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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて031

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 差し出された手を凝視したまま固まっていると、類に手をとられそうになり、ハッとその手をとっさに振り払う。
 「…どうしたの?」
 それこそ意外そうに言われ、つくしの顔が今度こそカッと赤面する。
 羞恥ゆえか、それとも怒りなのか、自分でもわからないままに、つくしはキッと類を睨み据えた。
 「食事行こうって、話がないなら、あたしはもう帰らせていただきます」
 「ん?遅くなっても心配ないよ。車で送るし」
 「じゃなくって、いつあたしがあんた…あなたと食事に行く話になった…んですか?!」
 何が心配ない、だ。
 そういう類が一番危険だと思うのは、お持ち帰りされてしまった女としては自意識過剰なわけではあるまい。
 つい言葉尻が乱れてしまうのも仕方がないことだろう。
 「ダメ?なんで?お腹すいてない?」
 「…そういう問題じゃないと思います」
 「お腹、すいてない?」
 「…すいてるけど」
 「じゃあ、行こうよ」
 ニコッ。
 う、後光が見えるっ!?
 思わずあまりの笑顔の眩しさに悩殺されそうになって、意識して顔を顰めて視線を反らす。
 暖簾に腕押し、心底不思議そうな類の顔を見ていると、自分がいわれない駄々をこねて彼を困らせているような錯覚に陥ってしまう。
 そのせいで、毅然とした態度で撥ね退けられず、不覚にも過去2回だけとはいえ、ズルズルと『類王子とのお食事会』をともにし、目撃した者たちの一部によって嫉妬と敵意を受けるハメへと陥ったのだ。
 気が付けば、類はもう歩き出している。
 その背中は当然つくしがついてくることを疑いもせず、振り向くこともしない。
 そのまま帰ってしまいたい誘惑を感じながらも、帰るには類の横をすり抜けるしかなく、かといって今更後にしてきた事務所に戻ることもできまい。
 つくしはため息ひとつつき、気が進まないままに結局後を追うしかなかった。
 …今日こそは、ハッキリかまわないでって断らなきゃ。
 つくしは類の意図を探るよりも、ただただ、今の不本意な状況を終わらせたかった。



 「…じゃあ、あたしはここで」
 エレベーターから降りた途端、背に手を当てエスコートしようとした類から飛び退さるように離れ、大急ぎでお辞儀をする。
 キョトンとした類が、小首を傾げた。
 「ここでって、一緒に食事に行くでしょ?」
 あたしは一言もあんたと一緒に食事にいくなんて言ってないわよっ!
 内心ではそう思いつつ、よけいなことをいえば、普通にスルーされたあげくに、いつのまにか丸め込まれるのはもう経験済みなので用件だけを告げる。
 「行きません」
 後はなにを言われても、断固として拒否する姿勢で、つくしは踵を返す。
 「はあ」
 悩ましげなため息は苦笑を帯びて。
 「…俺、あんたに嫌われちゃってるのかな?」
 意外な言葉に、憤然と前だけを見て歩いていたものの、ついつくしは類の顔を仰ぎ見てしまった。
 憂愁の王子の美しいこと。
 「この間もちょっと強引に誘いすぎちゃったのか、牧野、仏頂面だったし。俺、嫌われてるのかな、って」
 嫌い…か、と問われれば、正直、つくしにもわからない。
 あんなことがあったとはいえ、今思えば、いい年をした男と女だ。
 過去…知人というには濃い気持ちを持っていた相手だとはいえ、酔ったうえでのこと。
 つくしが一方的に被害者ぶって、いつまでもこだわっているのはおかしいことなのかもしれなかった。
 ただ、感情が納得してくれないだけ。
 それに、淡い憧れを抱いていられた無邪気な高校生時代はもはや遠い。
 それこそ今さら、立場も生きる世界も全く別の、いわば雲の上の世界の人間である類と関わる必要性があるとは思えない。
 こうして奇しくも同じ会社に在籍することとなったが、それだとてつくしと類との間に何の縁も生まれたとも…ましてや一緒に食事に行ったり、個人的に話をする必要などあるとは思えなかった。
 逆に、こうしてあえて関わろうとしてくる類の意図がわからない。
 「な…んで、あたしにかまうのよ…ですか?」
 類がつくしのおかしな敬語にクスリと失笑を洩らす。
 「いいよ。もう会社を出たんだから、タメ口で。あんたとは高校生時代、さんざんいろいろあったのに、いまさら敬語使われるのも変な感じだ」
 「……」
 いろいろ…そんなことあったのだろうか。
 もちろん、つくしにとって類は大きな存在だった。
 だが、類にとっては、通り過ぎる何百、何千もの出会いの一つにすぎなくて、つくしのことを記憶にとどめてくれていただけでも稀有なことのように思えるのに。
 実際、彼の親友である道明寺司の存在がなかったら、つくしなど類にとっては虫けらのうちにも入らなかったのかもしれない。
 そう思い当たってしまえば、今この時も、類の気まぐれにすぎなくて、いつまでも些末(つくしにとっては絶対に些末なことではなかったが)なことに拘っているのはバカなことのように思えた。
 当事者の一方が何も感じていないんじゃあね。
 そう思うことは胸の一部を黒く塞いだけれど、F4という人種はもともとつくしの理解の次元とは別のところにいる。
 無理に抗っても無駄ならば、つくし自身も一時の不可思議な体験として割り切って、目の前のよくわからない男に相対した方が精神衛生上、良いのかもしれなかった。
 「あんたがなんであたしにかまうのかわからないけど、気まぐれなら勘弁してよ」
 なんだかんだ言って、つくしの中にあった類への遠慮がいつの間にか取り払われていた。
 心底うんざりしたように、類に対して邪険に相対するつくしに対し、類は面白そうに目を煌めかせた。
 「なんで?あきらや総二郎とも友達なんでしょ?」
 「…友達だけど」
 「じゃあ、俺とだって友達みたいなものじゃん。実際、高校の時は非常階段友達だっだじゃない?」
 「非常階段…友達って」
 「あれ?憶えてない?あんたが言ったんじゃなかった?」
 憶えてないわけがない。
 司のクルーザーで類が静への狂おしい気持ちをぶつけている現場に居合わせてしまい、彼の葛藤、苦悩、静への恋慕を嫌というほど見せつけられた。
 そして、それまで薄々気が付いていたながら、傷つくのが嫌で背けていた類への気持ちにつくし自身が気が付かざる得なくなったあの日…。
 傷ついて女そのものを厭う類に、せめて嫌われたくはなくて。
 けっして報われることがない自分の惨めな想いを知られたくはなくってとっさに口走ってしまったイイワケ。
 類が憶えているとは思わなかった。
 なにより、類が友達だと自分を認識していたなんて、今だって信じられない。
 だが、憶えていてくれた。
 そんな些細なことにさえ、じんわりと胸の奥に広がる温もりがあることを、つくしは気が付きたくはなかった。
 だからそんな気分を振り払うように、違う話題を探す。
 「…ね、花沢類。その、静さん」

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