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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて041

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 焦って急いで店の外へと飛び出し、ふと我に返って今度こそ、類の手を振り払う。
 目的は果たしたゆえにか、類も今度は強情を張らずに、あっさりと手を離し歩き出す。
 「ど、どこ行くの?」
 強引にされると反発できるのに、そうでないと逆にどうしていいかわからなくなる。
 第一、類の目的はなんなのだろう。
 「…ん?車、この先の路地に待たせてるから」
 「あ…あ、そう」
 頷いたものの、さっさか歩き出す類を見送るしかない。
 …あたし、どうしたらいいんだろ?
 つくしの心中はこんな感じ。
 
 類もすぐにつくしが自分の後をついてきていないのに気が付いたらしく、怪訝に振り返った。
 「なにしてんの?あんた」
 「…え、何してるのって言われても」
 「早くおいでよ。別のもう、足、痛くないんでしょ?」
 おかげさまで(何が?)、先日痛めた足もただの捻挫で、もう支障なく日常生活を送っていた。
 しかし…。
 「おいでって、あたし、もう帰るよ。せっかく、部内の皆さんが歓迎会、開いてくださってたのに。主役が抜けるなんて普通ありえないよ…」
 ハッと思い出し、項垂れる。
 つい類の当然といった態度と、ただでさえ変な噂が横行しているのに当事者の類といかにも親しげにやり取りしている様を同僚たちに見られたくなくって、ついてきてしまった。
 けれど、結局、本来いるべき人間でない類を目撃され、あまつさえ
手に手を取り合って出てきてしまった。
 明日の噂話が、どれほど尾ひれをついて広がるかと思えば、身も縮む思いがする。
 …英徳をやめて、やっと平穏な毎日に慣れてきたところだったというのに。
 「平気でしょ?あんたんとこの直接の上司に適当に行っておいてくれって伝言しておいたから」
 そういえば、さっき顔を合わせた同僚は急用か、とか言ってたような。
 …うう、いったいどんな急用だっていえばいいのよ!
 会社の歓迎会を主役が途中で抜ける言い訳などそうそう思いつかない。
 「ま、それより、あんた案の上、呑み過ぎてるじゃない」 
 「…そんなことないよ。もともとお酒に弱いから、ちょっと飲んだだけで真っ赤になるだけだし」
 実際、このまま呑み続けていればヤバイかもしれなかったが、自覚があるのでペースを落とすつもりだった。
 「そんなこと言って、この間俺たちと呑んだ時も呑み過ぎたくせに」
 「…あれは、その」
 それを言われれると弱いものの、つくしにだとてイイワケくらいある。
 あの時は、高校時代に因縁のある類との突然の再会に予想以上の動揺を感じていただけで、普段からそうそう飲みすぎていると思われてはたまったものではなかった。
 …これって、あたし、相当隙のある迂闊な女だと思われてるってことだよね?
 「とにかく…大丈夫だから。さすがにこれくらいじゃあ、つぶれたりしないよ」
 「ふ…ん?とりあえず、行くよ」
 「だから!どこに行くわけ?っていうか、何の用?」
 また手を取られそうな勢いに、つくしは一歩下がって、腰に手をあて仁王立ちに類へと対抗する。
 その様をキョトンと見送って、類はクスクスと笑いだした。
 「な、なに?」

 「なに?その戦闘態勢。やっぱ、あんたって面白い女だよね」
 「……」
 不覚にも、類の無邪気な笑顔に見惚れ、絶句する。
 「用ならもう達成したよ」
 「は?」
 なんなのよ、この人。
 つくしには類の言動がさっぱり理解できない。
 そんなつくしをどう思っているのか、まだ面白そうに目を煌めかせ、類が甘くつくしへと微笑みかける。
 「あんたを迎えにきたんだよ。また呑みすぎてるんじゃないかと思って」
 「え…」
 「家に送るよ」
 「ええっ?ちょっと!花沢類っ」
 あたふたするつくしを振り返らず、あとは自分のペースでさっさと歩み去ってしまう。
 送られる、とも、嫌だとも言う間もなく、どうかすると見失いそうなペースで歩いていかれて、つくしもとっさに追いかける。
 「ちょっと、待ってってば!」



 わざわざ車を降りて、手を差し出してくれる類の手を眺め、少しの躊躇の後につくしはその手を借りて車の外へと出る。
 「じゃあ、また明日」
 あっさり、再び車に乗り込んで、柔らかく微笑む類の顔が真っ直ぐに見れない。
 頼んだわけではないけれど、それでも酔っぱらっているつくしをわざわざ家まで送り届けてくれたのは本当のことで。
 そのまま去っていこうとした類を、つくしは呼び止めた。
 「…あのっ」
 ビー玉みたいな色素の薄い、不思議に綺麗な目がつくしを見返す。
 「あの、今日はありがと。その、送ってくれて」
 ぎこちない笑みは強張って、深々と頭を下げるつくしはどこか困っている犬のようだ。
 間近で覗き込んでやったら、もっと真っ赤になって茹蛸のようになってしまうのだろうか?
 それとも正直な感想を言ったら、また蹴られてしまうだろうか。
 そんな場面を涼しい顔で想像して、…でも、車に乗ってるから大丈夫かな、と類は考えなおす。
 類は、そんな自分がまたおかしくなってしまった。
 そういう他愛無くもバカバカしい心配をする自分が新鮮で、興味深い。
 目の前の女の反応が面白い。
 けれどそれ以上に、彼女の予想外な言動が、いままでとは違う自分を飛び出させて、それがまた類には愉快だった。
 「いいよ、それくらい。だいたい、あんたが頼んだことじゃないでしょ?俺があんたを迎えに行きたくてしてるだけ。そんなに深々と頭下げることないよ」
 「…でも、忙しいあんたの貴重な時間を使って、良くしてもらったことは確かだから」
 「……」
 貴重な時間。
 まあ、確かに、つくしには言っていないが、類にしてみればこうしている時間も暇なわけではない。
 学生時代にはかなり適当にやっていた類も、今やかなり時間を争う多忙に追われ、こよなく睡眠を愛する彼にしては信じられない睡眠時間に甘んじている。
 それをおして、こうして迷惑がられている女に付きまとう自分はなんなのだろうか。
 自覚してやっている自分はともかくとして、自分の意図を知らない目の前の女はさぞ不審なことだろうと思う。
 今まで類が相対してきた女たちとは異なり、つくしが類の言動を自分の都合のよいように解釈していないのはよくわかっていた。
 それだけに小面憎くも、小気味よい。
 そして、…この上なく腹立たしい。
 類は内心の悪意を隠して、できうる限りの優しい笑みを浮かべる。
 「…気を付けてゆくんだよ」
 「え、あ、はい」
 再び頭を下げるつくしへと頷きかけ、類の乗る車は音もなく走り去っていった。

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