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「中・短編」
with F4(Love つくし)…完

女友達08

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 海水浴客たちが帰路に就いた海辺は、なんとなく祭りの後のような寂しさがある。
 赤く燃えた地平線のそばを、サーファーたちが行き来し、ざあざあっと満ち潮がゆっくりと砂浜を飲み込んでゆく。
 堤防の上にバイクを止め、そのバイクに軽くもたれるように立つ総二郎の傍らに寄り添うのも気が引けて、つくしは堤防のコンクリートの上にじかに腰を下ろす。
 「…そんなところに座んなよ」
 「なんで?どうせ潮風に吹かれてたら砂なんてかぶり放題なんだから、こうやって…」
 こうやって、のところでつくしが傍らの砂を手で払い落す。
 「払っちゃえば、全然平気だよ」
 に~っこり。
 無邪気な子供のようなあけっぴろげな顔に、総二郎は苦笑し、さすがに促されても腰は下ろさなかった。
 「ああ~、せっかく海に連れてきてくれたんだから、もうちょっと楽しみたかったな」
 「なんだよ、ノリ気じゃなかったわりに未練たらたらじゃね?」
 「そりゃそうだよ。あたし、今年の夏は忙しくって、海どころかぜ~んぜん、夏
らしいことしてないんだもん」
 「…そりゃ、お前が貧乏たらしく、勉強だけじゃなく、バイト三昧な毎日を送ってるからだろ?」
 呆れたようにいう総二郎の顔を、つくしがキョトンと見返す。
 「…貧乏たらしくって、あたしの場合、本当に貧乏なんですけど」
 「よくいうぜ。お前の学費、司が全額もう出したんだろ?親父さんもここのところ定職につけてるし、お袋さんも働いてる。弟だってお前なみの勤労学生だ。昔ほどがむしゃらにやらなくてもいいだろうに」
 「う~ん」
 つくしは曖昧に首を傾げる。
 言われてしまえばその通りなのだ。
 だが、つくしにとって、もはや働くことは彼女のアイデンティティであって、それが習い性になってしまっている。
 それでも高校に入るまでのつくしは、ごく一般的な少女にすぎなくてそこまで勤労少女だったわけでもなかった。
 でも波乱万丈な数年間が今の彼女を形作り、今更のんびりやれ、好きなことをしろ、と言われてもかえって戸惑うだけで、それはそれで自然なことではないのかもしれなかった。
 「…別にいいじゃない。あたしが勤労少女だろうが、なんだろうが、あんたに迷惑かけてるわけじゃないんだから」
 「かけてんだろ?」
 「はあ?なにをよ?」
 言いがかりをつける気かと、つくしが軽くねめつける。
 「お前が忙しすぎると、司からのTELにも出ねぇから、速攻奴の苦情が俺やあきらんとこに集中する」
 「…ああ~」
 思い当たるだけに、反論できない。
 自分の方がなにかと忙しいくせに、司はつくしへの連絡はマメで、逆につくしがその連絡をちゃん受けないと口うるさく干渉してくる。
 かといって、それを無視すればしわ寄せを食うのは、やはり総二郎やあきら。
 類の方は、ちゃっかりとあのマイペースさで、適当に司の憤懣をいなしていた。
 いわく。
 『…まあ、電話くらいならいいよ。適当に受けたままそこらへんに置いておけば、いつの間にか切れてるし』
 だ、そうだ。
 「どうせ、司のことだ。お前の生活の面倒だってまとめてみたいくらいなんだろうよ」
 「…まあね、なんだか勝手にあたし名義の通帳送り込んできて、すごい金額を毎月振り込んできてるわね」
 「それを使ったりは…」
 沈みゆく夕日を眺めていた視線をチラリとつくしへと戻すと、総二郎を見上げていたつくしが黙って肩を竦める。
 「するわきゃない…か。バッカじゃねぇ?あいつにとっちゃ、ハシタ金にすぎないんだし、自分が汗かいて働いた金をお前に使わせるつーのが、道楽つーか、あいつの楽しみみたいなもんだろ?」
 「…なにそれ?夫婦でもないのに、使えるわけないでしょ?…まあ、道明寺の気持ちは嬉しいけどね」
 フンと言い切り、だが語尾に少しテレを含んでいたのは総二郎の気のせいではないだろう。
 再び、海へと向けた横顔が夕焼けが原因ではない理由で、わずかに赤い。
 その横顔が妙に眩しく…総二郎には痛い。
 だから、無意識のうちに吐き捨てててしまったのかもしれなかった。
 総二郎の知らない何かを持っているつくしが、そのつくしを手に入れている司が妬ましく、うらやましいなどと口が腐っても思うことすらしたくなかったから。
 「まったく…いまだに俺には、お前らが理解できないな。司のあのお前に対するがむしゃらさも、お前のかたくなさも。世の中男も女も山ほどいるつーのに、まるで互いしか見えてないつー愚直さも」
 言ってしまってから、ハッと、さすがにまずかったかとつくしを見下ろすと、つくしは静かな目で総二郎をただ見あげていた。
 どこまでも透明で、真っ直ぐな眼差し。
 その疑いひとつない澄んだ目が、時たまひどく総二郎を苛立たせる。
 総二郎を男…自分に想いを寄せる可能性のある異性だという認識を一かけらも持っていない眼差し。
 もちろん、そうだ。
 つくしにとって総二郎は気の置けない男友達で仲間で、恋人の親友で。
 そして総二郎にとっても、つくしは大切な女友達で仲間で、親友の恋人。
 それだけはずで…いや、そうでなければならなかった。
 「…わりい、言い過ぎたよ」
 「別にいいよ。誰かに理解してもらいたいと思って、あいつが好きなんじゃないもん。あたしだって、バカみたいだと思うこともある。ホンの一時、高校生の一時一緒にいられただけで、ずっと波乱万丈で、ジェットコースターみたいな思いをして、あとはずっと遠恋。あいつの顔すら直接最後に見たのは何年前になるんだか。あいつだってそうだよ。あたしみたいな平凡な女に一途で」
 「…牧野」
 「ただ、あいつが好きなの」
 思わず総二郎は、つくしから視線を反らす。
 「悪かった。別にお前らをバカにするつもりなんかじゃなかったんだ。ただ、俺はお前らを見てると歯がゆいのかもしれねぇ。それはきっと…」
 「西門さんが、いくじなしだからだよ」
 ザクリと斬りつけられた気がして、思わず腹が立つより、苦笑してしまう。
 そういうところが、いくじなしだとつくしに指摘されるゆえんなのかもしれない。
 まっすぐに自分の深淵を探るのではなく、曖昧な笑みに自分を隠してスルリスルリと逃げる。
 面倒なことや、傷つけあうことを覚悟の上で向かい合わなければならない相手から逃げ、楽な道を探す…そんな生き方がいつの間にか総二郎の習い性となっていた。
 いつも嵐に真正面から立ち向かうつくしとは真逆に。
 だから、その眩しさに目が眩んでも、斜に構えて自分は泥臭くがむしゃらになるようなタチではないからと目を背けて。
 「怒った?」
 「…いや。でも、さすがに今のはグッサリきたわ」
 おどけて胸もとをつかみながら、よよよと倒れ掛かって見せる。
 だが、つくしはニコリともしてくれなくて、どこまでも真面目だった、
 「怒らせついでに、言っちゃうけど」
 「…だから、怒ってねぇって」
 「意気地なしだから、本気の相手には本気を見せられないし、いくじなしだから、逃げ出しちゃうんでしょ」
 「本気の相手なんていねぇって」
 どこか語尾が我ながら弱々しいのが、我ながら痛い。
 「…でも、意気地なしのあんたのこと嫌いじゃないよ」
 「……」
 「別にあたしがどう思っていようと、西門さんには関係ないことだろうけど、あんたの弱さを悪いことだってあたしは思わない。誰でも傷つくことは怖いし、好き人は傷つけたくないっていうのは、普通のことだもん」




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