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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて024

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 「ん?」
 「うちのお袋や妹たちがすっかりお前のファンになってさ。俺の高校時代のダチだって知ったら、よけにつくしちゃんを連れて来い、連れて来いって煩いんだよ」
 先日訪問した美作家の女性陣をつくしは思い浮かべる。
 美しくて、気さくで、優しい人たちだった。
 道明寺楓やら、司のおかげで垣間見た上流階級の権高い貴婦人たちのイメージをよい意味で払拭する素敵な人たち。
 「…あたしも、またお会いできたら嬉しいけど。悪いんじゃない?」
 美作家でなら、つくしにとっても気の置けない楽しい時間を過ごせそうだ。
 「いいって、喜ぶから」
 「そう?じゃあ、お邪魔しようかな」
 「決まり。牧野とはゆっくりと話したいし、うちの方が、落ち着つけるからな」
 予定が決まったあとは、先日久しぶりに再会した時もそうだったが、あきらの気遣いに溢れた、それでいて気取りのない社交術に、楽しい会話の時間を過ごす。
 「へえ?いきなり、イギリスか~。いくら海外に慣れてるにしても、甘やかされたお坊ちゃまが、右も左もわからないところでよく頑張れたわねぇ」
 「バーカ、これでもガキの頃から少しづつ仕事のことも憶えこまされてるんだよ。右も左もわからないどころか、学生時代だってそれなりにかかわってたし」
 「あ、そうなんだ。ついつい、高校生の頃の女の尻ばかり追いかけてた美作さんのイメージが…っと、ありゃ、失言」
 「…お前な」
 唇を引きつらせるあきらに、つくしがわざとらしい愛想笑いを浮かべ、空々しく親身さのない謝罪をする。
 「ごめんごめんって、はははは」
 あきらはあきらで、後腐れはないものの、おだてて持ち上げて、互いに一物も二物も腹の底に抱えて笑顔で駆け引きしあう男女の関係とは違う、つくしとの他愛無い会話に久しぶりの新鮮さと安らぎを感じていた。
 社会に出て、幼馴染たちとの交流も間遠くなり、常にできる専務、次代のリーダー、美作のジュニアという仮面を外すことができなくなっていた。
 それが、つくしといるだけで、あっという間に素のままの自分に立ち返れる。
 それに…。
 久しぶりに顔を合わせた女友達は、あきらの想像を超えた変貌を遂げていた。
 濃い色目の紺地のシャンタンタックワンピースは少し硬めだが、色白なつくしの肌の白さを際立たせ、童顔な顔を引き締め大人の女の落ち着きをあきらに感じさせる。
 また、薄手のレースストールが甘さも添えていて、大人になったつくしは、今のあきらから見ても女として十分に魅力的だった。
 そして、人間としてのつくしは彼が今まで出会った誰よりも輝いていて、元々友人として好意も抱いている。
 …まいったな。
 何食わぬ顔をしながらも、あきらは内心では困っていた。
 この何気ない時間が、一時の邂逅がこの上なく楽しく…貴重なもののように思える。
 「…みんな、大人になったんだねぇ」
 つくしのしみじみとした言い方に、思わずあきらは苦笑を浮かべた。
 


 つくしは、美作家の人たちの大歓迎を受け、久しぶりに屈託のない楽しい時間を過ごした。
 美味しい食事に、気の置けない会話、夢の国のような美しく豪奢な洋館。
 食事の後は、さすがにあきらの母は双子たちを連れ、居間につくしとあきらを残し、退出することになった。
 「今日は楽しかったわ、ありがとう、つくしちゃん」
 「いえ、あたしこそ、すっかり図々しくお言葉に甘えてしまって。ご馳走様です」
 ソファから立ち上がって丁寧にお辞儀をするつくしに、美作夫人が相好を崩して朗らかに返す。
 「ううん、また来て頂戴ね。あきら君たら、いい年をして女の子の一人も連れてきてくれないんだから。つくしちゃんみたいないい子が来てくれたら、おばさんすっごく嬉しいわ」
 ニッコリ笑う美しい母の横で、双子たちも口々につくしへと強請る。
 「つくしちゃん!また来てね!」
 「今度また、一緒にお菓子作り教えて~」
 何とも返しようのない母の発言と、案外、ちゃっかりな妹たちにあきらが苦笑する。
 つくしはつくしで、あきらが女の子を家に連れてこられない理由がよくわかっているので、曖昧な愛想笑いで返すしかない。
 三人が退出すると、
 「悪かったな、牧野。あいつらの相手させちまって」
 「ううん。本当にあたしも楽しかった。美作さんのお母さんや絵夢ちゃん、芽夢ちゃんには、とてもよくしてもらってるから」
 謙虚にいうつくしは本心だったので、真情がこもっている。
 それに優しく微笑み返すあきらの心も、ほんのりと温かい。
 あきらの周りには、つくしのように素直に感謝を表す人間も稀有だったし、好意に対して策略ではなく純粋な好意で返してくれる人間は貴重だった。
 …信頼に足る人間、それがつくしだった。
 だからこそ、温厚ではあっても誰でも受け入れるというわけではない、そこは上流社会の海千山千の世界を泳ぎ渡る母が信用するのだったし、やはりその世界で生まれ育った妹たちも慕い懐くのだ。
 …そして、桜子や総二郎…司も。
 だが、類は。
 「あれぇ、もうこんな時間なんだ~。あたしもそろそろ失礼するね」
 ふと、キャビネットに置かれた天使時計の時間に気が付き、つくしがハッとソファを立ち上がる。
 「泊まって行けよ。部屋ならいくらでもあるんだから。着替えも用意するし、明日はここから出勤すればいいだろ?」
 「いやあ、さすがにそこまではね」
 美作家の人々にも申し訳ないし、同性の友人ならともかく、さすがに異性の友人宅ではありえない…つくしの常識では。
 つくしの逡巡も理解しているのか、あきらも無理強いはせず、送迎の車の手配をしてくれる。
 「…明日から、類のところへ行くんだったっけか?」
 「だから、社外の人間のあんたがどうして知ってるわけ?」
 「俺、お前んとこの重要顧客の重役」
 「またそれ~?」
 ガクッとつくしの肩が落ちる。
 一応、社外秘でしょう、そういう会社の事情は…と呆れ果てる。
 「ま、俺だって一々、チェックしてたわけじゃねぇけど、ほら、お前の担当してる菓子、けっこうヒット作連発してるだろ?」
 「…そうでもないけど」
 実際、つくしは社内でも有望株だ。
 たまたま幸運が重なったのかもしれなかったが、手がけた企画のいくつかが会社に利益ももたらしている。
 そうした事情に、あまり野心がないつくしは預かりしらぬことではあったけれど、並み居る男性社員を押しのけ、花沢物産との重要案件に駆り出されるのも、社内ではそれほど違和感のあることではなかったのだ。
 「で、俺んとこでもお前に次の企画を受け持ってもらおうと思ってな。ちょっと声かけたところが、類んとこに出向になったって聞いたからな」
 「そうだったんだ」
 含みはないようだが、あまり類のことは話したくない。
 話したくもなく、聞きたくもない。
 だが、あきらは高校時代の友人であり、類はその幼馴染みだ。
 類とつくしもまた、全く知らない人間だったわけではない。
 そういった事情がある以上、先日の類との間に起こった『不都合な交渉』を知らないあきらから、類の話題がでるのは仕方がないことであり、またよけいな嫌悪を見せれば詮索されかねない。
 どう話題を変えるかとつくしが思いあぐねていると、つくしを見ていたあきらが視線を反らせて、目を伏せ、ポツリと呟く。
 「…類のこと、悪く思わないでやってくれ」

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~ Comment ~

モテ期

ブログのほうで、つくし総受けとあったのを、「そうか~さりげなく総つくかぁ」と思っていた私。。。これ読んで、???あきつく?
いや~ん、あきらならつくしが幸せになりそう!(^^司派の私ですが、こんなあきらなら・・なんて思ってしまいました。皆がつくしを好きってことだったんですね。気づきませんでした。(^^;
つくしモテモテな明るい話も読みたいような、ひどい類も見たいような。。
あ~この話がふたつに分岐してほしいくらいです。
これからも目が離せません。楽しみに待っています!
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