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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第四章 愛憎…愛することとは①

それでも貴方を愛しているから073

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 ドアの開く音がして、いつもどおり甘い王子様の笑みが現れる。
 いつもはその後に続く、類の第一秘書の遠藤さんの姿がない。
 「…本当は、こちらから牧野の元へ出向くのが、筋なんだけどね。ごめん」
 「ううん、あたしがいいって言ったんだもの。あたしは構わないよ。いま、忙しいんでしょ?こっちこそ、ごめんね」
 あたしが頭を下げると、あたしが座るソファの対面側に腰を下ろしながら類が困った様な複雑な顔で微笑んだ。
 「牧野に謝られたら立つ瀬がないよ。今日は、俺が謝るために会ってもらったのに。あきらや総二郎とはもう会ったんだろ?」
 「…うん」
 あたしから切り出すべきなのか、類から何か語ってくれるのか、ここに来る道中悩んでいたのが嘘のように、あっさりと類が話題に載せた。
 どちらにせよ、最初からそのことを話すためにここに出向いたのだ。
 互いに気まずいからと言って遠回しにしても仕方がない。
 それこそ類とあたしの間で今更のことだったし、何を話したとしても彼があたしの一部で、あたしが彼の一部であることには違いがないはず。
 そうだよね?類。
 類は両膝の上に肘をつき、組んだ両手に額を乗せ、ゆっくりと口を開いた。
 「…あの頃は、司が何をしようと我関せずが当たり前だった。面倒くさいとか、ポーズだったとか、そういうんじゃなくって、本当に興味がなかったんだよ。俺にとって、静とあいつら以外は道端の石や、木とそう変わりはなくって、そういったものに感情があるなんて考えたことなかった。だから司が殴って怪我をしている人間がいるとか、赤札貼られて苦しんでいる人間がいるとか、全然考えもしなかったし、そもそもどうでもよかったんだ」
 唐突に始められた懺悔を、黙って聞く。
 「当然、司を止めるなんて意識自体もったことなかったよ。俺らだけがあいつを止められたんだとしてもね」
 微妙な言い回し。
 実際、類に道明寺を止められたかなんてわからない。
 あたしを庇った時、確かに大して深刻なものではなかったにしろ、道明寺は類の言葉を聞き入れるどころか反発して、仲違いしてしまった。
 そうであれば、たとえ彼らが道明寺を諌めようとしたとても、彼ら以外の人間たちが言うよりはマシという程度のことで、結局道明寺が我を通してしまった可能性の方が高い。
 椿お姉さんですら、道明寺のあのくだらない陰湿な遊びを止めることはできていなかったのだから。
 それでも、類を加害者の一人だと…傍観が罪だとあたしは言い切れるのだろうか。
 言える…結果としてたとえ止められなかったにせよ、やはり彼らは言うべきだったのだ。
 お前のやっていることは酷く残酷なことなのだと。
 卑劣で犬畜生にも劣る行いだったのだと。
 なぜなら、彼らは道明寺の親友であり、やはり唯一それでも制止できる可能性のある人たちだったのだから。
 「あんたが初めてだった。殴られれば痛い。虐げられれば苦しい。傷つけられたら哀しいと、俺にわからせてくれたのは。司が虐げているのは石や木なんかのモノじゃない…感情を持つ一人一人の人間だったんだって、ことを、ね」
 伏せていた顔をあげ、類があたしの視線を真っ直ぐに受け止める。
 「…不思議だね。あんたは絶対に折れたり、泣いて逃げ出そうとはしなかったのに。だからこそ、あんたの強さが俺を惹きつけて興味を抱かせた。いつの間にか、一生懸命に踏ん張て戦ってるあんたを見ているうちに、人形のままでいることができなくなった。人形じゃないんだから、無視していることは罪なんだって、理解できるようになったんだよ」
 「あんたは恩人だった」
 「盗人猛々しいって奴だけどね(※盗みや悪事をしながら平然としていたり、それを咎められると開き直ったりする者を罵る言葉)」
 自嘲気味に微笑んだ顔は、ひどく清潔で美しかった。
 かつて憧れた人。
 その無色透明で、どこか温度のない優しさは、確かに人形の情動だったのかもしれない。
 けれど、次第に人形は人間になり、誰よりも優しい人になった。
 でも、彼は昔から優しかった。
 ただ不器用で分かりにくい優しさをもった人だっただけ。
 それが花沢類だった。
 「あんたが、ずっと苦しんでいたと知って、正直、青天の霹靂だったよ」
 あからさまな物言いに、苦笑が零れる。
 甘い王子様のような外見に反して、類の本質は違う。
 キッパリとしていて骨太な男性。
 「青天の霹靂で…そして、ショックだった。あんたが言いだしたことに対してじゃない。あんたに言われなければ気が付かなかった自分に。あんたが苦しんでいて当然だったということがわからなかったことが、悔しくて…この上なく申し訳ない」
 類が姿勢を正し、両手を太腿に置き、深く頭を下げる。
 「ごめん、あんたの苦しみを無視していたことに対して。そのことに対して鈍感だった俺の不明を謝らせてほしい」
 「…類」
 「赦されることじゃないけど、憎まれて当然だけど、俺たちを…俺を締め出さないでほしんだ。自分の罪を突き付けられてなお、それでも俺はあんたの友人でいたい。あんたと他人になりたくないんだ」
 「他人になるなんて、あたしだって嫌だよ。自分の中にあんたたちへの恨みがまだあったなんてあたし自身もずっと気が付いてなかった。けれど、あんたたちがあたしに対して真摯に謝罪してくれたことが、あたしの心を癒してくれる。謝ってくれたことで、自分の中の傷を自覚できたの。自覚して初めて立ち向かうことができる」
 自覚していないものは戦うことはできない。
 戦わなければ、傷を癒すことはできないのだ。
 「それにさ…」
 「うん?」
 言おうか、言うまいか迷いつつも、せつなげな類の顔に言わずにはいれない。
 「…道明寺には気紛れだなんていったけど、類が助けてくれたのは気紛れなんかじゃないって信じてる」
 「…牧野」
 「だって、あんたは優しい男だもん。今も昔も、すっごく優しい。きっとあたしじゃなくっても、。何度同じ場面に出くわしたとしてもきっと助けてくれたよ」
 「俺たちの…俺のこと、赦せそう?」
 まっすぐな眼差しがどこか揺れている。
 「…たぶん、あんたがあたしを助けてくれた時に、救ってくれるたびに赦していたのだとは思う。…でも、それはあたしだけのことだよ」
 あんたたちが傷つけ続けたのは、あたしという一人の人間だけのことじゃない。
 あたしが友人だから、見も知らない関係のない人間ではないからの謝罪だというのなら…。
 そんなあたしの言葉にはしない想いにも、類はゆっくりと頷く。
 「わかっているよ。あんたの教えてくれた意味を…もうわからないというほどには、俺だっていつまでもガキじゃない」
 「…そうだね」
 「俺たちはまだ、あんたの友人かな?」

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