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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第四章 愛憎…愛することとは①

それでも貴方を愛しているから065

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 思わず、ぼうっと見惚れていると、道明寺が神妙な顔で近寄ってくる。
 「目…覚めたか?どこか痛てぇところないか?」
 道明寺がベッドの端に腰をかけ、片手をあたしの額に置いた。
 「…顔が痛い」
 自分ではしっかり出したつもりが、あたしの声は掠れてまるで老婆のようにしゃがれていた。
 びっくりして、思わず言葉を切ってしまったけれど、道明寺は他のことを思ったようでクスリと笑った。
 「そりゃそうだよな。無茶しやがって、ああいう場合は抵抗するんじゃねぇよ。かえって被害が大きくなる…こんなに腫らせやがって」
 けれど言葉を重ねるうちに、道明寺の方が痛んだ様に顔を歪め、小さく一つ息を吐く。
 そして、指先をあたしの頬へと伸ばし、眉をひそめつつ首筋に触れるのをためらって結局、手を握り締めて引っ込めた。
 あ、そうか…首、絞められたんだっけ。
 意識してみれば、あの時の恐怖がよみがえって、喉に異物があるような詰まった感じがしてゴクリと唾を飲み込む。
 自分でそんな恐ろしい痕に触れるのも嫌で、あえて意識を目の前の男へと集中させた。
 「…どうして?」
 「ん?」
 どうして、あんたあそこにいたの?
 どうして、あたしの窮地がわかったの?
 上手く働かない頭が、言葉を選んで探しているうちに、道明寺の方がわかってくれたらしく、答えてくれた。
 「SP…つけてたんだよ」
 「え?」
 「…桜子から、あいつ…あの時に、俺がお前を暴行させようとした加納が近づいてきてるって聞いた。それから、密かにSPつけてた」
 大きく目を見開くあたしを誤解したのか、一瞬そらされた目にどこかこの男らしからぬ怯えたような怖がっているような暗い影がよぎった。
 けれど、あたしが口を開く間もなく、すぐに視線はあたしへと戻され、ポンポンと頭を軽く叩いて顔を歪めたまま、口角だけ無理矢理にあげた複雑な顔を見せる。
 「怒るなよ。お前は…そういうの嫌がってたけど、今回は役に立ったんだからな。それでも、最低限報告だけに留めていて、あまり接近させてなかったから救出が遅れた。すまない」
 謝る道明寺に、あたしは首を振る。
 そんなの、あんたが謝る筋合いじゃない。
 そもそもSPをつけるのを嫌がった…というのはともかくとして、桜子たちの心配を無視して加納浩輔のことを侮っていたのはあたしだ。
 それに、付き合ってる…のかもわからない状態の道明寺に、あたしの何を察知しえたというのか。
 そもそもそんな義理だって義務だってないのだ。
 「お前にTELして、友達とお茶してるって聞いたけど、なんか胸騒ぎがしてな」
 「……」
 「お前につけてたやつに連絡とったんだけど、お前の話通り女と二人で茶を飲んでるってだけだった」
 そうだ、そこまではいつもの日常の延長でしかなかった。
 「それが、お前が具合悪いんだか何だか、覚束ない足取りでダチと…そいつの知り合いらしい男が現れて、お前を支えてタクシーでどこぞのマンションに消えてったっていう」
 加納浩輔…か、あるいは男たちの誰かがかすみさんとあたしを連れ出したわけだ。
 そういえば、意識を失う前に、男の声を聞いた気がする。
 「いくら迂闊で、どこでもよく寝るお前だって、いきなりファミレスで寝こけるなんてありえねぇだろ?具合が悪いにしろ、家が近所なんだ。タクシー使ってまで見も知らないマンションに連れ込むなんざ、怪しいもいいとこだ。で、その連中の特徴を報告させて調べさせたら…」
 かすみさんと加納浩輔に行き当たったということらしかった。
 「どこのマンションに入ったかまでは尾行させてたが、部屋まではわからなくてな。それを調べさせるのに手間取った」
 道明寺が現れた時のことを、思い起こす。
 確か。
 「警察官…」
 「まあ、あの場合はな。下のロック外させるのにも管理人にそういって通させたし、案外効果あるんだよな」
 ニヤリと笑う道明寺の子供みたいな自信満々の顔にあたしも微笑が零れる。
 「…あつっ」
 とたんに切れた唇の端に鋭い痛みが走り、顔を顰めると、痛いというよりはジンジンとしびれていた頬がまた引き吊れて痛みがぶり返す。
 「…あいつら、お前に怪我までさせやがってぶっ殺す!」
 久しぶりに凶暴な怒りを放射させるこいつの顔を見た。
 それが妙に懐かしくて。
 「な、泣くなよ。痛てぇのか?また、医者呼ぶか?」
 涙腺が壊れてしまったようで、特に悲しくも、泣きたいわけでもないのに涙が零れた。
 あまりにショッキングな出来事に出会ってしまったことで、さしものあたしもまだ感情の制御ができないみたいだ。
 「…医者?」
 自分でも自分をどうしていいのかわからず、おろおろとあたしを見る道明寺にこれ以上心配をかけたくなくって、ただ思いつくままに口を開く。
 おうむ返しに聞き返しただけなのに、道明寺はなぜか顔を赤らめ、次には疚しそうな顔で目を反らした。
 なに?
 不審に首を傾げ、ジッと見つめていると、目を反らしたまま、仕方なさそうに溜息をついて重い口を開く。
 「…一応な。本当は病院に連れてゆくべきなんだろうけど、こっちに連れてきたから。…口止めもあるし。うちの主治医呼んで診察と治療させたんだよ」
 「…そう」
 なんだか、まだ頭がぼうっと痺れたようで、働きが鈍い。
 歯に物を挟んだようなこの男らしからなう言動に、何かひらめきそうなのにそれがなんなのかわからない。
 「そ、それで…その。無断で悪いと思ったけど、お前気絶したままで中々起きねぇから…その、診察させたから」
 診察?さっきも言ったじゃん。
 何を言いよどむことがあるのだろうか。
 道明寺は顔を赤らめたまましばらくあたしをチラチラと見ていたけど、そのうち開き直った様に憮然としだした。
 その顔を見ているうちに、道明寺が何を言いたいのか、ふと思い当たる。 
 あ…もしかして。
 思い当たった途端、カッと顔に血が上り、道明寺から顔を背けた。
 あたし…強姦されそうになったんだ。
 すでに上着はボロ布状態に破かれていただろうし、ズボンも脱がされ下着一枚姿。
 もしかしたら、記憶にないけど、その下着さえズリ下ろされていた可能性もある。
 診察…それはおそらく言葉一片のことじゃなくって、極めてデリケートなことに対して行われたもの。
 ありていにいえば、あたしが性的暴行を受けたのか否か…万が一受けていた場合の処置を含めた言葉だったのだ。
 恥ずかしくて、布団を引き上げ、その中に潜り込む。
 「じょ、女医呼んだからっ!そ、その、殴られたりはしてたけど、ヤられてはいねぇからなっ!」
 怒ったような言い方だったけど、その中には安堵が含まれいて。
 その言葉でやっと、自分はとんでもない目にあうところだったんだと、改めて実感が湧いてきた。
 「…なんで、勝手にそんなことしたのよ!」
 感謝することはあれ、なじるなんて不条理だと理解しつつ、それでも言わずには入れない。
 「し、診察なんかしてもらわなくったって、ヤ、ヤられてなんかいないんからっ!!」
 あたしが起きるまで待ってくれれば…せめて、無理やりにでも叩き起こして尋ねてくれればすんだはずなのにっ。
 恥ずかしいやら情けないやら、涙が滲んできた。
 ためらいがちな手が、布団に潜り込んだあたしの体をトントンと優しく叩く。
 「…すまなかった。でも、お前にこれ以上ショックを受けて欲しくなかったんだ。当たり前だけど、気絶する前のお前の様子は明らかにおかしかったし、もし…万が一のことがあって覚悟ができないままに、不用意なことを言っちまって怖がらせたり、絶望させたりさせるのが怖かった」
 フルフルと今更ながらに震えと寒気が湧き上がってくる。
 …そして、道明寺の言うことも理解できた。
 妊娠や性病、その他もろもろの問題を考えても、すぐ対処することが必要だ。
 けれど、あたしはあまりの恐怖と緊張に、ショックを受けていて、もしあの後すぐに診察だ…事情聴取だとさまざまなことへの対応を迫られていたら恐慌に陥っていたかもしれない。 
 あの日の…乱暴されて空虚になっていたかすみさんのように。
 ハッと我に返る。
 そうだ!…かすみさん!
 「ど、道明寺!かすみさんはっ!?」
 身を起こした途端に走った全身の痛みを押し殺して、あたしは道明寺の体へと取りすがった。
 「かすみさんは、どうしたの?」
 「あ?」
 「かすみさんだよっ。あたしと一緒に酷い目に合っていた女の人っ」
 道明寺の顔が不機嫌に歪む。
 爛々と光る目を見て、不機嫌というより道明寺が憤っていることがわかった。
 「道明寺?」
 「…警察だよ」
 「けい…さつ?」
 吐き捨てるような声は憎々し気だった。
 「あの女、バカどもとグルだったらしいな?お前にクスリ盛って、拉致るのに一躍かったらしい」
 それは…すでにあのマンションでわかっていたことだった。
 けれど、それこそ、それは加納浩輔たちに脅され、またひどい虐待に心神喪失状態にされた上での凶行だった。
 事実、あの時のかすみさんは壊れかけていた。
 ただでさえ、痛めつけられ苦しめられ続けた心と肉体に衝撃と苦痛を味わされ、いまにも消えてしまいそうだったのだ。
 『ごめんなさい、ごめんなさい、つくしちゃん』
 壊れた玩具のように呟き続けていたかすみさんの傷ましい声が耳に蘇る。
 「グルなんかじゃないよっ!酷い目に合わされて、言うこと聞かされていただけだよっ」
 「何言ってんだよ?お前っ」
 「…あの男たち、あの男たちがかすみさんに酷いことして、苦しめ続けた。ずっと何年も何年も…苦しみ続けて、傷ついてきたんだよっ」
 怪訝に眉を顰める道明寺にわかってもらいたくて、あたしの知りうる限りのことを一心に言い募る。
 かすみさんが高校時代、あの男たちのおそらく主犯である加納浩輔と同級生だったこと。
 何が切っ掛けかはわからないけど(怖ろしい疑惑は、とりあえずおいておいて)、加納と当時の仲間たちによって、集団レイプされたこと。
 そしてそれが原因で英徳を退学し、それ以降もその心の傷から立ち直ることができず、繰り返し自傷するかのようにレイプ被害にあいやすい環境へと飛び込み続けていたことを語った。
 「…英徳?」
 「そうだよ、道明寺、あんたとクラスメートだったこともあるって言ってた」
 「俺と?」
 目を瞠る道明寺に、苦笑が洩れる。
 本当に憶えてないんだ。
 加納浩輔とクラスメートだった…それも自分が手下に使って、あたしを襲わせた男だと憶えていなかったように。
 道明寺にとって、F4やホンの一握りの大切な人たち以外は『人間』じゃなかった。 
 もしかしたら、今でもそうかわらないのかもしれない…そう思わせる部分が多々あった。
 ただ、あたしが愛しさで目を塞ぎ、耳を塞ぎ、見て見ぬふりをしていたのかもしれない。
 けれど、あたしはそうは思いたくなかった。
 昔はどうあれ、今この時、この瞬間、目の前にいる男がそんな…加納浩輔のような人でなしと同類の、あるいはそれ以上の化け物のままだと思いたくなかったから。
 あたしを見つめる優しい目、そっと触れてくる温かな手、気遣いや思いやり、慈しむ心。
 あるいはそれはあたしだけに向けられた狭量な特例にすぎなかったのかもしれない。
 それでも、時々あたし以外の人にも向けられる不器用な思いやりが彼の本質だと信じたかった。
 「…加納浩輔、マンションにあたしを拉致した男たちの一人があんたとクラスメートだったってことも憶えてないんでしょ?」
 「…類から聞いた」
 とたんに苦し気に顔を歪め、再びあたしから視線を反らす。
 「5年前…あんたがあたしに赤札を貼った時、あたしはあいつらに襲われた」

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