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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて038

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 家に帰り着くと0時を回っていた。
 気ぜわしく冷蔵庫を探って軽いものを摘まみ、シャワーを浴びようと服に手をかけ、ポケットに入っていた携帯電話が落ちた。
 「…あ、着信入ってる」
 社内にいたので音を消しバイブになっていたので、床で小さく震えている。
 手をかける寸前、着信は切れた。
 着信履歴を確認すると、山崎の名前。
 今日は、終業時から何度かかけてくれていたようで、とれなかったことに罪悪感を感じた。
 もちろん、仕事なのだから仕方がない。
 けれど、実際にはそれだけじゃないのを自分は知っている。
 今日ばかりでなく、ここ数日、山崎からの電話に出れず…タイミングかこちらからの電話も通じてなかった。
 そのことにホッとしている。
 山崎からのプロポーズを保留して以来、つくしにはどこか迷いが生じていた。
 山崎に対して何が不満というわけではないと思う。
 けれど、山崎の放った一言がどこか胸の奥を塞いでいた。
 「…ねえちゃん、帰ったの?」
 起こさないように足音を忍ばせていたつもりだったのに、起こしてしまったようで、二部屋あるうちの一部屋が開けられ、進が寝ぼけ眼で顔を出した。
 「あ、ごめん、起こしちゃった?」
 「ん~、いいけど、もう午前様だよ?いくらなんでも、嫁入り前の若い娘が遅すぎない?」
 「嫁入り前って…あんたいったいどういう世代の人間よ」
 思わぬ年より臭い言い草に、吹き出しかけて口に手を当てる。
 「笑ってんなよ、マジなんだから。仕事だから仕方ないけど、あんまり遅くなるようなら俺に電話しろよ。迎えに行ってやるから」
 「…あんたが?」
 「しょーがねぇだろ?俺よりむしろ凶暴で強い姉ちゃんを守ってやる意味があるのかわかんねぇけど、俺、一応男だし」
 一応、というところは情けないが、それでも姉を思う弟の心が嬉しい。
 「…うん、ありがと。そうする。それはともかく、あんたは寝て寝て。明日も朝から学校でしょ?それともバイト?」
 「明日は学校。バイトはその後。けっこう遅くなるかもしれないから、飯いらないよ」
 「わかった。今週は遅くて、ほとんどあんたに当番任せちゃったから、来週かわりにやるね?」
 「…いいよ。まだ仕事かわったばかりで大変なんだろ?俺も来週は遅くなる日が多いし。とにかく、もう寝るわ」
 「うん、お休み」
 進が寝室に戻るのを見送っているうちに、電話を折り返す機を失してしまった。
 …もう1時近いし、さすがに寝てるよね。
 結局、メールで返信するにとどめる。
 『いま、帰りました。ここのところ電話に出れなくてごめんなさい。また、改めて明日電話します…つくし』
 出向、結婚、嫌がらせ、類…さまざまなことが一気に重なりすぎて、よけいにつくしは疲労を感じずにはいられなかった。



 「お忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。えー、新しく我が食品企画研究開発部の新しい仲間、牧野さんの歓迎の意を祝して、歓迎会を開催させていただきます」
 今日の歓迎会の幹事を任せられた部内最年少の村坂が、軽快に進行を務め、普段はあまりかかわりのない部長へと挨拶、企画課長の高階へと乾杯の音頭を任せる。
 そして、食事・歓談タイムへ。
 つくしは最初、部長と高階の間に座らされそうになったが、村坂の機転で高階の反対隣り、課内の女性社員真柴との間へと誘導された。
 正直、つくし的にも上司に挟まれての酒宴となると気を使うもよいところだったので、村坂の気遣いに感謝する。
 高階は直属の上司で普段から何かと指示を受けることも多く、気さくな人柄だ。
 同じ課員とはいえ、位置的につくしは高階の直属的な立場だったので、あまり他の社員たちとの交流がなく、女性同士だというのに真柴や、他2人の女子社員たちとの交流があまりなかった。
 「…牧野さんと一度ちゃんと話してみたかったの」
 真柴はつくしの9歳年上。
 既婚者で一男一女の母。
 話してみると陽気で、包容力もある女性であっという間につくしと打ち解けた。
 真柴のさらに横に座る陽子とは4歳違いだが、「陽子ちゃん」、「早苗さん」と名前で呼び合うほど仲がいい。
 同じ女子社員とはいえ、つくしたちとは遠く離れた席、男性社員たちに囲まれて座る久我山とはあまり気が合わないらしかった。
 「私も、真柴さんや、戸上さんとはお話したいと思っていました」
 はにかみつつもハキハキ受け答えするつくしに、真柴と戸上も親しみを感じたのか、会話が弾む。 
 酒が入ったことで、かまえていた気持ちがほぐれてきたこともあるのだろう。
 「伊藤との一件、スカッとしたわよ」
 含み笑うように真柴の横から身を乗り出して、つくしをからかう。
 「あー、もしかして見られてました?」
 「ううん、総務のかなえちゃんから聞いたの」
 はう。
 かなえとはかなり親しくなってはいたものの、彼女はいわゆる放送局タイプで、悪意はないもののあれこれ口が軽いのが考えものだった。
 「…それって、もうかなりの人に回ってる話なんでしょうか?」
 ヒクつくつくしにニンマリと笑う。
 「けっこう」
 「うっ」
 「でも、大丈夫。変な風には回ってないから。もともと、伊藤って女子の反感も買ってる女だから、誰も牧野さんのこと悪くは言ってないって」
 「…はあ」
 反感を買ってるなら、つくしも同類だ。
 「まあねぇ、牧野さんもいろいろ噂されてるっていうのは否定しないけど」
 「…どんなんですか?」
 「聞きたい?」
 聞きたいか、聞きたくないかと言われれば、正直あまり聞きたいものではない。
 だからといって、陰でいろいろ言われていると言われて、気にならないはずがなかった。
 「ええ、まあ」
 「ん~、実は私も詳しくは知らないというか、一部の人たちの間で流れている噂らしいんだけどね」
 「……はあ」
 「その一部っていうのが、ほら、わかるでしょ?」
 と、言われても察しのいい方ではない自覚があるくらいなので、よくわからない。
 「えっと、もしかして、専務とのことですか?」
 「そうみたいね~。で?噂ってホント?」
 「噂ですか」
 嫌な予感に、口の中が妙に乾いてビールを含む。
 「…花沢専務と誰だか専務の友人とを二股にして、専務をこっぴどくフッた悪女とか?」
 「ぶっーーーーーーーーーーーー!!」

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