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「中・短編」
Middle story(2~5話完結)

誕生日プレゼントはあなたに逢いに 前編

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 「一か月後の俺の誕生日のパーティの予定?」
 ここ数日の分刻みの激務に加えて、昨日の徹夜がたたった頭が悲鳴を上げているときに、西田の口から出た言葉が、よけいに司の頭に頭痛を呼び起こした。
 正直気分は勘弁してくれ。
 ただでさえ長くはない忍耐が切れそうで、知らず知らずのうちにこめかみに青筋が浮かんでくる。
 「…そんなん、いい年した大の男がいつまでもやるようなもんじゃねぇだろ?」
 「そうは言われましても、パーティで世界各国から来訪される賓客との商談をかねてのことですので、そう簡単には取りやめることはできないかと」
 司の怒気に充てられても、顔色一つ変えないのはこの男くらいなものだ。
 司の子供の頃から彼の行ってきた醜聞をもみ消し、長じては教育係としてつくようになった西田は、司にとって頼りになる片腕であり、同時に煙たい存在でもあった。
 「はあ、いいぜ、好きにしてくれ。どうせ、俺の誕生パーティだ何だって言ったって、いつもの他のパーティ同様、俺はニヤニヤ笑って突っ立ってりゃ、それでいいんだろ?その下らねぇ会のせいで、また俺の睡眠時間削られるのは業腹っちゃ業腹だが、なんだってやってやんよ。適当にスケジュール組んで報告してくれ。どうせババアが喜び勇んで商談まとめまくるんだろうし」
 司の泣く子も黙る『鉄の女』=ババア発言にも眉根一つ上げもせず、西田は慇懃に一礼し、今日の予定の終了を告げ、残務の指示のため専務室を退出していった。
 すでに時間は23時を過ぎている。
 今から会社を出ても、邸につくのは午前を過ぎる。
 早く帰って少しでも体を休めなくてはと思いつつ、毎日の非人間的な激務に体と心が悲鳴を上げつつあった。
 すぐに立ち上がる気にもなれず、ぼんやりと窓の外を眺める、
 地上65階から眺めるNYの街は眠らない不夜城の名にふさわしく今夜も煌びやかで…それでいて司には見果てぬ奈落のようにも思えた。
 NYに居を移して早9か月。
 慣れぬ国の風土や言葉以上に、思わぬほどの孤独感が司を蝕んでいた。
 普段は、息もつけぬ仕事の嵐に、何も考える余裕などなく、その合間に入れられる大学の勉強もまた、まるで司が機械であるかのように、何も考えさせる余裕を与えなかった。
 だが、こうしてふと合間に訪れる何物でもない時間…それこそ司にとってはごく稀な時間ではあったが、そうした時、いつも脳裏に浮かび上がる一つの面影がある。
 牧野つくし。
 出逢ってほとんどすぐに強く惹かれ、そんな自分の気持ちに戸惑い、理解できず、だが、一度自覚してしまえば、自分でも空恐ろしいほどに彼女に溺れた。
 嫌われても、疎まれても、彼女を諦めることができず、追いかけて追いかけて…そしてついには彼女に振り向いてもらえた。
 だが…紆余曲折の末、彼女と両想いになり、司の母・楓の妨害にも耐え抜き、こうして曲りなりとも交際を続けられるようになっても…常に司は彼女の不在に苛まれている。
 もちろん、彼女をおいてNYに来ることは司自身が選択したこと。
 道明寺財閥の長男として生まれ、贅沢のかぎりをつくしながら、その義務をまったく果たしていない自分を、つくしによって気が付かされたから。
 彼女に愛され続ける男でいたいから、選んだ選択だった。
 もう一度腕時計の針を眺める。
 司にしてはシンプルで地味なこの時計は、結局帰国できなかった数日前のクリスマスにつくしへと送った時計とおそろいのもの。
 つくしは相変わらず「高価なものは貰えない」だなんだ煩かったが、最後はゴリ押しに近い状態で無理矢理に受け取らせた。
 「お前が受け取らないのなら、いくつでも気に入るものを送りつける」
 司が言うとシャレにならないと言って、結局つくしはため息交じりに受け取った。
 さすがの司も、つくしの時計と自分の時計がおそろいだということはつくしには告げられなかった。
 いくなんでも、女々しすぎるってもんだろうよ。
 自嘲交じりに一人ごちる。
 こんな腕時計一つに、つくしのよすがをすがっても、結局とうのつくしは、司の気持ちも知らず、貰った時計を箪笥の肥やしにしていることだろう。
 コンコン。
 退出した西田が車の手配も終え戻ってきたようだ。
 23時30分…日本時間ではちょうど午前11時前後あたりだろうか。
 夜中と違って怒られることはないだろうが、夜中よりさらにつくしが電話に出る可能性は低い。
 その時間帯、普段は高校の授業のために携帯の電源を切っていて、学校が冬休みの現在はファミレスのアルバイト中のため、出てくれないことがほとんど。
 でない電話にかけることは、思いのほか司の心に疲労を強く感じさせる。
 …いつでも、あいつに逢いたいのは俺だけ。あいつの声を聞きたいのも俺だけなんだ。
 そう自覚することはひどく苦痛だが、仕方がない。
 そもそも、愛したのは彼の方だったのだから。
 「専務」
 「…ああ、今行く」
 今度こそ、司は携帯電話への未練を振り切り、専務室を後にした。



 今日の業務は10時からの会議がはじめ。
 ここのところにしてはゆっくり目の朝だというのに、夢見が悪く司の体調はいまいち。
 重い頭を振りつつ、西田の読み上げるスケジュールを耳に、手元の書類を頭に叩き込む。
 だが、ふと妙に気が惹かれ、通り過ぎる景色を車窓から見るともなく見ていると、ふと見覚えのある顔が通り過ぎた気がして、司はとっさに声を上げた。
 「止めろ!」
 だが、人影は込み合う人混みに消え、その後姿を追うこともできない。
 …まさかな。
 「…専務?」
 怪訝な顔の西田に、苦虫を潰した顔で顎をしゃくる。
 「…いや、なんでもない。行ってくれ」
 振動も感じさせずスムーズに発進したリムジンの背もたれに背中を預けつつ、両腕を組んで目を瞑る。
 だが、…なぜか気持ちがざわついて落ち着かなかった。
 「…やっぱり、止めてくれ」
 西田がわずかに眉根を寄せ、能面のような無表情さをわずかに崩す。
 「10時からの会議を受けて、その後のMY社との折衝に向かいますから、予定を繰り下げることはできませんが?」
 「わかってる。…ちょっと、車に酔ったみたいだから、ここから歩いて社へ向かう」
 「…歩いてですか?」
 たとえ5分の距離でも車を呼ぶ司の日常生活を心得ている西田が、不審げに首を傾げる。
 「いいだろ?散歩も有酸素運動の一種だし、ここのところ俺の体力の衰えを心配してただろ?ちょうどいいんじゃね」
 社でのデスクワークと大学との往復以外、ほとんど体を使うことがない司のためにジムのトレーニングのスケジュールを組もうとしていた西田を皮肉る。
 だが、相手の方が上手で、
 「それでしたら一度や二度の散歩では効果はないかと。明日からは徒歩通勤ということにいたしましょう」
 「……」
 さすがの司も、ヒクヒクと唇の端が引きつる。
 それを無表情に見ていた西田が、ゆっくりと頷きかけた。
 「もちろん、冗談です。防犯上、ありえない行動でしょう。…ここからなら確かに成人の男性なら、20分程度で社に到着することが可能でしょうから、この道の込み具合からしたらどっこいかもしれません。くれぐれも遅刻されませんよう」
 西田の冗談はどこまでが冗談で、どこまで本気なのか、長い付き合いの司にも判断しようがなかった。



~Fin~




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