下唇を甘噛みし、その噛み痕を宥めるようにねっとりと舐めた。
 バードキスというには誘惑的で、ディープキスにしては儚すぎる。
 けれど、それは確かにつくしの心臓を強く激しく刺し貫いた。
 バッ。
 類が離れたとたん、つくしは両手で唇を覆い、思わず後退る。
 「わわわわわわ~」
 自分で何が言いたいのかわからない。
 キスされるかも、とわかっていて逃げなかったくせに、いざされてしまうとパニックに頭の中が真っ白になってしまう。
 茹蛸のような真っ赤な顔で焦りまくる女に、ついに類の我慢が限界値を超えた。
 「ぶうぅぅぅぅっ!!す、すげえ、真っ赤!茹蛸通り越して完熟トマトみてぇっ」
 無邪気に笑い転げる男を、つくしは唖然と見つめた。
 そしてやがて、腹を折っていつまでも笑い転げている類の様子に、羞恥ではなく別の意味で血が上ってくる。
 「何、笑ってんのよっ、あんた!」
 「うわっ」
 殴り掛かられ、危うく拳骨を食らいそうになった類が、楽しそうにしながらその両手を抑える。
 「まあまあ、別にからかったわけじゃないよ、くく」
 それでもまだ語尾が笑ってる。
 「からかってるでしょう!?…あんた、やっぱり女タラシなんじゃないっ。いい加減にしなさいよっ」
 「ん~。そんなことないと思うけど。あんたの反応が面白すぎ」
 「はあ!?…なによ、それ。頭くるっ!」
 もうロマンチックな空気など微塵もなくて、つくしはプリプリに怒っていた。
 …完全に雰囲気に流された。
 我ながら、どうかしていたとしかいいようがない。
 けれど、これほどの美青年に風情たっぷりに迫られたら、どんな鉄壁のお堅い女もフラフラッとしてしまっても致し方がないのではないだろうか?
 開き直り半分、反省半分。
 そんなつくしを見つめて、類が首を傾げる。
 「…あんたが処女だったのはわかってるけどさ」
 サラッときわめてプライベートことを…なおかつ、とんでもないことをした張本人にまるでこだわりなく言われて、つくしがギョッとする。
 相変わらず悪びれていない類の認識なんて、すでにつくしの中でも熟知していることなので、多少嫌な気持ちがわきあがるだけで、今更傷ついたりなんかしないのだけれど。
 それでもさすがに、平然とはしていられない。
 
 「キスくらい、したことあるんでしょ?」
 類の目が、彼氏いるんだから、と続きを語ってる。
 「…そりゃあ、あるけど」
 「それなのに、なんであんたキスくらいでそんなにあたふたして狼狽えたりするわけ?」
 「……」
 つくしとの一夜の間違いに対する類の認識以前に、思い越せば高校生時代、平気で人前でもキスしまくっていた連中だ。
 当時、類が他人とキスしていたのを見たのは、静としていた一度っきりのことだったけれど、その親友の総二郎やあきら、司とも静が平然とキスしあって、類もそれに対して特に狼狽えていなかった様子から、おそらく彼らにとってはそれが日常だったのだと窺い知れる。
 そして、大人になって再会した類は、挨拶のキスどころか、普通に行きずりの女とも濃厚なキスをするような男だった。
 そんな連中に、つくしの戸惑いや、認識を滔々と語っても理解できるとも思えない。
 「司とだってしてたんでしょ?キス」
 完全に油断していた。
 まさか、興味がなさそうだった類からでるとは思わなかった名前に、気が付けば、つくしははじかれたように類の顔を見返していた。
 「この前、総二郎たちが言ってなかった?あんた、司と付き合ってたんでしょ?」

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