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「中・短編」
with F4(Love つくし)…完

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 あきらの勧めた『牡蠣ドリアの美味い店』は、意外にも普段彼らが御用達にしているような高級店でなく、細い路地の間でひっそりと隠れ家的に営業している本格派コーヒー店だった。
 2F建ての店内は、天井で大きなファンが回り、先ほどのファンシーなお店とは180°方向性が違って、落ち着いていて渋い。
 わざと煤けたような色合いを出させた焦げ茶色の大ぶりの柱や剥き出しの梁が骨太な男っぽさを演出していて、気難し気で強面のマスターとマッチしていた。
 「へえ?よく、こんなところ知ってたねぇ」
 「まあな、俺もつい最近知ったんだけどよ。俺んとこの秘書がこの辺の大学の出身でな、よく彼女と食べにきてたんだと」
 「そうなんだ~」
 てっきりあきら自身のデートスポットなのかと思ったけれど、そういえば先ほど自分で色恋沙汰とは遠ざかっていると言っていた。
 もちろん若く、美貌と才知、家柄、財産と地位と、一物どころか幾重にももっている男に彼女の一人もいないとは思えない。
 それでも、一時期よりは真面目で、仕事一筋な毎日を送っているのかもしれなかった。
 「最初からこっちに来ていればよかったね」
 「ああ、この店、11時50分から開店だったんだ。夕方も18時には閉まっちまうし、我儘だよな」
 「はは、そうだったんだ」
 不愛想なマスターではなく、高校生らしいアルバイトの女の子が華奢な見た目に似合わぬ膂力で、両手に二人が頼んだ料理を乗せて運んでくる。
 「わあ、美味しそう~、て、人に牡蠣ドリア勧めておいて、自分はカレーってどういうこと?」
 見れば、あきらの前に置かれているのは挽肉と香辛料の良い匂いを放つキーマカレー。
 「いや、ここはカレーも美味しいらしいんだよ。前々から一度食べてみたいと思ってたんだけどさ、ついいつも同じものを注文しちゃってたからな」
 ちょっと、はにかんだ様に微笑むあきらがなんだか可愛い。
 「いいなあ、そのカレーも美味しそう」
 鼻をひくひくさせるつくしに、あきらも苦笑をもらす。
 いつまでたっても牧野は変わらない…。
 司と付き合って早6年。
 NYと東京とで遠距離恋愛していた頃はともかく、はっきりとは聞いてはいなかったが、とっくに男女の関係を深めているはずだ。
 けれど、つくしは初めて出会った17才の少女時代と少しも変わることがなかった。
 もちろん、女らしく薄化粧を施した顔や、少しふっくらと女性らしい柔らかさを増した肢体は、つくしを大人の女へと変えていたが、その魂はいつまでも若々しく溌剌としている。
 開けっ広げで、感情に正直で、自分を飾らない。
 「え?いいよ」
 自分の器からカレーを一すくいして、つくしの口元に差し出すあきらに仰け反って遠慮している。
 「食えよ、味見してみたいんだろ?俺のはまだ口つけてないから、ほら、あ~ん」
 目を白黒させて、どうしようか迷っている。
 これがあきらのよく知る海千山千のマダムたちだったら、平然と口に入れて、色っぽく微笑むだろう。
 結局、好奇心に勝てなかったらしく、パクッと勢いよく口に含む。
 でけぇ口!
 「美味しい~」
 ニマァと笑う顔が、ガキそのものだ。
 思わず腹を抱えて笑うあきらを、つくしはキョトンとした顔で見返している。
 「な、なによ?」
 「おま、ホント、色気ねぇな」
 「よけいなお世話!美味しいんだもん、別にいいでしょ」
 「いくつになっても、お前は変わらなくって、なんだか…いいよな。クッ」
 笑い続けるあきらに、ぷくっと膨れながらも屈託なく笑う男の姿だって、無邪気で子供っぽく、普段はF4の誰よりも落ち着いた大人のあきらの意外な一面が魅力的で、つくしも楽しい気持ちになる。
 「ほら、冷めちゃうじゃない。せっかく美味しいもの食べるんだから、美味しいうちに食べようよっ。そのスプーンはあたしに貸して、あんたはこっちのを使ってよ。まだ、未使用だから」
 つくしの申し出は神経質なあきらに配慮したものだったけれど、恋人同士では食べさせあうことなんか、恋愛のあま~い遊戯の一つだから、潔癖症の気があるとはいえ、案外平気だった。
 ま、でも、牧野と間接キッスなんていうのも、司にバレでもしたらうるせぇか。
 間接キスって、中学生かよ、と我ながら馬鹿馬鹿しくなってくるが、司という男はつくしに関しては、どんな幼稚なことも大真面目に見逃せない奴だった。
 楽しくお喋りして、美味しい食事を頬張り、渋い佇まいの店内のそこかしこに展示されている模型を鑑賞したり。
 下から流れてくるコーヒーの匂いに触発されて、コーヒーを頼み、気が付けばけっこう長居してしまっていた。
 「なんか、これじゃあ、デートって言ったって、いつも通りお茶してるだけみたいだな」
 「デートって、美作さんまだ言ってるの?まあでも、美作さん、せっかくの休日に彼女とのデートを蹴ってあたしに付き合ってくれたのに、つまらなかったよね」
 「いや、さっきも言ったけど、いま、決まった相手はいないんだって」
 もちろん、あきらとて男だ。
 気楽に夜を楽しむ程度の、軽い付き合いをしている相手はいるにはいたが、あきらの仕事の忙しさもあって、あくまでも体の付き合いだけの淡白な相手しかいなかった。
 ありていに言えばセックスフレンドでしかなく、真剣な恋愛をホンの子供の頃から延々と守り続けているつくしにとてもじゃないが、打ち明けられるものではなかったけれど。
 一応、それなりにマジに付き合っていた不倫の時の方が、まだマシだと言われそうだぜ。
 「でも、楽しいよ、俺。社会に出てさ、司ほどじゃあねぇけど、やっぱ、学生の頃とは雲泥の日常でさ。こうした何でもない時間なんて、ホント久しぶり。俺の時間自体もそうだけど、それ以上に、こうやって気のけないダチなんてお前たち以外にはいないし、そのダチとだって今じゃあ、お互いそうそう都合つけることなんて難しいもんな」
 「…だよね」
 一OLに過ぎないつくしには想像もつかない苦労もあるだろう。
 いつも自信に満ちて、どんな過密スケジュールにも何食わぬ顔をして取り組んでいる司でさえ、時々ひどく疲れていることがあった。
 それは肉体的な疲れだけではなく、精神的な疲労。
 そんな時、司はつくしの下へ来てただ、温もりを求めてくる。
 何も言わない司に、つくしも何もいうことができず、ただ切なさを押し込めながら、黙って司を受け入れ抱きしめるだけ。
 同じような立場のあきらにも、様々な悩みや苦しみが当然あって、つくしたち一般の人たちが普通に甘受するこういった何気ない日常さえもが稀有で貴重な時間なのかもしれなかった。
 「…で?次の予定は?」
 「うーん、ホントは今日、昼間この辺のアーケードをウィンドショッピングして、夜からは道明寺のプランに合わせる予定だったからね。多少はブランドショップも入ってるけど、美作さんウィンドショッピングなんて嫌でしょ?」
 女の買物は長く、相当連れまわす。
 しかも、ウィンドショッピングで買いもしないのが大半なのだから、毎度、司だったらキレて自分流に無理やり方向修正させるのが常だった。
 それでも懲りもせず、つくしは司を連れまわし、司も文句を言いつつ連れまわされるのだったが。
 「いや、別にいいよ。最初から牧野の予定に合わせるつもりだったし。第一、誰に言ってるわけ?女性の買い物に対するタフさは、十分経験済みよ?なんなら、何か、洋服でもアクセサリーでも買ってやるぜ。急だったから、せっかくの誕生日だっていうのにプレゼントの一つも用意してないからさ」
 「いやいや、このお花だけで十分、ありがとう。それに、ほら、美作さんに洋服だのアクセサリーだの買ってもらったらマズイっしょ」
 「まあ、それもそっか」
 つくしとあきらの脳裏に浮かぶ光景は一つ。
 青筋立てて、あきらの買ったアクセサリーを引きちぎる司の様子が、まるで目の前にあるかのように想像できた。
 
 牡蠣ドリアを堪能したカフェを出て、思いつくままにブティックや雑貨屋、コスメティックショップなど、本当にさまざまな店を回り、楽しい午後を過ごす。
 自分でいうだけあって、女同士でなら気を使わないのにとたいてい男性を連れてきたことを悔やむつくしも、あきらに対しては本当に気を遣わずにすんだ。
 長年まるでペット(本人に言えば怒るだろうけれど)のように尽くしてきたゆえんか、はたまたいかにも、あきらを連れまわし振り回していそうな女系の家族の中で育ったためにか、あきらは女性との買い物に慣れていて、いくら待たせてもイラつくこともなく、適度に自分の見たいものへも立ち寄らせ、歩いている間にも軽快な話題で退屈させない。
 滅多に機会のないあきらと二人っきりのデート!?で気が付いたことがある。
 足の長さが激しく違う自分に歩調を合わせてくれるのは司や類、総二郎も自然にやってくれていたが、常に一歩前を歩きエスコートする形の司や総二郎、ついつい先行しがちで大きく離れることなくつくしが追いつくのを待ってくれる類とは異なり、あきらの場合は一歩つくしから下がり、彼女の行きたいところへついてきてくれる。
 そして、ポイントポイントでさっと前に出てエスコートしてくれ、また一歩下がる。
 ドアを開けてくれたり、誰かにぶつかりそうになったり、そういうところではあきらも前にでるが、基本つくし任せ。
 つくしも最初は気が付かなかったけれど、そうした細やかな気遣いによって、つくしは気楽に自分の行きたいところに足を向けることができた。
 外の3人もつくしの意向を優先してくれたが、どうしても先行している相手に合わせる形になり、わざわざそれを呼び止めて自分の我を通すより、よほどのことでなければつくしも相手に合わせていたのだ。
 「はあ、美作さんが、マダムキラーだったのってわかる気がする?」
 「ん?」
 「やっぱ、結婚すると男の人って、女の人に合わせてくれることが少ないっていうじゃない?」
 「まあ、日本人は亭主関白の国だからな。いまどき、まんまって奴はそうそういないとは思うけど、基本、東洋人の女ってのは従属させられがちだよな」
 「うん。でも、美作さんは自然に、合わせてくれるんだね」
 「そうか?普通だろ?」
 何気ないように言うけれど、実はあきら自身も自覚しているということが、悪戯っぽく笑む口元でわかる。
 「ま、不倫てのは、そういう気遣いがなけりゃできないもんだしな。実際、真昼間からこうしてアーケードを歩くっていうようなことはできない関係だったが、夜の街を腕組んで歩いたりはしたよ。それでも、俺が相手をひきづって歩くんじゃなくって、手は添えてるだけで操縦するのは女性。奥様ってやつは、旦那に操縦されることに疲れていて、一時の安らぎを俺のような若くて綺麗で、自分を立ててくれる男に求めるもんなんだよな」
 自分を綺麗だと言い切るところはさすがに、F4の一員だけれど、それを言って嫌味がないのはあきらの人徳か。
 これが司や総二郎だったら、思いっきり反発したくなる。
 類の場合は、飄々としていて、実際にはけっこう司に対を張るような傲慢さも持っているにも関わらず、つくしの鼻にはつかないし、許してしまう。
 「でも、司だって、お前には気を使ってるだろ?」
 「…それって、どんな答えを期待している?」
 また、からかいたいのだろうか?
 「いや、別にまんま。あの野獣司がお前に出会って、えらく変わって、人間ってここまで変われるのか、変えることができるのかと、俺の人生観180°変えたからな」
 「おおげさじゃない?」
 「お前だって、そう思わね?」
 「うー。あたしが変えたかどうかっていうのは、実際のところわからないけどさ。あたしも出会った頃は大っ嫌いだった道明寺が、えー、そのう、付き合う関係になったていうのは、人生そのもの変わっちゃったけどね」
 「はは!まあ、確かに、そりゃそうだ。お、もう、そろそろ16時か。そろそろ、お前、寒くない?」
 今日は司とのデートで、フォーマルなレストランなどにも連れ出される可能性を考えて、薄手のワンピースにニットカーティガン、その上にAラインのコートを羽織った格好なので、ちょっと寒い。
 いつもだったら、厚手のマフラーにゴツイほどの手袋、乙女にあるまじき厚手の下着、タイツを履いた上に絶対にスカートなどはかないという重装備なのだ。
 痩せぎすなせいのか、もともと冷え性で、いくら食べても太りにくい体質のために脂肪分が少なくて寒がりな身に染みる。
 「…ちょっと、寒いかも」
 「そか。じゃあ、そろそろ、ウィンドショッピングはいいよな?」
 「うん」
 「夜も司と予定組んでたんだから、空いてるよな?」
 「あー、でも、もういいよ。ここまで付き合ってくれて、ありがとう。美作さんのおかげでとても楽しかった。独りぼっちで暗くてつまらない誕生日を過ごさなくてすんで、ホント、感謝している」
 あきらは、真摯に礼を言うつくしに目を和ませ、柔らかく微笑み、ポンポンといつものようにつくしの頭を軽く叩いた。
 「どういたしまして。でも、もうちょっと、付き合えよ」
 「えー、でも。悪いよ」
 「いいから、いいから。実は出がけにお袋に今日がお前の誕生日だって話したらさ、うちで誕生会しようって、張り切って準備してるんだよ」
 目を見開いてあきらを振り仰いだつくしに、頷きかける。
 「実家に帰る予定じゃないんだろ?」
 「うん、みんな出払っているし。でも…」
 「じゃあ、いいじゃないか?来いよ、お袋も芽夢も絵夢も楽しみにしてる」
 いつもは溌剌としたひまわりのような笑顔のつくしが、わずかに目を潤ませ、はにかんだような笑顔を浮かべる。
 「…ありがとう」




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