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「中・短編」
with F4(Love つくし)…完

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 三日月の淡い光が夜道を照らし、いい気持ちで千鳥足になっているつくしの行く先々を照らしている。
 「うーん、いい気持ち~」
 大きく伸びをしながら、機嫌のよい猫のようにつくしはゴロゴロと喉を鳴らしたくなった。
 後ろから大きなスライドでゆったりとついてくるあきらが、小さく苦笑する。
 「おいおい、大丈夫かよ?呑みすぎじゃねぇ?」
 「明日はお休みだもん。すっごい楽しかったし!」
 「そんなら、うちに泊まっていけば良かったのに。部屋ならいくつでもあるし、お袋や妹たちだって喜んだのに。みんな牧野のことが好きだしな」
 「いやいやあ、美作家の皆さんにはいつも良くしてもらって、とってもありがたいと感謝しています。でも、明日にはお父さんも帰国されるんでしょ?久しぶりの家族水入らずを前に、お母さんだって色々したいことだっておありだったと思うのよ。それなのに誕生会なんて開いてもらって、もう十分! しかも、おうちの人達が外泊されるのに、そんな時に泊まらせてもらったら非常識だって」
 明日の早朝に帰国する父親を迎えに行くために、母親と妹たちは成田の空港ホテルで一泊するので、つくしの誕生会を終えると外出して行った。
 うちには使用人が何人もいるんだから、牧野が考えているほど俺のダチの一人や、二人いたって気にすることはないんだけど、と思いつつ、昔から遠慮深いつくしの奥ゆかしい性格が嫌いじゃない。
 多分に厚かましい幼馴染たちや、あきらに甘えきった家族、これまで付き合ってきた女性たちのほとんどが自分を中心に世界を回している中で、いつも誰かのために戦い、思い悩み、気遣うつくしは、あきらの中で柔らかく温かい光を灯している。
 気は強いし、しぶといし、パンチの効いた女だというのに。
 「美作さん、もうそこ曲がればうちだから、もう車に戻りなよ?」
 「ああ?いいよ、それこそすぐそこなんだから、送っていくよ。デートは女性を家に送り届けるまでがデートなの。第一、うかつなお前をちょっとでも野放しにして、なんかあったら司に俺が〆られるじゃねぇか」
 まだ、デートだとか言ってるし、とつくしが肩を竦める。
 いつものデートだったら自分で運転して女性を送ってくるのだが、今日のあきらは酒が入っていたので、運転手の運転する車で付近まで乗ってきた。
 でも、外の三日月を見て、なんとなくつくしのアパートの傍で車を停めて、そのまま別れるのは味気ない気がしたのだ。
 それで、酔い醒ましのついでに少し散歩しようかと、つくしを誘い、冬の冷たい空気に火照った体を冷ましながら、つくしの影を追うともなしにゆっくりと歩いた。
 そういえば、あの日も三日月だったな。
 あきらは、つくしと出会ったばかりの頃の、ホンのちょっとした出来事を思い出した。
 少し日常の雑事に倦んでいた時に、当時付き合っていた不倫相手に傷つけられ、いつもはやり過ごす幼馴染たちのバカに切れて自己嫌悪に陥っていたあの日。
 たまたま、見上げた三日月に誘われて、その儚げな光が美しく、ついついらしくもなく、公園のブランコに座り込んで夜空を見上げていた。
 月を見上げながら、考えるともなしに胸を塞いでいたのはなんだったのか。
 昔から必要以上に自信満々で、はた迷惑だけれどそれぞれ魅力的な幼馴染たちを前に、あきらはひどく遣り切れない思いに駆られることがあった。
 普段は、無難に幼馴染たちをまとめ、それに面倒臭さを感じながらも、それが自分の性分なのだと達観しているあきらだったけれど、いったん凹まされると一気にナーバスになって、耐えられない気分になることがある。
 そんな時だったのだ。
 「そういえばさ、昔、高校生の頃に美作さんと人気のない公園で出くわして、一緒に月を眺めたことがあったよね」
 「…え?」
 「あの時も綺麗なお月様だったよねぇ~。今日みたいに三日月だったよね、確か」
 驚いた。
 頭の中を覗き込まれたのかと思った。
 馬鹿かよ、俺も相当酔いが回ってるな。
 思わず、自分で自分に突っ込みを入れる。
 「美作さんもさ、いつも気遣うばかりでなく、たまには爆発してみてもいいと思うよ。学生の頃はそれでも、たま~にキレていたみたいだけどさ、大人になるとそうそう感情的になることはできないのに、美作さんの立ち位置っていうかさ、辛いよね」
 「…辛いっていうか」
 「道明寺もさ、弱音吐くことあるよ」
 思わず、あきらの眉が上がる。
 「へえ?意外だな。あの意地っ張りが、牧野には弱み見せるんか?」
 「うーん、言葉では出さないけどね。ほら、やっぱり男の子だから」
 悪戯っぽく微笑むつくしが、子供みたいで可愛い。
 けれど、その懐は母親のように姉のように深く、大きいのだろう。
 「…そんな時、お前はどうするんだ?」
 「どうするって?」 
 「頭撫でて、チュウして、ベッドで夜通し慰めてやるんだ?」
 キョトンとしたつくしの顔が真っ赤に染まる。
 そのまま焦って、一気に食って掛かると思ったあきらの予想に反して、コクンと小さく頷き、つくしは俯いた。
 おいおい、勘弁してくれよ。
 調子が狂う。
 こんな可愛らしいところを見せられて、単なる男友達の自分にどうしろというのだろうか。
 「そう、頭撫でて、ギュッとして、チュウして、抱きしめて寝るかな」
 それでもはっきりと、言い切る。
 「あたしさ、ほら、お金も地位も、家柄も、道明寺の役に立てるようなものって何も持ってないじゃん?でも、道明寺が疲れた時や、苦しい時に黙って抱っこしてあげられる女でいたいかなって、思ってるよ」
 だって、あたしもそういう時、道明寺にそうされると安心するもん。
 そう言うと、はにかんだような笑みを浮かべるつくしが、この上なく美しい。
 司は、本当に綺麗なものを知っている奴なんだ。
 司が、つくしを追い掛け回し始めた当初、つくしの言うように家柄のような背景も美貌も持ち合わせていない彼女を、なぜ司が気にかけるのかわからなかった。
 あきらはもちろん、総二郎も、あの類でさえも。
 最初に、つくしの良さを、本当の意味での人間の美しさというつくし自身がもつ美点に気が付いたのは司だけだったのだ。
 愛以外のすべてを持っているがゆえに孤独だった男が、溢れかえる人や物の中で、唯一見つけた本当の宝。
 「だからさ、美作さんも時々、自分に素直になってあげなよ。無理なことも多いかもしれないけどさ、疲れたらF3の皆や、滋さんや桜子、あたしたちをもっと頼ってよ。美作さんにたった一人だけ、本当にギュッとしてもらいたくなる女性が現れるまで、あたしがギュッとしてあげる」
 「牧野が?」
 「あたしや、みんな?」
 憂さ晴らしに夜通し遊びまわったり、有閑マダムたちとの恋愛遊戯に耽ったり、稀に爆発してキレたり。
 子供の頃はそれなりにいろいろなことを見て見ぬふりをして憂さを晴らしたけれど、社会人になってそんなバカはできなくなってしまった。
 俺、疲れて見えたのかな。
 あきらは、つくしの真剣な目にそう悟る。
 「俺、…牧野がいいな」
 「へ?」
 俺を満月にさせる力をもつ女。
 目をパチクリさせてあきらを見上げるつくしに切ない笑みを向け、片手をその桜色の頬に伸ばす…。
 ♪♪♪~♪♪♪♪~、♪♪♪~♪♪♪♪~
 「あ、…えっと、ちょっと、待ってね」
 つくしはアタフタとコートのポケットや、ハンドバッグの中を探し出す。 
 「あ!あった。…もしもし?道明寺」
 伸ばしかけた手をポケットに入れ直し、あきらはカツーンと足元の石を蹴り上げた。
 『ああ、そっち今、外か?』
 「うん、そう。今日、大変だったね、美作さんに聞いたよ」
 『…悪かったな。せっかくの誕生日だったていうのに、傍にいてやれなくって、ごめん』
 優しく切ない司の声に、つくしの胸がキュンと痛む。
 司が一緒に誕生日を過ごせないとわかって、酷く寂しかったことや哀しかった思いが一瞬で溶け出す。
 「ううん、いいよ、わかってる。美作さんに頼んでくれたんでしょ?」
 『ああ。あきらの奴なら、女を楽しませるなんてわけねぇだろうからな。楽しかったか?』
 「あ、うんうん。美作さんとお茶して、デートしたよ。美味しいドリアもご馳走になったし、美作さんのお宅で誕生会まで開いてもらっちゃった」
 つくしの言葉は半分しか聞いていなくって、司はある一点のみに反応する。
 『ああ?なんだ、デートって』
 途端に不機嫌な声音になる司。
 「えー、だって、美作さんがそう言ってたし、あんたとのデートの代打だって」
 『おまっ!また、俺以外の男にキョトキョトしてんじゃねぇだろうなっ』
 言いがかりをつけてくる司に、さっきまでは殊勝に感謝していたつくしもいきり立つ。
 「ちょっと!何よ、キョトキョトって!?アンタが、美作さんを代打に寄越してくれたんでしょ?美作さんだって暇じゃいのに、悪いと思わないわけ?」
 『いいんだよ、奴は今日、明日は暇で。どうせヤルことつうたって、ナンパか訳ありの女と密会ってところだろ?』
 「…あんたねぇ」
 呆れて物が言えないつくしにも、司は気にしちゃいない。
 『ま、誕生日の埋め合わせは必ずする』
 「えー、いいよ。あんたの気持ちは良くわかってる。だから、無理しないで」
 『無理なんかじゃねぇよ。年明けにはそっち戻るから、予定あけとけ。3日は休みとっから、どっか暖かいところにでも旅行にいこうぜ。楽しみにしていろよ?』
 さっきの酔いで赤く染まった頬とは異なり、嬉しさでバラ色に染まった頬がつくしの司への心情を正確に映し出す。
 「うん、ありがとう、楽しみにしている」
 『ハメ外しすぎんなよ』
 「もう!わかってるって。道明寺こそ、頑張りすぎないで、待ってるから」
 『ああ…じゃあな。愛してる』
 チュッというキスの音が落とされて。
 『お前もしろよ。横にいるあきらが羨ましがるような悩ましいやつな?』
 つくしは焦り、思わず体を丸めてあきらに携帯の音が聞こえないように抱え込んだ。
 「ば、バカ!もう、切るよ。じゃあ、またね」 
 携帯を切り、つくしが振り向くと、あきらが無心に三日月を見上げていた。
 先ほどまでの、どこか儚げで物憂げな危うさはどこかへと消え去り、いつも通りの清潔で柔らかい美貌が美しい。
 「…司、謝ってただろ?」
 「うん、仕事じゃあ、仕方ないのにね。でも、年明けには戻ってこれそうだから、そしたら3日ほど休暇が取れるから旅行にでも行こうって」
 「そっか、良かったな」
 やさしく微笑むあきらに、つくしもホッと息をつく。
 「えっと、さっきの話なんだっけ?」
 「ああ、いや。これ、やるよ」
 あきらはポケットから手のひらサイズの簡易袋に包装された物を手渡す。
 簡易といったって、凝った銀色のリボンの模様のついた優しいピンク色の高級そうな物。
 「え、これって」
 「誕生日プレゼント。なんか、買ってやるっていっただろ?」
 「で、でも」
 「開けてみろよ、指輪やネックレスじゃない。そう、値の張るもんじゃないから、安心しろ」
 つくしが袋を丁寧に開けてみると、中にはハート型のキーホルダー。
 後ろにブランド名が刻まれ、スティールのハートは半分は水玉模様、半分はリングになっていて、素晴らしくオシャレだった。
 「あ、ありがとう、美作さん」
 「おう。じゃ、俺帰るわ。またな」
 いつの間にかつくしのアパートの階段の下まで、歩いてきていた。
 歩いてくる間に寒さが身に沁み、吐く息の白さがあきらをそのまま帰すことに躊躇をもたらした。
 「あ、お茶飲んでいかない?」
 「いや、今日はやめておくよ。誕生日の夜に自分じゃない男と過ごしてるのが、司にバレたら司の奴、悶絶死しちまうぞ」
 悶絶死どころか、飛んできてあきらの首を締め上げるだろう。
 「もう、美作さんたらっ!じゃあ、ここで。お母さんたちによろしく。今日は本当にありがとうございました」
 頭を丁寧に下げて階段を昇り始めるつくしに、片手をあげて答え、今度こそあきらは背を向けて歩き出した。
 いつもだったら、女性が玄関に消えるまで見送るのが常だったが、今夜はなんとなく、そうする気になれない。
 今度は足早に自分の影を踏みながら、いつまでも淡い光を放つ月を眺めて、帰途へと。
 『いやんになることも多いけど、人に頼られるって凄いことだよね』
 高校生の頃のつくしの言葉が、耳をくすぐる。
 いつか、俺にも俺を満月にしてくれる俺だけの女が現れるだろう。
 それまで、友人たちの、気の置けない女友達の胸を借りるのもいいかもしれない。



(~Fin~)




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~ Comment ~

拍手にて鍵コメのこのお話をツボと言ってくださった方へ

 ありがとうございます^^自分的には、最後の最後でいきなりあきら中心になってしまい、つじつまがあってただろうか…と自信がない作品だったので、気に入ってくださってとても嬉しいです!本当はあきらや総二郎も好きなのですが、司×つくし好きなので、悩ましいところです。
 これからも、お楽しみくだされば嬉しいです!

司♡なのに良かったと拍手の鍵コメくださった方へ

 実はこの作品、CPは司×つくしなのに司はほぼ出てこない。デートする相手はあきら。逆にあきらとつくしがデートするのにカップルじゃない!?なんて、果たして読んでくれる人いるんかいな…と~ても不安に思っていた作品でした。
 それが案外、嬉しい感想をくださる方がいらして、拍手も予想外の多さ!本当に、喜び一杯です^^!
 私も司激ラブ(いえ、他のキャラもかなり好きなんですが)ですが、また違ったカップリング?を頑張ってみようかなあと、意気が上がっちゃうました^^!
 総二郎編は予告してるし、類も連載でデートさせる予定だし、じゃあ、そのうち和也編でも…いまいち萌えがTTw
 これからもよろしくです!
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