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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて035

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 「おはよう」
 「あ、眞子おはよう!」
 「…おはよう、江島さん」
 そのまま通り過ぎ、向かい側の列端の自分のロッカーの前へと眞子が陣取る。
 かなえも自分のロッカーに戻ったのを見送りながら、そそくさとつくしも着替えだす。
 …しょうがない、帰りにでも片づけるか。
 さっさと着替え終わった眞子とかなえと連れ立ちロッカールームを出ると、眞子が口を開いた。
 「嫌がらせされてるなら、かなえのいうとおり課長に言った方がいいと思う」
 「…うん」
 「この間、伊藤をガツンと撃退したことで、けっこうつくしちゃんへの目も変わったみたいだけど、こういう誰だかわかんない嫌がらせって、愉快犯的なところあるから、すぐにはなくならないかもしれないけど」
 それはよくわかる。
 逆に、先日の伊藤何某女子の一件のように、面と向かってくれた方が対処の仕方がある。
 ある意味、あの美人秘書は潔かったのだといえた。
 陰湿なのよね、実際。
 「考えてみる」
 正直、イイ大人がこんな嫌がらせをされているなんて、逆につくしの方が恥ずかしくて言いたくない。
 手をこまねいているつもりはなかったけれど、一応、それとなく周囲の人間には目を配って、嫌がらせをしてくる相手を限定して対処しようとは思っていたのだ。
 …ていうか、花沢類の気まぐれがやめば、周囲も飽きてあたしのことは放っておいてくれると思うんだけど。
 一番厄介なのは類なのかもしれない…いや、類に決まってる。
 「まあ、良かったらしばらく、着替えくらいはあたしのところに置いたら?」
 眞子が提案する。
 「あ、いいねぇ。あたしのところも使ってよ。さすがに、あたしたちのところにまで悪戯するようだったら、あたしもうちの課長に言うし。そこまでしたら大事になるから、相手もよほどのバカじゃない限り自重するよね~」
 「バカかもしれないけどね~」
 明るく返す眞子の言葉もシャレにならない。
 でも、二人の気持ちは嬉しかった。
 「ありがとう。とりあえず、高階課長に相談、してみようかな」
 「うん、そうだよ。高階さん、やり手だけど優しい人だし」
 「そうだね」
 穏やかで、見た目は少し類に似たところがあったが、断然社交的で優しい人だ。
 仕事に対する厳しい姿勢とはギャップがある。
 実はつくしが花沢物産に初出勤の日、その高階とブツかった縁があったが、そのことで個人的に話す機会があって、グッと親しみが湧いていた。
 「…まあ、でも実はつくしちゃんが嫌がらせ受けてるのって、高階さんが原因っていうのもあるかもしれないけどね」
 「は?」
 口をポカンと開けるつくしに、眞子とかなえが困ったように顔を見合わせる。
 「あたしたちも、課が違って遠目にしか見たことないんだけど、つくしちゃんと高階さんてけっこう仲良さげ?」
 「引き立てられてるっていうか、一緒にいること多いよね?」
 あまりに意外なことを言われて、自分と高階の行動をとっさに思い起こす。
 「そ、そんなことないよ」
 とはいいつつも、確かに高階について業務内容の指示を受けることも多い。
 「まあ、つくしちゃん新入社員てわけじゃないし、その新入社員以上にガッツリ頑張ってるからあたしたちも忘れそうになるけど、実は外部さんからのやり手なんだもんね。高階さんもつくしちゃんの力を借りたいんだろうし」
 「…いやあ」
 何とも言い難い。
 「つくしちゃんもわかると思うけど、ほら、高階さんてあの見かけじゃない?クールな専務とはちょっと違うけど、少し風貌も似ていて王子様な美形っていうか」
 「専務みたいに雲の上の人って感じじゃないしね~」
 言いたいことはわかる。
 つくしにしてみても、高階はF4に近い人種に見えなくはなかったけれど、副社長や専務などという普段は口もきくことがないような高嶺の人物とは違い、普段直接かかわる地位にある。
 加えてあの容貌と柔らかい性格。
 女子社員の人気が高いのも当然。
 もしかしたら、高嶺すぎる類よりも、高階に対する嫉妬の方が多かったのかもしれなかった。
 …あたしって迂闊?
 「迂闊だったよ」
 ぎゃふん。
 だが、眞子が言ったのは違う意味だったらしく…。
 「つくしちゃん、専務に相談してみたら?」
 「あ!そうだよね!!つくしちゃん、確か専務とお友達だったんだよね?」
 …それはありえなかった。



 事務所の自席へ戻ると、最近の自分の日課は、悪戯チェック。
 他愛無いことばかりだったが、そうとはいえ、確かにいつまでも見落とすわけにはいかない。
 まさか、こういったことで男性社員に嫌がらせをされるとは思えないので、密かに女性社員たちをチェックしている。
 このフロアにはつくしの所属する食品企画研究開発部を含め3つの部署が雑居している。
 もちろん、それぞれの部署ごとにかたまって席を作ってはいるのだが、眞子たちの所属する総務部は自部署ばかりでなく、様々な部署に顔を出し、それがまた自然だ。
 当然、つくしの机のそばをウロついていてもそう不審ではない。 
 「牧野さん」
 考えていた傍から、声をかけられつくしは振り返った。
 「頼まれていた4Fの資料室の鍵」
 「あ、金城さん、すいません」
 「用が終わったら、山田か野上に渡しておいてくれる?俺、午後から出かけるから」
 「わかりました」
 線が細く神経質な印象の金城は、ニコリともせずに用件だけを告げ、チラッとつくしを一別して自部署へと戻って行った。
 高階と同じ大学の出身だというこの金城は、かなり優秀な社員で他の社員たちにも一目置かれている。
 にもかかわらず、花形部署の営業部や企画部ではなく、総務というのはコミュニケーション能力に乏しいことが原因らしかった。
 実際、人見知りが少ないつくしもこの金城が苦手だ。
 見た目で人を判断することはめったになかったけれど、なぜかあの蛇のような冷たい目が馴染めない。
 そうはいっても司の例もあるので、つくし的にはいらぬ偏見はよそうと、できる限り他の社員たちに接するように相対しているつもりであったのだが。
 とりあえず、今日はロッカーの方の盛大な嫌がらせのみで、机には何もされていないようだと安堵の息。
 なんだか空しくなってくるが仕方がない。
 パソコンに貼られた不在時の電話メモを順に読み、それぞれに取り組んでゆく。
 外部の会社から2件、社内から3件。
 そして、昨日回ってきていたいくつかの書類を読み、対処を考え、気が付けば昼。 
 ふと気が付くと、自分の前の内線電話の着信灯が赤く点滅していた。
 と、時間差で、音に気が付く。
 「牧野さん!電話」
 いつまでも着信せずにフロア内で鳴り響く電話に、じれた同僚が声をかけてくる。
 「あ、すいません」
 一言謝罪を入れて、電話を取ると…。
 『…おはよ?足の具合どう?』
 まったく、予想していなかった相手からの電話に、つくしは二の句をつけなかった。

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