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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第四章 愛憎…愛することとは①

それでも貴方を愛しているから074

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 「もちろんだよ」
 類の言葉に、あたしは心からの同意を込めてにっこりと微笑んで頷く。
 「ありがとう」
 類の言葉と同時に、トントンと、ノックの音が響いた。
 「…牧野と会ってる間は、邪魔しないでと言ってあったのに」
 類が顔をしかめて、ドアの方を睨み据え、首を振り立ち上がる。
 「いいよ。これ以上、時間に追われているあんたを独り占めしたんじゃ、申し訳ない。そろそろ、あたし失礼するね」
 「ホント、ごめん」
 「ううん、気にしないで」
 ドアノブに手をかけしな、
 「…牧野」
 「ん?」
 類に呼び止められて振り返ると、類の真剣な目があたしを見ていた。
 「この先、牧野にとって大変なことがあるかもしれない。だけど、頑張るんだよ?」
 「え?」
 「…いや」
 怪訝に眉根を寄せたあたしに、首を振り、
 「なんでもない…司のことは?」
 「あ、うん。…いま、一緒にカウンセラーに通ってる。道明寺なりの真摯さであたしと向き合ってくれてるんだと思うよ」
 「そうか…」
 「道明寺もね…謝ってくれたよ。悪かった、ごめん、って」
 類が微笑んでくれる。
 あたしの大好きな王子様のような優しい、柔らかな笑み。
 「司のこと…」
 赦せそう?
 きっと、類はそう聞きたかったんだと思う。
 でも。
 「いや、ここから先はあんたと司、二人の問題だね。…また、みんなで会おう。あんたの気持ちが落ち着いたら」
 「うん」
 類らしからぬ、「みんなで…」という言葉に、彼なりの気遣いを受け取って、あたしは花沢物産専務室を後にした。



 加納浩輔の事件からしばらくして、かすみさんから手紙を貰った。
 まずは、加納浩輔の命令に唯々諾々と従い、あたしに対してとんでもないことをしでかしてしまった…という懺悔と謝罪に始まり、どういう経緯で加納と知り合い、従うようになったという告白だった。
 やはり加納浩輔の言った通り、奴と彼女は英徳の高等部時代のクラスメートで、道明寺の手下を自認するようになってから増長していた加納浩輔の餌食になっていたのだ。
 道明寺の命令ではなく、単純に加納浩輔と、その一派によって目をつけられ、比較的庶民の出で、気が弱く、加納らに対して逆らうことができなかったかすみさんは、数々の虐待を受けた。
 あたしのように、男顔負けの暴力を受けるといったことはなかったようだったけれど、その分女としての辛酸を舐めつくしたことは想像にかたくない。
 最初は些細なことが発端だったようだ。
 逆らえない、逆らわないかすみさんの態度に、いい気になった加納らによって集団レイプされてからが地獄だったと書かれていた。
 道明寺が関わらない…だが、道明寺が決して無関係だったともいえない被害者。
 果たして道明寺が果たした役割はなんだったのか。
 人は異常な状況下では、その状況に順応するかのように、徐々に自身の常識や良心をも歪めてゆく。
 加納浩輔の中で、おそらく常識や良心のボーダーは著しく低下していったのだろう。
 そして、いざ、自分たちにそのツケが回ってくるようなことがあれば、道明寺という虎の威を借り、逃れる心づもりでいたに違いない。
 実際に、たかだか記憶にも残らない程度の手下のために、道明寺がもみ消しに動いてくれたかは問題ではない。
 少なくても、加納浩輔たちがそう考えていた…ということが問題なのだ。
 それだけ、加納たちの中での道明寺は大きかった。
 悪のカリスマ、他人を虐げることを肯定する絶対者として。
 そして、その時ばかりでなく、英徳から逃げ出し、逃れえたはずのかすみさんは、その後何年もその時代の後遺症に苦しむこととなった…いや、今も苦しみ続けている。
 本来はそんな苦しい思い出ばかりの英徳に、足を向けたのはどういう心理の働いたゆえだったのか。
 あたしに会う…用事があるから、そんな理由があるにせよ、加納浩輔のような人間がまだ在学している可能性があった英徳になぜ?
 過去回帰…精神科医の先生だったらきっとそんな風に分析してみせるのだろう。
 あの後、道明寺に働きかけ、あたしに対してかすみさんがしたことは不問にふしてもらった。
 どちらにせよ、心神喪失状態ということで、被害者であるあたしが訴えるつもりなどなかったのだから、それは問題なかったようだ。
 また滋さんに、かすみさんにも須賀原先生のケアが受けられるようにお願いした。
 滋さんには、
 『つくしを陥れる手伝いをした人なんでしょ?』
 と渋い顔で反対されたけど、そこを押して頭を下げた。
 最後にはしぶしぶながら納得されたけれど、桜子も首を傾げていた。
 『先輩がそこまでされなくっても…』
 その言葉の中に桜子の気持ちが集約されている。
 けれど、かすみさんとあたしはおそらくコインの裏と表なんだ。
 どこかで一つでも歯車が違っていれば、あたしもまたかすみさんと同じ立場だったのだと思う。
 性格が違うとか、姿勢が違うとか、どうとでも後になればいうことはできるけれど、かすみさんと同じ目にあって、誰も味方になってくれない状態であたしだって、戦えたとは思えない。
 あたしには類がいた。
 たとえ、類にとってはその場限りの優しさだったのだとしても、その優しさはその後のあたしの人生を大きく変えた。
 道明寺と戦う力を残し、それによって多くのものを得た。
 初恋、F4や桜子、滋さんという得難い友人たち、…そして道明寺司。
 憎んで嫌っていたはずの道明寺と愛しあうという奇跡。
 そして、かすみさんにはそうした偶然は訪れなかった。
 あたしが救われたのだから、かすみさんも…といった高邁な思いだったわけではない。
 ただ、顔を見て、言葉を交わし、その哀しみの重なった人が苦しみ続けることを見過ごすことを堪えられなかっただけだ。
 たとえ、あたしと関わり合いがない人だったとしても、ほんのわずかな気休めに過ぎないのだとしても、差し伸べることのできる手を惜しみたくなかった。
 ましてや、彼女はもう一人のあたし。
 優紀は、そんなあたしを静かな眼差しで見守るだけで、特には何も言わないでくれた。
 ただ、
 『つくしらしいね』
 と柔らかく微笑んでくれただけで。
 結局、いつもあたしの身勝手さや無責任な同情を友人たちは受け入れてくれ、力を貸してくれるのだ。
 ごめんなさい、ありがとう、たったそれだけの言葉をその報いに。

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