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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第四章 愛憎…愛することとは①

それでも貴方を愛しているから091

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 「中、入ったら?」
 勝手知ったる…なんとか。
 あたしに声をかけられ、ぎこちなくドアを閉めて中に入ってきた道明寺を横目に、あたしはクローゼットからハンガーを取り出し、立ち尽くす男へと手を差し出した。
 「はい」
 「……なに?」
 よほど意外だったのか、どうも道明寺の反応が鈍い。
 なんだろうね、こいつ。
 疲労で頭が半分死んでるのかな?
 なんて。
 「コート、脱ぎなよ。上着も」
 「あ、ああ」
 あたしが言うままに、コートやら上着を脱ぎ、手渡してくる。
 こうして素直なこいつは妙に幼くて、デカイ図体していて可愛いなんて。
 「着替えてくる?」
 「…いや」
 少し考えて、ため息をつくと、道明寺はあたしの横をすり抜け、ソファへと腰を下ろす。
 足を組んで、片手で額を抑えると、あとはもうあたしの方へと視線を向けてはこない。
 それでも完全に無視しているわけではないらしく、時折チラリ、チラリと視線を感じるのは気のせいではないはず。
 「あんた転居するんだって?」
 「…また滋からか?」
 質問すれば答えてはくれるわけだ。
 「まあ、そんなところ。どこへ行くの?」
 「コスタリカ。中央アメリカ南部に位置する共和制国家。カリブ海に面した国だな」
 「ふうん」
 頭に地図を描き、なんとなく位置関係は把握する。
 あまり耳に聞きなれない国だ。
 でもどちらにせよ、海外生活なんてしたことがないから、こうなったらどこだって一緒だ。
 「いつから行くの?」
 「…早くて再来週、遅くても来月中にはあっちだな」
 道明寺の声音は淡々としている。
 自分のことなのに、ただ決まったことだけを事務的に、何の感情なく。
 もともと世界中を飛び回っていた男だから、この際、どこへ行くことになろうと何の感慨もないのだろうか。
 アメリカや日本、ヨーロッパ諸国の最先端の国々にしか派遣されることがなかった第一線の男が。
 滋さんの言うように島流しなのだとしたら、こんな風に平静でいられるものなのだろうか。
 「…なんで、コスタリカなの?」
 その問いが意外だったのか、道明寺が首を傾げてあたしを見返してくる。
 「滋から聞いてるんだろ?」
 「…まあ」
 「あそこには、道明寺系列とは名ばかりの子会社がいくつかあるばかりで、特に主要な関連会社は存在しない。…まあ、新規開拓といえば聞こえはいいが、要は鼻つまみ者の俺を主管部から切り離して、押し込めるところが欲しかった本社の指示ってやつだな」
 「…退職したんでしょ?」
 「まあな。だが、日本やアメリカにいられたんじゃ目障りだつーことで、海のものとも山のものともしれねぇ僻地の子会社与えて、そこで埋もれてろってやつなんだろ?…まあさすがに、未開の地ってわけにはいかなかったみてえで、それなりに都会だけどな。俺にしても退職していまさら命令される筋合いもねぇから、無視しようと思えばできねぇこともねぇが…面倒だったからな」
 面倒…。
 あたしから反らされたその眼の真意はそうじゃないでしょ?
 「…この間の事件の方は、お前と園崎につけた弁護士がすべて手筈を整えてくれるはずだ。特に表に立つ必要もねぇ。何かあったら、コスタリカだろうが地球の裏側だろうが、俺が出る。心配すんな」
 心配…か。
 そんなこと、すっかり忘れてたよ。
 ふと、去年の暮、この男が体調を壊して倒れた時のことを思う。
 あの時は、類が知らせてくれた。
 類でなくても、友人たちの誰かがきっと知らせてくれただろう。
 でも、それは友人たちの好意であって、あたりまえの一報ではなかった。
 もし、遠く離れて、この男とあたしが何の関係もなくなったとしたら、誰がこの男の身の上に起きたことをあたしに知らせてくれるというのだろう。
 どうやって、あたしはこの男のことを心配すればいいというのだろう。
 もういいよね?
 覚悟は決まったんだよね?
 自分に問いかける。
 これが最後の。
 「…コスタリカって共用語なんだっけ?」
 「は?」
 唐突な話題転換に、道明寺が顔を顰める。
 何言ってんだ?こいつ。
 そんなこいつの心の声が普通にわかるよ。
 「何語?」
 いいから、答えなさいよ。
 おかしくなりながら、睨みつける。
 あたしは、嵐の中生きてきた。
 きっと、これからもずっとそうやって生きてゆくのだろう。
 それでも、その傍らにこいつがいれば…いてくれれば。
 「…あー、スペイン語だったか」
 あたしはニッコリと微笑む。
 あたしにできる一番いい笑顔で。
 道明寺が赤面して見惚れるくらいに綺麗に笑いたい…ほかの誰が綺麗だと思ってくれなくても、こいつだけが嬉しがってくれる笑顔で。
 「あんたスペイン語、ダメだったわよね。あたし、得意なの。あたしがいたらきっとすっごい便利よ」
 「…牧野」
 道明寺の声がわずかに震える。
 あたしは、ソファに座る道明寺の前へと立ち、そっと道明寺を見下ろす。
 「…あんたについてゆく。あたしは一生このままかもしれない。でも、それがあんたの罰なの。あたしにしたことに対するあんたの罰。あたしに触れられなくても、あたしだけしかあんたは触れちゃダメ。あんたにはあたしだけ。…あたしにはあんただけなのと同じように」
 道明寺の両腕が、あたしの腰へと回される。
 柔らかく…この男らしくない羽のように優しい抱擁で。
 あたしは、道明寺の頭を抱き、頬を摺り寄せた。
 「あんたが行くところへあたしも行くよ。今度こそ、ずっと一緒にいてくれるよね?あたしがあんたに抱かれたいって、また思えるほどあたしをあんたに惚れさせてくれるんでしょ?」
 「ああ、そうだ。もう、お前、俺にだいぶ惚れてんじゃね?」
 そんな傲慢なことを言いながら、語尾が震えてるのは気のせいじゃないんでしょ?
 でも、あたしはそんなことは言わないけど。
 あたしと同じで意地っ張りなあんたには、そんなことは言わないよ。
 ただ、抱きしめて。
 抱きしめられて。
 あたしたちは、ただただ、そうやって互いの温もりを確認しあった。



 その後、あたしは本来就職する予定だった会社への入社を辞退し、道明寺が社長として就任する道明寺コスタリカ・エンタープライズの社員となった。
 入社するや否や社長秘書ってコネもいいところだけれど、従業員数わずか1000人かそこら(って言ったって、あたしからしたら十分大きな会社だけど)であーだ、こーだ言うなという道明寺のゴリ押しで、黙らざるえなかった。
 さすがに、道明寺のように、今日決まって明日…というのは無理。
 なんやかんやで、話し合いから半月後に道明寺がコスタリカへと旅立ち、あたしも遅れること2か月後にはコスタリカの空の下へ。
 友人たちは名残を惜しんでくれて、両親もいきなりのコスタリカ行!&道明寺との入籍に目を白黒させていた。
 そう、あたしたちは結婚した。
 当初予定されていただろう、道明寺の人生プログラムにはありえない質素婚。
 本来だったら許されないことだろうけれど、道明寺財閥御曹司の副社長のスキャンダルを巡った首脳陣間の『対立の果ての退陣劇』という不祥事?後のこと。
 たとえ望んだって派手にやることなど赦されないから、あたしとしては好都合。
 道明寺の一族からも否やはでなかった。
 式にはあたしたちの友人知人、あたしの両親、椿さん、タマさんに、そしてなんと道明寺の両親も出席してくれた。
 道明寺母とは嫁姑の関係になったわけだけれど、急にはそんなに親しくなれるわけもなく…それでも高校生の時のような堅固なわだかまりのようなものはいつの間にか消え去っていた。
 道明寺のお父さんも意外な人物で、お母さんや道明寺と同じくゴリ押ししまくりのいけ好かない人(失礼)だとてっきり思っていたけれど、温厚で椿さんによく似た雰囲気の穏やかな人だった。
 もっとも、それは事業が絡まない個人としてのことのことで、いざ仕事が絡むと道明寺母子以上に冷徹な経営者らしい。
 それでも、あたしの手を握り、「息子を立ち直らせてくれてありがとう。これからも頼むよ」と言われたのは嬉しかった。
 その息子が道明寺財閥を追われるようにして、こんな遠方の国へと来ることになったのはあたしが原因だといっても過言ではないのに…。
 そして…道明寺と二人の二人三脚の生活が始まった。
 さすがに新卒社会人1年目のあたしに社長秘書なんか務まるか不安だったけれど、半年という短期間とはいえ、道明寺ホールディングスから西田さんにも匹敵するベテラン秘書が派遣され、その間にみっちりとその人にあたしは教育された。
 本当なら西田さんを送り込みたかったみたいだけれど、さすがにかつての鉄の女の懐刀…道明寺ホールディングス副社長時代の道明寺、もとい司の片腕を彼の退職後に派遣することは、癒着や偽装を疑われるとそれは叶わないことだった。
 そして、3年の月日がすぎ…気が付けば、あたしも秘書として、それらしい働きをするようになり、司もかつてのような経済界第一線を生き急ぐように駆け抜けていた企業戦士ではなく、コスタリカ土着のおおらかな経営者の一人となっていた。
 それなりに会社の業績も上げ、若いながらに自分の実力で一目置かれる男。
 けれど、かつてのように抜身の刃の鋭さではなく、磨き抜かれた宝刀のような男…それが道明寺司だった。
 「…やだ、いけない、もうこんな時間」

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そっか~、3年ですか~。
あっと言う間に、でもそれなりに幸せに過ごしてきたんでしょうね。
良かった。司がすんなりと受け入れてくれて。
毎日毎日、6時を気にしながら、読ませていただいてます。
今一番気になるお話なので。
でも、明日と金曜はラジオ体操の役があるので、帰ってきてからに‥。
残念です。

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