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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて033

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 ダラダラダラ。
 つくしの内心はこんなだ。
 「…何やってんの。早く」 
 「い、いや、そ、そ、それは、ちょっと」
 せっかくの親切だが、さすがにつくしに「はい、そうですか」と言って類の背中におぶさる度胸などない。
 知らず知らずのうちに、冷や汗たらしながら後退りしかけるつくしにため息を一つつき、立ち上がった類が、否やも言わせる間もなく、つくしの背中とひざ裏に腕をかけ一気に横抱きに抱き上げた。
 「きゃあっ!や、やだ」
 「…暴れないでよ。いくら小柄だって言ったって、さすがに重い」
 重い…の言葉に落とされては叶わないのでさすがに暴れるのはやめ、だからといって唯々諾々とお姫様抱っこ!されているわけにはいかない。
 気のせいか、人通りの少ない通りとはいえ、なんとはなしに視線も感じる気がする。
 「歩けるから!下ろしてっ」
 「…歩けないじゃん。俺、いつまでもこんなところで押し問答していたくないんだけど」
 「で、で、でも、でもでも」
 「でもじゃないでしょ?別に延々とこのまま歩くとか言ってるわけじゃないんだし…」
 そう言いつつ、もうさっさと歩きだしている。
 つくしとしても、正直、自分の足の具合からして歩くのは無理だと思うし、いつまでも往来で座り込むわけにもいかないのもわかってはいた。
 だが、お姫様抱っこ!
 昔は…何度か司に抱き上げられた経験もあり、日本人の女性にしては免疫があるともいえる。
 それでも、司は一時期恋人だった男だ。
 赤の他人というか、いろいろ複雑な関係に陥った相手…初恋の男性であり、一夜限りの関係を持った相手というなんとも一言では言い表せないような関係に陥った男に、抱き上げられるのには激しい抵抗感があった。
 それよりなにより、恥ずかしすぎる。
 「わ、わかったわ!わかったから…下ろしてよ。その、迷惑だと思うけど、か、肩を貸してもらえれば」
 「…面倒くさいから却下」
 「おんぶ!あたしが悪かったわよっ!お願い、おんぶににしてっ」
 もうつくしの頭の中はパニックだ。
 真っ赤になった顔を周囲と類から隠すように手で覆い、もはや恥も外聞もなく懇願する。 
 ま、まだおんぶの方がマシよっ!
 「最初から素直におぶさればいいのに」
 呆れたような顔をした類に下ろされ、躊躇しつつも、向けられた背中に覆いかぶさる。
 「俺もさすがに、こんな往来で女抱き上げて歩くのはちょっと恥ずかしいかなってね」
 火を噴きそうなほど火照った顔を類の大きな背中に押し付け、つくしは聞かないふりであえて答えなかった。



 結局、近場のカフェで花沢家の車を待ち、花沢専務との優雅なお食事会は、そのカフェでの軽い軽食となった。
 店に着くなり、類が店の店員に口をきき、持って来させた湿布薬と包帯で応急処置をしてもらった。
 一見、箸を持つこと以外の雑事は何一つできそうもない類だったが、器用にクルクルと包帯を巻いてくれ、意外な一面を見せた。
 思い起こせば、司にも手当をされたことがある。
 何をしても、何を言われても、類といると司を思い出す。
 いや、おそらく類…というより、F4といるとだ。
 司とともに、あきらや総二郎とも疎遠だった数年間、司のことを思い出すことはほとんどなかった。
 もちろん、司と別れた当初はあえて思い出さないように意識していた自分を自覚していたが、いつしか自然に思い出さなくなっていたのだ。
 それが、ここのところやたらと司を思い出す。
 「…はあ」
 知らず知らずのうちにため息をついてたらしい。
 向かい合ってサンドイッチを摘まんでいた類が、小首を傾げてつくしを見返す。
 「なに?どうしたの、ため息なんかついて」 
 「…あ、いや、その。なんだか…迷惑かけちゃってごめんなさい」
 殊勝に頭を下げるつくしに、類が肩を竦める。
 「俺も鬼じゃないよ。牧野じゃなくても、怪我して蹲ってる女がいたら、声くらいかけるかも?」 
 かも…って疑問形かよ。
 内心、ガクッとなりながら、確かに見たからに冷淡そうな類であればさもありなん。
 そもそも、淡白というより他人に無関心だった類は、もともとそういう男だった気がする。
 …あ、でも、昔も抱っこ、されたことあったな。
 懐かしく思い浮かぶ遠い過去は、苦いものばかりでなくて、どこかほんのりと温かく面はゆい。
 確かに、この目の前の美しい青年に憧れた日があった。
 憧れて、憧れて…今思っても幼すぎる恋だったけれど、あれは確かにつくしの初恋だったのだ。
 思い出は美しいままの方が、きっと幸せに違いない。
 「…なに?じっと見て」 
 「あ、ごめん。なんだか、あんたと…花沢類とこんなところで二人で食事してるっていうのがなんだか信じられなくって」
 「…そう?」
 「うん。第一、あたしなんかが花沢物産みたいな大企業に技術提供なんてすごい名目で出向してきたこと事態、信じられないというか」
 つくしの妙に自信なさげな物言いに、類が小さく笑う。
 「ずいぶん、謙虚なんだね。…あんたの上司は、あんたのことずいぶん買ってたよ?」
 「え?」 
 「仕事態度も真面目だし。本当は、あんたをこの時期、出向させるのは渋ってたんだ。それこそ、あんたより経験もある社員を…なんて推薦してたけど、実際はあんたを出したくなかったんじゃないかな」
 「…はは、そんなことないよ。あたしよりもっと他の人をって思っただけだって、本当に」
 他の社員を…と会社側から推薦されていたというのは、つくし的には正直ヘコむ。
 しかし、『誰でもかわりがいる』と言っていた山崎ではなかったが、実際にそのとおりだし、つくし自身も経験も浅い実力もまだまだなつくしよりもずっと相応しい適任者がいると思っていたので、それほど失望はしなかった。
 まあ、確かに…多少はガックリくるところがないとはいわないけど。
 けれど。
 「俺はあんたでよかったと思うよ」
 「はい?」
 真面目に告げられた言葉に、つくしは目をパチクリと瞬かせた。
 両肘をついて組んだ両手に顎を乗せた類が、柔らかく微笑む。
 それは美しい笑み。
 「…課長の高階から聞いてるよ。あんたの経歴書のとおりあんたは素晴らしい人材だって。ガッツもあるし、発想力が豊かでそれを実現する努力がある。チームの連中とも上手くコミュニケーションをとって、いい交流してるそうじゃない?俺は信じてるんだ」
 「……」
 「あんたはきっと、うちにとってもなくてはならない人材になる」
 「…花沢、類」 
 ビー玉のような不思議な色合いの目に浮かぶ、真摯な煌めきに、つくしの視線が囚われ離すことができない。
 その眼を見つめていると、彼の言葉だけが、他のどんなものよりも信じられる気がした。

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