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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて034

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 類との奇妙なお食事会(カフェでの軽食のみになってしまったが)の後…。
 結局、類の呼んでくれた車で、弟と二人暮らしのアパートに送ってもらった。
 さすがに、夜もよい時間。
 感謝を感じてはいたが、類を部屋にあげるのには躊躇した。 
 そして、類もそんなつくしの気持ちが通じていたのか、誘うまでの強引さが嘘のようにあっさりと帰って行った。
 ホッとしたような、申し訳ないような…。
 いやいや。
 かなり類に対する悪印象や、わだかまりというものはつくしの中では薄れ、昔に感じた慕わしさとは別のものだが、少なくても類に対する恐怖心のようなものはなくなっていた。
 あれは犬にかまれたようなもの…いや、類を犬と言ってしまうのは、実際にえらい目にあったつくしにしてもかなり抵抗があったが、まあ、とにかく、その類に女に対してひどいことをしたという認識がないのだから仕方がない。
 ふつう、そういう男こそ非道だと人はいうのだろうけれど、不思議に類にはそれで赦されてしまうところがある。
 無邪気な子供のような。
 おそらく、本当に気ままな子供と同じで、そこに特別な気持ちなどなく、腹が減ったから食事をする、眠くなったから寝る…ただ、それだけの意味しか類にないからなのかもしれない。
 …言い寄られたから、キスをする。
 望まれて、気が向いたからセックスをする。
 それにしては、けっして望んでなく、どうみてもまともな状態ではなかったつくしに対してしたことの行為が解せなかったが、たとえ類が相手ではなかったにしても、つくしに隙があったことは確かだった。
 もしかしたら、迂闊な女だから、あるいは無防備な女だから、そういう方面でもルーズだと思われたのだろうか。
 そう思うと、それはそれで別の憤りと悔しさも感じたけれど、どちらにしろ今はそうは思っていないと思うし(類の態度から)、隙を見せなければいいだけだ。
 第一…自分だけがいつまでもこだわって、取り返しのつかないことを恨んで、苦しい思いをするのではバカみたいではないか。
 だが、そう思うようになったのも、ホテルでの一件を除けば紳士的な類の態度と、高校時代が嘘のような親し気な気さくさ、つくしのもともともっていた彼への憧憬、そして何より、先日のお食事会での彼の言動が大きく作用していたことは否めない。
 怪我をしたつくしをおぶってくれて(やりすぎな気もするけれど)、家まで送ってくれたことはもちろん、ちまたでもできる男、けっして立場に甘んじるぼんくらなどではない時代のリーダーであるジュニアの類が、つくしの仕事を認めるような発言をしたのだから。



 人は自分の努力や才能、能力などを認められると、それ以上の力を発揮できる。
 実際…単純なきらいのあるつくしがそうだった。
 いままでもけっして手を抜いていたわけではない。
 だが、突然に降ってわいたような他企業への出向という現状に戸惑いが多く、一生懸命にやってはいたものの、空回りも多かったというのに、気持ち一つですべてが変わる。
 花沢物産という大企業の中で委縮しがちで、新入社員のように指示に従い、業務についてゆくことに腐心していたのが、自分の知識、経験も押し出すようになった。
 もちろん、もともと周囲の人間に気を使い、尊重することも自然に知っているつくしだったから、他の人間にゴリ押ししてトラブルを起こすようなこともなく、むしろつくしに対する他の人間たちの目も良い方に変わるばかりで、つくしが当初気が重かったこの出向は、つくしにとっても実りの多いものになっていた。
 だが、光があれば影があるように。
 すべてが順調というわけにもいかない。
 「…つくしちゃん?」
 ロッカーを開けたまま、固まっていたつくしを不審に思ったのか、同じ列のかなえが声をかけてきた。
 つくしに因縁をつけてきた美人秘書の一見以来、課は違うもののかなえ、眞子とは名前で呼び合う仲になっている。
 「あ、おはよう。ごめん、入ってきたの気が付かなかった」
 「ううん。どうしたの?」
 怪訝にロッカーを覗き込もうとしてきたのをさえぎり、つくしが先んじてドアを閉める。
 「はは、すっごく汚くしてるから見ないでよ~」
 「え~?つくしちゃん、事務所の机の上も綺麗にしてるじゃん」
 つくしのもともとの会社では外出も多く、外部の人間がやってくることも多かったので基本スーツ着用だった。
 だが、現在花沢物産の部署では営業部は別にあり、男性社員は作業着、女性社員は制服が支給されていた。
 そのため、着替えるロッカールームが設置され、各々自分用のロッカーを持っていることがつくしにとって逆に裏目に出ていた。
 実のところ、高校生の時のような嫌がらせがいまだに続いていた。
 さすがに盗難事件に発展するような大きなものがなくなったりすることはなかったし、逆に巧妙なことにいつまでも見つからないということがない。
 一日隠されたと思ったら、帰りにはひどい状態で戻されているなんてこともままある。
 しかも、基本鍵をかけないのが普通のこの場所で、ここのところ鍵をかけていたというのに、なぜか嫌がらせが続行している。
 効果があったのも2、3日だけ。
 と、いうことは、スペアキーを容易に手に入れることができる立場の人間ということなのだろうか。
 先ほど見た、ロッカーの中の惨状を思い出し、またもため息が洩れそうになる。
 被害がやんだことに油断して、置いておいた予備の生理用品がロッカーの中にばらまかれ、赤や青のインクで汚されていた。
 最初、赤インクのみが見えたので、まさか使用済みのものが…とギョッとしたが、その後ろに青いインクのものが見えて、ホッとしたのもつかの間、暗澹たる気分に憤りよりうんざり。
 以前よりは嫌がらせの頻度が下がってはいた。
 それがちょうど例の美人秘書を〆てやった後のことなので、目撃した一部の人間やら噂(想像したくもないが)を聞いた人間はつくしの反撃をおそれてやらなくなっているのかもしれなかったが、こうした陰湿な嫌がらせには対処のしようがない。
 「大丈夫?」
 つくしの顔色を見て何事か察したのだろう、かなえが心配そうにつくしの顔を覗き込んだ。
 「…嫌がらせ、何かされてるなら高階さんに報告した方がいいよ」
 「え?」
 かなえや眞子に言った覚えがなかったので、つくしが驚いて顔を見返す。
 「つくしちゃん、言わないけどわかるよ。この間も事務所の机の周りなんかチェックしまくってたよね?」
 「……」
 同じフロアとはいえ、課が違い席も離れているかなえに気が付かれているとは思わなかった。
 「あたしも眞子も、気を付けてみるようにはしてるんだけど、…ごめんね?」
 「ええっ。いやいや、そんな。こっちこそ、気を遣わせてごめん。嫌がらせ…っていうか、まあ、うん。小学生みたいなのをね、ちょっとされてちゃってんだけど」
 あらためて口にするとヘコむ。
 いつまでたっても、自分は進歩ない悪意にされされて。
 本当にうんざりだ。
 F4の…類のせいで。
 はあああぁぁぁ。
 「…ため息つくと、幸せ逃げてくよ?」
 背中をポンと叩かれて振り返ると、眞子が困ったような顔をしていた。

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