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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて023

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 何年間も音信不通だった相手だ。
 1ヵ月以内にあっていれば、十分に久しぶりな感じはしない。
 『相変わらず、そっけねぇな、お前って女は。メールの返信もしやしねぇし』
 電話の向こうは苦笑の気配だ。
 「ああ、ごめんなさい。すっかり忘れてたのよ」
 『ひでぇな』
 その言葉に、まったくだと自分で同意する。
 だが、確かにそれどころではなかったのだ。
 ありえないと思いつつ…またも類から何か恐ろしい意図を含んだメールを送られるような気がして。
 …着信拒否してるんだから、それはないでしょ。
 冷静な頭はそう否定するのだが。
 「だから、ごめんって…そっちこそ忙しいんじゃないの?あたしに電話してる暇もないでしょうに」
 我ながら友人に対するにしては冷たすぎたかと、語調を和らげ多少はおもねる。
 『まあな、暇とはいえわねぇけど。久しぶりに再会できたダチに連絡入れるくらいの時間はとれるさ。お前、近々類んとこに出向になるんだって?』
 さすがは早耳だ。
 類から話が行ったのだろうか?
 思い出したくもない男を思い浮かべ、携帯を握りながらつくしは思いっきり顔を歪める。
 かつてはほろ苦い思い出と共に、美しい過去の初恋として美化していた相手だったのに、いまとなっては蛇蝎のごとき存在に成り果てている。
 「…そう。なに、それで慰問の電話でもくれたってわけ?」
 『慰問って…ははは、やっぱり不本意な出向ってやつか』
 やっぱり…がどういう意図の元かはわからないが、こっちの不満は十分に伝わったらしい。
 そうは言っても、あきらに愚痴ってもどうしようもない。
 肩で息を吐き、適当に返答する。
 「別にそういうわけでもないけど。どの道、一介の社員は会社の命令で唯々諾々と従わざる得ないんだし」
 『まあ、そういうことなんだが。…よし、マジで慰問してやるよ』
 「は?」
 『今週の日曜日、暇?』
 日曜日…って、花沢物産出勤一日目の前日じゃない。
 山崎の転勤等のごたごたで、当分山崎の仕事が立て込み、どの道つくしの出向が一段落するまでは、今までのペースで会うのは控えることにしている。
 山崎としてはあまりよろしくないようだったが、実際問題きつかったし、つくし的には少し距離を置きたかった…しばらくすれば、少しどころか遠距離決定なのだが。
 それにしても、そんな大変な日の前日に、過去はともかく重要顧客の重役を接待したい気分じゃない。
 「…暇じゃないけど」
 『よし、じゃあ、20時に迎えに行くからな』
 「ちょっと!暇じゃないって言ってるじゃないっ。何なのよ、どっかの誰かさんみたいなその強引さは!?」
 あんた本当に美作さんなの?…と言いかけ、司ほどではなくてもF4全員元々強引で自分勝手だったことを思い出す。
 程度の差だけだ。
 『お前の場合、多少強引じゃなけりゃあ、出てこないだろうよ。昔はバイトだなんだと理由つけてたが、どうせ今は仕事だろ?お前みたいな一般社員は、日曜日は休日だろうよ』
 「…そりゃあ、休みだけどさ。休日出勤とか…恋人とデートだとか考えないわけ?」
 『デートなのか?』
 問われて嘘がつけない性格が恨めしい。
 「…違うけど」
 『当然、休日出勤でもないよな?』
 「何でわかるのよ!」
 『俺、お前んとこの重要顧客の重役』
 意味不明。
 一々平社員の出勤状況を確認するこの連中の気がしれない。
 頭を抱えるつくしに、あきらが苦笑する気配が届く。
 『ま、冗談だけどよ。お前のことだから、単なる言い訳だって思っただけ。たまには付き合えよ、ダチだろ?』
 こんなにも立場も変わった自分たちを友達だと言い切るあきらの言葉に虚を突かれ…そして、どこかほんのりと嬉しい。
 「…わかったわよ。でも、あんたの家の高級車で乗り付けられたりするのはごめんだから。どこいけばいいわけ?電車で行くわよ」
 『お前な…。目立つのが嫌なら最寄りの駅まで行くよ。それでいいよな?』
 そこまで言われたら、強情も張りずらい。
 まあ、駅だったら多少目立ったところで知り合いに会う可能性も低いし。
 妥協し、あきらの提案を受け入れ、日曜日の約束を交した。



 まだ昼間の暖気も残り、ムッと暑い夕暮れ時。
 普段だったら学生たちの帰宅するグループや、買い物帰りの親子連れでごった返す駅前も、祭り終えて日が暮れて感の強い日曜日の駅のロータリー。
 時計台の時刻を見ると、あきらとの約束の時間までまだ10分ほどある。
 さすがに、どこかで時間を潰すには中途半端で、かといって蒸し暑い路上で待つ気にもなれない。
 …どうしよっかな。コンビニにでも入っていようか。
 と、猥雑な雰囲気に不似合な高級車が客待ちをするタクシーの列をよけて、スッとつくしの前へと横付けされる。
 キョトンと思わず目の前のスポーツカータイプのメタリックシルバーの車体を見つめ、立ち尽くしたつくしだったが、スマートな仕草で降車した長身の見慣れた男の姿に、ホッと息を吐く。
 「…相変わらず、派手な車に乗ってるわね」
 真っ赤じゃないだけマシだけど。
 そう独り言ちるつくしに、あきらが苦笑する。
 「よっ。久しぶりに会って、第一声がそれかよ」
 「いまさらあんたに取り繕ったってしょうがないでしょ?」
 肩を竦めてあきらがつくしの背に軽く手を当て、反対側の助手席へとエスコートする。
 座席に収まったつくしがシートベルトを締めるまでをもサポートし、運転席に戻ったあきらがスムーズに車を発進させる。
 その間も、人気も少ないながらの駅前は、こんな場所に不似合な車以上に、いかにも只者ではない雰囲気の美男の登場に、雑然とざわめき、そこかしこで感嘆の声があがる。
 その大半が老若男女問わぬ女性のものであることは疑うべくもなく…その溜息の数だけ、つくしへの嫉妬と羨望の眼差しが痛い。
 …だから、この連中と一緒にいるのは嫌なのよ。
 あきらの責任ではないと思いつつ、どうしても愚痴めいた感慨が沸きあがる。
 とはいえ、そんな感慨も、それこそ本当に数年ぶりのこと。
 司と別れて以来、また再びそんな機会もあるまいと思っていたのだが
 あきららしい丁寧な運転で、心地よい冷房の冷気に汗で湿った体の熱も冷まされた頃…。
 「で、どこ行くわけ?」
 「お前、まだ飯まだだろ?」
 「まあ、なに、これからご飯に行くわけ?…あたし、あんたらが行くような高級レストランに行くような格好してないんですけど」
 とはいえ、そんな事態もありえるかと、TPO的には拙くない格好はしてきている。
 あきらと会う約束をした時点で、時間から考えてもありえないことではなかったし、何かしら話があるなら、それなりにカフェの一つにでも入るだろうと思ったからだ。
 チラッとつくしを横目で見やったあきらの顔が、柔らかく笑い含んでいる。
 「ん?それで平気だろ。…よく似合ってる」
 甘く囁かれ、学生時代からこの男の手練手管を知り尽くしているつくしでさえ、わずかに鼓動が高鳴る。
 うう、マダムキラーめ。あたしはまだ独身だっつーの。
 わけのわからない文句を内心でつけつつ、照れ隠しにあえて渋面を作る。
 「…まったく相変わらず口が上手いんだから」
 「そうでもないって。ま、それはともかく、牧野さえよかったら、うちへこないか」

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