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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第一章 もう一度逢いたい

夢で逢えたら022

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 交通事故で入院してきた患者の家族に対するカンファレンス(説明)が、家族都合でキャンセルとなり、午後の時間に多少の空きができた小児循環器内科医師マーベルと外科医エリザベス。
 窓から眺めるまだ残暑のキツイ日差しを眺めるともなく眺めながら、優雅なティータイムにでも洒落込もうかと二人で連れ立って、病院内のラウンジへと足を運ぶ途中、曲がり角から突然現れた男性に、運悪くマーベルが紙コップのコーヒーを振りかけられてしまった。
 「げっ!」
 「わっ、すいません!!」
 「あっちゃあ~」
 今日は、自分で噴出したコーヒーに始まり、書類にもたっぷりとご馳走もし、ついには新しく下ろした真っ白なデニムのパンツも、茶色い水玉模様へと
色変えを期せずして果たしてしまった。
 「うわあ、あんた、今日はついてないわねぇ~」
 しきりに恐縮する相手に、自分もお喋りしながらよそ見をしていた愚を大人しく認め、もはやマーベルは諦めの境地に至っている。
 「うん、厄日だわね。こりゃ」
 一応、上に白衣を羽織っているとはいえ、さすがにそのまま午後の回診に出るわけにもいかない。
 「…ねえ、悪いけど、リズ。あんた、パンツかスカートの着替え病院に置いてない?私、一昨日、宿直の時に着替えたきり、予備の服持ってくるの忘れてたわ」
 「あ~、確か、スカート置いてたけど、大丈夫?」
 ちょっと考えたものの、グラマラスな黒人美女は、ジロジロとマーベルのウェスト周りをガン見して、首を傾げてくる。
 「…何がよ?」
 「タイトスカートなんだけど、ウェストがキツイ上に、ロングになっちゃうかしら、って感じ?」
 「…ほっとけっ!」
 眉間をぴくぴくさせながらも、とりあえず、着てみてダメなようなら看護師たちにあたろうと、着替えを受け取るべく移動する。
 幸い、全体的に大柄なエリザベスだったので、凹凸具合はともかくとして、無理ない程度には履くことができた。
 しかし…。
 「ちょっと、何よ、この思いっきり短いミニスカート!前スリットって下着が見えるんじゃないのっ!?」
 息巻くマーベルに対して、エリザベスはあくまでも冷ややかだ。
 「嫌なら履かなくていいわよ。前のところに怪しい茶色のシミつけたまんまのパンツ履いて、どうにかしたら?」
 ツーンてなもんである。
 「うう、…いいわよ。看護師たちの誰かに借りるから。それまで、貸しててちょうだい」
 「今度、ブロードウェイでラ・トラヴィアータ(椿姫)のアレンジ版が上映されるのよね~」
 「はい?」
 「ダーリンの愛する天才脚本家・エリック・タナーが手掛けてる新作。今度ダーリンと見に行きたいな~なんて?そのS観覧席チケット2枚でどう?」
 ギギギギ、と顔を機械仕掛けの人形のように怖い顔で向けるマーベルに、エリザベスは平然とした愛想笑いで返す。
 「ちょ、ちょっとお!たかが、着替え一枚で、それって高すぎるんじゃないのっ!?」
 「あ~、そのスカートはちょっとしたオマケ?あんた、外科病棟だけ、看護師たちの妙なキラキラ視線控えめだったと思わない?」
 そういえば、どの病棟に行っても、看護師たちのクスクス笑いとヒソヒソ内緒話に悩まされ、さぞやエレインが噂話を広めてくれたのだろうと頭痛を催していたのだが、
看護師界の放送局・エレインの第2の生息地と称される外科病棟に至っては、わりと沈静化していたように思う。
 コツンと、マーベルの頭に軽く拳をあてて、小突いたエリザベスの笑みは本人の素直じゃない友情そのままに、ニヒルに優しい。
 「あんた、感謝しなさいよ?マーサがあんたんとこのエレインからゴシップ聞きつけて、喜々として広げようとしていたの止めたの私なんだからね。看護師たちと馴れ合っていて仲良こよしなのはけっこうなことだけど、あんた、ちょっとあの子たち甘やかしすぎ。いくらなんでも、あまりに目に余ると、上の耳にも届いて、外聞悪いでしょ?」
 「…面目ない」
 「あんたとは、なんだかんだ言ってもウマが合うし、医者としての熱意と腕はぴか一なんだから、ツマンナイことで潰れて欲しくないのよね」
 「リズ…」
 「それにほら、いま、周りがわいわい言いすぎると、イイ年こいていつまでもカマトトぶってるアンタのことだから、せっかく数年ぶりに訪れたイケメンセレブ’S
ゲッチュへの熱意に水差しちゃうかもしれないじゃな~い」
 「…(怒)」
 感動して損した。
 オホホホホと笑うエレインと連れ立ちながら、エレベーターがちょうど行ったばかりで、ラウンジへは階段1F分くらいだったので、エレベーターを待たずに
非常階段を使うことにする。
 「マジで?せっかちねぇ、少し待てばいいじゃない?」
 「何言ってるのよ、まだ老人には程遠いんだから、少しくらい歩きなさいよ。そうじゃなくったって、私たちの職業柄、足を甘やかしてるんだから」
 「それこそ、何言ってるのよ、手術になったらぶっ通しで24時間立ちっぱなしなんてザラなんだから、私は」
 ブーブー言うエリザベスを後ろに従え、ドアを開けようとしたところで、二人の男女の諍うような怒鳴り声に気が付いた。
 「…もう、帰るわっ。私は…なのよっ!」
 「お…なのかっ!許さ…いぞっ!」
 防火壁も兼ねている非常階段のドアは頑丈で、正確な言葉までは聞こえてこないが只事ではない。
 「…ちょっと?」
 引き留めようとするエリザベスの静止を振り切り、ドアを開けてみれば、ちょうど折れ曲がり階段の踊り場の影、入院患者とその家族らしい男女が激しく言い争い、
階下に闖入してきた二人に気が付いていない。
 「リズ、男性看護師たちを数人連れてきて?」
 「わかったわ」
 それだけで通じて、エリザベスは開けて入ってきたドアを足早に戻ってゆく。
 いろいろな事情で病院へ入院してくる人々には、人の数だけ事情があって、病にしろ怪我にしろ生死を争うこの場所には人々の哀愁や愛憎が渦巻く。
 それだけに、知られざる暗部では様々なトラブルも多かった。
 カン、カン、カン。
 刺激しないようにゆっくりと、だが、言い争う男女が気が付くように、わざと大きな足跡を立てて階段を昇る。
 「あ…」
 最初は、いくぶんか冷静なようだった私服姿の女性がこちらに気が付いた。
 その女性の様子で、もう一人のパジャマ姿の男性がマーベルの方へと視線を移す。
 担当が小児循環器科という立場上、成人男性には彼女は見覚えがないらしく、怪訝な顔をしていたが、白衣姿に一応は病院の医師と見定めて、
気まずげに視線をそらす。
 見舞い客の女性の方がマーベルに軽く会釈をして、その場を去ろうとした。
 「待てよっ!」
 とっさに男が女性の腕をつかむ。
 「放してよっ!」
 「ちょ、ちょっと、待ってくださいっ」
 再び流れ出す不穏な空気に、慌ててマーベルが割って入る。
 「先生には関係ありません。申し訳ありませんが、放っておいてくださいっ」
 「私にはもう、話なんてないわよっ!」
 「お前っ!やっぱり、俺を捨てる気なんだなっ!!この浮気女っ!!!」
 ちょ、ちょっと~ヤバイよ。
 リズ、早く来て~。
 いよいよ緊迫してきた空気に、女性の前に立ちはだかって男を押しとどめようとするマーベルの体に緊張が走る。
 と、
 カンカンカン、カンカンカンカン。
 軽快な靴音が階下から昇って、来るのがわかる。
 ところが、再び興奮しだした男女には、周囲の状況はまったく耳に入らないのか、ついに男が女に向かって手を挙げた。
 「このアマっ!」
 「いやあああ!!」
 「ちょっと!やめなさいっ。暴力はっ。こんな階段で、危険…きゃ」
 押しとどめようと一歩出て、もみ合ったはずみに押し出されたマーベルが、階段から足を踏み外す。
 キャアアアアアアァァァッ!
 自分の声なのか、他人の声なのかわからない悲鳴が、マーベルの鼓膜を打った。
 あ、私の声だ。
 妙に冷静な思考が、彼女の恐怖を凍り付かせ、死の一文字が頭に思い浮かぶ。
 ドンッ!
 「ぐっ」
 思ったよりは柔らかな衝撃に続いて、留まり切れず、上半身が浮き上がったように前のめりに突っ込む。
 とっさに顔を庇った腕に衝撃。
 「おいっ!大丈夫かっ!?」
 「キャシー!?」
 「キャシー先生っ!」
 一瞬遠のきかけた意識が、周囲のざわめきを耳に取戻し、ハッキリと覚醒する。
 「う、痛い」
 腕の痛みを堪え、腕を地面に突き立てて、上半身を起こそうとしたところで、下半身を抱え込む力強い腕に気が付く。
 「…えっ?」
 乗りあがるように背の高い男性に馬乗りになり、その男性にしっかりと抱えこまれ、どうやらそのせいで、自分は致命的な怪我を負わずに済んだらしい…らしい?
 え?
 ちょっと。
 それはいいけど、なんで、あ、頭が、頭が、あたしの股の間にぃっ!
 「う、いててて…」
 おそらくマーベル以上の衝撃に、いまいち状況把握ができていない相手は、まだ自分の状態にまで気が回っていない…んだよね?!
 「…」
 「…」
 「ぎゃあああああ、このド変態!どこに顔突っ込んでんのよっ!!」 
 パニックになりとっさに命の恩人の頭を張り倒し、飛びすさるキャサリン・マーベル37才。
 ベッド以外のよりにもよって屋外で、衆人環視の元、男性に股間に頭を突っ込ませるという醜態を晒す事態に、茹蛸状態になりがなら、
目の前で頭を押さえながらキョトンと自分を見つめる美貌の王子様・花沢類の姿に意識を無くしたいと切に願った。

 「ごめんなさいっ!」
 もう、平謝りである。
 階下から騒ぎを聞きつけ、何事かと階段を昇ってくると、上から降ってくる女。
 とっさに受け止めた類も、さすがに受け止めきれずマーベルごと地面に転げる結果になってしまったが、子供の頃から武道を習い、
受け身を取れたため、幸い頭も打たず、重篤な怪我をせずともすんだ。
 しかし。
 「ああ、これはもしかしなくても、骨折してるわね」
 駆け付けた男性看護師たちに言い争っていた男女は取り押さえられ、患者は病室へ、見舞いの女は事情を聴かれるために別室へと連れていかれていた。
 そして、戻ってきたエリザベスが触診したところ、素人目にも腫れはじめていた類の右肩と左足首は骨折。
 上に乗る形となったマーベルの方はほぼ無傷だったが、上半身を支えた両手首を捻挫していた。
 「本当に、ごめんなさい。助けてくださったのに、私ったら頭を叩いてしまうなんて…」
 叩くなんて可愛いものじゃなかったが、こうなったらそれで押し通すしかない。
 そして、一方果敢にもマーベルを救った男は、さっきから…笑いの発作に襲われている。
 「ぶううううっ!!!くくくく、あーはっはははは…う、いててて」
 「あ、あのう、花沢さん?」
 ストレッチャーが運ばれてくる間、外科医師のエリザベスが類の応急処置をしているのだが、痛いと臆面もなく言いながら、
神経がよほど図太いのか類は笑い続けている。
 「ご、ごめん、俺、変態だなんて、言われたの初めて」
 「そ、それは、本当に申し訳なかったです!花沢さんが受け止めてくださらなかったら、私、最悪、死ぬかもしれなかったのにっ!」
 「そうよ、キャサリン、命の恩人によりによって変態って、あんた…」
 呆れ返るエリザベス。 
 もう、マーベルは恥じ入るしかない。
 そうこうしているうちに、ストレッチャーが到着し、立ち上がれない類の体を看護師たちが支えて、横にならせる。
 「本当に、ごめんなさい。そして、ありがとう」
 「…もう、いいよ。あんたのごめんと、ありがとうは聞き飽きた」
 俯いていたマーベルが、ハッと顔を上げる。
 目が合った瞬間、類が悪戯っぽくニヤリと笑う。
 「内股にホクロが三つ」
 「…え」
 ヒラヒラとマーベルに手を振り、類は大人しくストレッチャーで運ばれていった。
 「ええええええええええええええええええ」
 一拍遅れてマーベルの絶叫が病院内を響き渡る。
 「ぶー!くくくくくっ!!」
 いつまでも、いつまでも類のご機嫌な笑い声が、遠ざかりながらマーベルの耳に届いた。

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花男ファンの仲間の世界へWellcome!な鍵コメの方へ

初めまして^^とっても熱烈な応援、嬉しくて舞い上がってしまいました。
その分、頑張らねば。

私も読破したのはそういえば、今年のこと。はるか昔、初めて花男を知った時は、まだ学生でハマったのですが、完結を見ないままに社会へ出て(あら、年モロばれ?wはい、同世代です^^!)、出戻ったあげくに、
病気の世界へまっしぐら?
「夢で逢えたら」は、20話過ぎても「つくしちゃん」が出てこないという花男にあるまじき作品。
面白いと思ってくれるかなあと、内心ドキドキなお話でした。もちろん、出てないというか、皆さんの予想通り、たとえ登場人物たちの話の中だけだとしても(例えばですよ?)つくしちゃんは登場しているのですが、
その影響で、司とのラブラブがまったくないという、ちょ~と物足りないものになっているのでは…という心配も。
ご予想に関しては、おおおと思わせていただきました^^その『おおお』というのは、当たらずとも遠からず、というところで、もうすぐつくしちゃんの秘密のベールが剥がされてきますので、乞うご期待!?

私の更新時はご察しの通り、だいたい真夜中です。予約投稿している時もあるので、いついつ、とは言えないのですが、一律0:00付で配信しています。ただ、時間がない時などは、いつ配信するとも…><でも、皆さんの応援をいただいたおかげで、やる気が↥していますので、頑張って毎日更新したいなあと思っています。
では、明日の分はすでに予約配信しましたので、0:00にお会いしましょう♪

予告 重要人物登場!
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