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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて039

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 「ゲヘ、げほっげほげほ。ち、違います!誤解です」
 「だ、大丈夫?牧野さん」
 「…牧野さん、平気?」
 真柴と戸上が心配げにつくしを覗き込み、隣の真柴が背中をさすってくれる。
 吹いた。
 吹き出してしまった。
 幸いのこと、皆それぞれの話に夢中で、ほとんどの人がつくしの様子に気が付かなかった。
 だが、さすがに隣に座っていた高階にはバレバレだったらしく、吹き出した挙句に咳き込んでいるのだから気が付かないはずがない。
 「…牧野さん?」
 いっひ~、恥ずかしい~。
 「な、な、なんでもありません」
 「…今日の主役に一気飲みお願いしたら、無理させちゃったみたいで~」
 「真柴さん、あんまり無理させないようにね。牧野さんも、真柴さん、酒が入ると人が変わるから気を付けて」
 「失礼ですね!課長」
 はははは、と真柴の機転で和やかな空気が戻る。
 「そういえば、まだ、牧野さんにお酒、ついでなかったね」
 言われて恐縮しながらも、高階にビールをついでもらい、つぎ反す。
 「もう少し酒が入ったら、みんなから酒を注がれまくるから、今のうちはあんまり飲まない方がいいよ」
 ありがたい忠告だ。
 「はい。あたし、弱いんで、そこは気を付けます」
 ニコ。
 ううっ。
 類のような強烈さはないものの、やはり高階の笑顔も眩しい。
 むしろ、類よりも気さくさや親しみやすい気遣いがあるだけ、女性にはモテるのかもしれなかった。
 「…今は高階さんと専務を両天秤にかけてる女、っていうのが最新版かな」
 ガクッ。
 小声で耳打ちされた言葉に、頭が項垂れる。
 「まあ、それってホラ、あれ」
 顎をしゃくられた先、顔を向けたところで久我山とバチッと目があい、すぐに視線がそらされた。
 特に何か言われたことはなかったけれど、あまり久我山はつくしをあまりよく思っていない気はしていた。
 けれど…。
 「あの人、伊藤とかと同類。確か仲もよかったはずよ」
 「はあ」
 「久我山さんは専務のファンじゃないけど…」
 チラッとつくしの反対隣りへと真柴が視線を走らせる。
 「…課長にホの字」
 悪意を受ける原因のもう一人の方かと、つくしも項垂れた頭があがらない。
 「素敵ですものね」
 「あら、牧野さんも?」
 「…いえ、一般論で」
 案外冷めたつくしのいいように、真柴と戸上がキョトンとする。
 つくしにしてみれば、かつて類やF3と交流していたこともあったわけだし、イイ男、高ステータスにはかなり免疫がある。
 何より、あの高スペックの粋を集めたような司と付き合っていたこともあるくらいなのだから、多少のイイ男では舞い上がれない。
 「まあ、専務より可能性ありそうに思えるものね。同じ高嶺の花でも」
 「高嶺の花ですか?」
 久我山は伊藤と仲が良いというだけあって、とてもオシャレでかなり綺麗目の女だ。
 花沢物産のOLをしているくらいなので学歴も悪くないはずだし、十分エリートなのである。
 類はともかく、多少同年代の男性たちより出世が早いとはいえ高階が相手では高望みには思えなかった。
 「まあ…ね。それより、こうやって話してみると、やっぱり牧野さん、イイ人っぽいし、私もいい年して専務に憧れるほど初心じゃないから、応援するわ」
 「そうねぇ、旦那と結婚してなかったら、王子様の夢もいいけどね」
 頷きあう二人がとんでもない誤解をしていそうで、つくしの方が焦る。
 「いえ、噂ですよ!ぜ~んぜんホントのことじゃありませんからっ!」
 「…あれ?でも、専務と親しそうに話してたよね?この間も、なんか食事に誘われたし?」
 見ていないようでやはり同じ課内。
 わからないはずがない。
 「その…実は、専務とは高校の時の先輩、後輩で」
 「ええっ!?ホント?!」
 「すごいっ!確か専務って英徳だよね?ってことはつくしちゃんも何気にお嬢様!?」 
 驚く二人に、つくしは困ったように小首を傾げる。
 「いえ、あたしは庶民…っていうか、まったくの一般人で。親の見栄で英徳に入ったようなものだったから、けっこう肩身狭かったです」
 庶民どころか貧民の部類だ。
 しかも、けっこう肩身が狭いどころでなく、とんでもない目にあった。
 …類のせいとは言わないが、類の親友であった司とその仲間のF4によって。
 類もそのF4の一員なのだから、やっぱり類のせいともいえるのか。
 「もしかして、それで花沢物産に出向で?」
 真柴の問いに、つくしは曖昧に首を振った。



 「…うう、ちょっと飲みすぎた」
 宴もそろそろ終盤に向かい、二次会へと繰り出そうという雰囲気の頃。
 次から次にやってくる挨拶回りに酒を注がれ、一応一口飲むくらいで勘弁してもらっていたのだが、連日の残業続きの疲労に、けっこう酔いが回っていた。
 …やば、つい最近お酒で失敗したばかりなんだから、気を付けないと。
 さすがに、そこまで酔っぱらってはいなかったけれど、二次会まで付き合うのは無理そうだ。
 どうやって、二次会を断ろうか…主役なのにそんなの許されるかな、と思い悩んでいると、珍しくポケットで震える携帯電話に気が付いた。
 「あ、正輝さんかな」
 ここのところうまく連絡が取り合えない疚しさも手伝って、慌てて携帯電話を手に通話ボタンを押す。
 『…もう歓迎会、終わった?』
 「え?あ、もう少し。いま、ちょっとトイレに立ったところ」
 山崎にしては艶めかしい美声に、つくしが首を傾げる。
 『二次会行くの?』
 「あ、どうしようかと思って。ちょっと飲みすぎたみたいだから、帰りたいかなあって」
 『ふうん、じゃあ、俺から言っておいてあげるから、もう抜けておいで?』
 ふと、その声の主に、酔ったつくしもやっと気が付いた。
 「え?…まさか、花沢類?」
 『うん、そうだよ?いま、牧野がいる居酒屋の外にいるから、出ておいで?』
 「え?え?ええっ?!」
 言いたいことだけ言って切れた電話を、呆然と見入る。
 「外って、ここの外!?なんで」
 慌てて外に出ようとして、だが、躊躇する。
 外に出て…類がいるからといってどうだというのだろう。
 仕事の上司とはいえ、今はもう終業後。
 しかも会社の歓迎会でこの場に来ている自分とは、関係ないはずだ。
 なのに、まるで操られたかのように、類の言うがままにその大切な交流の場を出ていこうとしている。
 自分のそんな不可解な行動に、酔っているとはいえつくしの理性が眉根を寄せさせる。
 「戻ろう」
 我ながら、わざわざ口に出した言葉は言い訳じみていた。

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