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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第四章 愛憎…愛することとは①

それでも貴方を愛しているから069

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 ハッキリ言うのを憚られて、口ごもるのに、道明寺は顔を顰めて首を傾げる。
 「…お前にしたようなことって?赤札つーたら、俺らが関与したのは赤札貼るまでで、後は高みの見物だったからな。調子にのった連中がどういうやり方してたかはまでは一々憶えてねぇよ。お前に関しては、まあ、今にして思えばアホみたいな悪戯もしてたけどな。あきらたちに、そりゃ苛めじゃなくって悪戯だと指摘されたぜ」
 さすがに最初は気まずそうだったけれど、次第に開き直ったのかふんぞり返って自慢?するアホに脱力する。
 悪戯…まあ、確かに道明寺に直接されたことといえば、レイプされそうになったときはともかく、他は上履きを持っていかれてわざわざ目の前で靴の下に履かれたり、からかわれたり、くだらないことが多かったかも。
 …あれ?突然黒服のSPに攫われたこともあったか。危害は加えられず、突然飾り立てられたという異常な体験ではあったけれど。
 どちらにせよ、他人に苛めを示唆しておいて高みの見物なんて、ホント、陰湿で陰険で腐りきったやつだったよね…あの頃のこいつは。
 ジト目で軽蔑の視線を送ってやると、さすがにふんぞり返るのはやめて、苦笑を洩らす。
 「まあ、我ながら卑劣だったよな。ガキ臭くて、お前の言う通りバカ坊ちゃんそのものだったつーのは否定できねぇよ」
 「あんたが直接やらなくても、あんた、手下使って…あたしをレイプさせようとしたよね」
 繰り言を繰り返すつもりはなかったけれど、道明寺はまた責められてると感じたようで、「ああ」と暗い声音で一言頷いただけだった。
 「それってあたしだけ?」
 「あ?」
 遠回しに言ってもこいつには通じない。
 それこそ婉曲的に言っても、円舞曲だと間違われるだけ。
 「かすみさん。園崎かすみさんが被害にあった高等部時代の集団レイプ、その件にもあんたは関わっていたの?あんたが命令して彼女をそんな目に合わせたの?」
 道明寺があたしの顔を真っ直ぐに見返す。
 「…いや」
 いや?
 「いや、命令は…していない」
 「命令は?それって、どういう」
 口ごもるあたしから視線を外し、座っていたソファから腰をあげ、窓際へと歩み寄る。
 そして外を見下ろしながら両手を組んで壁に寄りかかり、溜息を一つ吐いた。
 「そもそも女に赤札貼ったのなんて、お前くらいなもんだ。女で俺にそこまでカンに障るようなことをする度胸のあるやつはいなかったし、俺も相手にしなかった。…確かに、俺もお前以外に赤札を貼った奴を一々憶えてねぇし、当時手下みたいに使ってたやつらのことも同様だ」
 「……」
 「けど、あの頃は直接手を下すまでもなく、お前以外は…赤札貼ってしばらくすれば自分から英徳を去っていったからな」
 「そう」
 少しも安堵が湧いてこないのはなんでなんだろう。
 聞きたくて怖れていたことを否定されたのに、少しも良かったと思えない。
 そして、道明寺も同じことに気が付いていたのだろう。
 絞り出された声音は沈鬱だった。
 「それでも、それでも…俺が原因じゃねぇとは言えねぇんだろうな」
 あたしはぼんやりと道明寺の横顔を眺めたまま。
 「俺が直接手を下したり、命令したんでなくても…赤札貼っていなかったのだとしても、俺が奴らを増長させて、奴らの中のボーダーラインを下げちまったのは確かだったんだろうからな」
 「…道明寺」
 そう。
 当時、英徳で起こった陰惨な苛めや事件の全てが道明寺が関わっていたわけではなかっただろう。
 けれど、少なくてもこの男があの学園で果たしていた役割は大きかった。
 集団心理…ただそれだけでも人は間違ったことも正当化し、他人の尊厳を踏みにじり…時には生命を奪う結果になったとしても、皆がしていたから、という理由を免罪符にする。
 ましてや、学園に燦然と輝いて君臨していた男がそれを肯定し、推奨していたのだ。
 それもなんの正当性もなく、単に自分に逆らった、目障りだったから…それだけの理由で。
 そうした間違った認識や、歪んだ理論が、元々人格的に未熟で不完全だった少年少女たちの価値観を揺るがしたのだとしても不思議ではない。
 ありていにいえば、道明寺自身の歪んだ精神が、似たような連中、あるいは影響されやすい者たちの精神構造に多大な影響を及ぼした。
 もしかしたら、加納浩輔たちがかすみさんを虐待した理由は道明寺にあるのかもしれないのだ。
 道明寺という権力者に気に入られている。
 道明寺という権力者に庇護されている。
 そういった驕りが傲慢さを呼び、また、道明寺によって肯定され推奨された残虐性が増長し、道明寺自身でさえあずかり知らぬ数々の隠された凄惨な事件を生んだのかもしれない。
 そして、そのことに道明寺もまた気が付いたに違いない。
 重い沈黙が再び二人の間に横たわった。
 何を言えばいいのか。
 迷い、口を開こうとしたところで、道明寺がもう一度大きく息を吐きだした。
 「…そろそろ寝ろよ。こんな時間になっちまったけど」
 驚いたことに、すでに時間はもう3時を過ぎて、世の中は朝へと向かっていた。
 「あんた、明日…もう今日か。仕事なんでしょ?」
 「ああ、そうだな」
 淡々と返事を返されるけど、ただでさえ激務に過労している男だ。
 「やだ、ごめん。早く寝て?」
 必要なことだったとはいえ、年末に倒れた記憶もまだ鮮明だ。
 野獣みたいな体力を誇っているとはいえ、こいつだって人間だ。
 キャパ以上の疲労を抱えては、体を壊すことだって当然のこと。
 …卒業も間近で暇な女子大生と一緒にしちゃあ、ダメだよね。
 「ホント、ごめん。疲れてるのに、すっかり引き留めて。…その、今日は、助けてくれて本当にありがとう」
 ベッドから急いで降りて、両手を組んで頭を下げる。
 それに柔らかく微笑み返し、
 「いや…礼には及ばねぇだろ?俺はお前の男なんだから、俺がお前を守るのは当然なんだ」
 「うーん、あんたがあたしの男かどうかの如何に関わらず、助けてもらったらお礼くらい言うのは当然でしょ?」
 「ふ…ん、相変わらず可愛くねぇな」
 苦笑いしながら体を起こし、あたしに歩み寄ってポンと頭に大きな手を乗せた。
 そして、そのまま部屋の外へと歩いてゆく。
 「今日は俺、別の部屋で寝るよ。今日は大学休め。バイトもな」
 「…大学は、もう卒業式までほとんど行くことないから。バイトも…受験が終わってお役御免で、いまはその…充電中?」
 「そうか」
 そのままドアの前まで歩み寄り、ドアノブに手をかけたものの、「ああ、そうだ」と言って振り返った。
 「そういえばお前、滋に紹介されたセラピストのところへカウンセリングに通ってるそうだな」
 「え?あ、ああ。うん」
 唐突に問い掛けられて戸惑いつつ、その通りなので素直に頷く。
 隠してもしょうがないことではあるし…須賀原先生からも、一度道明寺を連れてきてはどうかと言われていた。
 あ、でも、道明寺に相談もなく、そういうごくプライバシーしいては、あたしばかりか道明寺のプライバシーにも関わる問題を話さざる得ない場所へと通っている許可を取っていないことに気が付いた。
 今更だけど、謝罪した方がいいのかな?
 けれどそれを口にする前に、逆に道明寺の方から提案される。
 「そのセラピストのところ、今度俺も連れてゆけよ」
 「え?」
 「お前のことなら、俺にも関係あるだろ。そもそも…俺がお前の悪夢の原因なんだし。そうじゃなくっても、俺とずっと一緒にいる以上、俺も向き合わないわけにはいかないだろう?お前の心の傷に」
 …ずっと一緒にいる。
 サラリと言われる言葉に、胸が痛む。
 言葉じりの軽さほどには道明寺にとっても軽くはないんだろうけれど、けっして躊躇しない、たじろがない道明寺の決意が心に染みて、どこか切ない。
 「…先生にも一度、あんたを連れてきてはどうかって言われたんだ」
 「そうか。…お前の心の準備ができたら言えよ。俺のスケジュールを調整する」
 「うん」
 「じゃ、俺も寝るわ」
 「あ…」
 背を向ける道明寺に何とも言えない気持ちが湧き上がってくる。
 夜の闇に包まれた広い部屋は、ひどく冷たく…怖ろしい気がして。
 馴染んだ道明寺の私室…学生時代からさんざん訪れた東の角部屋だというのに、当の道明寺がいない部屋はよそよそしい。
 一緒にいて。
 抱きしめて。
 もう怖いものはなにもないのだと口づけて欲しい。
 けれど、呼びかけようとした口は、頑なに開くことを拒んでいて。
 …だって、どうするの?
 呼び止めて、一緒のベッドに寝て、あたしはそれ以上のことを赦せるの?
 よもや、昨日の今日で、道明寺がそういう関係を求めてくるとは思えないけれど、それでも、そうした覚悟もないのに…それどこか厭わしくてたまらないのに、ただ添い寝しろと頼むことなんてできるわけがない。
 もしかしたら、…ううん、たぶん、頼めばあたしの為に耐えてくれるだろう。
 さんざんあたしの無神経さを赦してくれたこの甘い男は。
 それでも、それがいかに酷なことであるか、無理を強いることであるかわからないふりをもうできない。
 「どうした?」
 見透かすような透明な目があたしを見返す。
 「あ…、えっと、ううん。なんでもない」
 「そうか…じゃあ」
 「あ!」
 思い出した。 
 そうだ、これだけは言っておかないと。
 「なんだよ?」
 声音の変わったあたしの気持ちの変化に気が付いたのだろう。
 怪訝そうに片眉をあげている。
 「かすみさん、警察だって言ったよね?」
 「ああ…」
 「まさか、なんか罪になったりなんてしないよね?」
 道明寺は、まったく、お前は…というように、呆れたようにあたしを見た。
 「…まあ、お前の言う通り、脅されて心神喪失状態って奴だからな」
 「大丈夫だよね?」
 「ハメられたお前が心配してるつーのは、なんだか納得いかねぇけど。大丈夫だ」
 こいつが約束することなら、絶対に大丈夫。
 あたしは安心して頷く。
 「うん。…かすみさんのこと、助けてあげてよね。あの人は被害者なんだから」
 「…わかった。じゃあな」
 「うん、おやすみなさい」
 今度こそ、道明寺は部屋を出てゆき、あたしはドスンとベッドへと腰を下ろし、そのままゆっくりと背中向きに身を投げ出した。

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