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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第二章 誘惑①

昏い夜を抜けて022

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 ビクッ。
 いつもは聞き逃すことも多いのに、この時、この場面で…気が付いたメールの着信音。
 真剣な目をしてつくしから視線を外さない山崎をよそに、すでにつくしの気はそがれ…それどころか、頭の中がメールの内容で占められる。
 「…つくしちゃん?」
 「ご、ごめんなさい」
 つくしの返答に、山崎の顔が歪み、困惑と失望に彩られる。
 「あ、違うの…その、正輝さんと結婚したくない、とかそういうことじゃなくって」
 「…唐突だったかな、やっぱり」
 唐突…といえば唐突だったかもしれないが、転勤のことを知った時からある程度察してはいたし、そもそも遊びで交際するなど考えられないつくしであったので、山崎の方も付き合い始めから結婚を考えていることは明らかだった。
 それなのに、いざその時が来ると答えられないその理由。
 じっとりとした汗が、今さっき着信を知らせてきたばかりの携帯電話のメールに戦々恐々とするつくしの背筋を泡立だたせる。
 「…それもあるけど、いま、花沢物産への出向が決まったばかりだし」
 意外なことを言われたように、山崎の目が瞬く。
 「えっと、…仕事を辞めたくないってこと?」
 「うん。いま会社にとって花沢物産との提携は大事なことだし…」
 「でもそれって、つくしちゃんでもなくても、他にいくらでも変わりはいるんじゃない?」
 さっきまでメールのことばかりで占められていた頭が、山崎の言葉で冷水をかけられたように急に冷静に冴え出す。
 『いくらでも変わりはいる』…間違いではない。
 確かにその通りだし、自分でも思っていたことだ。
 けれど、よりによって自分の夫になろうと言う男性に言われた言葉が、すごくショックで驚きだった。
 顔色の変わったつくしの様子に気が付いた山崎が、ハッと先ほどの自分の発言を取り繕う。
 「いや、つくしちゃんはフレッシュラインでも期待されてる有望株だしね。今回も、つくしちゃんを特にって見込まれたわけだし」
 あからさまにヨイショされ、自分でも今回の件にわざわざ名指しで指名されたことを疑問視していたことを思い起こす。
 「…そういう、わけでもないんだけど。ただ、進のこともあるし」
 「進君?」
 弟には以前、一度紹介してあった。
 さすがに東北に住む両親に紹介するほど話は進んでいなかったが、それはある程度結婚を意識していたとはいえ、それがこんなにすぐという予測はついていなかったから。
 「…進も特待生で学費は免除されてるとはいえ、一人暮らしだとアパートの賃料の他にも生活費も一人で頑張らなければならなくなるし」
 それに、東北の両親へ、つくしは仕送りもしていた。
 さすがに、大した金額ではなかったが、山崎と結婚してのちもそれを続けるのに専業主婦では気兼ねがある。
 「進君のことは俺も援助できると思うけど」
 母子家庭で育った山崎は、家族に対しての思いやりも深く、つくしの両親や弟への理解もある。
 実際、金額の多寡はともかく、山崎が本気でそう言ってくれているのはわかる。
 だが…。
 「うん、でも、できるだけあたしがどうにかしたいの。あたしの弟なんだもん。結婚は…進が大学を卒業してからじゃ、ダメかな?」
 それが精一杯の譲歩だろう。
 山崎にしても…つくしにしても。
 ただ、山崎が専業主婦を望んでいるとするなら、そこでまた話し合いの論点がでてくるかもしれなかったが、とりあえず今の段階ではそこまでで十分のはずだった。
 「…俺の方も相談もしないで、急ぎ過ぎてはいる、か。わかった、とりあえず、東北へは一人で行くよ。でも、あまり待ちたくはない。東北にはつくしちゃんのご両親もいるだろう?進君やご両親のことは俺も考えるから、つくしちゃんも考えておいてくれるかな?」
 言わなくても山崎は、両親のことも考慮にいれてくれたようで、そこまで言われては考えざる得ない。
 どの道、2才年下の進は現在21才。
 来年には大学を卒業し、社会へ出る。
 わずかな猶予になりそうだった。



 強引ではなかったが、内心では確たる将来の約束を欲しがり、デートスポットの近辺のホテル街…への同行を山崎は望んでいた。
 鈍いつくしにしてはそれに気が付いていたが、あえて気が付かないふりでその場を乗り切り、山崎が強引には出きれないのを良いことに、今この時期に山崎との肉体関係を忌避した。
 結婚…を前提に考えているのだから。
 奥手であっても、それほどお堅いというほどではないつくしだったので、絶対にダメだという意識はなかった。
 おそらく…山崎がもっと強引に出ていたら、ついて行ってしまったのかもしれない。
 だが、山崎の車の中で、彼のうわずった明らかに上の空での他愛無い話を聞きながら、バッグの中の携帯電話のメールが気になって仕方がない。
 アパートまで送ってもらい、山崎の車を見送るか見送らないかのタイミングで、急いで携帯電話をバッグから取り出し、メールを確認する。
 …美作あきら。
 類からではなかった。
 はああああ~っと大きく息を吐きだし、思いっきり脱力する。
 山崎からプロポーズをされ、鳴ったメールの着信音に脳内を走った驚愕と恐れ。
 以前に類から送られてきた…あられもない自分の姿の写メの記憶が甦った。
 結婚…。
 つくしは処女だったとは山崎に話していなかったが、さんざん山崎との関係をプラトニックで過ごしてきた。
 まさか処女かどうかまではわかってはいないと思う。
 それにしても軽い女だとは思っていないだろう。
 だからこそ、清い関係にも甘んじ、無理強いしないでくれているのだ。
 もしかしたら、結婚までは…と我慢してくれているのかもしれない。
 だが…。
 結婚してのちも、自分はあのこと…類との過ちを伴侶になる男に対して沈黙し続けなければならないのだろうか。
 騙し続けられるのか。
 そして…自分は忘れられるのだろうか。
 暗澹たる未来の予測に、つくしは茫然と月が雲に隠れ、真の夜の闇が訪れるのを見つめていた。



 『よ、久しぶり』
 うっかり忘れてメールの返事を返さす2日目。
 当のあきらから携帯へ電話が入った。
 「久しぶりって、この間あったばかりじゃない」

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