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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
第一章 悪夢再来

それでも貴方を愛しているから006

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 「先輩」
 講義が終わり、ドッと排出された学生たちと一緒に外に出た途端、華やいだ声に呼び止められた。
 「桜子、あんた、今日、授業あったんだ?」
 「まさか、先輩じゃあるまいし、こんな朝から真面目に講義なんてとってませんよ」
 朝から…て2限も終わり、そろそろ昼時間に差し掛かっている。
 相変わらず際立つ美貌に、周囲の男子学生たちがチラリチラリと振り返りながら、横を通り過ぎてゆく。
 F3が大学を卒業し、めっきりあたしの周囲は平和に落ち着いてきたけど、この一才年下の友人が傍にくるだけで、平凡なあたしの大学生活が一気に非日常的なものに戻ってしまう。
 まあ、あいつがあたしの前に現れた高校二年生の時から、あたしの人生はありえないことの連続でいつでも飽和状態だったんだけど。
 「今日、先輩って2限で終わりなんですよね?」
 「うん。本当は、篠崎教授の授業とってて、ゼミにも出席する予定だったんだけど、篠崎教授と助手の遠山さんが、
病気療養中の大山教授の代理で緊急渡米してるらしくってね、休講」
 「そうなんだ?でも、珍しいですね。それはそれで、バイト入れてそうなもんでしょ?先輩の場合」
 はは、さすがに読まれてる。
 「本当は、入れたかったんだけどね、バイト」
 「お休みしたんですか?バイト?」
 意外そうに桜子が首を傾げてくる。
 「あ~、うん、まあ、たまにはショッピングにでも行きたいかなあなんて、せっかくだから休みにしたんだ」
 「へえ?本当に珍しい。あ、じゃあ、午後はオフ?」
 「う、うん」
 あ、マズかったかな?
 「じゃあ、丁度よかった。あたしの行きつけのブティックに冬物の新作コートが入ったんです。他にも何点か欲しいし、ちょうどこの後、滋さんとお買い物の約束していて、先輩もどうかなって?」
 「えー、いやあ、滋さんやアンタとじゃあ、買える値段帯が違うし」
 「ま、そりゃそうですけど、見るだけ見て、あとで道明寺さんにおねだりしたらいいじゃないですか?」
 「ちょっと、あんた!おねだりって何よ。わたし、そんなこと、あいつに」
 息巻きだしたあたしに、桜子はヒョイっと肩を竦めて、軽くいなす。
 「はいはい、わかってますよ。先輩にそんな器用なことできないって。だいたい、その指」
 「指?」
 思わず、自分の手を見る。
 「指輪一つつけてないって、なんなんですか」
 「なんなんだと言われても…」
 「年頃の女子大生が、なんたるていたらく。ピアスもつけてなけりゃ、ネックレスも!化粧っ気はないし、服装はチープだしっ!それでも、超セレブの彼氏がいるなんて、ホント、信じられません!」
 「ちょ、ちょっと桜子、声が大きい」
 焦って前後左右見回すあたしに、桜子がぬる生暖かい視線をくれる。
 「何言ってるんですか、今更。先輩の彼氏が道明寺さんだなんて、ここの学生で知らない人間なんてモグリですよ!」
 いや、そうでもないけど。
 いくら、道明寺がかつてこの英徳で君臨していたと言っても、奴がここの学生だったのはもはや、何年も前の高校生の時。
 もちろん、高校からの持ち上がり組の人たちはその暴君ぶりを忘れてはいないだろうけど、どちらかといえば、あたしが目立っていたのはF3と友達だということの方が印象強いと思う。
 よしんば、道明寺とあたしのことを知っていた人たちにしてみても、それこそ高校卒業とともに渡米して何年も日本を留守にしていた超セレブなあいつと
庶民のあたしが、いまだに付き合っているなんて誰も思っていないだろうしね。
 ましてやF3が卒業した今となっては、新入生にとってあたしは海のものとも山のものとも…ってやつじゃないかな?
 「ま、それはともかく、一緒しましょうよ?」
 「あ~、ごめん、実はバイト、そう!バイトの友達と一緒する約束しててね」
 「バイト~?」
 「そうそう!あたしたちも冬物のセーターとかコートとか見たいな~とか。まだ、セールには早いからウィンドショッピングかなあとか。なんてね、ほら、まだ、全然買う予定ってほどじゃないし。桜子と滋さんのお買いもの見てさ、参考にしてもいいなあとか、ね?うん!とりあえず、今回は遠慮して…」
 「道明寺さんですね?」
 うっ。
 「先輩、焦るとよく喋りますよね、ホント」
 あう~。
 項垂れるあたし。
 「しかし、何焦ってるんですか?もう、いい年して、彼氏とのデートの一つや二つ、隠すことでもないでしょ?」
 「ごもってもです、はい」
 本当、その通りだよね。
 気の置けない友達の桜子たちに隠してもしょうがないんだけど、そこはそれ、ついね。
 「まあ、わかりますけどね。すぐに、先輩たちをからかいのネタにするあたしたちがいけないんでしょうけど」
 わかってるなら、からかわないでくれるとありがたいんだけど…。
 「じゃあ、ショッピングで見たいのって、勝負下着なんじゃないんですか?本当は」 
 「ば、バカ言ってんじゃないわよっ!」
 ケロっと爆弾発言をかます桜子に、思わず逆上して絶叫。
 気が付けば、校門の近くまで歩いてきていた。
 と、
 「…?どうしたの?桜子」
 呆れたように見ていた桜子の視線が、あたしを通り過ぎて。
 「道明寺さん…」
 車種なんてわからないけど、ド派手な真っ赤なスポーツカーに寄りかかり、長い足を投げ出した長身の男が、紫煙を燻らせ携帯電話を片手に立っている。
 特徴的なクルクルの癖っ毛、男性的で秀麗な美貌、細身だがしっかりと筋肉がついて完璧なバランスを具現した肢体。
 普段は高級ビジネススーツに身を包んでいるけど、今日は私用…あたしとのデートだということを意識してか、ごくカジュアルな佇まい。
 体にフィットした光沢のある黒のTシャツに、黒のニットカーティガン。黒地にストライプのスラックスが更に長い足を引き立てる。
 さすがにハンパないオーラに変わりはなかったけど、いつもより若々しく、そうしていると本当に20才代そこそこの青年に過ぎないのだと、改めて感じることができた。
 そこだけが切りとられた映画の1カットのようで、周囲を遠巻きに眺める女性たちの黄色い声さえ、顰められている。
 先ほどから沈黙してしまっている傍らの桜子を見やってみると、微かに赤く頬を染めたまま、陶然と見惚れているのが手に取るようにわかった。
 「…桜子」
 小さく呼びかけると、さすがにハッと桜子が我に返る。
 「先輩!彼氏のお出迎えですよっ。もう、羨ましすぎますっ」
 99パーセント以上本音な羨望の言葉を吐き、さあ、行け!とばかりにグイグイと道明寺の方に、あたしを押し出す。
 ちょ、ちょっと待ってよ!
 あの異空間の前に、素知らぬ顔で飛び出すのは嫌すぎるっ。
 「何やってるんですか!?ここぞと、道明寺さんを見せつけるチャンスですよっ」
 「い、いい、いい。なによ、それ、見せつけるって?!」
 道明寺は、ジャラジャラ飾り付けた宝石とでもいうわけ?
 「いい男は、女の勲章ってやつです。普段から女子度が低くて、いい気になって先輩に優越感をひけらかしてくる浅井さんみたいな輩にぜひ、思い知らせる機会じゃあありませんか」
 「え~、いやあ、あんま気にならないし、そういうの?」
 女子度が低い、とか断言してくるアンタの方がよほど失礼だと思うし?
 乗り気薄なあたしに、はあああああ、と思いっきりこれ見よがしに溜息をついてよこす、桜子。
 「ああ、なんで、こんな人なんかに、もったいない…」
 「ほっとけっ」
 「とにかく、こうしていてもしょうがないでしょ?待ち合わせしているんですよね?」
 …確かに、迎えに来てくれるとも言ってたけど、あのド派手な車、あの存在自体がド派手な男。
 うっかりいつも通り、あの黒塗りリムジンで迎えにきてくれるのだとばかり思っていた迂闊なあたし。
 もちろん、この金持ち学園の英徳でさえも、あのダックスフンド車は目立つこの上ないが、まったくありえないわけでもない。
 よりによって、外出て待ってるなよ…とは、いくら道明寺とはいえ、悪いかなあ。
 心のボヤキが聞こえたのか、何やら携帯電話で話し込んでいた男が、ふっとこちらに視線をくれた。
 その瞬間…。
 「「「「きゃあ」」」」
 ふわりと、優しく柔らかく微笑まれたその表情。
 うわあ。
 見慣れたあたしでさえ、赤面せずにはいられない美しい笑み。
 「とりあえず、適当に見繕っておいてくれ」
 一言言うと、それでもういいのか、携帯電話の通話を切って、ポンと車の窓から中へと放り投げる。
 カツカツカツ。
 何の躊躇もなく、足早に歩み寄る道明寺。
 「よお」
 「よ、よお」
 「早かったな」
 「あ、うん、そ、かな?」
 「ああ。お前のことだからこの時間だっつうても、どうせ、遅れてくるんだろうって思ってたからな。待ち時間が20分程度なら、御の字だ」
 はは、あたしってそんなに酷いかな。
 ≪天下の道明寺司≫を毎回待たせる女なんて、先輩くらいなもんですよ、と隣の桜子から声なき声が聞こえる気がする。
 「こんにちは、道明寺さん。お久しぶりです」
 「おう、久しぶり。俺の帰国祝い以来か、あの時はありがとな」
 「いえ、こちらこそ。道明寺さんの帰国祝いにかこつけて、呑んで騒ぐ口実にさせていただいたようなものですからね」
 桜子の悪びれぬ物言いに、苦笑する道明寺。
 「これから、先輩とデートなんですよね」
 「ああ、そのつもり。また、バイトだなんだと、こいつが口実つけて逃げ出さなけりゃな」
 「それなら大丈夫ですよね?」
 小首を傾げ、ニッコリと人の悪い笑みを浮かべてあたしを覗き込む、桜子が怖い。
 「道明寺さんとのあっ~ま~い夜のために、バイト人間の先輩がわざわざ休み入れて、勝負し…っぶっもがもがもが」
 トンデモナイことを言い出そうとした桜子の口を両手で塞ぎ、もがく小悪魔を必死で抑え込む。
 『ばか!あんた、なんてこと言い出す気よっ』
 「いたたた、何するんですか、先輩!」
 抗議してきながらも、目が悪戯にキラキラと輝いている。
 「もう、知るかっ!さっさと行こう、道明寺!」
 さっきまで躊躇していたのが嘘のように、サクッと怪訝そうにしている道明寺の腕を強引に引っ張り、真っ赤な派手派手車へと半ば走るように歩み寄る。
 「じゃあ!また、先輩。今度は、あたしと滋さんにも付き合ってくださいね~」

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