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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて042

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 気を付けてゆく…も何も、ここからつくしのアパートは目と鼻の先だ。
 物見高い近所の人たちや進に、不似合な高級車で送られるところを目撃されたくなくって、適当な理由をつけ、少し離れたところに車を止めてもらった。
 つくしの内心の警戒心をよそに、類は本当に飲み会に出席したつくしの送迎をしたかっただけのようで、特にどこか別の場所で呑みなおそうとかお茶に行こうとか誘われることもなく、真っ直ぐに送ってくれた。
 なんだか拍子抜けするような気がしながらも、けっこうやっぱり自分は迂闊かも…と反省することしきり。
 …ふつう、お持ち帰りされたこともある男の車にこうやって頻繁に乗ったりしないよね。
 反省は生かされていない。
 それでも、いつの間にか類といる時間は心地よかった。
 あれほど美しい男で、世間の女たちの注目や憧れを一身に集める男であるというのに、つくしは彼に対して自分を飾ろうとか、良く見せようという気になれなかった。
 おそらく、つくしの高校時代…学校中から疎まれ、苛めにあい、彼女の人生でもっとも最低かつ恥ずかしい時期を知られ、大人になってさえもあばたを隠す間もなくああいった間違いを起こしてしまったことで、すでに虚栄するものがなくなったからだろう。
 自分をよく見せる必要がない相手というのは、逆を言えば楽だった。
 もちろん、つくしも類の魅力は十分にわかっているし、時折、あの綺麗な顔や姿に赤面させられることもある。
 けれど、類が自分をまともに相手にしているとは己惚れるほどバカではなく、またよしんば気まぐれにせよ、あの言動の通りモーションをかけてきているのだとしても、それに乗るつもりがなかったので気楽なものだった。
 もう、高校生の時のような幻想を抱いてはいない。
 それに時々、胸がひどく痛むけれど、現実の人間に対していつまでも綺麗な想い出の王子様のままでいろというのは、つくしのエゴにすぎないのだとわかっていた。
 「…非常階段友達、か」
 かつて自分が苦し紛れにひねり出した詭弁。
 類が憶えていてくれたことは驚きだったけれど、それなら今はどういう理由でこうしてつかの間とはいえ、不思議な距離感へと自分を彼に近づけているのか。
 「一期一会?」
 よく総二郎が行きずりの女相手の情事に使っていた言葉だ。
 正直、さんざん説教をしていた総二郎の相手の女たちと同じレベルに成り下がったとは思いたくなかったけれど、じゃあ、どういえばいいのかわからない。
 けれどもう、あの綺麗なビー玉のような目の前では、どんな言い訳も必要がない気がした。
 …友達じゃなくっても、一緒いるのが嫌じゃないんだから仕方ないよ。



 つくしに嫌がらせをしていた犯人は、意外なことにアッサリと判明した。
 と、いうのも、先日のロイヤルグループに卸す洋菓子の発注ミスから顕現化したつくしへの嫌がらせ…納期変更の連絡メモを隠された件が会社への損害を及ぼすことになり、それを重く見た高階が調査に乗り出したのだ。
 週明け、高階により会議室に呼び出されたつくしは、警備会社を交えた部内の幹部会で事情聴取を受け、何人かの関係者…納品変更の電話を受けた真柴等も聞き込みもされた。
 そして、つくしの了解のもとに、つくし自身のロッカーや机の周辺に隠しカメラが設置され、…数日後にはその犯人の目星がついた。
 意外にもそれは、類のシンパである女性や、高階に想いを寄せる女性、もちろんつくしを〆ようとした秘書課の伊藤などではなく、総務の男性社員・金城が犯人だった。
 被害者ではあっても、調査チームの一員でなかったつくしには詳しく経緯は知らせられなかったが、金城と同じ課に所属する眞子とかなえが憶測を交えて知る限りの情報を提供してくれた。
 「…金城さんはね、企画課への転属を希望してたのよね~」
 金城は高階と同じ大学出身で、大学時代に交流はなかったようだが、その高階に憧れ花沢物産に就職をした人間だった。
 「高階さんって、出身校でもよい意味で有名人だったらしくってね。営業部の三田さんもそうだけど、高階さんがいるから花沢へって人も少なくないのよ」
 その高階のいる企画課への転属を金城は希望していたのだが、やっと空いた席次へとなぜか外部の人間で、女のつくしが埋めてしまった。
 それがまたバリバリのキャリアや実力を持つ人間ならばともかく、それなりに評価を受けてはいるものの、たかだか腰掛にすぎない(一般論として)女子社員に横取りされた形なのに憤慨していた。
 そこへもってきて、花沢類との噂。
 御曹司である専務に色目を使い、その縁で、突拍子もない人事で花沢へと出向し、高階にも目をかけられている。
 その高階をも女の魅力で(果たしてつくしにそんなものがあるかは別として)取り入っているというつくしへと悪感情を募らせていった。
 そして、社内の社員たちを総括するという総務部の一員であり、各所の鍵も保管している立場を利用しての犯行だったらしい…。
 おそらく目的は嫌がらせをして、つくしを追いつめ退職させること。
 あるいは自ら尻尾を巻いて自社への帰還を嘆願させる…そんなところだったのだろう。
 「…はあ」
 「ホント、呆れちゃうわよね。陰湿なのは女!ってイメージあるけど、そうでもないわよね」
 「…う~ん」
 でも、確かにかなえの言う通りだ。
 「実際、飲み会とかで無礼講になったら、案外男の方が陰口とか、えげつなかったりするし、女々しいよね」
 反論できない。
 けれど、女々しいとか、陰湿以前に、そうやってつくしの与り知らないところでたくさんの悪意を抱かれているのかと思うと、ドーンと暗くなってしまう。
 少なくても自社では、そこまでの悪意を抱かれることがなかった。
 多少女のくせにとか、生意気とか、言われることがまったくなかったとは言えないが、基本人好きするつくしには敵が少なかった。
 …やっぱりF4と関わるとロクなことがない。
 「金城さん、東北支社に左遷だって」
 「ええっ!あれだけのことをしておいて?!」
 「彼ってほら、山辺常務の縁故だし~」
 「ああ、なるほど」
 二人の話を聞きつつ、さらに暗澹たる思いに苛まれる。
 つくしには、金城の処分は厳しすぎる…というより申し訳ないような気持ちがあった。
 確かに、連絡メモを廃棄もしくは隠すのは行き過ぎだったと思う。
 けれど、それだけのことなのだ。
 つくしが確認の連絡を入れていれば、相手の担当者が確認の連絡を受けていないことに気が付いて、もう一度連絡を入れてくれていれば防げたこと。
 つまり、いままでそうやって口伝言一つでなあなあにやり取りしていた結果が、こうして大事へと発展した。
 あの一件以降、急ぎであっても双方FAXやメール等での書面のやり取りが改めて厳重に義務付けられた。
 「…金城さんのご家族、さぞやガッカリされたでしょうね」
 「もしかして、つくしちゃん、金城さんに同情しちゃったりしてる?」
 「……」 
 図星に何とも言い難く口ごもっていると、二人は盛大にため息をつく。
 「それって、お人よしすぎるでしょう!?」
 「だよね~。つくしちゃん、生理用品まで悪戯されたんだよ?あたしらからしたらありえない!ふつう、怒り心頭。一か月以上も嫌な思いさせられて、逆に会社の処分は甘い!首にしろって思うもんじゃない?」
 「…うーん、でも、怪我させられたり、車で引きずられたりしたわけでもないし」
 「「はあああ~!??」」
 二人そろって目を見開かれ、疑問符を浮かべられて、失言したことに気が付く。
 怪我…どころか、車にまで引きずられた経験があるのは、さすがに普通ではなかった。

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類つく大好きです。
happyendになってほしいなぁ…。

更新、楽しみにしてます!
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