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「中・短編」
Middle story(2~5話完結)

誕生日プレゼントはあなたに逢いに 後編

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 「おいっ!」
 小柄な黒髪の女の肩をつかみ、強引に振り向かせる。
 「キャッ!」
 突然の凶行に強張った女の顔が、司の顔を見て陶然と呆ける。
 「…悪い、人違いだ」
 これですでに3人目。
 ありえないと思いつつ、足早に通り過ぎる道々で、つい逢いたい女の後姿を探さずにはいられない。
 携帯電話をポケットから取り出し、ジッと睨み据える。
 こんな時に限って、つくしは出ない。
 そして、頼りになるはずのF3も今日に限って連絡が取れなかった。
 「クソッ」
 自分でも何をしているのかと思う。
 時計を見ると、10時10分前。
 さすがにタイムリミットだ。
 胸に掬う失望感が気持ちを黒く染める。
 「逢いてぇ」
 口にするととたんに情けなくなった…自分の女々しさに。
 期待が大きかっただけに、期待を裏切られた時の反動は深く大きい。
 「…バカバカしい。あいつは今頃、大口開けて昼飯でもかっくらってるさ。NYにいるはずなんかがねぇ…」
 我ながら声音が嫌になるほど弱々しいのは仕方がない。
 牧野つくしに関して、自分はどこまでも情けない男なのだから。
 司はため息を一つつき、もう一度だけ、周囲を見回し、あとは振り向かずその場を後にした。



 「…えっとですね、専務の道明寺司さんを。あ、いえ、アポイントメントは。そ、そうですよね。あの…でも」
 ガイドブックを片手に片言の英語でシドロモドロに受付相手に陳情している女。
 その後姿は、さっきまで司がさんざん探し求めた相手。
 …幻じゃねぇだろうな。
 思わずボケッと、その様を凝視する司の視線に気が付いたのか、怪訝な視線が振り返った。
 「あっ!」
 つくしの方も司と目があい、口をあの字に開けたまま固まる。
 その表情が、離れ離れになった9か月前とまったく変わらず、司は思わずクククと含み笑いを洩らした。
 そして、その含み笑いはやがては本物の笑いに変わる。
 「な、なによ!人の顔見た途端、何笑ってんのよっ!」
 腹をよじって笑い転げる司をしばらく呆然と見ていたつくしだったが、いつまでたっても笑いやまぬ司に、カッと顔を火照らせ、今にも湯気を吹かんばかりにがなり立ててきた。
 か、かわんねぇ…。
 素直な感情の発露も、子供みたいにあけっぴろげなところも、鉄火な気性も、何もかも以前のまま。
 司のひそやかな心配…司がそばにいない間に、司の知らない女になっているのではないか…など、バカなことだったというようにつくしはあまりにかわらなかった。
 小走りに司に歩み寄り、キャンキャンと吠えたてたまま、襟首に縋り付いてくる。
 そんなさまさえもが可愛くて…さっきまでのどん底の気分が、嘘のように霧散する。
 「…って!ちょっと!?な、なに抱き付いてるのよっ!は、放せ~っ!!」
 「ん~、やわらけぇ~、いい匂い、サイコー」
 それこそ司の方が、犬のようにクンクンと抱き込んだつくしの髪や首筋を嗅ぎまわる。
 「…やっぱ生は違うぜ、生は」
 「やだ!ちょっとお」
 暴れる体を押さえつけ、目を丸くする受付嬢や、通りすがりの社員たちの視線もものともせず、司はさっさと管理職専用エレベーターへとつくしを引きずってゆく。
 エレベーターに乗り込み、ドアが閉まった途端…。
 「ちょっ…っ!!????~んんん、ちょっっと、んんっ!!ば、ば、んーーーーー!!」
 司はつくしの唇へと食らいついた。
 何度も何度もつくしの唇へと自分の唇を押しつけ、自分の印をつけるように。
 そして、時折、つくしの下唇を軽く加え、軽く舐める。
 「…ん、ふっ」
 やがてはつくしの体の力が抜け、司へともたれかかった。
 「…牧野」
 「道明寺…」
 互いの興奮に高まった荒い息が、シーンとした狭い静かな空間を占めた。
 司がつくしの頭に頬を摺り寄せると、うっとりしたようなつくしが顔を上げ、潤んだ目で司を上目使いで見上げる。
 うわっ~、こいつ犯罪!?
 げ、激かわ~。
 最愛の恋人に悩殺されたバカが一人。
 ガバッ!
 「…ええ?ちょっと、何?!」
 のしかかってくるデカイ体に、半ばのけぞりながら、ギリギリと背骨が折れる危機に、つくしの顔が真っ青になる。
 「ちょっとっ!あんた、何興奮してんのよっ。お、折れる、せ、せ、背骨~」
 ガッチャン。
 「…え?」
 エレベーターが停止すると同時に…。
 シュ~。
 「…」
 「……」
 「………」
 二人のとんでもない姿を目にしても、表情一つ変えずに怜悧に見据えてくる西田のメガネの銀縁の輝きがいやにつくしの目を射る。
 が。
 「いっ~っ!!!?ぎ、ぎゃああっ、こ、このバカッ」
 ゲシッ!ガツン!
 「うげっ」
 我に返ったつくしが、とっさに逃れようと司の向う脛を蹴り上げた。
 だが、逃れようとしたつくしの行動を一瞬早く把握した司が、つくしを羽交い絞めにする。
 「…専務、お時間です」
 「見りゃあ、わかるだろ?取り込み中だ。あと5分待て」
 「ですが」
 「いやああああああ、この変態!!!人様の前で、何すんのよぉ~、離してよっ!」
 「誰が離すかっ!」
 くんずほぐれつ(ちょっと意味違うか)相争う二人の男女。
 そしてそれを怜悧な眼差しで見守る一人の男。
 「…そういえば、お前なんでここにいるんだ?」
 顔を引っかかれ、顎の下に両手をつっぱられながら、ふと司が気が付く。
 「え?」
 「…え??」
 怪訝な司の視線に、つくしの目がきょときょとと視線を彷徨わせ…。
 「…えっとその、もうすぐ誕生日でね」
 「誕生…日?誰の?」
 「…私の?」
 「…は?」
 「ん」
 「え?」
 

 ハッピーバースディ。
 この日に生まれたすべての人に。
 あなたの願いはかなったでしょうか?



余談) 氷の貴公子?とあだ名される道明寺司専務の新たな伝説が、社内でまことしやかに流布したのを司とつくしは知る由もなかった。



~Fin~




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~ Comment ~

素敵なお話ありがとうございました^ ^
とってもいい記念になりました❤️

これから仕事に出かけてきます。
帰宅したしたら、また改めてコメントさせて頂きます。

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NoTitle

この場を借りて失礼します(^^♪

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

ゆうんさま 誕生日おめでとうございました~。
ゆうんさまのおかげでいいお話便乗読みできてラッキーでした。

感謝と御礼、でした(*´▽`*)

朝、急いでいたので公開コメントになってしまっていましたσ^_^;

ゆみきち様
お祝いありがとうございます😊

このコメントも非公開でと思ったのですが、お祝いコメントを頂いたので公開させて頂きます。
こ茶子様、申し訳ありませんがコメント欄をお借りします。

ゆうんは30代に突入しました😅
一ヶ月程前から、12歳上の旦那からは「どんだけ歳とんの(苦笑)」「出会った時は10代やったのに」と…
3歳の娘は、「ママはもうすぐ30歳🎵」と歌い、「30ってどう書くの?」 と…

毎日言われると、司君のように額に青筋が浮かびそうでしたσ^_^;

そんな時にある方から「30は女の盛り」という素晴らしいコメントを頂きました。
単純なゆうんは美容院にネイルに行って自分磨きを始めました😄

昨日の誕生日は、
娘からは似顔絵を貰いました。
絵の下には「30さい」と自分の名前が書いてありました。
この練習をしていたのね😅
旦那からはネックレスを、20歳に貰ったものと対になったデザインでした。
でも、何故かケーキには33本のローソクが…
娘いわく、ママの30歳と娘の3歳を足したそうです。

今日からはあの30コールが嘘のようになくなり、娘は大好きな嵐の曲を熱唱しながら幼稚園に登園して行きました。
こんな感じで、我が家の夏は終わりそうです😅

とっても長くなりましたが、
こ茶子様、素敵なお話をありがとうございました❤️
ゆうんは小躍りしそうでした。(してたかも)
コメント頂いた皆さん、ありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします!



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