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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて032

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 つい昔へと気持ちが回帰してしまった流れで、口をついてでた名前は、たぶん、類に再会した時から気になっていた人だったからだろう。
 けれど、類は何食わぬ顔で、いつの間にか赤に変わった信号機の手前で、足を踏み出そうとしていたつくしの体を引き留め、視線を反らす。
 「信号が変わったね、危ないよ。…金曜日の夜とはいえ、案外人通りは少ないね」
 「あ、うん、ありがと。この辺はオフィスビル街だし。今時分なら、ちょうど居酒屋さんにつめている時間帯だから、もう少ししたら残業を終えた人たちでまた人が増えるかな。…まあ、あんたたちには金曜日も週末もないんだろうけど」
 「そうだね。定期的な休日なんて感覚、学生の時以来ないかな…とはいっても、たぶん牧野達みたいな大半の学生とはちょっとサイクル違ったかもしれないけど」
 言われて、大いに頷ける。
 おそらく類が言っているのは、大企業のジュニアとして研鑽に励みだした大学と仕事との二足の草鞋のことを言っているのだろうが、つくしとしては、F4といえば無軌道に過ごしていた高校生の時のイメージしかない。
 そんなつくしの、類たちへと幻想を抱かないシビアさが、類には珍しかったのかもしれなかった。
 …そして司にとっても。
 「で、俺のこと嫌いなの?」
 「は?」
 「さっき、聞いたじゃん。肯定も否定もされてないけど。それとも前のこと、まだ怒ってる?」
 覗き込まれるように聞かれて、ただでさえまた顔の温度が上がってしまいそうだったというのに、あえて避けていた一度の過ちを思い起こされて、つくしは顔をカッと火照らせる。
 今度の赤面は怒りよりも、羞恥が大半だ。
 「…そ、そのことはもう忘れてって言ったでしょ。もう、あたしも忘れたし…」
 「ふうん?じゃあ、俺のこと、嫌いじゃないんだ?」
 嫌いじゃないとは言っていなかったが、さりとて嫌いなわけでもない。
 …もちろん、好きなわけでもなかったが。
 「まあ、…お世話になっている企業での上司だし。好き…も嫌いもないよ」
 やや不本意だが、あたりさわりがないというと、そういう風に答えるしかない。
 「よかった、俺、牧野のこと狙ってるって、以前にも言ったよね?」
 「…は?」
 聞き間違いだろうか?
 つくしを見つめる眼差しが、透明なばかりだった少年の日の類とは異なり、どこか艶を含んで色っぽい。
 「彼氏、いるんだっけ?」
 魅入られたように類から、視線を外せない。
 「…どんな男か知らないけど、今の男やめて、俺と付き合わない?」
 「……え?」
 「俺じゃあ、不服?今の男より劣るのかな?」
 自信満々で傲慢な物言いが類だと思えない。
 いや、再会した時からすでに、つくしの知る彼とはまるで違ったのだ。
 慣れた口説き文句。
 女を蕩かす目で見て、どう自分が見られているか、女からどういう反応を引き出せるか熟知し、そそのかす。
 呆然と、つくしが類をただ見ていると、
 「ぷっ」
 突然噴出した。
 「あはははははっ」
 さっきまでの淫靡な雰囲気が嘘のような屈託のない子供のような笑顔。
 「…ハトが豆鉄砲食らったみたいな顔して。おもしれぇ!」
 「へ?は、はあ?」
 ハトが豆鉄砲って…。
 つくしの唇の端が引きつる。
 「ふつう、男から付き合おうって口説かれて、ボケッとアホ面さらす女ってそうそういないと思うけど」
 「あ、アホ面~っ!?」
 あまりの形容につくしのこめかみに青筋が浮かぶ。
 「なによっ、それ!」
 言うに事欠いて、なにそれ?
 しかも、人が真面目に話を聞いていれば、からかうなんてどういうこと!?
 つい真剣にとってしまった分だけ羞恥に怒りが誘発され、つくしが失礼千万な男に鉄拳をくらわしてやろうと、拳を振りかぶり、足を後ろへと引く。
 「こ、このっ」
 性悪男っ!
 が…。
 「…きゃっ」
 ポキッという音についで、ガクッと足首が折れ、いきなりのことに踏みとどまれず、つくしがバランスを崩す。
 「っ!?」
 とっさに、そばに立っていた類がつくしの腕を掴み、引きずり寄せた。
 「…あぶねっ!」
 つくしの華奢な体が類の胸に抱き留められ、なんとかたたらを踏むのみで転倒は免れる。
 だが。
 「…あッ痛っぅ」
 瞬間走った鈍い痛みに、つくしは足首へと片手を伸ばし、小さく呻いた。
 「…なに?どうしたの?怪我した?」
 眉をひそめた類が、つくしを支えつつ、屈みこみ、つくしの捻った足首を観察する。
 「なんか、急にガクッとして…」
 「どれ?足首?」
 「うん、ちょっと…って、大したことないからっ」
 しゃがんだ類が、突然つくしの足を靴ごと手に取り、つくしがギョッとして足を取り戻そうと抗った。
 だが、類は恥じらうつくしの抵抗も軽くいなし、無理矢理靴を脱がせて様子を伺う。
 「いいから、恥ずかしがってないで大人しく見せな?…骨は折れてはいないみたいだけど」
 と、類が軽くつくしの足をひねり、瞬間走った激痛につくしが小さく悲鳴を上げる。
 「痛いっ!」
 「…捻挫だね。ハイヒールの踵が折れて、とっさに捩じっちゃったんだろうね。どうする?救急車呼ぶ?」
 「ええっ?」
 類の大げさな物言いに驚き、つくしがのけぞって遠慮する。
 「い、いい、いい。救急車なんて大げさだよ!ちょっとひねっただけだから歩けるし」
 類の手からそそくさと足と踵の折れた靴を取り戻し、地面に置いた靴にそっと足を乗せるも…。
 「…い、たたたた」
 ビーンとしびれるような痛みに、とてもじゃないけど、足を地面に下ろせない。
 …うう、どうしよう。
 「車呼ぶよ。とりあえず、こんなところに突っ立ってるのも邪魔になるから、ほら」
 思わず、つくしは類の背中をポカンと見送ってしまった。
 「え?」
 「…おぶさって?車が来るまでどこか近くの店ででも時間を潰そう」
 「って、えええええええ~~?」
 しゃがんだ類に背中を見せられ、つくしは棒立ちに固まった。

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