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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第四章 愛憎…愛することとは①

それでも貴方を愛しているから067

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 『けだもの』。
 そんな言葉、言うつもりじゃなかった。
 でも、溢れだした憎しみが、恨みが止まらない。
 あたしの憎悪に満ちた罵声に、殴られたかのように道明寺が硬直する。
 「人でなし!ゲス!ダニ!カス!くず野郎!」
 次々に口汚い言葉が付いて出る。
 それなのに、…そんな言葉なんて言われたこともないだろうに、敵意ではなく、泣きそうに顔を歪めて…あたしを抱きしめてくる。
 「離してよっ」
 「…離さねぇ」
 「離せっ」
 逞しい胸を叩き、傷一つないすべらかな肌を引っ掻いて、突っ張って、身をもぎ離そうとするあたしの耳元に唇を寄せ…。
 「ごめん」
 囁くような、弱々しい声。
 あたしは、思わず抵抗を辞めた。
 「…ごめん、悪かった。…あの頃の俺を赦してくれ。ずっとお前が苦しんできたことに気が付かなかった俺を赦してくれ」
 「……うっ」
 「ずっと苦しかったんだよな。ずっと俺が憎くて、辛かったのに、気が付いてやれなくてごめん。お前の恨みを受け止めてやらなくってすまなかった。赦してくれ…それでも俺はお前を愛してる。愛することを辞められないんだ」
 「うう、うっ、うっ」
 再び呻くような嗚咽が次々に沸き起こってきて、喉が塞がれたように苦しい。
 絶対、非なんか認めないはずの傲慢な男の苦悩と謝罪が、濡れたような声の震えが、怨嗟に凝り固まったあたしの憎しみの塊の中にポツン、ポツンと染み入る。
 まるであたしの目から溢れでる涙のように。
 …赦すとか、赦さないとか、今は何も考えられない。
 でも、しがみついて抱きしめてくる強い力の腕が、頼りなく震えて、ただただ、「赦してくれ」と「愛している」の言葉を繰り返す。
 それが切なくて、胸苦しくて。
 あたしは泣きじゃくたまま、縋りついてくる男の胸に縋り返した。
 ああ…そうか。
 そんな風に、ふいに思い当たる。
 あたしは謝られたかったんだ。
 あの時はすまなかったと謝られ、苦しかったな、辛かったんだなと気が付いて欲しかった。
 それも…加害者である道明寺本人に。
 今更恨み言を言ったとしてもどうにもならない。
 過去がかわるわけではない。
 そうは思いながらも、真摯な謝罪が欲しかった。
 後悔して欲しかった。
 一人の人間、一人の女の心を傷つけ、一生消えない哀しみを植え付けた自分の卑劣さと残酷さを。
 だって、それでも貴方を愛しているから。
 どんなに卑劣で、人でなしな所業を繰り返してきた男だと知ってはいても、愛さないでいることなんてできなかったから。
 いまはそんな悟りにも似た心理をとてもじゃないけど、伝えることなんてできなくって。
 ただただ、道明寺の胸で…泣き続けた。



 ひとしきり泣きわめくと、ある程度すっきりするのはどんな時でも一緒。
 人生をかけて愛した男との別離をかけた諫言であろうと、恨みつらみであろうと同じこと。
 …なんだか気が抜けたら、お腹が空いた。
 ぐううううぅぅぅぅ。
 「……」 
 「……」
 「おい、今のなんだ?」
 唇の端をヒクつかせ、思いっきり『信じらんねぇ~!』と書かれた顔が、呆れたように睨んでくる。
 さっきまで、借りてきた猫のように殊勝だった態度はどこへ行った?
 あっという間に、俺様復活か?
 わんわん泣いて、道明寺は道明寺で平身低頭で謝り倒した反動なのか、あたしの腹の虫の音が合図のように、いきなり二人の間に流れていた重い空気が取り払われた。
 …のみならず、なぜか気が抜けて、憎いだ、恨んでるだ、そんな気持ちまでもどこか現実味が消える。
 さっき言った言葉はけっして嘘や冗談じゃなかった。
 また、突然思いついて口にした…とかいう軽いものでもなかった。
 おそらく長年あたしの心の奥底に住み着いて、密かにくすぶり続けていたもの。
 けれど、すべてを吐き出して(まだ言ってないこともあるけど)、道明寺が真剣に向き合い、謝ってくれたことで心の痛みが和らいでいた。
 まるで塗り薬みたいだね。
 いきなり薬を塗られたからと言って、『はい、もう大丈夫』というふうなわけにはいかないけれど、それでもただ蓋をしてジクジクと膿み続けるよりはずっといい。
 剥がした瘡蓋から飛び出した膿みは、一時嫌な臭いと苦痛をまき散らしたけれど、その後には新しい皮膚が再生する。
 …そんな風に、あたしと道明寺の関係も落ち着くことができるのだろうか?
 すべてを吐きだし、絞り出したあたしは、どこか虚ろだった。
 重ぐるしい虚ろさではなく、…空っぽな虚ろさ。
 もちろん、これは一時のことだろう。
 激情の発露にいまはマヒしているだけで、依然、重苦しいものは胸の奥に存在し続ける。
 でも、以前とは違う自分…道明寺に自分の心の暗部を吐露する前の自分とは変わっているのを感じる。
 これからあたしたちはどうなるんだろう?どうするんだろうか、あたしは。
 そして、道明寺、あんたは?
 「おい?大丈夫か?まさか、打ちどころが悪くて、呆けちまってるんじゃねぇだろうな?…あいつら、絶対にただじゃおかねぇ。お前にしたこと死んで詫びたって赦されるもんじゃねえんだからなっ」
 「…あんたねぇ」
 謝りまくったって少しも変わらないように思えるこいつに、何かしらの変化はちゃんとあったのだろうか?
 あまり反省の色らしきものが見えなくて、頭痛を憶える。
 抱き合って身じろぎもしなかったのは、何十分なんだか何時間なんだか、…もしかしたら、ホンの数分のことだったのかもしれないけれど、あたしの方は拉致されてから飲まず食わずだったんだからお腹だって減るよ。
 それ以前に、昼ご飯を食べて以来、いろんなことがありすぎて何も食べていない。
 つーか、いまいったい何時なの?
 かすみさんと会ってたのが、ちょうど夕方近く。
 窓の外は、もちろん夜の闇に包まれていたけれど、キャビネットの上の置時計を確認するとすでに23時を回って、そろそろ午前に入ろうとしているところだった。
 うげっ。
 意識しだすと、よけいにお腹が減る。
 ぎゅるぎゅるぎゅるるるるる~。
 「……お前な」
 「な、何よっ!仕方がないでしょっ?人間生きてたら、お腹はすくものなのよっ。なんか文句ある?」
 「別にないけどよ。シリアスな場面で腹の虫って…さすがはお前つーか。なんというか」
 失礼な台詞を吐きながらも道明寺はあたしを離し、座り込んでいたベッドから降りて、部屋の隅に設置されているレトロな電話機へと歩み寄る。
 「まあ、そういえば俺も腹減った。こんな時間だけど、飯、なんか用意させるよ」
 仕方なさそうに小さく微笑んで、道明寺が受話器を取る。
 悪いなあ~。
 こんな時間にすごい迷惑だろうなあ、と思いつつ。
 「…道明寺」
 「あ?なんだ?」
 思わず呼びかけてしまったけれど、明確に言いたいことが形になっていたわけではなかった。
 それでも。
 「道明寺…あたしたち、これからどうなるの?」

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